
日本介護支援専門員協会が虐待防止・感染症予防テーマのオンデマンド研修を開始|2026年7月配信開始
日本介護支援専門員協会が2026年7月から「事業所研修の組み立て方ガイド〜虐待防止・感染症予防の実践ポイント〜」をオンデマンド配信。厚労省虐待防止対策専門官と在宅医療連合学会理事が講師を務める180分の内容、申込期間、ケアマネジャーへの影響を解説します。
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このニュースの要点
日本介護支援専門員協会は2026年7月1日から11月30日まで、オンデマンド研修「事業所研修の組み立て方ガイド〜虐待防止・感染症予防の実践ポイント〜」を配信します。厚生労働省老健局の虐待防止対策専門官と日本在宅医療連合学会理事が講師を務める計180分の講義を、業務の合間に何度でも視聴できる形式です。受講料は会員5,000円、非会員15,000円。申込期間は5月1日から6月19日まで。事業所運営基準が定める職員研修の「組み立て方」を学べる点が、ケアマネジャーや事業所研修担当者にとって実務上の大きな助けとなります。
目次
YouTube解説動画
ケアマネ協会オンデマンド研修解説(kaigonews)
導入
2026年5月、日本介護支援専門員協会(JCMA)は新たなオンデマンド研修「事業所研修の組み立て方ガイド〜虐待防止・感染症予防の実践ポイント〜」の受講申込受付を開始しました。ケアマネジャーや居宅介護支援事業所の研修担当者が、運営基準で義務づけられた虐待防止研修・感染症予防研修を「どう設計し、どう実施するか」を体系的に学べる構成になっています。
背景には、ケアマネジャー人材不足の深刻化と、2027年度の介護保険制度改正で議論されているケアマネ更新研修見直し・法定研修のオンデマンド化という、業界全体の大きな流れがあります。本記事では、研修の概要から受講料、申込方法、そしてケアマネジャー個人のキャリアと事業所運営に与える影響まで、現場目線で整理します。
オンデマンド研修の概要:配信期間・対象者・受講料
研修名称と配信期間
正式名称は「事業所研修の組み立て方ガイド〜虐待防止・感染症予防の実践ポイント〜」。配信期間は令和8年7月1日(水)から令和8年11月30日(月)までの5か月間です。期間内であれば、業務の合間や夜間など、自分の都合に合わせて何度でも視聴できる「完全オンデマンド形式」を採用しています。
対象者は研修担当者と介護支援専門員
主な対象は、事業所の研修担当者および介護支援専門員です。協会は「研修担当者以外の方も視聴可能」と案内しており、居宅介護支援事業所のスタッフ全員が学習リソースとして活用できる設計です。
受講料:会員と非会員で差あり
- 会員:5,000円(本体4,546円+消費税454円)
- 非会員:15,000円(本体13,636円+消費税1,364円)
申込期間は令和8年5月1日(金)から6月19日(金)まで。申込から7日以内にクレジット決済またはコンビニ決済で支払いを完了する必要があります。入金後のキャンセルはできない点に注意が必要です。
申込はMyページから
会員は協会の会員専用Myページから直接申し込めます。非会員は受講管理システムの利用申し込みを先に行ったうえで、Myページから手続きする流れです。受講料の支払いが完了すると、登録メールアドレスに視聴用URLと資料が送付されます。協会は「受講証明書や修了書は発行しない」「個々の事業所での運営基準上の研修は別途適切に実施する必要がある」と明記しています。
研修テーマ:虐待防止と感染症対応の二本柱
講義1:虐待及び身体拘束の防止、権利擁護、倫理(120分)
第一の講義は、厚生労働省老健局高齢者支援課の髙橋智子虐待防止対策専門官が担当します。テーマは「虐待及び身体拘束の防止、権利擁護、倫理」で、120分という比較的長尺の構成です。
髙橋専門官は厚労省で高齢者虐待防止に関する政策立案・通知発出の実務を担う立場にあり、現場が日常的に向き合う「これは虐待にあたるのか」「身体拘束の三要件をどう判断するか」「権利擁護の観点で何を最優先すべきか」という疑問に、行政の最前線の視点から答えられる人材です。2024年度の介護報酬改定で全サービスに虐待防止措置が義務化された経緯を踏まえ、ケアマネジャーが利用者宅で虐待の兆候を察知した際の通報・連携の動き方も含めて、運営基準上の研修内容を体系的に学べる内容になると見込まれます。
講義2:在宅現場における感染症予防と蔓延防止の実践ポイント(60分)
第二の講義は、一般社団法人日本在宅医療連合学会の石垣泰則理事が担当します。テーマは「在宅現場における感染症予防と蔓延防止の実践ポイント」で、60分の構成です。
