
ケアマネジャーを変更したいときの手順|合わない理由・断り方・デメリットと緊急時の相談先
ケアマネジャーを変えたい家族のためのマニュアル。合わない理由のパターン、変更の3つの方法、気まずくない断り方、デメリット、緊急時の相談先(地域包括・国保連)を厚生労働省基準に基づき解説します。
ケアマネ変更の要点
ケアマネジャーは利用者の意思でいつでも変更でき、追加費用や行政手続きは原則発生しません。直接申し出にくいときは、所属する居宅介護支援事業所の管理者、地域包括支援センター、市町村介護保険担当課のいずれかに相談すれば代行的に調整してもらえます。改善が見込めない深刻なトラブルは国民健康保険団体連合会(国保連)の苦情申立制度で外部審査が可能です。変更にはアセスメントのやり直しや一時的な情報共有ロスといったデメリットもあるため、まずは「合わない理由」を整理し、相性・専門性・対応速度のどの軸が問題かを言語化することが、後悔しない変更の第一歩です。
目次
introduction
「最近、担当ケアマネとうまく話せていない」「電話への折り返しが遅く、提案も画一的に感じる」――そんなモヤモヤを抱えたままケアプランが更新されていく状況は、本人にとっても家族にとっても消耗の原因になります。介護保険制度は、利用者がケアマネジャーを選び、変更する権利を明示的に認めています。ところが実際には「お世話になっているのに気まずい」「変えると今のサービスも使えなくなるのでは」という心配で、不満を抱えたまま変更に踏み切れない人が多いのが現状です。
この記事では、家族・利用者の立場でケアマネジャーを変更する具体的な手順を、厚生労働省の運営基準と国民健康保険団体連合会(国保連)の苦情処理スキームに沿って整理します。合わないと感じる理由をパターン別に分類し、直接申出・地域包括経由・国保連経由という3つの変更ルートを使い分ける判断軸、気まずさを最小化する断り方のテンプレート、変更で発生するデメリットの実態、そして虐待やネグレクトを疑う緊急時の通報先までを一通り解説します。読み終えるころには「自分のケースではどこに、どんな順序で連絡すればよいか」が具体的に描けるはずです。
ケアマネを変更する権利:制度上の位置づけ
「お世話になっている人を変えるなんて失礼では」と感じる方が多いのですが、介護保険制度はそもそも、利用者が自分の意思でケアマネジャーや居宅介護支援事業所を選び、いつでも変更できる仕組みとして設計されています。厚生労働省の「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第38号)の第13条では、ケアマネジャーは利用者の意向や生活課題を踏まえてケアプランを作成し、定期的に見直すことが義務づけられており、利用者の選択が制度の中心に置かれています。
1. 変更しても自己負担は発生しない
居宅介護支援(ケアマネジメント)の費用は介護保険から事業所に直接支払われるため、ケアマネを変えても利用者の自己負担は変わりません。新しい事業所と契約し直しても契約事務手数料のような追加料金は発生しません。これは2024年度報酬改定後も変わっておらず、2026年度の利用者負担導入論議でも対象は給付であり「ケアマネを選び直す行為」自体に費用がかかる制度設計にはなっていません。
2. 行政手続きは新しいケアマネが代行する
事業所を変更する場合、市区町村への「居宅サービス計画作成依頼届出書」の届出が必要ですが、これは新しいケアマネが利用者に代わって提出してくれます。利用者が役所に出向く必要はなく、必要書類は新しい事業所が案内します。
3. サービスは原則継続できる
ケアマネを変えても、ヘルパー・デイサービス・訪問看護といった在宅サービス事業所との契約は別契約なので、利用中のサービスは原則そのまま継続できます。ただし「現在のサービスを続けたい」という意思は新しいケアマネに最初に伝えておかないと、再アセスメントの結果で構成を組み直される場合があるため注意が必要です。
4. 同じ事業所内で担当者だけ変える方法もある
