全労連、ケア労働者の5/31労働相談ホットライン|介護・看護・保育の賃上げ機運を集約

全労連、ケア労働者の5/31労働相談ホットライン|介護・看護・保育の賃上げ機運を集約

全国労働組合総連合は2026年5月31日、ケア労働者向けの一斉労働相談ホットライン(0120-378-060)を開催。介護報酬改定6月施行前日に合わせ、賃上げ・労働条件への声を集め高市首相・厚労省へ届ける。

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全国労働組合総連合(全労連)は2026年5月31日(日)10時~19時、フリーダイヤル0120-378-060で「ケア労働者のための全国一斉労働相談ホットライン」を実施する。翌6月1日に診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬のトリプル改定(介護報酬は+2.03%、うち処遇改善+1.95%)を控える前日に、医療・介護・福祉・保育の現場の声を集約し、高市首相・厚生労働省への政策要望に活かす。介護職員と全産業の月額賃金差は依然として約8万円とされ、相談員は労働組合の専門家。読者の介護職にとっては、職場の労働条件を見直し、組合加入や個別相談の窓口として活用できる機会となる。

目次

解説動画

2026年6月1日、診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の「トリプル改定」が施行される。介護報酬は12年ぶりに6月施行となる臨時改定で、改定率はプラス2.03%、うち1.95%が処遇改善加算の拡充に充てられる。訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援などこれまで処遇改善加算の対象外だったサービスにも対象が拡大し、介護従事者全体に月額1.0万円の賃上げが見込まれる構造だ。

その施行前日にあたる5月31日(日)、全国労働組合総連合(全労連)は医療・介護・福祉・保育などのケア労働者を対象とした全国一斉労働相談ホットラインを開設する。フリーダイヤル0120-378-060に全国どこからでも無料で電話でき、メイン会場(東京・全労連会館)と全国の相談センターで、ケア労働者の労働条件に詳しい労働組合の専門家が対応する。

本記事では、(1)ホットラインの実施詳細と参加団体、(2)全労連がデータで示す賃金格差と過酷な労働実態、(3)読者である介護職にとってこのホットラインがどんな意味を持つのか、(4)処遇改善加算拡充と公定価格論争の現在地、という4つの視点から整理する。介護現場で働く方にも、利用者・家族として制度を見守る方にも、ケア労働の処遇改善という「自分ごと」の論点を立体的にとらえる手がかりとしてほしい。

ケア労働者ホットラインの実施詳細と参加7組織

実施日時とフリーダイヤル番号

全労連が公式サイトで公表している実施詳細は以下のとおり。

  • 実施日:2026年5月31日(日)
  • 受付時間:10時~19時
  • 電話番号:フリーダイヤル0120-378-060(全国どこからでも無料、秘密厳守)
  • 対象:医療・介護・障害福祉・保育などケア領域で働く労働者
  • 相談内容:賃金、人員不足、ハラスメント、夜勤、労働組合の結成、雇用契約、母性保護など労働に関する悩み全般

メイン会場は東京都文京区湯島の全労連会館で、全国にも相談センターが設けられる。会場数は全労連公式ページに「全国30会場で受付」「2026年4月28日現在で全国29箇所」と表記があり、追加・調整を経て約30会場体制となる見込みだ。当日対応できなかった相談者向けに、平日(月~金、10時~17時)の電話相談や、24時間365日受付のメール相談も同フリーダイヤルやウェブサイトで案内されている。

ホットラインを担う参加7組織

今回のホットラインは、全労連と以下7つの加盟組織の共同事業として運営される。各組織がそれぞれの専門分野で相談員を出し合う構成だ。

  1. 日本医療労働組合連合会(日本医労連)
  2. 全国福祉保育労働組合(福祉保育労)
  3. 日本自治体労働組合総連合(自治労連)
  4. 全労連・全国一般労働組合
  5. 全国生協労働組合連合会(全国生協労連)
  6. 全日本建設交運一般労働組合(建交労)
  7. 全国農業協同組合労働組合連合会(全農協労連)

医療法人や介護事業所、社会福祉法人、保育所、ヘルパー事業、生協・農協系の介護事業所まで、業態をまたいだ幅広いケア現場の労働相談に応じられる体制となっている。

「ケア労働者に絞ったホットラインは全労連として初」

2026年4月30日に都内で開かれた記者会見で、全労連の黒澤幸一事務局長は「全労連がケア労働者に対象を絞ったホットラインを開くのは今回がはじめて」と述べ、「大変な状況にあるケア労働者の皆さんに労働組合につながっていただきたい。組合につながることで解決できることはたくさんある」と意義を強調した。診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の3つが同時改定される歴史的な節目に、現場の生の声を集めて政策議論に反映させる狙いがある。

