認知症の親の通院付き添い|病院での過ごし方と付き添えない時の選択肢
ご家族・ご利用者向け

認知症の親の通院付き添い|病院での過ごし方と付き添えない時の選択肢

認知症の親の通院付き添いを担う家族向けに、診察前の準備リスト、待合室での不穏・トイレ対応、医師に伝えるべきBPSDの記録、付き添えない時の介護タクシー・通院等乗降介助(99単位)の選び方を解説。厚労省の院内介助通知に基づき自治体ごとの算定可否も整理しました。

ポイント

この記事のポイント

認知症の親の通院付き添いでは、家族が「症状の通訳」と「服薬・診察記録の補完者」を担う必要があります。診察前に直近2週間の症状メモ・服薬リスト・保険証一式を準備し、待合室では本人の不穏を避けるため見える位置に座って早めにトイレ誘導することが基本です。付き添えない時は介護タクシーや訪問介護の通院等乗降介助(1回99単位)が利用でき、要介護1以上であればケアマネに相談することで利用調整できます。

目次

「もの忘れ外来の予約日が近づくと、何を伝えればいいのか、待ち時間にどう過ごせばいいのか不安になる」——認知症の親を持つご家族から多く寄せられる声です。認知症の方は短期記憶の低下や見当識障害により、自分で症状を医師に正確に伝えることが難しくなります。診察の数分間で医師が把握できる情報には限りがあり、家族の補足なしでは適切な治療方針を立てるのが難しい場面も少なくありません。その役割を引き受けるのが、付き添う家族の最も大切な仕事です。

本記事では、診察前日までに揃えておく持ち物リスト、待合室で不穏が起きた時の落ち着かせ方、医師に伝えるべきBPSD(行動・心理症状)の記録方法、そして家族が付き添えない場合に使える介護タクシーと訪問介護の通院等乗降介助について、厚生労働省の通知や介護報酬告示を参照しながら整理します。仕事や遠距離介護で毎回付き添うのが難しい方も、介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせれば負担を軽くしながら通院を継続できます。

認知症の親の通院に家族が付き添う3つの意義

認知症が中等度以上に進行すると、ご本人が一人で受診を完結することは難しくなります。家族の付き添いには次の3つの役割があり、いずれも他のスタッフが代替しにくい家族ならではの機能です。

1. 症状の「通訳」——医師に伝わる言葉に翻訳する

「最近、夜中に何度も起きてしまう」「冷蔵庫の中の物を腐らせるようになった」——日常生活の小さな変化は、ご本人ではなく一緒に暮らす家族にしか見えません。BPSD(認知症の行動・心理症状)と呼ばれる徘徊・興奮・幻覚・抑うつなどは、診察室の数分間では医師が観察できないことがほとんどです。家族が「いつから/どんな場面で/どのくらいの頻度で」起きているかを記録して伝えることで、医師は薬の調整や非薬物療法の方針を立てられます。

2. 服薬・診察内容の補完——指示を持ち帰る

認知症の方は、医師の説明を聞いた直後でも内容を忘れてしまうことがあります。「次回は1か月後」「この薬は食後に必ず」「水分は1日1.5リットル」といった指示が抜け落ちると、治療計画そのものが崩れます。付き添う家族がメモを取り、お薬手帳に貼っておくことで、デイサービスや訪問介護のスタッフとも情報共有ができます。

3. 心理的な安全基地——不安を最小化する

見慣れない医療機関、知らないスタッフ、長い待ち時間。認知症の方にとって診察は強いストレスです。家族が隣にいることそのものが「ここは安全な場所だ」という非言語のメッセージになり、不穏や受診拒否の予防につながります。とくに初診や脳画像検査の日は、ご本人の不安が高まりやすいため、可能な限り家族が同行することが推奨されます。

通院前の準備——前日までに揃える持ち物と情報

当日のあわただしさを避けるため、診察前日には次の4カテゴリを揃えておきます。とくに認知症の場合は、ご本人が「保険証はどこ?」と探し回って疲れてしまうことがあるため、家族が事前に1つのバッグにまとめておくのが安全です。

本人確認・保険関係(必ず携帯)

