特定地域とは

特定地域とは

介護保険における特定地域とは、過疎地・中山間地などで都道府県が指定し、人員配置基準の緩和や訪問介護の定額報酬を可能にする新スキーム。指定要件・基準緩和・包括報酬の3点を介護職向けに整理。

ポイント

特定地域の答え

特定地域とは、介護保険法改正案(2026年4月3日閣議決定)で新設される枠組みで、都道府県が指定する過疎地・中山間地・人口減少地域のことです。指定された地域では、人員配置基準の緩和や、訪問介護への定額報酬導入など、現行制度と異なるサービス類型「特定地域居宅サービス」が選択できるようになります。施行は2027年(令和9年)4月の予定です。

目次

特定地域の3つのポイント

特定地域とはどんな仕組みか

特定地域は、人口減少と高齢化が進む中で「介護サービスの空白地帯」が広がる過疎地・中山間地でも事業所運営を可能にするために設計された制度です。2026年4月3日に閣議決定された介護保険法等改正案で創設され、施行は2027年4月の予定。2025年7月末時点で訪問介護事業所が一つもない自治体が全国82町村に達し、訪問介護事業者の倒産件数が2025年に91件で3年連続の過去最多になった深刻な事業所減少が背景です。

1. 指定要件(誰が、どこを指定するか)

特定地域は都道府県が市町村の意向を踏まえて指定します。範囲は中山間・人口減少地域として、現行の「特別地域加算」の対象地域(厚生労働大臣告示で定められた離島・過疎地域など)を基礎に、人口減少状況を勘案して設定される方向です。市町村の一部エリアだけを切り出す指定も可能で、対象は居宅サービスに加え施設サービスや居宅介護支援も含まれる見込みです。

2. 人員配置基準の緩和

特定地域では、事業所・施設の人員配置基準・常勤専従要件・夜勤要件を緩和できる仕組みが導入されます。複数の事業所で職員を兼務させたり常勤要件を弾力化したりすることで、限られた人材でもサービスを継続できる現実的な運営を可能にします。

3. 訪問介護への定額(包括)報酬導入

もっとも大きな変化は、訪問介護に月単位の定額報酬が選択肢として加わる点です。現行の訪問介護報酬は身体介護・生活援助ごとの「出来高払い」で、件数が少ない過疎地では収入が安定しません。特定地域では、利用者数や提供時間にかかわらず月額で報酬が支払われる包括評価を選べるようになり、事業所の経営を安定させながらサービス維持を図れる設計です。

特別地域加算との違い

「特別地域加算」と「特定地域」の違い

名前が似ているため混同しやすいですが、両者は別の制度です。特別地域加算は、離島や過疎地で訪問介護などを提供した際に報酬を15%上乗せする現行の加算制度。一方、特定地域は2027年度から新設されるサービス類型そのもので、人員配置基準の緩和や定額報酬の導入まで踏み込んだ包括的な仕組みです。

項目特別地域加算(現行)特定地域(新設)
位置づけ報酬上の加算(15%上乗せ)新サービス類型(特定地域居宅サービス等)
指定者厚生労働大臣告示都道府県
人員基準通常基準のまま緩和可能(夜勤・常勤専従要件含む)
訪問介護報酬出来高+15%月額定額報酬を選択可
施行すでに運用中2027年4月予定

特定地域は、特別地域加算の対象地域を「土台」にしつつ、報酬体系と人員基準を抜本的に見直す制度設計と理解するとわかりやすいです。

介護職への影響

介護職員にとってのインパクト

特定地域の創設は、過疎地で働く介護職員の働き方に直結します。

  • 兼務しやすくなる:常勤専従要件の緩和で、訪問介護とデイサービスの掛け持ちや複数事業所での勤務が可能になります。
  • 夜勤体制の柔軟化:施設の夜勤要件緩和により、近隣施設との合同夜勤や応援運用が検討対象になります。
  • 事業所の経営安定で雇用維持:訪問介護の月額定額報酬は、利用者数の少ない過疎地で事業所が黒字を保つ鍵。倒産が減れば、その地域で働き続けられる介護職員も増えます。

特定地域のFAQ

よくある質問

Q. 特定地域はいつから運用されますか?
A. 介護保険法等改正案は2026年4月3日に閣議決定されており、施行は2027年(令和9年)4月の予定です。詳細な指定要件と運用ルールは2026年度中に告示や省令で示される見込みです。
Q. どの地域が指定されますか?
A. 中山間・人口減少地域として、特別地域加算の対象地域を基礎に都道府県が指定する見込みです。市町村単位ではなく、一部エリアだけの指定もありえます。
Q. 訪問介護の定額報酬はすべての事業所に適用されますか?
A. いいえ、特定地域に指定されたエリアの事業所が選択できる仕組みです。現行の出来高払いと月額定額報酬のどちらでも事業所が選べる設計が想定されています。
Q. 特定地域と地域包括ケアシステムは何が違いますか?
A. 地域包括ケアシステムは全国共通のビジョン、特定地域は過疎地での事業所運営ルールを別建てで定める制度です。

まとめ

特定地域は、過疎地・中山間地でも介護サービスを維持するため2027年度から新設されるサービス類型です。都道府県による指定人員配置基準・夜勤・常勤専従要件の緩和訪問介護への月額定額報酬という3つの柱で構成され、特別地域加算とは別の包括的制度として運用されます。最終的な運用ルールは2026年度中に告示や省令で示される見込みです。

この用語に関連する記事

慢性腎臓病・透析の親を在宅で支える|食事制限・通院・経済支援と介護保険

慢性腎臓病・透析の親を在宅で支える|食事制限・通院・経済支援と介護保険

高齢の親が慢性腎臓病・透析になったら家族はどう支えるか。透析療法3種類の選び方、食事制限とサルコペニア対策、通院送迎の負担軽減、特定疾病療養受療証や自立支援医療の経済支援、介護保険との併用、ACP(透析中止判断)まで医療専門家監修で解説。

介護後のグリーフケア|看取り・施設入居後の喪失感と自分の人生の立て直し方

介護後のグリーフケア|看取り・施設入居後の喪失感と自分の人生の立て直し方

長年の介護を終えた家族が直面する介護ロス・燃え尽き・予期悲嘆・複雑性悲嘆の正体と、死別後の心と体の変化、専門相談先(精神科・グリーフカウンセラー・よりそいホットライン)、家族会・遺族会、看取り後の事務手続き、人生再構築までを在宅介護のはじめ方ピラー視点で解説します。

家族でできる着替え介助|立位・座位・寝たまま・片麻痺の手順と自立支援

家族でできる着替え介助|立位・座位・寝たまま・片麻痺の手順と自立支援

在宅で家族が着替え介助を行う方法を、立位・座位・寝たまま・片麻痺の状態別に解説。脱健着患の原則、ワンタッチ介護服や自助具、洗濯と腰痛対策、訪問介護・OT連携まで、本人の自立と尊厳を守る実践ガイド。

親ががんと診断されたら|在宅療養を支える緩和ケア・痛みのコントロール・家族の準備

親ががんと診断されたら|在宅療養を支える緩和ケア・痛みのコントロール・家族の準備

親ががんと診断されたご家族向けに、診断告知後の対応、緩和ケアと痛みのコントロール、在宅療養の整え方、介護保険・経済支援、看取りまでの準備を、国立がん研究センター・厚労省の情報をもとに体系的に解説します。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。