賃金格差・夜勤・母性保護――データで見るケア労働の現実

春闘賃上げ回答:製造業1万2842円に対し社会福祉・介護は5649円

全労連がまとめた2026年春闘の産業別賃上げ回答(4月9日現在、加重平均)では、ケア労働の賃上げ水準が他産業と大きく開いていることが示された。

  • 製造業:1万2842円
  • 卸売・小売業:1万322円
  • 医療:6050円
  • 社会福祉・介護:5649円

製造業の半分以下にとどまる水準で、全労連は「介護職の賃金は他産業平均に比べて月額で約8万円も低い状態が続いている」と指摘する。厚生労働省の資料でも、介護職員と一般労働者の平均賃金差は月8万円規模と確認されており、賃金水準そのものの底上げが急務となっている構造だ。

夜勤実態調査:2交替16時間以上が47.5%、勤務間インターバル8時間未満が39.1%

日本医労連が2025年に実施した夜勤実態調査によれば、2交替制勤務の病棟では、心身へのリスクが高いとされる「16時間以上の長時間夜勤」が47.5%に上った。また、次の勤務までの休息時間(勤務間インターバル)が8時間未満というケースも39.1%存在し、疲労を回復しないまま勤務を続ける実態が浮き彫りになっている。

同調査に関連して、米沢哲書記長は会見で「看護職員の入職者が減り、退職者が増えた」と回答した医療機関が半数を超え、年間の採用者数を退職者数が上回った施設が6割弱に達したことを明らかにした。「人がいないことは、患者・利用者さんに対するサービスの低下につながる」と述べ、入院患者の入浴回数の削減やおむつ対応の増加といった事例にも言及した。

女性労働者の流産経験率は看護師27.9%、保育士25.2%

全労連の寺園通江事務局次長(女性部事務局長)は会見で、過酷な労働環境が女性労働者に与える影響として、流産を経験した割合が看護師で27.9%、保育士で25.2%、ケア労働者全体で23.9%と他職種に比べて高い傾向にあると報告した。長時間夜勤、人手不足による休暇の取りづらさ、母健連絡カード(妊娠中の女性労働者の体調に応じた措置を求める書類)が「知らされていない」「使わせてもらえない」といった現場の実態が背景にあるという。

2025年春闘の成果:福祉保育労は96職場で月額平均1万2000円超のベースアップ

全労連は「賃金が上がらない」ことを訴える一方で、組合交渉の具体的な成果も示している。福祉保育労によれば、2025年春闘では公定価格が引き上げられた保育職場を中心に96職場で月額平均1万2000円を超えるベースアップを実現し、最大で月額3万2000円のベースアップを勝ち取った職場もあるという。組合交渉は「公定価格の引き上げ」と「事業所内の賃金改善」をつなぐ重要な経路として機能していることがうかがえる。

読者の介護職にとってホットラインをどう使えるか

「組合のない職場」で働く人こそ活用できる無料相談

介護現場の多くは事業所単位での労使関係であり、特に中小の介護事業所や訪問介護事業所、グループホームなどでは事業所内に労働組合がないケースが大半だ。「組合のない職場」で働く介護職にとって、ホットラインは外部の労働問題の専門家に無料・匿名で相談できる数少ない窓口になる。賃金未払い、夜勤手当の計算、未消化の有給休暇、就業規則と実態のズレ、ハラスメントなど、職場の上司・経営者には相談しにくいテーマもフリーダイヤルで持ち込める。

当日(5月31日)の時間帯に都合がつかなくても、同フリーダイヤルでは平日10~17時の電話相談、24時間365日のメール相談も継続している。「いきなり組合に加入するつもりはないが、自分の働き方が法的にどうなのか知りたい」というレベルの問い合わせでも構わない。相談はあくまで秘密厳守で、相談したことが事業所に通知されることはない。

処遇改善加算が「自分の手取り」にどう反映されているかを確認する機会

2026年6月施行の臨時改定では、介護職員等処遇改善加算が拡充され、訪問看護・訪問リハビリ・居宅介護支援等にも対象が広がる。介護従事者全体に月額1.0万円、生産性向上等に取り組む事業所の介護職員は最大で月額1.9万円相当の処遇改善が見込まれる構造だ。

ただし、加算は「事業所に交付される報酬」であって、自動的に従業員一人ひとりの賃金に上乗せされるわけではない。事業所が処遇改善計画書をどう作成し、対象職員にどの程度配分しているかによって、実際の手取りへの反映は大きく変わる。自分の事業所の処遇改善加算の取得区分・配分計画・実績報告書がどうなっているかは、本来は職員にも開示・説明されるべき情報だ。「説明がないまま給与明細だけ渡されている」「処遇改善手当の金額に納得感がない」といった疑問は、ホットラインで相談できる典型的なテーマである。