  • 健康保険証(後期高齢者医療被保険者証)
  • 診察券
  • 介護保険被保険者証(医療機関連携が必要な時に提示)
  • 限度額適用認定証(高額療養費が見込まれる時)
  • マイナンバーカード(マイナ保険証として利用する場合)
  • 身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳(交付済みの場合)

服薬・既往歴の情報

  • お薬手帳(複数医療機関分を1冊にまとめておく)
  • 現在服用中の薬の実物(OTC・サプリ含む。種類が多いときは持参を推奨)
  • これまでの既往歴・手術歴のメモ
  • アレルギー情報(薬剤・食物)

症状記録(家族が事前に作成する)

これが認知症の通院で最も重要です。記憶障害や言語の混乱で、ご本人が直近の症状を正確に語れないため、家族が日付入りの記録を持参します。最低でも以下の項目を、診察日の2週間前から書き留めておくと診察がスムーズです。

  • BPSDの具体的な場面(例:「5月10日21時、夫が帰ってこないと玄関で30分泣いた」)
  • 生活機能の変化(食事量、排泄、入浴、睡眠時間)
  • 体調の変化(発熱、咳、転倒、けが、体重)
  • 薬の副作用が疑われる症状(眠気、ふらつき、便秘、食欲低下)
  • 家族の介護負担で増えてきたこと(夜間対応の回数、家事の代行範囲)

当日に持っていく実用品

  • 飲み水・少量のおやつ(待ち時間用、誤嚥リスクがあれば医師に相談済みのもの)
  • 使い慣れたタオル・ハンカチ
  • 常用するメガネ・補聴器・杖・歩行器
  • 替えのパッド/紙パンツ(必要な場合)
  • 本人が落ち着く小物(家族の写真、馴染みのある手ぬぐいなど)

診察予約の時間にも工夫があります。認知症の方は午前中の方が見当識が安定していることが多く、午後になると疲労や夕暮れ症候群で不穏になりやすいので、可能なら午前の早い時間帯を予約します。

待合室での過ごし方と医師への伝え方

認知症の通院で家族が最も体力を消耗するのは、診察そのものよりも「待合室での1〜2時間」と「医師との5〜10分」です。それぞれで使える具体的な対処を整理します。

待合室での過ごし方

座る場所の選び方

出入口・トイレ・受付の3か所が視界に入る位置を選びます。徘徊や席を立つ行動が出やすい方は、壁を背にしたソファ席を確保すると安心です。テレビや掲示物が刺激になり不穏を誘発することがあるため、刺激が少ない奥のコーナーがあれば優先します。

長時間待ちへの対処

「あと何分?」「もう帰る」と言い出した時に備え、次の3点を用意しておきます。第一に時間の見える化です。スマートフォンで現在の待ち番号と自分の番号を見せて「あと3人」と具体的に伝えると、抽象的な「もう少し」より受け入れられやすくなります。第二に注意のそらし方です。馴染みの写真アルバム、好きな曲を小さな音量で流せるイヤホン、簡単な手作業(タオルたたみなど)が役立ちます。第三に休憩の選択肢です。同じ建物内のカフェや屋外ベンチに一度出て、外気に触れることで気分が変わることがあります。受付に「席を外す」と伝えておけば、順番が来た時に呼び出してもらえる病院も増えています。

トイレ誘導のタイミング

「行きたい」と本人が訴える前に、家族から30〜60分おきに声をかけます。「私もトイレに行きたいから一緒に行こう」と誘うと拒否されにくくなります。失禁の不安が強い方は、紙パンツや吸水パッドを事前に着用し、替えを持参すれば過度な水分制限を避けられます。

不穏発生時の落ち着かせ方

大声・怒鳴り・拒否が出た時、家族がやってしまいがちなのが「静かにして」と強い口調で制止することです。これは逆効果で、本人の不安を増幅させます。代わりに有効なのは、(1) 視線を合わせてゆっくりした口調で名前を呼ぶ、(2) 否定せずに「不安だよね」と感情をなぞる、(3) 一度待合室の外に出て静かな場所で5分過ごす、の3ステップです。看護師に声をかければ、別室や処置室の空きスペースで待たせてもらえる医療機関もあります。

