
ストーマケアとは
ストーマケアは人工肛門・人工膀胱(ストーマ)の装具交換や皮膚管理を行う排泄ケア。2011年厚労省通知で介護職員も条件付きで装具交換が可能。本記事では業務範囲・観察ポイント・連携方法を解説。
この記事のポイント
ストーマケアとは、手術で腹部に造設された人工肛門(コロストミー・イレオストミー)や人工膀胱(ウロストミー)から排泄物を受け止めるための装具交換、皮膚観察、洗浄などの一連の排泄ケアを指します。2011年の厚生労働省通知により、ストーマおよび周囲の状態が安定している場合は、装具交換は原則として医行為に該当せず、医師・看護師との連携のもとで介護職員も実施できます。
目次
ストーマとストーマケアの全体像
ストーマ(stoma)はギリシャ語で「口」を意味し、医療現場では消化管や尿路を体外に誘導するために腹部に造設された排泄口を指します。大腸がん、膀胱がん、潰瘍性大腸炎、クローン病などの治療で大腸・小腸・尿路の一部を切除した際、便や尿の出口を新たに腹部に作るのがストーマで、永久的なものと一時的なものがあります。
ストーマには括約筋がないため排泄を意図的にコントロールできず、装具(パウチ)と呼ばれる袋を肌に貼り付けて排泄物を受け止める必要があります。装具は皮膚保護剤(面板)と排泄物を溜めるストーマ袋で構成され、定期的な交換と排泄物の廃棄、皮膚トラブルの観察が欠かせません。これら一連のケアを総称してストーマケアと呼びます。
ストーマケアの主な内容
- 装具(パウチ・面板)の交換
- パウチ内の排泄物の廃棄
- ストーマ周囲の皮膚洗浄と観察
- 装具からの漏れ・においへの対応
- 食事・水分・運動などの生活指導
- ストーマ周囲のスキントラブル(びらん・発赤・潰瘍)の早期発見と看護師への報告
ストーマ保有者は「オストメイト」と呼ばれ、日本オストミー協会の推計では国内に約20万人以上が生活しており、高齢化に伴い在宅・施設での介護現場で対応する場面が増えています。
介護職員が行えるストーマケアの範囲
2011年7月5日付の厚生労働省医政局医事課長通知(医政医発0705第3号)と、令和6年度に整備された「原則として医行為ではない行為に関するガイドライン」により、介護職員が実施できる行為と医療職に委ねるべき行為が整理されています。
介護職員が実施できる行為
- ストーマおよび周囲の状態が安定している場合の、肌に密着した装具(皮膚保護機能のある面板付き)の交換
- パウチ内の排泄物の廃棄
- パウチ周囲の皮膚の清拭・洗浄
- 装具交換時の体位保持などの介助
- 食事や水分摂取に関する一般的な声かけ
介護職員は実施できず医師・看護師に委ねる行為
- ストーマ周囲に発赤・びらん・出血・潰瘍などの皮膚トラブルがある場合の装具交換
- 術後間もない不安定な時期の装具交換
- ストーマ自体の処置(粘膜の損傷対応など)
- 面板のサイズ調整やストーマの状態評価
- 感染兆候や脱出・陥没など異常時の対応判断
介護職員が装具交換を行う場合でも、医師または看護師と密接に連携し、状態が安定していることの確認と、異常時の連絡体制を整えておくことが必須条件です。
ストーマの種類と特徴
ストーマは造設部位によって性質が異なり、ケアの注意点も変わります。介護現場で対応する際は、利用者がどの種類のストーマを保有しているかを把握しておくことが重要です。
| 種類 | 造設部位 | 排泄物の性状 | ケアの主な留意点 |
|---|---|---|---|
| コロストミー(結腸ストーマ) | 大腸(結腸) | 有形〜半固形便 | 排便のタイミングがある程度予測しやすい。皮膚トラブルは比較的少ない |
| イレオストミー(回腸ストーマ) | 小腸(回腸) | 水様〜泥状便 | 消化酵素を含む便で皮膚障害が起きやすい。脱水にも注意 |
