
肺炎球菌ワクチンは高齢者の肺炎・死亡を防ぐか
高齢者への肺炎球菌ワクチン接種が市中肺炎・侵襲性感染症・死亡リスクをどこまで減らすか、コホート研究・RCT・メタ解析の一次データで確認。誤嚥性肺炎への効果の限界、2026年度の定期接種変更、介護現場での接種歴確認の意義まで解説。
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結論:肺炎球菌ワクチンの効果と限界
結論から言うと、高齢者の肺炎球菌ワクチンは「肺炎球菌が原因の重い感染症」を減らす効果がはっきり確認されている一方で、「肺炎全体」を防ぐ効果は研究によって大きく割れています。
肺炎球菌が血液や髄液にまで入り込む重い感染症(侵襲性肺炎球菌感染症)については、大勢を対象にしたくじ引き試験(ランダム化比較試験)で発症を7〜8割近く減らせたという結果があります。一方、「肺炎全体」を防げるかどうかは、研究によって「減った」「変わらなかった」がまちまちで、まだ決着がついていません。特に、高齢者に多い誤嚥性肺炎は肺炎球菌以外の細菌が原因になることも多く、ワクチンだけではカバーしきれない部分があります。
2026年度からは、日本の定期接種で使うワクチンが「ニューモバックス(PPSV23)」から「プレベナー20(PCV20)」へ切り替わりました。効果には個人差があり、接種すれば肺炎に絶対にかからないわけではありません。介護現場では、ワクチンを「肺炎予防の一つの手段」として位置づけつつ、口腔ケアや誤嚥対策と組み合わせて考えることが大切です。
目次
なぜ介護職が肺炎球菌ワクチンの研究を知っておくとよいのか
「肺炎球菌ワクチンを打てば肺炎は防げますか」。利用者やご家族からこう聞かれて、答えに迷った経験はないでしょうか。あるいは、施設の入所者に「打っていない方が多い」と感じたことはないでしょうか。
肺炎は日本人の死因の上位を占め、その多くを65歳以上の高齢者が占めています。誤嚥性肺炎まで含めると、死因としての重みはさらに大きくなります。肺炎球菌ワクチンはこの分野で最も研究されてきたワクチンの一つですが、実は「肺炎そのものを防げるか」については、研究者の間でも意見が分かれてきた歴史があります。
この記事では、コホート研究(大勢を何年も追いかけた調査)やランダム化比較試験(対象者をくじ引きで2グループに分けて比べる試験)、複数の研究をまとめたメタ解析(統合解析)を一次資料までさかのぼって確認し、「どこまでは確からしく、どこから先はまだ分からないのか」を整理します。介護職として接種歴の確認や利用者への説明に使える形で、数字の意味と限界を丁寧に読み解きます。
肺炎球菌ワクチンと高齢者の肺炎をめぐる研究の背景
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)は、健康な人の鼻やのどの奥にも普段からすみついていることが多い細菌です。厚生労働省の資料によれば、日本人の高齢者の約5〜10%は鼻やのどの奥に肺炎球菌を保菌しているとされます。体力が落ちたときや、インフルエンザなどで気道の粘膜が傷ついたときにこの菌が増殖し、気管支炎・肺炎・敗血症・髄膜炎といった重い病気を引き起こすことがあります。
肺炎球菌が血液や髄液など本来菌がいない場所にまで入り込む重症型は「侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)」と呼ばれ、高齢者ではとりわけ命に関わりやすいとされています。ワクチンはこの肺炎球菌の表面にある莢膜(きょうまく)という成分に対する免疫を作ることで、感染や重症化を防ごうとするものです。
ワクチンには種類があり、対象とする範囲が違う
肺炎球菌には100種類以上の型(血清型)があり、ワクチンごとにカバーする型の数が異なります。日本で高齢者に使われてきた・使われている主なワクチンは次の通りです。
- PPSV23(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン、商品名ニューモバックスNP):23種類の型に対応する多糖体ワクチン。2026年3月まで定期接種で使用。
- PCV20(沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン、商品名プレベナー20):20種類の型に対応する結合型ワクチン。2026年4月から定期接種のワクチンに変更された。