医師に伝えるべき5つのトピック

診察時間は短いため、家族が話したいことを優先順位順にリスト化して紙に書いておくと、伝え漏れが防げます。とくに認知症外来では次の5項目が重要です。

  1. BPSDの具体的な場面:「徘徊が増えた」と抽象的に伝えるのではなく、「先週、夕方17時頃に玄関の鍵を開けて外に出ようとした。理由を聞くと『仕事に行く』と答えた」のように、時刻・状況・本人の言葉を引用します。
  2. 薬の副作用が疑われる症状:抗認知症薬や睡眠薬の開始・増量後に生じた変化(吐き気、ふらつき、興奮の増悪など)を時系列で伝えます。
  3. 生活機能の変化:食事の準備ができなくなった、入浴を嫌がる、トイレの場所がわからなくなる、など身体介護の必要度に直結する情報です。
  4. 家族の介護負担:「夜中に3回起きる」「目を離せない時間が長くなった」など、介護者側の限界も率直に伝えます。これによりショートステイや訪問看護の処方提案が受けられることがあります。
  5. 次回までの質問:受け答えを忘れる前提で、答えてほしい質問を3つ以内に絞って紙に書いて渡します。医師がメモに直接書き込んでくれる場合もあります。

診察中にご本人の前で介護負担や恥ずかしい症状を話したくない場合は、事前に紙にまとめて受付で渡しておく、もしくは診察の最後に「本人に席を外してもらってよいですか」と医師に伝える方法もあります。多くの認知症外来は家族のみの面談時間を設定することに慣れています。

付き添えない時の選択肢——4つのサービスを比較

仕事の都合、遠距離介護、家族の体調不良などで毎回付き添えないことは珍しくありません。介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせれば、家族の負担を軽くしながら通院を継続できます。主な4つの選択肢を整理します。

1. 介護タクシー(介護保険適用の通院等乗降介助)

介護タクシーは、運転手が介護職員初任者研修以上の資格を持ち、車椅子のまま乗降できる福祉車両を使う移送サービスです。介護保険を利用する場合の費用構造は次のとおりです。

  • 介護保険負担分:訪問介護の通院等乗降介助として、1回99単位(1割負担で約99円、地域単価により変動)。
  • 運賃:通常のタクシーメーター料金(介護保険対象外)。
  • 適用条件:要介護1〜5の認定があり、ケアマネジャーのケアプランに位置付けられていること。要支援・自立の方は介護保険適用外で、自費の介護タクシーや一般タクシーを利用します。

厚生労働省「介護給付費単位数表」によれば、通院等乗降介助は乗車前後の介助を含む一連のサービスとして算定され、目的地が複数の場合でも居宅が始点または終点であれば、病院間の移送に係る乗降介助も算定可能です。

2. 訪問介護の身体介護(通院介助)

院内での待ち時間や検査中、家族の代わりに介護職員に付き添ってもらう「院内介助」については、厚生労働省の事務連絡「訪問介護における院内介助の取扱いについて」(平成22年4月28日)が判断基準を示しています。原則として院内の介助は病院スタッフが行うべきとされていますが、以下のいずれかに該当する場合は例外的に介護報酬の算定対象となります。

  • 院内の移動に介助が必要な場合
  • 認知症その他のため、見守りが必要な場合
  • 排泄介助を必要とする場合

ただし算定の可否は各市区町村(保険者)の判断に委ねられており、ケアマネジャーがアセスメントを行い、サービス担当者会議で必要性を協議した上でケアプランに記載する必要があります。神奈川県・大阪市など多くの自治体が、医療機関に対し院内介助の体制があるか確認することを求めています。詳細はお住まいの市区町村の介護保険担当課にご確認ください。

3. 保険外の自費通院付き添いサービス

介護保険の枠を超えて柔軟に付き添ってほしい場合、看護師・介護福祉士による自費の付き添いサービスが選択肢になります。料金は事業者により異なりますが、おおむね1時間3,000〜6,000円、半日コースで15,000〜25,000円が相場です。介護保険と違い、検査前後の待機時間や複数医療機関の連続受診、買い物や食事介助との組み合わせなど、ケアプランに縛られない使い方ができます。要支援や自立の方、要介護でも通院頻度が高く介護保険の支給限度額を超えそうな方に向いています。

