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介護事業者の倒産が2年連続過去最多176件|賃上げの裏で進む淘汰と「潰れない施設」の見分け方

介護事業者の倒産が2年連続過去最多176件|賃上げの裏で進む淘汰と「潰れない施設」の見分け方

2025年の介護事業者倒産は176件で2年連続過去最多。訪問介護91件が突出し小規模事業者が中心。倒産の原因・データ分析と、転職者が「潰れない施設」を見分けるための独自チェックリストを解説。

ポイント

この記事のポイント

2025年の老人福祉・介護事業の倒産件数は176件で2年連続過去最多を更新しました(東京商工リサーチ調べ)。業態別では訪問介護が91件と突出。倒産事業者の約8割は資本金500万円未満、約9割は従業員10人未満の小規模事業者です。主な原因は人手不足・物価高・介護報酬のマイナス改定の三重苦。これは「介護業界の衰退」ではなく「小規模事業者の淘汰と業界再編」であり、転職者にとっては経営基盤の安定した施設を選ぶ重要性がかつてなく高まっています。

「介護業界は人手不足で求人が多い。だから安泰」——こう考えている方に、一つの現実をお伝えしなければなりません。2025年の介護事業者の倒産件数は176件で2年連続の過去最多を記録しました。コロナ前の2019年(111件)と比べて約6割の増加です。

介護のニーズは確実に増えているのに、事業者が次々と倒産する。この一見矛盾した状況の裏には、介護業界の構造的な課題が潜んでいます。特に訪問介護の倒産が91件と突出しており、2024年度の報酬マイナス改定が追い打ちをかけた形です。

転職先を選ぶ際、「求人があるから大丈夫」と安心してはいけません。勤めた施設が突然倒産すれば、利用者だけでなく職員の生活も直撃します。未払い賃金、突然の失業、次の職場が見つかるまでの空白期間——こうしたリスクは事前の施設選びで大幅に減らせます。この記事では、倒産データの詳細分析から「なぜ潰れるのか」を解き明かし、当サイト独自の視点で「潰れない施設」を見分けるための7つのチェックリストをお伝えします。

倒産データの全貌|176件の内訳と特徴

東京商工リサーチの調査(2026年1月発表)に基づく詳細データです。数字の裏にある構造を理解することが、転職先選びの第一歩です。

全体像

項目2025年前年比
倒産件数176件+2.3%(約4件増、2年連続過去最多)
コロナ前(2019年)比—+58.6%(111件→176件、約6割増)

業態別の内訳——訪問介護の突出ぶりが鮮明

業態件数前年比特徴
訪問介護91件+12.3%3年連続最多更新。全体の過半数を占める
通所介護(デイサービス)約30〜40件—利用者減・稼働率低下が原因
有料老人ホーム約20件—建設費高騰・入居者確保の競争激化
その他(グループホーム等)約15〜25件——

訪問介護の倒産91件は全体の51.7%を占め、圧倒的に突出しています。訪問介護は初期投資が小さいため参入障壁が低く、小規模事業者が乱立しやすい一方、ヘルパー不足とコスト増の影響を最も受けやすいビジネスモデルです。

倒産事業者のプロフィール——「零細・小規模」に集中

  • 資本金500万円未満:約8割——資本力の弱い零細事業者がほとんど
  • 従業員10人未満:約9割——ヘルパー数名で回す小規模訪問介護に集中
  • 売上不振が原因:140件(全体の約8割)——ヘルパー不足でサービス提供件数が減少し、売上が立たない悪循環
  • 人手不足関連の倒産:29件(過去最多)——「利用者の依頼はあるがスタッフがいない」状態が常態化

データから浮かび上がるのは、「小規模・零細の訪問介護事業者」に倒産が集中し、大手・中堅の施設型サービスは堅調という二極化の構図です。介護業界全体が危険なのではなく、経営体力のない事業者が淘汰されている構造変化と捉えるべきです。

なぜ介護事業者は潰れるのか|3つの構造的原因

なぜ介護のニーズが増えているのに事業者が倒産するのか。その背景には3つの構造的な原因があります。

原因1:人手不足で「サービスが提供できない」——売上直結の致命傷

介護事業者にとって最大の経営リスクは「人手不足」です。ヘルパーが確保できなければサービスの提供件数が減り、売上が直撃します。特に訪問介護は1件あたりの報酬が小さく(身体介護30分で約2,500円)、ヘルパーの数=売上という構造です。ヘルパーが3人辞めれば、その分の売上がそのまま消滅します。

人手不足関連の倒産は29件で過去最多を記録しており、「利用者の依頼は来るのにスタッフがいなくて断るしかない」という状態が常態化しています。断れば利用者は他の事業所に流れ、さらに売上が減るという悪循環に陥ります。