事業所への信頼はあるが担当者個人とは合わない、というケースでは、同じ居宅介護支援事業所内で別のケアマネに替えてもらう選択肢があります。厚生労働省の通知でもこれは「軽微な変更」に位置づけられ、新担当者が利用者および各サービス担当者と面識を有していれば、ケアプラン全体を作り直さずに担当者変更だけで対応可能です。事業所そのものに不満がなければ、まずこの選択肢を検討するのが摩擦の少ない方法です。
合わない理由のパターン:相性・専門性・対応速度
「なんとなく合わない」で変更に踏み切るのは家族間でも合意が取りにくく、後悔につながりやすい判断です。違和感の正体を「相性」「専門性」「対応速度」の3軸に分解して整理すると、本当に変更が必要なのか、それとも対話で解決できる問題なのかが見えてきます。
相性軸:価値観や生活観の不一致
相性軸のズレは、提案されるサービス内容そのものは問題ないのに、説明の仕方や雰囲気が合わないと感じるケースです。たとえば「本人の希望より家族の負担軽減を優先する説明が多い」「医療職出身で介護家族の不安に寄り添う表現が少ない」など。これは個人の感じ方の問題なので、誰が正しいという話ではなく、合う相手に替わることで関係性が一気に良くなる可能性が高い領域です。
専門性軸:必要なケア領域とのミスマッチ
専門性軸は、本人の状態にケアマネの得意領域が合っていないケースです。認知症の進行で BPSD(行動・心理症状)が強くなってきたのに、医療連携や認知症ケアの提案が乏しい/看取り期に入りそうなのに在宅医や訪問看護とのコーディネートが弱い/障害福祉サービスとの併用が必要なのに介護保険サービスの知識しかない、といった場合は、担当者の力量というより「専門領域の守備範囲外」という構造的な問題です。主任ケアマネや認知症ケア専門の事業所への変更で改善することが多い領域です。
対応速度軸:連絡・調整のレスポンス
対応速度軸は、緊急対応や連絡の遅さに表れます。電話やメールの折り返しが数日以上ない/サービス担当者会議のセッティングがケアプラン更新ギリギリになる/入退院時の在宅復帰調整に動いてくれない、などが典型例です。一人のケアマネが受け持つ標準的な担当件数は35〜40件程度(逓減制の運用上の目安)で、これを大幅に超えていると物理的にレスポンスが遅くなります。対応速度の問題は、担当者個人ではなく事業所全体の人員体制に起因するため、同じ事業所内での担当者交代では解決しないことが多く、別事業所への変更が必要になります。
変更すべきか、対話で解決できるか
3軸で分析した結果、相性軸が中心であれば「言いにくいことを一度伝えてみる」だけで関係が好転することがあります。専門性・対応速度の構造的な問題があるなら、対話だけでは解決しないため変更を検討した方が早道です。両者が混在しているときは、まず地域包括支援センターに状況を相談し、第三者の視点で「変更が必要なケースか」を整理してもらうとよいでしょう。
変更の3つの方法:直接申出・包括経由・国保連経由
ケアマネを変更するルートは大きく3つあります。状況の深刻度と「自分で伝えられるかどうか」によって選び分けます。順番に難易度を上げていくのが基本で、いきなり国保連に申し立てる必要はありません。
方法1:居宅介護支援事業所に直接申し出る
もっとも一般的なのが、契約している居宅介護支援事業所の管理者に「担当を替えてほしい」あるいは「事業所を変えたい」と直接伝える方法です。重要事項説明書には事業所の管理者の連絡先や苦情受付担当者が明記されており、ここに電話するか、サービス担当者会議の後に時間をもらって相談します。担当者本人ではなく管理者に伝えるのがポイントで、事業所側も担当者の業務量や相性の問題を把握しているケースが多いため、その場で代替候補を提示してくれることもあります。事業所自体を変える場合は、新しい事業所を先に見つけてから現在の事業所に契約解除を伝えるとスムーズです。
方法2:地域包括支援センター経由で調整してもらう