居宅サービスは施設サービスと異なり、感染症対策の物理的環境(個室隔離、ゾーニング、専用器材)を確保しづらい現場です。在宅医療連合学会の理事として、訪問診療・訪問看護・ケアマネジメントの現場感覚を理解する石垣理事の講義は、ケアマネジャーがモニタリング訪問や担当者会議で実践できる予防策、ヘルパーや訪問看護師との情報共有方法、利用者・家族への啓発まで、現場再現性の高い内容が期待できます。
テーマ選定の背景:運営基準で年1回以上の研修が義務
居宅介護支援事業所の運営基準では、虐待防止・身体拘束の適正化に関する研修と感染症および食中毒の予防・まん延防止に関する研修が、それぞれ年1回以上の実施を義務づけられています。今回のオンデマンド研修は、この2つの法定研修を「事業所として効果的に企画・実施する方法」に焦点を当てたメタ的なガイド研修である点が、従来の単発研修動画とは異なる特徴です。
ケアマネジャー個人へのメリット:3つの実務的価値
1. 法定研修の更新時に活きる「研修設計力」が身につく
ケアマネ法定研修(実務研修・専門研修Ⅰ・Ⅱ・更新研修・主任研修)では、近年「事業所内研修の企画・実施」をテーマにした課題やグループワークが増えています。特に主任ケアマネ研修や更新研修では、自事業所の研修計画を持参・発表する場面が設けられることもあります。今回のオンデマンド研修で学ぶ「組み立て方の型」は、法定研修の課題提出時にそのまま応用できる素材になります。
2. 5,000円で得られる「2人の専門家×180分」のコストパフォーマンス
厚労省の虐待防止対策専門官と在宅医療連合学会理事という、通常の事業所内研修では呼べないレベルの講師から、合計180分の講義を会員5,000円で受講できる点は、率直に言って割安です。同等の集合研修に参加しようとすれば、交通費・宿泊費を含めて数万円のコストがかかります。オンデマンドなので深夜・早朝・休日のいずれにも視聴でき、現場の業務を止めずに学習を進められます。
3. 「研修担当に指名されたが、何をすればよいか分からない」を解消できる
居宅介護支援事業所の現場では、主任ケアマネや経験年数の長いケアマネジャーが研修担当を兼務するケースが大半です。しかし、研修の組み立て方を体系的に学んだ経験のあるケアマネジャーは多くありません。今回の研修は、まさに「研修担当者の学び直し」をテーマに設計されており、年間研修計画の立て方、職員の参加意欲を高める進行手法、振り返り・記録までを一連の流れで習得できる、と協会の案内文には示唆されています。
主任ケアマネジャー要件との関係
主任介護支援専門員研修の受講要件には「事業所内研修の企画・実施経験」が間接的に問われる場面があり、研修担当として実績を積むことは、キャリアパスの観点でも意味があります。今回のオンデマンド研修受講のみでは主任研修の要件を満たすわけではないものの、自事業所での研修を質高く回せるようになる効果は、長期的なキャリア形成に確実に寄与します。
事業所運営への影響:法定研修との連携と「研修やったふり」からの脱却
運営基準と研修記録:実地指導での指摘事項
2024年度介護報酬改定以降、居宅介護支援事業所の実地指導では、虐待防止・身体拘束・感染症の3点に関する研修実施状況のチェックが厳格化しています。具体的には、年間研修計画書、研修実施記録(日時・参加者・テーマ・内容・振り返り)、未参加者へのフォロー記録の整備が問われ、これらの不備は運営基準減算の対象となるリスクがあります。
協会も「この研修の視聴だけでは省令上求められている定期的な研修の基準を満たさない」と明記しています。つまり、今回のオンデマンド研修は事業所が独自に実施する法定研修を「設計する側」が学ぶための準備教材であり、視聴記録をそのまま運営基準上の研修記録として提出することはできません。この点を誤解すると、実地指導で「研修を実施した証拠が不足している」と指摘されるリスクがあります。
正しい活用フロー:3段階の組み立て方
本研修を事業所運営に最大限活かすには、以下の3段階で活用するのが現実的です。
- 第1段階:研修担当者が事前視聴。配信開始の7月から9月までに、自事業所の研修担当者が180分の講義を視聴し、自事業所版の年間研修計画と研修教材の骨子を設計する。
- 第2段階:自事業所での研修実施。10月から年度末にかけて、設計した教材をもとに、自事業所の全職員を対象にした虐待防止研修・感染症研修を実施する。日時・参加者・内容・配布資料・質疑応答の記録を残す。
- 第3段階:実地指導・運営指導への対応。研修記録一式を、事業所の指針・BCPと整合した形で運営記録ファイルに綴じる。本オンデマンド研修の受講証跡(メール・支払い記録)も補足資料として保管する。
居宅介護支援事業所と地域包括支援センターの活用差