- PCV13・PCV15:13価・15価の結合型ワクチン。海外の臨床試験(後述のCAPiTA試験など)で使われ、国内でも任意接種の選択肢になっている。
厚生労働省の公式資料によれば、定期接種で使われるPCV20がカバーする20種類の血清型は、成人の侵襲性肺炎球菌感染症の原因のおよそ5〜6割を占めるとされています。逆に言えば、原因菌の4〜5割はワクチンでカバーしきれない型ということになり、ワクチンを打っても侵襲性感染症を完全に防げるわけではない点は押さえておく必要があります。
2026年度からの制度変更
日本の定期接種(予防接種法に基づくB類疾病)は、65歳の方と、60〜64歳で心臓・腎臓・呼吸器の機能に重い障害がある方、またはHIV感染により免疫機能に高度な障害がある方を対象としてきました。2026年4月からは、定期接種で使うワクチンがPPSV23からPCV20に変更されましたが、対象者の範囲そのものは変わっていません。実施主体は市区町村で、費用の一部を公費で助成する仕組みです(自己負担額は自治体ごとに異なります)。
主要研究と主要数値の整理
主要な研究と数値の整理
肺炎球菌ワクチンの研究は、対象(侵襲性感染症か、肺炎全体か)や研究デザイン(くじ引き試験か、追跡調査か)によって結果が大きく異なります。ここでは代表的な一次研究を種類ごとに整理します。
1. くじ引き試験(RCT)で確認された効果
| 研究 | 対象・方法 | 結果(日常語での意味) |
|---|---|---|
| CAPiTA試験(オランダ、Bonten et al., New England Journal of Medicine 2015) | 65歳以上の免疫状態が健康な成人84,496人を、くじ引きでPCV13接種群とプラセボ群に分けて平均約4年追跡 | ワクチンに含まれる型による市中肺炎を約45%減少(侵襲性肺炎球菌感染症に限ると約75%減少)。結合型ワクチンの効果を大規模RCTで確認した数少ない研究 |
| 丸山ら(日本、BMJ 2010) | 介護老人福祉施設入所者1,006人(平均85歳)を、PPSV23接種群502人と非接種群504人に無作為に割り付け、3年間追跡する二重盲検試験 | すべての肺炎の発症を約45%、肺炎球菌性肺炎の発症を約64%減少。肺炎球菌性肺炎による死亡は、接種群で0%(0/14人)に対し非接種群で35.1%(13/37人) |
この丸山らの研究は日本の介護施設入所者という「介護現場に近い」集団を対象にした数少ないRCTで、肺炎球菌性肺炎による死亡という重いアウトカムで統計的に意味のある差が出ている点が特徴です。ただし対象者数は1,000人規模と大きくはなく、施設は平均85歳という高齢の集団に限られるため、そのまま全高齢者に当てはめられるわけではありません。
2. 追跡調査(コホート研究)が示した「割れ」
| 研究 | 対象・方法 | 結果(日常語での意味) |
|---|---|---|
| Vila-Corcoles ら(スペイン、European Respiratory Journal 2005) | 65歳以上の高齢者を対象にした大勢を追いかけた前向き調査 | 肺炎による入院・肺炎全体の発症リスクは有意には下がらなかったが、肺炎による死亡リスクは約7割低い(ハザード比0.28)という結果 |
| 厚労省ワクチン作業チーム報告書が引用する47,365人規模の海外コホート | 65歳以上、ワクチン接種群26,313人・非接種群21,052人を3年間観察 | 肺炎球菌による菌血症は約44%減少したが、入院を要した市中肺炎・外来治療の肺炎・全死亡には統計的に意味のある差が見られなかった |
つまり、「肺炎による死亡」や「侵襲性の重症感染症」では複数の研究で予防効果が確認されている一方、「肺炎になる・ならない」自体を防げるかどうかは、研究によって結果が割れているのが実情です。この割れの背景には、研究ごとに肺炎の診断方法(尿中抗原検査を使うかどうかなど)や対象集団の年齢・基礎疾患の有無が異なることが関係していると考えられています。
3. 複数研究をまとめたメタ解析
| メタ解析 | 対象・方法 | 結果(日常語での意味) |
|---|---|---|
| Human Vaccines & Immunotherapeutics誌 2025年(19研究・21コホート、ワクチン接種約165万人・非接種約262万人) | 高齢者における入院・死亡への効果を統合解析 | あらゆる原因による入院は約6%減少(統計的に意味のある差)。ただし全死亡・肺炎による死亡は、統合した全体の数字では統計的に意味のある差にならなかった(年齢やワクチンの種類で絞り込んだ一部のグループでのみ有意差あり) |