直接事業所に言うのが気まずい、相手の反応が怖い、家族間で意見が割れているといった場合は、お住まいの地域の地域包括支援センターに相談する方法があります。地域包括支援センターは市区町村が設置主体となり、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員の3職種が配置された、高齢者支援の総合相談窓口です。担当圏域のケアマネ事業所の特性を把握しているため、本人の状態に合う別の事業所を紹介してもらえる可能性が高く、現在の事業所への申し入れも代行的に調整してくれます。地域包括支援センターのうち4業務の一つに「包括的・継続的ケアマネジメント支援」があり、まさにこうしたケアマネ関連の調整は本来業務の範囲内です。
方法3:国保連・市町村への苦情申立
説明不足や契約違反、不適切な対応が続き、事業所や包括に相談しても改善が見られない場合は、都道府県ごとに設置されている国民健康保険団体連合会(国保連)の苦情処理窓口に申し立てができます。利用者本人または代理人(家族など)が苦情申立書を提出すると、国保連の苦情処理委員会が事業所への調査・指導を行います。標準処理期間は受理から60日前後とされ、結果は申立人に通知されます。同時に市区町村の介護保険担当課にも苦情を伝えることができ、こちらは事業所への指導権限を持つため、法令違反が疑われるケースでは行政指導が入る場合もあります。国保連・市町村は事業所変更そのものを命じる機関ではありませんが、申し立て事実が事業所側に通知されることで、変更交渉がスムーズに進む副次効果も期待できます。
選び方の目安
軽い違和感や担当者交代希望なら方法1、関係がこじれている/家族の意思確認がしづらい/本人が認知症で代弁が必要なら方法2、契約違反や法令違反が疑われるなら方法3、というのが現実的な使い分けです。方法1で解決しなかったら方法2、それでもダメなら方法3とエスカレーションしていく流れが、関係者全員にとって角が立たない進め方です。
断り方の実務:気まずさを避ける言い方とテンプレ
変更の正当性は制度上保証されていても、いざ「替えたい」と切り出すのは心理的なハードルがあります。とくに数年単位で関わってきたケアマネに対しては「お世話になったのに申し訳ない」という気持ちが先に立ち、本音を伝えられないまま我慢を続けてしまうケースが少なくありません。気まずさを最小化するためには、変更の理由を「相手の落ち度」ではなく「家族側の事情」のフレームに置き換えるのがコツです。
使いやすい3つの言い回しパターン
そのまま使える型として、状況別に3パターンを紹介します。
(1) 家族の事情を理由にする
「最近、私たち家族の関わり方を見直したくて、一度ケアプランをゼロから組み立て直してみたいと考えています。第三者の視点をもう一度入れたいので、別の事業所さんにお願いするタイミングかもしれません。これまで本当にありがとうございました。」
家族側のリセット要求として伝えるので、相手の力量を否定する形にならず、感情的な摩擦が起きにくい言い方です。
(2) 専門性のミスマッチを率直に伝える
「父の認知症の症状が強くなってきて、医療連携を強めにできるケアマネさんに切り替えたいと考えています。〇〇さんには本当に助けていただいたのですが、看護師連携の経験が豊富な事業所を紹介してもらえないでしょうか。」
本人の状態変化を理由に据えると、変更が「相手のせい」ではなく「ニーズの変化」として扱われ、相手も納得しやすくなります。事業所自体に不満がなければ、紹介の形を取ってもらうこともできます。
(3) 地域包括経由でクッションを置く
「地域包括支援センターに相談したところ、近くにある別の事業所さんを紹介されまして、一度そちらにお願いしてみることにしました。これまでありがとうございました。」
第三者(包括)の紹介を理由にすると、利用者・家族が直接「切る」判断をした構図にならず、双方の角が立ちません。実際に包括に相談済みであることが前提のため、虚偽にならないように使います。
避けたほうがいい言い方