組合加入は最終手段ではなく「選択肢の一つ」

ホットラインに電話することは、即座に組合に加入することを意味しない。相談員は労働組合の専門家だが、相談者の意思を尊重して情報提供のみで終わるケースも多い。一方で、相談を通じて「個人加盟の労働組合(ユニオン)に加入する」という選択肢が紹介されることもある。事業所単位の組合がなくても個人で加入できる労働組合は複数あり、団体交渉権を持つことで、賃金や労働条件の改善を経営側と協議できるようになる。

転職を視野に入れる前に、まずは現在の職場の労働条件を改善する経路を確認するという順序は、キャリアの安定性という観点でも合理的だ。「いまの職場の何が問題で、どの程度改善余地があるのか」を専門家と一緒に整理する場として、5月31日のホットラインを使う選択肢を持っておきたい。

公定価格論争の現在地と2027年度報酬改定への接続

処遇改善加算では届かない「基本給そのもの」の底上げ

全労連が今回のアクションで掲げる中心的な主張は、処遇改善加算の上乗せにとどまらず「全額公費でケア労働者の賃金を大幅に引き上げ、診療・介護報酬や公定価格を抜本的に見直す」という公定価格論である。記者会見でも、診療報酬改定率3.09%のうち賃上げに充てられるのは1.7%にとどまる点を「物価高騰を考慮すると不十分」と指摘した。介護報酬+2.03%のうち+1.95%が処遇改善という配分も、加算という仕組みの中で配分されるものであり、基本報酬そのものの引き上げではない。

加算は「取得した事業所」に交付されるため、未取得・低区分の事業所で働く職員には恩恵が届きにくい構造があり、産業横断的な「ケア労働の底上げ」には限界があるという見方が背景にある。今回のホットラインで集める声は、単発の相談対応で終わらず、「処遇改善加算頼みの賃上げ」の限界を示す根拠として政策議論に持ち込まれる可能性が高い。

2027年度本格改定議論への影響

2026年6月の臨時改定はあくまで暫定措置で、2027年度には3年に1度の本格改定が控える。本格改定では、介護報酬の単位数全体、サービスごとの基本報酬、複合的な加算体系の見直しが議題となる。臨時改定で「対象が拡大した処遇改善加算」を本格改定でどう本体報酬に組み込むか、ケアマネジャーや訪問看護師など今回新規対象となった職種の処遇をどう継続的に確保するか、が大きな論点だ。

全労連が「ケア労働者の声」を高市首相・厚労省に届ける募集期間を2026年1月~6月に設定しているのは、2027年度改定に向けた中医協・社会保障審議会介護給付費分科会の議論が本格化する時期に合わせている。利用者・家族の視点からも、ケア労働者が安定して働き続けられる賃金水準は「サービスの継続性」と直結する。人手不足で訪問介護事業所の休廃止が増えれば、最終的に介護を受けたい人が必要なサービスにアクセスできない事態を招くからだ。

労働組合の動きが介護現場の論調を作る

介護報酬改定や処遇改善加算をめぐる議論は、これまで主に事業者団体(全国老人福祉施設協議会、全国老人保健施設協会、日本介護支援専門員協会など)の要望書がメディアに大きく取り上げられてきた経緯がある。労働組合側からの「現場の労働者の声」が政策議論にどう反映されるかは、報酬改定の配分(処遇改善か基本報酬か、加算の対象範囲、生産性向上要件の運用)に直接影響する。

5月31日のホットラインは、単なる相談窓口の開設ではなく、ケア労働の処遇改善議論における労働組合側の発信力を可視化する機会でもある。読者の介護職にとっては、自身の労働条件の改善経路を確認する場であると同時に、自分の声が政策に反映されるルートに参加するきっかけにもなる。

まとめ

全労連が2026年5月31日(日)に実施する「ケア労働者のための全国一斉労働相談ホットライン」は、翌6月1日の診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬のトリプル改定前日というタイミングに設定され、フリーダイヤル0120-378-060で全国どこからでも無料で相談できる。介護報酬+2.03%(うち処遇改善+1.95%)の臨時改定で処遇改善加算が拡充される一方、製造業との春闘賃上げ格差や、長時間夜勤・流産経験率の高さといった構造的課題は残っており、組合側は「公定価格の抜本見直し」を主張し続けている。

読者の介護職にとって、ホットラインは「組合がない職場」で働く人が外部の専門家に無料・匿名で相談できる貴重な窓口である。処遇改善加算が自分の手取りに正しく反映されているか、夜勤手当・有給休暇・ハラスメントなど職場の労働条件に違和感はないかを、転職を考える前に専門家と整理してみる場として活用してみてほしい。ケア労働の賃上げ議論は2027年度の本格改定に向けて続いていく。自分の声が政策に届くルートを持っておくこと自体が、長く現場で働き続けるための一つの安全装置になる。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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