| 厚労省ファクトシートが引用する海外17研究のシステマティックレビュー・メタ解析 | 60歳以上の成人を対象とした複数研究の統合 | 侵襲性肺炎球菌感染症に対する効果は約73%、肺炎球菌性肺炎に対する効果は約64%(ただしフォローアップ期間が長くなるほど効果は弱まる傾向) |
研究間で結果にばらつきが大きい(専門的には「異質性が高い」)ことは、上記のメタ解析自身も限界として明記しています。これは「効果がない」という意味ではなく、「対象集団・ワクチンの種類・追跡期間によって効果の出方が違う」ことを示しています。
この結果を正しく読むための6つのポイント
- 「侵襲性感染症」と「肺炎全体」は別物として読む。 ワクチンの効果がはっきりしているのは、肺炎球菌が血液や髄液に入り込む重症型(侵襲性肺炎球菌感染症)です。街の中でかかる肺炎全般をどこまで防げるかは、研究によって結果が割れています。「肺炎球菌ワクチン=肺炎予防」と単純化しすぎないことが大切です。
- ワクチンがカバーする型は原因菌の一部にとどまる。 定期接種のPCV20がカバーする20種類の血清型は、侵襲性感染症の原因のおよそ5〜6割です。ワクチンに含まれない型による感染は防げません。
- 効果の大きさは研究デザインによって変わる。 くじ引き試験(RCT)は交絡(他の要因の影響)を制御しやすく、より確からしい数字が出やすい一方、対象や期間が限られます。追跡調査(コホート研究)は現実に近い集団を長期間見られる利点がありますが、「ワクチンを打つ人はもともと健康意識が高い」といった要因の影響を完全には排除できません。
- 効果は年数がたつと弱まる可能性がある。 複数の研究で、接種から時間がたつほど予防効果が下がる傾向が報告されています。5年以内の効果に絞ったほうが数字が高く出やすいのはこのためです。
- 相関と因果は違う。 観察研究(コホート研究)は「ワクチンを打った人ほど結果が良かった」という関連を示しますが、それだけでは「ワクチンのおかげ」と言い切れません。年齢構成や基礎疾患、通院・受診行動の違いなど、他の要因が結果に影響している可能性(交絡)は完全には排除できません。
- 誤嚥性肺炎への効果は限定的である可能性が高い。 高齢者の肺炎の中でも誤嚥性肺炎は、肺炎球菌だけでなく歯周病関連菌など口腔・咽頭内のさまざまな細菌が原因になります。肺炎球菌ワクチンは原因菌の一部にしか対応できないため、誤嚥性肺炎全体の予防効果は、侵襲性感染症に対する効果ほど確立していません(詳しくは次の章で扱います)。
Quick Diagnosis
全6問・動画ガイド付き
性格から、合う働き方をみつける。
介護の仕事を嫌いになる前に。施設タイプや転職サービスの選び方を、6つの質問と45秒の動画で整理できます。
誤嚥性肺炎への効果はなぜ限定的なのか
介護現場で最も関心が高いのは、「誤嚥性肺炎を肺炎球菌ワクチンで防げるか」という点だと思います。ここは過度な期待を持たせないよう、慎重に整理する必要があります。
- 誤嚥性肺炎の原因菌は多様。 誤嚥性肺炎は、口腔・咽頭内にすみついている細菌を唾液や食べ物と一緒に誤って気道に吸い込むことで起こります。原因になる細菌は肺炎球菌だけでなく、歯周病関連菌をはじめ多岐にわたることが知られています。国内の研究班資料では「肺炎の発症には、誤嚥された細菌の種類より細菌の量に関係が深い」との報告もあり、原因菌を選択的に減らすことの難しさが指摘されています。
- 口腔ケアの効果は誤嚥性肺炎予防の別のエビデンス。 全国11か所の介護老人福祉施設で行われた介入研究(Yoneyama et al., Lancet 1996)では、歯科医療者による口腔ケアを継続したグループで、2年間の肺炎発生率が対照群より低く、肺炎による死亡者数も少なかったと報告されています。これはワクチンとは別の経路(口腔内細菌そのものを減らす)による予防効果を示すもので、肺炎球菌ワクチンの代わりにはなりません。
- 誤嚥性肺炎そのものを対象にした肺炎球菌ワクチンの大規模RCTは確立していない。 CAPiTA試験や丸山らの施設入所者研究は「市中肺炎」「肺炎球菌性肺炎」を対象にしたもので、誤嚥性肺炎に特化して効果を検証した大規模なくじ引き試験は今のところ確立していません。ワクチンが誤嚥そのものを防ぐわけではない点も踏まえる必要があります。
