経口維持加算とは

経口維持加算とは

経口維持加算とは、特養・老健・介護医療院などで、摂食嚥下機能が低下した入所者に多職種で経口維持計画を立てる加算。経口維持加算(I)400単位/月、(II)100単位/日の単位数、ミールラウンド・誤嚥防止配慮など算定要件を厚生労働省資料に基づき解説します。

ポイント

この記事のポイント

経口維持加算とは、特別養護老人ホーム(特養)・介護老人保健施設(老健)・介護医療院・地域密着型特養などの介護保険施設で、摂食嚥下機能が低下しているが経口摂取を継続できる入所者に対し、多職種で「経口維持計画」を立てて支援する場合に算定できる加算です。経口維持加算(I)は400単位/月経口維持加算(II)は100単位/月(計画作成日から6か月以内)が単位数で、(I)は医師・歯科医師の指示の下に多職種が共同して観察・会議・計画を行うこと、(II)は(I)に加えてミールラウンドに医師・歯科医師・歯科衛生士・言語聴覚士のいずれかが参加することなどが算定要件です。

目次

経口維持加算の定義と目的

経口維持加算は、嚥下機能が低下した入所者に対して、できるだけ口から食べ続けることを多職種で支える取り組みを評価する介護報酬上の加算です。「食べる楽しみ」というQOLの根幹を守ると同時に、誤嚥性肺炎の予防・低栄養の予防・経管栄養への移行を遅らせるという臨床的目的があります。

対象施設

  • 介護老人福祉施設(特養)
  • 地域密着型介護老人福祉施設(地域密着型特養)
  • 介護老人保健施設(老健)
  • 介護医療院
  • 介護療養型医療施設(経過的サービス)

なお、通所系・居宅系のサービスは別途栄養改善加算口腔機能向上加算などが用意されています。

対象となる入所者

原則として、医師の判断により摂食機能障害を有し誤嚥が認められる入所者のうち、医師・歯科医師の指示の下、適切な栄養管理を行うことで経口摂取を維持できる方が対象です。VE(嚥下内視鏡検査)またはVF(嚥下造影検査)によるアセスメントが望ましいとされ、加算(I)(II)の要件にも組み込まれています。

加算(I)と(II)の単位数・算定要件

経口維持加算は、要件の重さに応じて2区分が設けられています。両者は同時算定可能です。

区分 単位数 主な要件
経口維持加算(I)400単位/月医師・歯科医師の指示の下、多職種(医師・管理栄養士・看護職員・介護支援専門員・介護職員等)共同で食事観察・会議を行い、経口維持計画を作成。原則6か月、6か月以降も誤嚥防止上必要な場合は継続可
経口維持加算(II)100単位/月加算(I)の要件に加え、食事の観察(ミールラウンド)に医師・歯科医師・歯科衛生士・言語聴覚士のいずれか1名以上が参加すること(食事観察会議に協力歯科医療機関等の参加でも可)

5つの前提条件

厚生労働省告示「指定居宅サービス等の人員、設備及び運営に関する基準」および算定告示で示される、経口維持加算共通の前提条件は次の5つです。

  1. 通所介護費等算定方法第13号に該当しないこと
  2. 入所者の摂食・嚥下機能が医師により適切に評価されていること(VE/VFの実施または医師の臨床的判断)
  3. 誤嚥が起こった場合の管理体制が整備されていること(緊急時対応マニュアル等)
  4. 食べやすく工夫した食事提供(とろみ・刻み・ソフト食等)など誤嚥防止のための配慮がなされていること
  5. 医師・管理栄養士・看護職員・介護支援専門員・その他の職種による協働体制が整っていること

2024年度介護報酬改定での見直し

2024年度介護報酬改定では、現場の手続き負担軽減と算定促進を目的に、計画書様式の簡素化や、協力医療機関との連携要件の明確化などの見直しが行われました。算定率は依然として全特養の3〜4割程度(厚生労働省介護給付費等実態統計調査)にとどまり、加算取得を経営課題に掲げる施設が増えています。

