
とろみ調整食品(増粘剤)とは
とろみ調整食品(増粘剤)は飲み物や食事にとろみをつけ誤嚥を防ぐ食品。デンプン系・グアーガム系・キサンタンガム系の違い、学会分類2021のとろみ3段階、溶かし方のコツと入れすぎのリスクを解説。
とろみ調整食品の定義
とろみ調整食品(増粘剤、とろみ剤)とは、飲み物や食事に加えて適度なとろみをつけ、飲み込むスピードをゆるやかにして誤嚥(食べ物や飲み物が気管に入ること)を防ぐための食品です。水やお茶などのサラサラした液体は喉を速く通過するため、嚥下機能が低下した高齢者ではむせや誤嚥の原因になります。とろみをつけることで喉を通る速度を抑え、安全に飲み込めるよう補助します。
目次
とろみ調整食品の概要と役割
とろみ調整食品とは何か
とろみ調整食品は、少量を液体や食事に溶かすだけでとろみをつけられる粉末状の食品です。医薬品ではなく食品に分類され、介護施設や病院、在宅介護の現場で広く使われています。サラサラの液体は口からのどへ流れ込む速度が速く、飲み込む反射(嚥下反射)が間に合わずに気管へ入り込みやすくなります。とろみをつけて流れる速度をゆるめることで、のどの奥でまとまりを保ち、誤嚥やむせを防ぐのが主な役割です。
使う対象は、水やお茶でむせやすい人、嚥下機能が低下した高齢者、脳卒中後や神経難病で嚥下障害のある人などです。とろみの濃さは一人ひとりの嚥下機能に合わせて調整する必要があり、濃ければよいというものではありません。適切な濃さを見極めるために、後述する日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「学会分類2021(とろみ)」が共通の物差しとして使われています。
とろみ調整食品の3つの原料タイプ
原料による3タイプの違い
とろみ調整食品は主原料によって性質が異なり、大きく3世代に分けられます。現在の主流は第3世代のキサンタンガム系です。
- デンプン系(第1世代):とろみが早くつくものの、必要量が多く、唾液に含まれる消化酵素アミラーゼによって時間とともに粘度が下がる欠点があり、現在ではほとんど使われていません。
- グアーガム系(第2世代):少量でとろみがつきますが、ダマになりやすく、べたつきや豆のような風味が出やすいため、飲み物にはあまり向きません。
- キサンタンガム系(第3世代・主流):透明感があり、無味無臭で付着性が低く、べたつきが少ないのが特徴です。粘度が安定するまでの時間が短く、唾液の影響も受けにくいため、現在の製品の中心になっています。
学会分類2021のとろみ3段階
日本摂食嚥下リハビリテーション学会は「学会分類2021(とろみ)」で、とろみの濃さを「薄いとろみ」「中間のとろみ」「濃いとろみ」の3段階に定めています。これは施設や在宅の間でとろみの濃さを共通の言葉で伝えるための基準で、粘度(mPa・s)に加え、装置がなくても判定できるラインスプレッドテスト(LST値)とシリンジ法の残留量が示されています。
| 段階 | 粘度 | LST値 | シリンジ法残留量 | 目安の性状 |
|---|---|---|---|---|
| 薄いとろみ | 50〜150 mPa・s | 36〜43 mm | 2.2〜7.0 ml | ストローで簡単に吸える。飲むと口の中に広がる |
| 中間のとろみ | 150〜300 mPa・s | 32〜36 mm | 7.0〜9.5 ml | スプーンですくえ、まとまりやすい。ストローは抵抗あり |
| 濃いとろみ | 300〜500 mPa・s | 30〜32 mm | 9.5〜10.0 ml | スプーンですくって食べる。ストローは不向き |
どの段階が適切かは嚥下機能によって異なり、言語聴覚士(ST)や医師・看護師の評価に基づいて決めるのが基本です。
とろみ調整食品の溶かし方のコツ
溶かし方のコツとダマ・粘度変化への対処
とろみは加え方の手順で仕上がりが大きく変わります。基本の流れは次の通りです。