「対応が遅すぎて」「人間性が合わない」など、相手個人への不満を直接ぶつける表現は、その場の気持ちは収まっても、その後の引継ぎ(情報共有・記録の引き渡し)でトラブルになる可能性があります。残り期間は同じ地域の介護関係者として顔を合わせる可能性があるため、人格批判ではなく「家族としての判断」のフレームに収めることをおすすめします。
伝えるタイミングと方法
変更を切り出すタイミングは、ケアプラン更新前後(要介護認定の更新や状態変化のタイミング)が自然です。電話と対面どちらでも構いませんが、感情的になりやすいテーマなので、伝える内容を事前にメモにまとめておくと冷静に話せます。電話なら相手の在席時間(多くの事業所は平日日中)に、対面ならサービス担当者会議の終わりに別途時間をもらう形が一般的です。新しい事業所が決まっていない段階で先に切り出すと、宙に浮く期間が発生するので、可能なら新事業所の目処を立ててからの方が安全です。
変更のデメリット:引継ぎロス・在宅サービスへの影響
制度上は自由に変更できるとはいえ、現実には「変えない方が結果的によかった」というケースもあります。事前にデメリットを把握しておくと、本当に変更すべきか、それともいまの相手と粘り強く対話すべきかの判断が冷静にできます。
1. アセスメントが一からやり直しになる
新しいケアマネは原則として、自宅訪問と本人・家族との面接によるアセスメント(生活課題の把握)を最初から行います。本人の生活歴・既往歴・性格・家族関係・希望する生活像を改めて説明する必要があり、所要時間は2〜3時間、複数回の訪問になることも珍しくありません。本人が認知症で同じ話を繰り返すのが負担になる、家族が遠方で立ち会いが難しい、といった事情があると、この再アセスメント工程そのものがストレス源になることがあります。
2. 一時的な情報共有ロスが発生する
旧ケアマネが把握していた細かい情報(家族間のデリケートな事情、本人が触れられたくない話題、信頼している医師や近隣関係者など)は、書面の引継ぎだけでは完全には伝わりません。新ケアマネがそれを把握するまで数か月かかることがあり、その間にトラブルが起きると「以前のケアマネなら…」と感じることがあります。記録の引き渡しが法令上義務化されているわけではなく、事業所間の慣行で対応されるため、引継ぎの粒度は事業所差があります。
3. サービス担当者会議を改めて開催する必要がある
新規のケアプラン作成にあたっては、ヘルパー・デイサービス・訪問看護など各サービス事業所を集めたサービス担当者会議を開くことが運営基準で定められています。本人の体調が不安定な時期だと、複数事業所の予定調整に時間がかかり、新しいケアプランの開始が遅れることがあります。
4. 関係を一から築き直す心理的負担
担当が交代すれば「人として信頼できるか」を見極める時間がまた必要になります。前任との関係が深かった場合ほど、新担当との距離感がぎこちなく感じる時期があります。特に独居高齢者の場合、ケアマネは事実上の見守り役を兼ねているため、慣れた相手が変わること自体が本人の不安要因になることもあります。
5. 在宅サービスの組み合わせが見直される可能性
新しいケアマネの判断で、利用中のヘルパー事業所やデイサービスを別の事業所に切り替える提案が出ることがあります。「現状のサービスを継続したい」という意思を初回面談で明確に伝えておかないと、再アセスメントの結果として構成が組み替わることがあるので、最初に希望を整理して伝えるのが重要です。
デメリットを最小化するポイント
これらのデメリットは、変更タイミングを意図的に選ぶことで軽減できます。要介護認定の更新時期、サービスの大きな見直しを考えるタイミング、本人が比較的安定している時期に変更すれば、再アセスメントの負担が他のイベントと統合できます。逆に、入退院直後や認知症急性期のように本人が不安定な時期は、変更そのものが負荷になりやすいので、緊急性がなければ少し時期をずらすのも選択肢です。
緊急時の相談先:地域包括・国保連・市町村窓口