4. 家族・地域・ボランティアの活用

同居していない兄弟姉妹で当番制を組む、地域のボランティア送迎サービスを使うなど、フォーマルなサービス以外の選択肢もあります。市町村の社会福祉協議会では、有償ボランティアによる「住民参加型在宅福祉サービス」として通院送迎を提供している地域があり、1時間500〜800円程度で利用できる場合があります。地域包括支援センターに問い合わせると、お住まいの地域で利用できるサービスを紹介してもらえます。

選択肢の使い分けの目安

状況第一選択補足
要介護1以上・近隣の医療機関介護タクシー+訪問介護の通院介助ケアマネ調整・最も低コスト
要介護1以上・遠方の専門病院家族同行+介護タクシー(運賃のみ)長時間の付き添いは家族で
要支援または自立自費の付き添いサービス介護保険の制限を受けない
家族が遠距離・頻回受診自費付き添い+オンライン診療の併用かかりつけ医と相談

独自分析——通院乗降介助99単位の実利用状況と院内介助の自治体差

厚生労働省「介護給付費等実態統計」(令和4年4月審査分)によれば、訪問介護全体の単位数のうち、通院等乗降介助が占める割合はわずか0.53%、件数ベースで1.60%にとどまっています(出典:訪問介護資料、社保審介護給付費分科会第220回)。身体介護が62.24%、生活援助が9.68%を占める中で、通院介助の利用率は驚くほど低い水準です。

この低い利用率の背景には、利用調整の複雑さがあります。当サイトが厚生労働省公表の自治体別Q&A(横浜市、神奈川県藤沢市、大阪市、大阪府羽曳野市、大阪府枚方市、宮城県柴田町など)を比較したところ、院内介助の算定可否について自治体ごとに次のような差があることが分かりました。

  • 横浜市:病院スタッフで対応できないことの確認と、サービス担当者会議での協議・記録が必須。主治医の文書は不要。
  • 神奈川県藤沢市:医療保険で提供されるべきサービスと位置付け、原則は病院側との事前調整を要求。
  • 大阪市:(1)利用者の心身状況、(2)医療機関の院内介助体制の有無、(3)担当者会議での判断——の3要件を文書化することを求める。
  • 大阪府枚方市:医師への確認は不要だが、医事課・看護部での院内介助対応不可の確認経緯(時刻・担当者・内容)を居宅サービス計画に記載することを義務化。

この自治体差は、家族が「同じ介護保険なのになぜうちの地域は使えないと言われるのか」と混乱する原因にもなっています。実際の利用を検討する際は、ケアマネジャーに「お住まいの市区町村で、認知症による見守りを理由にした院内介助の算定実績があるか」を必ず確認することが、トラブル回避のポイントです。

認知症の付き添いコストを試算する

仮に月2回、要介護2の方が地域単価10円の自治体で通院した場合の自己負担(1割)を試算すると、通院等乗降介助1回99単位×2回=198単位(約198円相当の1割負担)に加え、院内介助が認められれば身体介護30分以上1時間未満396単位×2回が加わります。介護保険負担分のみでは月1,000円前後で収まりますが、運賃(介護タクシー料金)は別途5,000〜10,000円程度かかるのが一般的です。自費の付き添いサービス(月2回、半日コース)の場合は30,000〜50,000円が相場のため、まずは介護保険サービスの利用可否をケアマネに確認することで負担を大きく減らせる可能性があります。

認知症の親の通院付き添い——よくある質問

Q1. 受診を強く拒否する時はどうすればいいですか?

「健康診断のついでに」「ご近所の◯◯さんも行っている」など、認知症の診察と直結しない切り口で誘うと心理的ハードルが下がります。嘘で連れて行くのは一度は成功しても、その後の通院継続を困難にするためおすすめできません。どうしても来院が難しい場合は、訪問診療や地域包括支援センターの相談員を介した間接的アプローチを検討してください。

Q2. 待ち時間に本人が席を離れて見失わないか不安です。

受付に「認知症の付き添いです、目を離せないので席を空ける時は連絡します」と一言伝えておくと、スタッフも気にかけてくれます。GPS機能付きのキーホルダーやスマートフォンのファミリーアプリで位置情報を共有しておくと安心です。徘徊歴がある方は、自治体の認知症SOSネットワークへの事前登録も検討してください。

Q3. 介護タクシーは予約の何日前までに頼めますか?

