
嚥下機能向上加算とは
嚥下機能向上加算は、介護現場で誤嚥性肺炎を防ぐ口腔・嚥下ケアを評価する介護報酬加算の総称。経口維持加算・経口移行加算・口腔機能向上加算の単位数・算定要件・対象サービスを2026年最新版で解説します。
この記事のポイント
嚥下機能向上加算は、介護報酬上の正式名称ではなく、誤嚥性肺炎の予防や経口摂取維持を目的とした「経口維持加算」「経口移行加算」「口腔機能向上加算」の3つを指す通称です。それぞれ対象サービス・算定要件・単位数が異なり、多職種連携と言語聴覚士(ST)・歯科衛生士の関与が要件となっています。
目次
嚥下機能向上加算の全体像
「嚥下機能向上加算」は俗称で、介護現場では摂食・嚥下機能の維持・向上を評価する以下3つの加算を組み合わせて算定します。
3つの加算の位置づけ
- 経口維持加算:経口摂取中の入所者の誤嚥防止と栄養管理を評価(特養・老健・介護医療院)
- 経口移行加算:経管栄養から経口摂取への移行を支援(介護保険3施設)
- 口腔機能向上加算:通所系・居宅系で口腔機能改善を評価(デイサービス・デイケア・訪問系等)
背景:誤嚥性肺炎が高齢者死因上位
誤嚥性肺炎は高齢者の死因上位を占めるリスクであり、介護報酬での嚥下ケア評価は「重度化防止」「自立支援」の中核施策となっています。令和3年改定で算定要件が見直され、令和6年改定でも栄養・口腔・リハの一体的評価がさらに強化されました。
3つの加算の単位数と算定要件比較
経口維持加算(Ⅰ)(Ⅱ)
- 対象:特養・老健・介護医療院・地域密着型特養
- 単位数:(Ⅰ) 400単位/月、(Ⅱ) 100単位/月
- (Ⅰ) 要件:医師・歯科医師の指示のもと、医師・管理栄養士・看護職員・ケアマネジャー等が共同で食事観察・会議を実施、経口維持計画を作成
- (Ⅱ) 要件:(Ⅰ)算定に加え、医師・歯科医師・歯科衛生士・言語聴覚士のいずれかが食事観察・会議に参加
経口移行加算
- 対象:特養・老健・介護医療院
- 単位数:28単位/日(180日以内)
- 要件:医師の指示を受けた管理栄養士・栄養士が経口移行計画に基づき栄養管理を実施。経口維持加算と同時算定不可。
口腔機能向上加算(Ⅰ)(Ⅱ)
- 対象:通所介護・通所リハ・地域密着型通所介護・小多機・看多機・特定施設等
- 単位数:(Ⅰ) 150単位/回、(Ⅱ) 160単位/回
- 要件:言語聴覚士・歯科衛生士・看護職員を1名以上配置し、口腔機能改善管理指導計画を多職種で作成
- 算定回数:要支援1回/月、要介護2回/月まで
算定実務のポイント
1. 多職種会議の記録を残す
経口維持加算は「食事観察と多職種会議」が要件。日時・参加職種・観察結果・計画変更点を必ず記録に残しましょう。
2. 計画書の同意取得
経口維持計画・経口移行計画・口腔機能改善管理指導計画は本人または家族の同意取得が必須です。
3. 言語聴覚士・歯科衛生士の確保
(Ⅱ)区分を算定するにはSTまたは歯科衛生士の関与が要件。常勤雇用が難しければ協力歯科医療機関や訪問STとの連携が現実解です。
4. LIFEへのデータ提出
口腔機能向上加算(Ⅱ)はLIFEへのデータ提出とフィードバック活用が要件。栄養マネジメント加算と一体で運用するのが実務的です。
5. 重複算定不可に注意
経口移行加算と経口維持加算は同時算定できません。施設はどちらの算定が適切か個別に判断する必要があります。
嚥下機能ケアの効果データ
- 誤嚥性肺炎は高齢者死因の上位:肺炎死亡者の70%以上が75歳以上(厚労省 人口動態統計)
- 経口維持加算算定者は誤嚥性肺炎発症率が低下:複数の臨床研究で示唆
- 口腔ケア実施で発熱発症が約4割減:高齢者口腔ケア介入研究
- 経管栄養から経口移行成功率は約30〜40%:適切な評価・訓練・段階的食形態調整による
- 2026年診療報酬改定で栄養・口腔・リハ一体評価がさらに強化:包括期入院・外来でも嚥下機能評価が要件化
よくある質問
Q1. 「嚥下機能向上加算」は正式名称?
いいえ、正式な介護報酬の加算名ではありません。経口維持加算・経口移行加算・口腔機能向上加算をまとめて指す現場の通称です。
Q2. 介護職員ができることは?
食事観察・口腔ケア実施・体位調整・とろみ調整・記録が主な役割です。会議への参加と気づきの共有も重要です。
Q3. 言語聴覚士不在の施設は算定できない?
口腔機能向上加算(Ⅰ)・経口維持加算(Ⅰ)はSTなしでも算定可能です。(Ⅱ)区分には言語聴覚士または歯科衛生士の関与が必要です。
Q4. 算定すると施設はいくら増える?
経口維持加算(Ⅰ)は400単位/月=1人あたり約4,000円/月。30人算定なら月12万円の収入増です。
Q5. 同時算定できる加算は?
栄養マネジメント強化加算、口腔衛生管理加算、機能訓練加算等と組み合わせ可能。重複制限のある加算は告示で確認しましょう。
参考文献・出典
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」
- 厚生労働省「介護報酬改定 算定基準・解釈通知」
- 日本老年歯科医学会「介護保険施設等入所者の口腔衛生管理マニュアル」
- 厚生労働省「介護報酬告示・留意事項通知」
- 令和6年度介護報酬改定の主な事項について
まとめ
「嚥下機能向上加算」は経口維持加算・経口移行加算・口腔機能向上加算の通称で、誤嚥性肺炎予防と経口摂取維持を多職種で支える介護報酬加算です。多職種会議・計画書作成・言語聴覚士や歯科衛生士の関与・LIFE連携が(Ⅱ)区分の鍵となります。介護職は食事観察と口腔ケアの最前線として算定実績を支える存在です。2026年改定でも栄養・口腔・リハ一体評価がさらに強化されており、現場での重要性は高まり続けています。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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