脳梗塞とは

脳梗塞とは

脳梗塞は脳の血管が詰まり脳細胞が壊死する病気で、要介護原因の上位を占めます。原因・症状・FAST・後遺症、介護現場での再発予防と観察のポイントを解説します。

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この記事のポイント

脳梗塞(のうこうそく)とは、脳の血管が血栓やコレステロールで詰まり、その先の脳細胞に酸素と栄養が届かず壊死してしまう病気です。脳卒中の中で約7割を占め、厚生労働省「2022年国民生活基礎調査」によると脳血管疾患は要介護(要支援を含む)の原因の第2位、要介護4・5に限れば原因の第1位となっています。発症から4.5時間以内であればt-PA(血栓溶解療法)で後遺症を最小化できる可能性があるため、介護現場では「FAST(顔のゆがみ・腕の麻痺・言葉の異常・発症時刻)」での早期発見が極めて重要です。

目次

脳梗塞の定義と分類

脳梗塞は、脳に血液を送る動脈が血栓(血の塊)やプラーク(コレステロールの沈着物)で塞がれることで、脳組織が酸素不足に陥り壊死する病気です。脳卒中(脳血管障害)の一種で、出血性の「脳出血」「くも膜下出血」と区別されます。日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021」では、原因によって以下の3タイプに分類されます。

3つの病型

  • ラクナ梗塞:脳の細い動脈(穿通枝)が詰まる小さな梗塞。高血圧が主因で、症状は軽度なことも多いが多発すると認知症や歩行障害につながる。日本人の脳梗塞では従来最も多かった型。
  • アテローム血栓性脳梗塞:脳や頸部の太い動脈の動脈硬化によって生じる梗塞。糖尿病・脂質異常症・高血圧・喫煙が危険因子。前兆として一過性脳虚血発作(TIA)が出ることがある。
  • 心原性脳塞栓症:心臓内(特に心房細動による左心房)でできた血栓が脳動脈に流れて詰まる重症型。突然・広範囲に発症し、後遺症が最も重くなりやすい。

関連病態:一過性脳虚血発作(TIA)

症状が24時間以内(多くは1時間以内)に消える「脳梗塞の前兆」。TIA後90日以内に約15〜20%が脳梗塞を発症するとされ、症状が消えても必ず受診が必要です。介護現場で利用者の言葉のもつれや片側脱力が一時的に出ても「治ったから大丈夫」と判断せず、必ず家族・看護師に報告します。

FAST:脳梗塞を見逃さないチェック

米国脳卒中協会が普及させ、日本脳卒中協会も推奨する早期発見の標語が「FAST」です。介護現場では、いつもと様子が違う利用者に対して30秒で判定できます。

  • F(Face:顔のゆがみ):「イー」と笑ってもらい、左右どちらかの口角が下がっていないか。よだれが片側だけ垂れていないか。
  • A(Arm:腕の麻痺):両腕を前にまっすぐ伸ばして10秒キープ。片方だけ落ちる・力が入らない場合は要注意。
  • S(Speech:言葉の異常):「今日は良い天気です」など簡単な文を復唱してもらう。ろれつが回らない・言葉が出ない・意味不明な発話があればサイン。
  • T(Time:発症時刻):症状に気付いた時刻を必ず記録。t-PA静注療法は発症から4.5時間、血管内治療(血栓回収)は8〜24時間が治療可能時間の目安。「いつから」が分からないと治療選択肢が狭まる。

1つでも該当すれば即座に救急要請(119番)。「様子を見る」は禁物で、迷ったら家族・看護師・救急に相談する判断を優先します。

数字で見る脳梗塞

  • 脳卒中全体の患者数:約111.5万人(厚労省「2020年患者調査」)。うち脳梗塞は約7割を占める。
  • 要介護原因の第2位:脳血管疾患(16.1%)(厚労省「2022年国民生活基礎調査」)。要介護4・5では原因の第1位。
  • 死因順位:第4位(厚労省「2023年人口動態統計」、脳血管疾患全体)。年間死亡数約10.5万人。
  • 再発率:5年で約35%(日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021」)。1度脳梗塞を起こした人は再発予防が生涯のテーマとなる。
  • t-PA治療可能時間:発症4.5時間以内。血管内治療(血栓回収療法)は最大24時間以内まで適応拡大。

「介護施設で最も多い疾患」のひとつであり、看護師・介護職にとって日常的に接する病気です。再発リスクが高いため、入所後の血圧・脈拍・服薬管理が再発予防に直結します。

脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の違い

「脳卒中」は脳血管障害の総称で、原因によって治療方針が180度変わるため区別が重要です。

項目脳梗塞脳出血くも膜下出血
原因血管が詰まる脳実質の血管が破れる脳動脈瘤の破裂
発症の仕方徐々に〜突然(型による)活動中に突然突然の激しい頭痛(バットで殴られたような)
主症状片麻痺・構音障害・失語頭痛・嘔吐・片麻痺・意識障害突発性激しい頭痛・嘔吐・項部硬直
主な危険因子高血圧・糖尿病・心房細動・脂質異常高血圧動脈瘤・喫煙・家族歴
急性期治療t-PA・血栓回収・抗血小板薬降圧・血腫除去術クリッピング術・コイル塞栓術
脳卒中全体に占める割合約75%約20%約5%

介護現場では「脳卒中=脳梗塞」と決めつけず、「強い頭痛」「嘔吐」「意識消失」があれば脳出血・くも膜下出血の可能性も視野に入れ、迅速な救急要請を行います。

後遺症と介護現場での対応

脳梗塞は救命できても約7割が何らかの後遺症を残すとされ、介護現場で直接ケアの対象となることが多い後遺症は次の通りです。

主な後遺症

  • 片麻痺・運動障害:損傷した脳の反対側に麻痺が出現。立位・歩行・移乗にリスクが伴うため、転倒予防と健側からの介助が基本。
  • 嚥下障害:飲み込みの筋肉が動きにくくなり誤嚥性肺炎の最大原因に。とろみ調整・姿勢調整・食後30分の座位保持が必須。
  • 構音障害・失語症:言葉が出ない/意味の取り違え。Yes/Noで答えられる質問・絵カード・ジェスチャーで意思疎通を図る。
  • 高次脳機能障害:注意障害・記憶障害・半側空間無視(左半分の食事を残す等)。本人の「やる気のなさ」と誤解しない。
  • 脳血管性認知症:階段状に進行する認知機能低下。脳血管性認知症として独立カテゴリで対応。
  • 抑うつ・脳卒中後うつ(PSD):発症後3〜6ヶ月でピーク。リハビリ意欲低下を見たら主治医・家族に共有。

介護職・看護師の観察ポイント

  • 毎日の血圧・脈拍:高血圧・心房細動の管理は再発予防の要。バイタルサインを欠かさず記録。
  • 抗凝固薬・抗血小板薬の服薬確認:ワーファリン・DOAC・アスピリン等は飲み忘れが再発に直結。服薬管理のルールに沿って確実に。
  • 転倒リスクの再評価:抗凝固薬服用中の頭部打撲は脳出血の危険があり、軽微でも報告。
  • 食事姿勢・嚥下機能:ムセ・声のガラガラ・食事時間の延長は誤嚥のサイン。喀痰吸引が必要なケースも視野に。
  • 再発の早期発見:FASTサインが再び出たら即救急。再発は初発より重症化しやすい。

脳梗塞についてよくある質問

Q1. 脳梗塞は何歳から増えますか?

50代から急増し、70代がピークです。厚労省「2020年患者調査」では脳血管疾患の患者の約7割が65歳以上。ただし若年性脳梗塞も全体の数%あり、年齢だけで除外はできません。

Q2. 介護施設の利用者で脳梗塞既往の方はどれくらいいますか?

特養・老健の入所者では既往者が3〜4割を占めるとされます。要介護4・5の最大原因が脳血管疾患である点からも、介護現場で最も頻繁に遭遇する基礎疾患のひとつです。

Q3. 心房細動と脳梗塞の関係は?

心房細動があると、心房内でできた血栓が脳に飛んで「心原性脳塞栓症」を起こします。心房細動の人は脳梗塞リスクが約5倍とされ、抗凝固薬(DOAC・ワーファリン)の継続が再発予防の鍵です。

Q4. 後遺症は完全に治りますか?

発症後3〜6ヶ月が機能回復のゴールデンタイムとされ、その後も継続的なリハビリで改善は見込めます。ただし完全に元通りになるケースは限定的で、多くは残存機能を活かす生活再構築が必要です。

Q5. 介護職が脳梗塞の前兆に気付いたらまず何をしますか?

FASTを30秒で確認し、1つでも当てはまれば施設の看護師に即報告、不在時は直接119番通報。発症時刻のメモと、本人が普段服用している薬(特に抗凝固薬)の情報を準備して救急隊に渡します。

まとめ

脳梗塞は脳の血管が詰まって脳細胞が壊死する病気で、要介護4・5の最大原因です。介護現場では、後遺症(片麻痺・嚥下障害・失語・脳血管性認知症)への日常ケアと、再発予防のための血圧・服薬・転倒管理が二本柱になります。「FAST」サインを30秒で判定できる目を介護職・看護師全員が持ち、いつもと違う様子を見たらためらわず119番——この初動が利用者の人生を左右します。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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