- 先に液体を用意し、そこへとろみ調整食品を加えます。粉に液体を注ぐのではなく、液体に粉を入れるのが基本です。
- ダマにならないよう、加えた直後に短時間ですばやくかき混ぜます。
- 約5分ほど置いて粘度が安定するのを待ってから提供します。キサンタンガム系はとろみがつくまでに少し時間がかかるため、混ぜてすぐに追加投入すると入れすぎになりがちです。
ダマを防ぐポイント:液体の温度・塩分・pHによって粘度のつき方が変わります。牛乳やスープ、酸味のある飲み物はとろみがつきにくかったり分離しやすかったりするため、飲み物の種類ごとに使用量の目安を決めておくと安定します。
時間経過での変化:とろみは混ぜた直後よりも数分後に強くなります。安定を待たずに「まだ薄い」と感じて追加すると、後から濃くなりすぎることがあるため、規定量を入れて時間を置く順序を守ることが大切です。
とろみ入れすぎのリスクと注意点
入れすぎのリスクと使い方の注意
とろみは「濃いほど安全」ではありません。濃くしすぎると、かえって危険になる場合があります。
- のどへの残留・付着:粘度が高すぎると口の中やのどの粘膜に残り、べたつきや残留感が出ます。のどに残った分が後から気管へ流れ込み、誤嚥や窒息につながる危険があります。
- 飲み込みにくさ・水分不足:濃すぎると飲みにくくなり、飲む量が減って脱水を招くことがあります。
- 個別評価が前提:適切な濃さは人によって違います。自己判断で濃くせず、嚥下機能の評価に基づいて段階を選びます。
- 提供直前に作る:作り置きは分離や粘度変化を起こすため、飲む直前に用意するのが安全です。
必要最小限の量で、その人に合った段階のとろみをつけることが、誤嚥予防と安全な水分摂取の両立につながります。
とろみ調整食品のよくある質問
よくある質問
- とろみ調整食品と嚥下調整食は同じものですか。
- 異なります。とろみ調整食品は飲み物などにとろみをつける「粉末の食品」で、嚥下調整食は飲み込みやすく形を整えた「食事そのもの」の分類です。とろみ調整食品は嚥下調整食を作る道具の一つと位置づけられます。
- どのくらいの濃さにすればよいですか。
- 学会分類2021の薄い・中間・濃いの3段階から、その人の嚥下機能に合わせて選びます。濃さは言語聴覚士や医師・看護師の評価に基づいて決めるのが基本で、自己判断で濃くしすぎないことが大切です。
- 牛乳やジュースにもとろみはつきますか。
- つきますが、牛乳や酸味のある飲み物はとろみがつきにくかったり分離しやすかったりします。飲み物ごとに使用量の目安を変え、少し長めに時間を置くと安定します。
- ダマができてしまうのはなぜですか。
- 粉に一度に多く加えたり、混ぜ方が遅かったりするとダマになります。液体に粉を加え、直後にすばやく混ぜ、数分置くのがコツです。
- 味は変わりますか。
- 主流のキサンタンガム系は無味無臭で、飲み物の味をほとんど変えません。グアーガム系は風味が出やすいため飲み物には向きません。
とろみ調整食品の参考資料
- [1]
- [2]
- [3]
- [4]
とろみ調整食品のまとめ
まとめ
とろみ調整食品(増粘剤)は、飲み物や食事にとろみをつけて誤嚥を防ぐ食品です。主流はキサンタンガム系で、無味無臭・べたつきが少なく扱いやすいのが特徴です。とろみの濃さは学会分類2021の薄い・中間・濃いの3段階を物差しに、その人の嚥下機能に合わせて選びます。液体に粉を加えてすばやく混ぜ、数分置いて安定させるのが基本で、濃すぎるとのどへの残留や窒息のリスクが高まるため、必要最小限の量で適切な段階に整えることが安全なケアの鍵になります。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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