原因2:物価高による運営コストの上昇——「公定価格」の宿命

ガソリン代、食材費、光熱費、消耗品費——あらゆる運営コストが上昇しています。特に訪問介護では、ヘルパーが利用者宅を回るためのガソリン代や車両維持費が大きな負担です。一般企業なら商品価格に転嫁できますが、介護報酬は国が定める「公定価格」のため値上げは不可能。コスト増がそのまま利益を直撃する構造です。

当サイトの試算では、ガソリン代が1リットルあたり30円上昇した場合、1日5件の訪問を行うヘルパー1人あたり月約3,000〜5,000円のコスト増になります。10人のヘルパーを抱える事業所なら月3〜5万円。年間では36〜60万円の利益圧迫です。零細事業者には耐えがたい額です。

原因3:2024年度介護報酬改定の「逆説」——賃上げと経営悪化の同時進行

2024年度の介護報酬改定では、訪問介護の基本報酬が引き下げられました。一方で、処遇改善加算は拡充され職員の賃金は上がる設計です。しかしここに矛盾があります。処遇改善加算は「職員の賃金に充てる」ことが条件であり、事業所の運営費(家賃、通信費、車両費など)には使えません。

つまり「賃上げの原資は増えたが、事業運営の原資(基本報酬)は減った」という状況です。大規模法人はスケールメリットでコストを吸収できますが、資本金500万円未満の零細事業者にとっては「賃上げはしなければならないが、売上は増えない」という致命的なジレンマに陥ります。これが小規模訪問介護の倒産を加速させた最大の要因です。

これは「衰退」ではなく「淘汰と再編」|転職者が正しく理解すべきこと

介護業界の淘汰と再編を表すイメージイラスト

倒産件数の過去最多更新を聞くと「介護業界は危ない」と感じるかもしれません。しかし当サイトは、この現象を「業界の衰退」ではなく「小規模事業者の淘汰と業界再編」と分析しています。転職を考えている方にこそ、冷静な理解が必要です。

ポイント1:介護の需要は減るどころか急増している

2025年には団塊の世代全員が75歳以上になり、2040年には高齢者人口がピークに達します。介護サービスの需要は今後15〜20年にわたって増え続けることが確実です。需要が増えているのに事業者が倒産するのは、「市場の縮小」ではなく「経営力の弱い事業者が市場から退出している」ということです。飲食業界でもチェーン店が伸びる一方で個人店の廃業が増える現象と構造は同じです。

ポイント2:大手・中堅法人はむしろ成長している

倒産が集中しているのは資本金500万円未満・従業員10人未満の零細事業者です。一方で、複数施設を運営する大手・中堅法人は、以下の戦略でむしろ事業を拡大しています。

  • スケールメリット:本部機能(人事・経理・採用)を集約し、運営コストを削減
  • ICT投資:記録のデジタル化、見守りセンサー導入で業務効率を向上
  • 外国人材の活用:特定技能の外国人スタッフを組織的に受け入れ、教育体制も整備
  • 処遇改善:加算を最大限に活用し、職員の給与水準を引き上げて人材を確保

業界全体が沈んでいるのではなく、「勝ち組」と「負け組」の二極化が急速に進んでいるのが現実です。

ポイント3:転職者にとっては「施設選びの重要性」がかつてなく高まった

当サイトの最も重要なメッセージは、「どの施設で働くか」の選択がかつてなく重要になったということです。経営基盤が脆弱な事業者に入職してしまうと、以下のリスクがあります。

  • 突然の閉鎖:倒産通知から1ヶ月で閉鎖というケースも。次の就職先を探す時間的余裕がない
  • 未払い賃金:倒産した事業者の場合、最終月の給与や退職金が支払われないリスク
  • 利用者への罪悪感:自分が担当していた利用者が突然サービスを受けられなくなる精神的負担

逆に、経営が安定した法人を選べば、処遇改善の恩恵を受けながら長期的なキャリアを築けます。2026年6月の介護報酬臨時改定でさらなる賃上げが予定されており、安定した法人ほどその恩恵を職員に還元できる体力があります。「求人があるから大丈夫」ではなく、「その求人を出している施設の経営は大丈夫か」まで見る目が、これからの介護転職では不可欠です。