「ケアマネと連絡が取れない」「個人情報を勝手に漏らされた」「金銭の取り扱いに不審な点がある」など、通常の苦情を超えるレベルのトラブルや、本人の安全に関わる事態が発生した場合は、事業所への申入れを待たずに行政・公益機関に直接相談すべきです。連絡先を「お守り」として家族で共有しておくと、いざというときに動きが早くなります。
1. 地域包括支援センター(24時間対応の自治体あり)
もっとも身近で柔軟に動いてくれるのが、お住まいの地域の地域包括支援センターです。お住まいの市区町村のホームページや広報誌に担当圏域別の連絡先が掲載されています。本人を担当している包括は要介護認定の窓口にもなっているため、ケース把握が早く、状況に応じてケアマネ事業所への直接連絡、別事業所の紹介、市町村介護保険担当課への通報まで一連の対応をしてもらえます。緊急時の電話番号を自治体が用意している地域もあります。
2. 市区町村の介護保険担当課
市区町村の介護保険担当課は、事業所への指導権限を持つ行政窓口です。法令違反が疑われるケースや、事業所が苦情を取り合わない場合に申し立てることで、立入検査や行政指導につながる可能性があります。平日日中の窓口対応が中心ですが、明らかな違反については電話だけでも記録を取って後日確認してくれるケースが多いです。
3. 国保連の苦情処理窓口
国民健康保険団体連合会は、介護報酬の審査支払とともに介護サービスに関する苦情相談を所管する公益団体です。各都道府県に1か所設置されており、ホームページに苦情相談窓口の電話番号が掲載されています。利用者本人または家族(代理人)が苦情申立書を提出することで、第三者機関による調査・指導が始まります。事業所変更そのものを命じる権限はありませんが、調査過程で問題が確認されれば、事業所に対する改善指導が行われ、結果として変更交渉や賠償交渉が動くケースもあります。標準処理期間は受理から60日前後とされています。
4. 高齢者虐待・ネグレクトを疑う場合
ケアマネジャー本人による虐待行為(暴言・身体的虐待・経済的搾取など)が疑われる場合、または、ケアマネが家族・他事業所の虐待を見て見ぬふりをしている疑いがある場合は、高齢者虐待防止法に基づく通報義務の対象になります。市区町村の高齢者虐待窓口(多くは地域包括支援センターが兼ねる)に通報すると、市町村が48時間以内の安否確認に動く運用が一般的です。本人が話せない状況でも家族の判断で通報できますし、通報者の秘密は法律で守られます。
5. 警察・弁護士
金銭被害が明確に発生している、本人が脅迫・拘束されている疑いがあるなど、刑事事件レベルの問題であれば、警察への被害届と弁護士相談を並行して検討します。各都道府県の高齢者・障害者の権利擁護センター(弁護士会が運営)では、初期相談を無料・低額で受け付けています。
記録を残しておくと相談がスムーズ
緊急時の相談を有効に進めるためには、日々の記録を残しておくことが何より重要です。電話の日時・内容、対応の遅れ、約束の不履行などを家族の手帳やスマホのメモに簡潔に記録しておくと、地域包括や国保連に相談するときに具体性のある申し立てができ、調査も動きやすくなります。
変更後のスムーズな引継ぎ:情報共有とアセスメント
変更を決めて新しい事業所が決まった後、最初の1〜2か月は引継ぎとアセスメントの集中期間になります。ここを丁寧に運用できるかどうかで、変更後の満足度が大きく変わります。家族側でも準備できることがいくつかあります。
事前に整理しておきたい情報
新しいケアマネとの初回面接までに、家族で次の項目をメモにまとめておくと面談が大幅に短縮され、本人の負担も減ります。
- 本人の生活歴・職歴・家族構成(兄弟関係、別居家族の関わり)
- 既往歴と現在の主治医(病院名・診療科・受診ペース)
- 服薬中の薬と直近のお薬手帳のコピー
- これまでに利用してきた介護サービス(事業所名・頻度・本人の評価)
- 本人が「これは譲れない」と話していた希望(食事、入浴、外出の頻度など)
- 家族間で意見が割れている点(家族会議で先に整理)
- 変更前のケアプラン(旧ケアマネに退所時に依頼すれば写しを渡してもらえる)
旧事業所からの引継ぎ書類