事業者によりますが、定期通院は1〜2週間前、急ぎでも前日までの予約が一般的です。月1回以上の通院がある方は、ケアマネジャー経由で同じ事業者と継続契約しておくと、毎回の手配が簡単になります。

Q4. 医師に「家族の負担も限界」と伝えるのは申し訳ない気がします。

むしろ伝えるべき重要情報です。家族の介護負担は、薬の調整・訪問介護の増回・ショートステイ利用などの治療方針決定に直接影響します。「介護がつらい」「夜眠れない」と率直に話すことが、結果としてご本人のケアの質を上げます。

Q5. 通院介助で訪問介護を使うと、他のサービスの時間が削られませんか?

通院等乗降介助は、訪問介護の支給限度額の範囲内で計算されます。要介護2であれば月19,705単位(地域単価10円換算で約197,050円相当)の枠があり、通院乗降介助99単位×月2回程度であれば、ほかの生活援助や身体介護の時間を大きく削ることなく組み込めます。具体的な配分はケアマネジャーが調整します。

Q6. 遠方に住んでいて毎回付き添えません。何から始めればいいですか?

まず地域包括支援センターに相談し、ケアマネジャーが付いていない場合は介護保険の認定状況を確認します。すでにケアマネがいる場合は、ケアマネ・主治医・本人を交えたサービス担当者会議で「家族が遠距離のため通院付き添いを外部化したい」と相談すれば、訪問介護事業所と介護タクシー事業者の組み合わせを設計してくれます。

参考文献・出典

まとめ——付き添いは「翻訳」と「設計」の役割

認知症の親の通院付き添いで最も重要なのは、家族が完璧に毎回同行することではなく、(1) 医師に正確に症状を伝えるための「翻訳」、(2) 付き添えない時のサービスを「設計」する、この2つの仕事です。

翻訳の質を上げるためには、日頃から症状と生活機能の変化を日付入りで記録し、診察当日は優先順位順に整理した紙のメモを準備します。BPSDの場面は時刻・状況・本人の言葉を引用するレベルで具体化することがコツです。曖昧な「最近、徘徊が増えた」という表現と、「先週水曜の17時、玄関の鍵を開けて出ようとし、理由を聞くと『仕事に行く』と答えた」という記録では、医師が選べる薬物・非薬物の介入方針が変わります。診察前に家族のメモを医師に渡しておけば、限られた診察時間でもポイントを押さえた相談が可能です。

設計の質を上げるためには、ケアマネジャーと相談しながら、介護タクシー・訪問介護の通院介助・自費の付き添いサービスを場面に応じて使い分けます。要介護1以上であれば、通院等乗降介助(1回99単位)の介護保険適用で大幅にコストを抑えられます。月2回程度の定期通院であれば、ケアプランに組み込んでも他の身体介護・生活援助の時間を圧迫しません。

院内介助の算定可否は自治体によって判断が分かれるため、ケアマネジャーに「お住まいの市区町村で認知症を理由とした院内介助が認められた実績はあるか」を最初の打ち合わせで確認しておくと、後日のトラブルを避けられます。横浜市・大阪市・大阪府枚方市など、自治体が公表しているQ&Aを事前に確認してケアマネに相談すれば、ケアプラン作成もスムーズに進みます。

そして何より、家族がすべてを背負わずに、制度と人に頼る前提で通院体制を組み立てることが大切です。地域包括支援センター、ケアマネジャー、訪問看護ステーション、医療ソーシャルワーカー、社会福祉協議会のボランティアコーディネーター——どこに相談すればいいか分からないときは、まずお住まいの市区町村の地域包括支援センターに電話するのが第一歩です。家族が倒れない通院体制を組み立てることが、結果としてご本人の医療継続と家族自身の介護うつ予防の両方につながります。

監修者

介護のハタラクナカマ 医療・介護監修チーム

医療・介護専門職チーム(看護師/介護福祉士/ケアマネジャー)

看護師介護福祉士ケアマネジャー

訪問看護・介護保険・医療保険に関する制度内容を、厚生労働省・日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会等の一次ソースをもとに、医療・介護専門職チームが内容の正確性を確認しています。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護保険、施設選び、在宅介護など、介護を受ける方・ご家族が判断に迷いやすいテーマを、公的情報と実務上の確認ポイントに沿って解説しています。

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