算定までの流れ

経口維持加算(I)(II)を算定するには、入所者ごとに以下のプロセスが必要です。

ステップ 内容
1. 医師の評価摂食嚥下機能を医師が評価。VE/VFの実施または同等の臨床判断
2. 多職種カンファレンス医師・歯科医師・管理栄養士・看護職員・介護支援専門員・介護職員らで現状と課題を共有
3. 経口維持計画書の作成食形態・とろみ調整・体位・摂食方法・観察ポイント・目標を記載
4. 計画に基づくケア提供計画に従って食事介助・観察・記録を実施。本人・家族同意を得る
5. ミールラウンドの実施食事場面を多職種で観察。加算(II)は医師・歯科医師・歯科衛生士・STのいずれか参加
6. 月次評価と計画の見直し毎月のカンファレンスで効果と課題を評価。必要に応じて計画を更新

加算は原則として計画作成日から6か月を1サイクルとし、6か月以降も誤嚥防止上特に必要があると認められる場合は継続可能です。LIFE(科学的介護情報システム)への情報送信は経口維持加算自体には必須ではありませんが、口腔・栄養関連他加算と組み合わせて科学的介護を進める動きが広がっています。

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現場での実務ポイント

  • 食事観察会議は短くてよい:30分程度で要点を絞り、議事録テンプレを使って効率化する
  • 協力歯科医療機関と契約する:加算(II)のミールラウンドに歯科医師・歯科衛生士の参加が必要。協力歯科医との定期訪問契約を結ぶ施設が多い
  • 言語聴覚士(ST)配置は強み:常勤STがいる施設は加算(II)算定が容易。非常勤やリハ職派遣の活用も可能
  • 介護職の観察記録を活用:日々の食事介助での「むせ」「咳込み」「食事時間」「残量」を統一フォーマットで記録し、月次会議の根拠資料にする
  • 家族との合意形成:経口維持か経管栄養かは本人・家族の意思決定に深く関わるため、ACP(人生会議)の文脈で丁寧に説明する
  • 口腔機能向上加算と栄養マネジメント強化加算と併用:口腔・栄養領域の3本柱として、施設全体の口腔・栄養ケアの質を底上げできる

経口維持加算に関するよくある質問

Q. 経口維持加算(I)と(II)は同時に算定できますか?

A. はい、同時算定可能です。加算(II)は加算(I)の要件に追加要件を満たした場合に上乗せで算定するため、両方を算定すると1人あたり月500単位(I 400+II 100)となります。

Q. 算定期間に上限はありますか?

A. 原則として計画作成日から6か月を1サイクルとしていますが、6か月以降も誤嚥防止上特に必要であると医師が判断した場合は継続して算定できます。継続する場合も多職種カンファレンスと計画見直しは月1回行います。

Q. 介護職の役割は何ですか?

A. 介護職は食事場面で最も近くにいる職種として、ミールラウンド前の食事観察、計画に基づく食事介助、むせ・咳・残量・食事時間の記録、家族への日常状況の伝達などを担います。多職種カンファレンスへの参加も求められます。

Q. 摂食・嚥下機能の評価はVE/VFが必須ですか?

A. VE(嚥下内視鏡検査)またはVF(嚥下造影検査)の実施が望ましいとされていますが、医師の臨床的判断のみでも算定可能です。協力医療機関と連携して、必要に応じて検査を依頼する運用が現実的です。

Q. 経管栄養に切り替えた場合は算定できなくなりますか?

A. 経口摂取を維持するための加算ですので、完全に経管栄養(胃ろう・経鼻胃管)へ移行した場合は算定対象外となります。なお、経管栄養から経口摂取に戻す取り組みを行う場合は、別途経口移行加算(28単位/日)が用意されています。

参考文献・出典

関連する詳しい解説

まとめ|「食べる楽しみ」を多職種で支える加算

経口維持加算は、特養・老健・介護医療院などで摂食嚥下機能が低下した入所者の経口摂取を多職種で支える取り組みを評価する介護報酬上の加算です。(I) 400単位/月(II) 100単位/月の2区分があり、後者はミールラウンドへの医師・歯科医師・歯科衛生士・言語聴覚士のいずれかの参加を要件とする上乗せ加算となっています。

誤嚥性肺炎の予防、低栄養の予防、そして「食べる楽しみ」というQOLを守る取り組みは、介護職・看護職・栄養士・リハ職・歯科職など多職種の協働なしには成立しません。算定率はまだ全国平均で3〜4割と伸び余地が大きく、協力歯科医療機関との連携、ST(言語聴覚士)の活用、介護職の観察記録の標準化が、加算取得と現場のケアの質向上に直結します。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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