新しい事業所への移行時には、旧事業所から「居宅サービス計画書(ケアプラン)」「アセスメントシート」「サービス担当者会議の記録」「経過記録」などのコピーを引き継ぐのが望ましい運用です。これは法令義務ではなく事業所間の慣行ですが、家族から旧事業所と新事業所の双方に「書類の引継ぎをお願いします」と一言依頼すれば、ほぼ確実に対応してもらえます。家族が間に立つよりも、新ケアマネから旧ケアマネに直接依頼してもらう形が一般的です。
初回サービス担当者会議の活用
新しいケアプラン案ができたら、ヘルパー・デイサービス・訪問看護などの各事業所を集めた「サービス担当者会議」が開催されます。家族はこの会議への参加が認められており、本人の状態や希望、家族の関わり方の方針を直接伝える絶好の機会です。とくに次の点は会議の場で発言しておくと、その後のサービス調整がスムーズになります。
- 「現状のサービスは継続したい/変更したい」の明確化
- 緊急時の連絡先(夜間・休日対応の希望)
- 家族の関わり方(同居か別居か、訪問できる頻度)
- 本人と話すときの注意点(認知症の傾向、嫌うテーマ)
3か月後・6か月後の見直し
新しいケアマネとの関係が想定通りに機能しているかは、3か月後・6か月後を目安に振り返ると効果的です。レスポンス速度、提案内容、本人の表情の変化などをチェックポイントにして、もし違和感が再発した場合は早めに再相談する方が、長く我慢するより全体の満足度が高まります。介護保険制度は「ケアマネを定期的に見直す」ことを否定していないので、必要なら2回目の変更も可能です。
参考資料
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まとめ:選択肢を持って臨むことが安心につながる
ケアマネジャーの変更は、制度上は「いつでも自由」に行える行為であり、自己負担も追加手続きの負担も実質ありません。にもかかわらず変更が躊躇われる最大の理由は「気まずさ」と「変えた後の不確実性」という心理的なハードルです。この記事で扱った3つの方法(直接申出・地域包括経由・国保連経由)、3つの言い回しテンプレ、引継ぎの実務手順を頭に入れておくだけで、選択肢が「変えるか我慢するか」の二者択一ではなく、「どのルートで、どう伝えるか」のレベルにまで具体化できます。
大事なのは、合わないと感じた瞬間に変更を急ぐのではなく、まず「相性・専門性・対応速度」の3軸で違和感を分解し、対話で解決できる範囲なのか、構造的な問題で変更が必要なのかを切り分けることです。そして変更を決めたら、要介護認定の更新時期など本人にとって自然なタイミングを選び、新事業所の目処を立ててから旧事業所に伝えるという順序で動くと、宙に浮く期間を最小化できます。緊急時の相談先(地域包括・市町村・国保連・虐待防止窓口)の連絡先を家族で共有しておけば、万が一の事態にも素早く対応できます。
ケアマネは介護生活の伴走者であり、合う相手と出会えるかどうかが家族の負担感を大きく左右します。今の関係に違和感があるなら、まずは地域包括支援センターに気軽に相談するところから始めてみてください。第三者の視点が入るだけで、状況が想像以上に整理されることがあります。
監修者
介護のハタラクナカマ 医療・介護監修チーム
医療・介護専門職チーム(看護師/介護福祉士/ケアマネジャー)
訪問看護・介護保険・医療保険に関する制度内容を、厚生労働省・日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会等の一次ソースをもとに、医療・介護専門職チームが内容の正確性を確認しています。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護保険、施設選び、在宅介護など、介護を受ける方・ご家族が判断に迷いやすいテーマを、公的情報と実務上の確認ポイントに沿って解説しています。
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