| ウロストミー(尿路ストーマ) | 尿管・回腸導管 | 尿(持続的に排出) | 常時排尿のため夜間用蓄尿袋を併用。尿路感染のリスク |
装具交換の基本手順と観察ポイント
装具交換は3〜4日に1回程度が目安ですが、漏れや皮膚トラブルがある場合は早めに行います。介護職員が実施する場合の基本的な流れは以下の通りです。
装具交換の流れ
- 手洗い・手指消毒、使い捨て手袋の着用
- 古い装具をゆっくり剥がす(皮膚を傷つけないよう剥離剤を使用)
- ストーマ周囲を微温湯と石けんで優しく洗浄し、しっかり水分を拭き取る
- ストーマの大きさ・色・出血の有無、周囲皮膚の状態を観察
- 面板をストーマサイズに合わせ、皺なく密着させる
- 装具からの漏れがないかを確認
- 使用済み装具は便を処理してから、自治体の区分に従って廃棄
観察すべき異常サイン
- ストーマの色が暗赤色・紫色・黒色に変化している
- ストーマからの持続的な出血
- ストーマ周囲に発赤・びらん・水疱・潰瘍がある
- 装具が頻繁に漏れる
- 排泄物の急激な性状変化や量の異常
- 発熱・腹痛などの全身症状
これらの兆候を発見した場合は装具交換を中止し、すみやかに看護師・医師へ報告します。
現場で押さえたい配慮ポイント
- プライバシーへの配慮:装具交換は排泄に直結するケアのため、個室や仕切りで視線を遮る
- においへの対応:消臭剤やパウチに入れる消臭ジェルを活用し、利用者の心理的負担を減らす
- 入浴・シャワー:装具を着けたまま入浴可能。湯温と入浴時間に注意し、剥がれの有無を確認
- 服装の工夫:パウチが目立たない衣類選びや、専用の腹帯を使うことで外出への抵抗感が減る
- 災害時の備え:予備の装具を最低1週間分ストックし、避難袋に入れておく
- 本人のセルフケア支援:可能な限り本人が自分で交換できるよう、見守りと声かけを優先する
ストーマケアに関するよくある質問
Q. 介護職員が装具交換を行うのに資格は必要ですか?
A. 法的に必須の資格はありませんが、医師または看護師から手技指導を受け、利用者ごとの状態に応じた手順書を整備することが求められます。日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会が「介護サービス担当者のためのストーマケア講習会」を開催しており、受講が推奨されます。
Q. ストーマ周囲の皮膚が赤くなっていたら装具交換できますか?
A. 介護職員は実施せず、看護師に判断を委ねます。発赤・びらん・出血などがある場合は「専門的管理が必要な状態」とみなされ、装具交換は医行為に該当する可能性があります。
Q. 装具からの漏れが頻発する場合の対応は?
A. 面板のサイズが合っていない、皮膚の凹凸に密着していない、面板を貼ってから時間が経ち過ぎているなどが原因です。看護師に相談し、装具の種類変更や貼付方法の見直しを行います。
Q. ストーマ装具の費用負担はどうなりますか?
A. 永久ストーマの保有者は身体障害者手帳(膀胱・直腸機能障害)の交付対象となり、日常生活用具給付制度により装具費用の助成を受けられます。市区町村窓口で申請が必要です。
まとめ
ストーマケアは人工肛門・人工膀胱を持つ利用者の生活の質を支える重要な排泄ケアです。2011年通知と令和6年度ガイドラインにより、状態が安定したストーマであれば介護職員が装具交換に関わる道が開かれていますが、実施には医師・看護師との連携と異常時の連絡体制が前提となります。皮膚トラブルや出血など異常サインを見逃さず、迷ったときは必ず医療職に相談する判断力が、安全なストーマケアの基本です。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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