「潰れない施設」を見分ける7つのチェックリスト

転職先の介護施設の経営安定性をチェックするイメージイラスト

転職先の経営安定性を事前にチェックする方法を、当サイト独自の視点でまとめました。面接・見学・求人票の段階で確認できる項目ばかりです。

  • ①運営法人の規模と形態を確認する:社会福祉法人・医療法人・大手民間企業は倒産リスクが相対的に低い。個人事業主や資本金の小さい株式会社は経営体力に不安がある場合も。法人名を検索して企業情報を確認しよう
  • ②複数施設を運営しているか:1施設のみの単独運営より、複数施設を持つ法人の方がリスク分散されている。1施設の稼働率が下がっても他施設でカバーできる経営構造
  • ③求人が年中出ていないか:常に求人を出し続けている施設は、離職率が高いか人員計画ができていない可能性。これは経営不安定の兆候にもなり得る。求人サイトで過去の掲載履歴をチェック
  • ④処遇改善加算の取得レベル:処遇改善加算にはI〜IVのランクがある。最上位の加算を取得している施設は、キャリアパス制度・研修体制・職場環境の整備が進んでいる証拠。求人票に記載されていることが多い
  • ⑤施設の築年数と設備投資:建物が老朽化しているのにリフォームされていない、設備が古いまま——こうした施設は投資余力がない可能性。見学時に建物の状態を確認しよう
  • ⑥ICT・DXへの投資状況:記録のデジタル化、見守りセンサー、インカム(トランシーバー)などICTに投資している施設は、経営余力と先進性がある。「介護記録は手書きですか?タブレットですか?」と聞くだけで判断材料になる
  • ⑦面接で経営方針を聞く:「今後の事業計画はありますか?」「新しいサービスの展開予定は?」「処遇改善についてどのように考えていますか?」——明確なビジョンを持ち、前向きに投資している法人は経営が安定している傾向

当サイトの独自見解として、特に注意すべきは「給料が不自然に高い求人」です。経営が苦しい施設が人を集めるために一時的に高い給料を提示するケースがあります。その給料が持続可能かどうかを、法人の規模・歴史・加算取得状況から総合的に判断してください。「相場より2〜3万円高い」場合は、なぜ高いのかを面接で率直に聞いてみましょう。正当な理由(夜勤手当込み、資格手当充実など)があればOKですが、明確な説明がない場合は要注意です。

参考文献・出典

  • [1]
    2025年「老人福祉・介護事業」の倒産状況- 東京商工リサーチ

    倒産176件の詳細データ・業態別内訳

  • [2]
    介護事業者の倒産動向- 日本経済新聞

    倒産の背景分析・報酬改定の影響

  • [3]
    介護人材確保の現状について- 厚生労働省

    介護人材の需給推計・人手不足の現状

安定した施設で長く働くために

介護事業者の倒産増加は不安なニュースですが、裏を返せば「経営が安定した施設を選べば、長く安心して働ける」ということです。淘汰が進む今だからこそ、残った「強い施設」は処遇改善と教育体制に力を入れており、転職者にとっては良い環境に出会いやすい時期とも言えます。

当サイトの「介護の働き方診断」では、あなたの希望条件に合った施設タイプをご提案します。大手法人の安定性を重視するか、中規模施設のアットホーム感を重視するか。収入か、働きやすさか、キャリアアップか——まずは3分の診断であなたに合った環境を見つけてください。

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まとめ|「潰れない施設」を選ぶ目を持とう

介護事業者の倒産が2年連続過去最多を更新した2025年。しかしこの数字に過度に悲観する必要はありません。正しく理解し、正しく対策すれば、むしろ今は「良い施設」に出会えるチャンスです。

この記事のポイント:

  • 2025年の介護事業者倒産は176件で2年連続過去最多。訪問介護91件が突出し全体の過半数
  • 倒産の約8割は資本金500万円未満の小規模・零細事業者に集中。大手・中堅法人はむしろ成長中
  • 原因は人手不足・物価高・報酬マイナス改定の三重苦。特に訪問介護は「ヘルパー数=売上」の構造が致命的
  • これは「介護業界の衰退」ではなく「淘汰と再編」。需要は確実に増加しており、経営力のある法人に人材と利用者が集約される健全な過程
  • 転職者は「求人があるから安心」ではなく「経営基盤は安定しているか」まで確認すべき時代。施設の倒産は職員の生活も直撃する
  • 「給料が不自然に高い求人」は要注意。経営難の施設が人材確保のために一時的に高待遇を提示するケースがある
  • 「潰れない施設」の見分け方:法人規模・複数施設運営・処遇改善加算のレベル・ICT投資状況・経営ビジョンの明確さの7項目をチェック

介護の仕事は、社会にとって絶対に必要な仕事です。2040年まで需要が増え続けるこの業界で、長く安心してキャリアを築くためには、「どこで働くか」の選択が決定的に重要です。「給料の高さ」だけでなく「経営の健全性」も見る目を持ち、安定した法人で着実にスキルを積み上げていきましょう。

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公開日: 2026年3月27日最終更新: 2026年3月27日

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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