地域包括支援センターは、保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーの三職種が在籍し、虐待対応の中核機関として位置づけられています。包括職員が本研修を視聴する場合は、地域ケア会議や行政との連携場面で活用できる虐待アセスメントの視点を強化する位置づけになります。居宅介護支援事業所の場合は、より日常のモニタリングでの気づきと事業所内の情報共有体制の構築という、ミクロな現場目線での活用が中心になるでしょう。
ケアマネ更新研修の見直し議論との関係:オンデマンド化の本格化が始まる
厚労省概算要求:法定研修オンデマンド化に7,400万円
厚生労働省は2026年度予算の概算要求で、ケアマネジャー法定研修のオンライン受講に関する新規事業として7,400万円を盛り込みました。全国統一の講義動画と教材を作成し、いつでも・何度でも受講できるオンデマンド化を実現する構想です。背景には、ケアマネ法定研修の経済的・時間的負担(受講料5〜8万円、平日5日間の連続拘束、地方在住者の交通宿泊費追加)と、地域ごとの研修品質格差という現場の積年の課題があります。
ケアマネ更新研修・更新制廃止の議論
2026年度の介護保険法改正の議論では、ケアマネジャー資格の更新制廃止と引き換えに継続研修の義務化が論点になっています。検討会の整理では、未受講者に対する業務制限の導入も視野に入っており、ケアマネジャーが「5年に一度の更新研修」から「継続的な学習」へ移行する方向性が示されています。
この大きな政策潮流のなかで、今回のオンデマンド研修は協会が先行して打ち出した「分散・反復学習」のプロトタイプと位置づけられます。配信期間中に何度でも視聴できる仕組みは、まさに国が法定研修で目指している学習スタイルそのものです。協会会員にとっては、今後本格化するオンデマンド型研修への「慣れ」を獲得する意味でも、早期に体験しておく価値があります。
ケアマネ人材不足と研修のあり方
ケアマネジャーの従事者数は平成30年度の18万9,754人をピークに減少傾向となり、令和4年度は18万3,278人。実務研修受講試験の合格者数は近年2万人を下回る状態が続いており、現在のケアマネジャーの年齢構成を踏まえると、今後10年以内に担い手が急激に減少すると見込まれている、と厚労省の中間整理は警鐘を鳴らしています。
「学びを止めずに、現場も止めない」を両立させるためには、研修のオンデマンド化は単なる利便性向上ではなく、人材確保戦略そのものです。今回の協会研修は、その方向性を業界内に浸透させる一歩であり、ケアマネジャーが「集合型・一回勝負」の研修文化を見直すきっかけになります。
参考資料
- [1]【オンデマンド研修】事業所研修の組み立て方ガイド〜虐待防止・感染症予防の実践ポイント〜のご案内- 一般社団法人 日本介護支援専門員協会
配信期間・受講料・申込方法・講師・講義テーマなど、本研修の全公式情報を掲載する協会公式ページ。
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- [5]ケアマネ法定研修 オンライン受講で7400万円 老健局2026年度概算要求- シルバー新報
老健局概算要求の総額3兆6,838億円に組み込まれた、ケアマネ法定研修オンライン化7,400万円の予算規模を報じる業界紙。
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まとめ:研修オンデマンド化の本流に乗る5,000円の投資
日本介護支援専門員協会の今回のオンデマンド研修は、単なる「もう一つの研修動画」ではありません。2027年度の介護保険制度改正で本格化する法定研修オンデマンド化の予兆であり、ケアマネ業界全体が「集合型・一回勝負」の研修文化から「分散・反復・実装」の学習文化へ移行する第一歩です。
会員5,000円・非会員15,000円の受講料は、厚労省虐待防止対策専門官と日本在宅医療連合学会理事という第一線の講師から180分の講義を受けられることを考えれば極めて妥当な水準です。重要なのは、視聴して終わりにせず、自事業所の年間研修計画と研修教材に落とし込み、実地指導でも通用する研修記録を残すことです。
申込締切は2026年6月19日、配信開始は7月1日。研修担当者として指名されているケアマネジャー、または将来の主任ケアマネを目指すケアマネジャーにとって、いま申し込む価値が確実にある研修です。ケアマネ業界の学び方が変わる節目を、当事者として体験することを推奨します。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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