したがって、「肺炎球菌ワクチンを打ったから誤嚥性肺炎の心配はない」という理解は正確ではありません。ワクチンは肺炎球菌という原因菌の一部への対策であり、誤嚥性肺炎の予防は口腔ケア・嚥下機能の評価・食事姿勢の工夫など、複数の対策を組み合わせて初めて効果が期待できるものです。
この研究を介護現場・キャリアでどう活かすか
研究エビデンスを「そのまま信じる」でも「疑って終わる」でもなく、現場の判断材料として使いこなすことが、これからの介護職に求められる姿勢です。
1. 接種歴の確認をアセスメントの一項目にする
肺炎球菌ワクチンの接種歴(ワクチンの種類・接種年)は、健康観察記録や入所時アセスメントで見落とされがちな項目です。特に2026年4月の制度変更(PPSV23→PCV20)を境に、利用者ごとに「どちらのワクチンをいつ受けたか」が異なってきます。接種歴を確認することは、発熱時のアセスメントで肺炎球菌感染症を疑うかどうかの判断材料にもなります。
2. 科学的介護(LIFE)・多職種連携の中で位置づける
ワクチン接種の有無や口腔ケアの状況は、LIFE(科学的介護情報システム)に関連するアセスメント項目とも重なります。ワクチンだけで肺炎を防げるわけではないという研究の限界を理解したうえで、口腔ケア・栄養状態・嚥下機能評価と組み合わせた多職種でのアセスメントに活かすことができます。医療職(嘱託医・訪問看護)と接種状況を共有し、未接種の利用者に受診・相談を促す連携も現実的な一歩です。
3. 「効果がある」と「絶対に防げる」を混同しないで説明する
利用者やご家族に説明する際は、「侵襲性感染症のリスクを下げる可能性が示されている」という正確な言い方を心がけ、「打てば肺炎にならない」という誤解を生まない伝え方が大切です。研究結果を正確に、かつ分かりやすく伝えられることは、介護職としての専門性の一つになります。
4. エビデンスを読む力はキャリアの差別化になる
「なんとなく良さそう」ではなく、一次研究の対象・方法・限界まで踏まえて説明できることは、施設内での質問対応や研修講師、生活相談員としての立場でも強みになります。研究をそのまま鵜呑みにせず、「この研究は誰を対象に、何を、どう測ったか」を確認する視点は、他の健康情報(サプリメント・民間療法など)を評価する際にも応用できます。
研究エビデンスを現場で扱うときの利点と注意点
| 内容 | |
|---|---|
| 利点 | 侵襲性肺炎球菌感染症については複数のRCT・メタ解析で予防効果が繰り返し確認されており、根拠の強さは比較的高い。介護施設入所者を対象にした日本発の質の高いRCT(丸山ら)が存在し、日本の介護現場に近い集団での結果として参照できる。数値(効果の%、ハザード比など)が公表されており、説明の裏付けとして使いやすい。 |
| 注意点 | 「肺炎全体」への効果は研究間で結果が割れており、まだ確定した結論とは言えない。観察研究(コホート研究)は交絡の影響を排除しきれない。効果は時間とともに減衰する可能性があり、「一度打てば安心」とは言えない。誤嚥性肺炎への効果は限定的で、口腔ケアなど他の対策と切り離して考えられない。ワクチンの種類・血清型カバー率は年々改定されており、情報の鮮度に注意が必要(本記事は2026年7月時点の情報)。 |
接種歴の確認と見守りで介護職ができること
- 入所・利用開始時のアセスメントで、肺炎球菌ワクチンの接種歴(ワクチンの種類・接種年)を確認する項目を設ける。
- 2026年4月の制度変更を踏まえ、「PPSV23(ニューモバックス)」か「PCV20(プレベナー20)」か、種類まで記録する。
- 発熱・元気がない・食欲低下などの非典型的な症状が出た高齢者では、肺炎の可能性を念頭に置いて医療職に相談する。
- 口腔ケアの実施状況や嚥下機能の評価結果とあわせて、総合的な肺炎予防の取り組みとして記録・共有する。
- 接種歴が不明な利用者には、自治体の予防接種担当窓口やかかりつけ医への相談を促す(自己判断でのすすめはしない)。
肺炎球菌ワクチンに関するよくある質問
よくある質問
- Q. 肺炎球菌ワクチンを打てば肺炎にかからなくなりますか。
- A. いいえ。研究で確認されているのは「侵襲性肺炎球菌感染症のリスクを大きく下げる」ことや、一部の研究での「肺炎による死亡リスクの低下」であり、肺炎全体を確実に防げるという意味ではありません。ワクチンに含まれない血清型の菌や、肺炎球菌以外が原因の肺炎(誤嚥性肺炎の一部を含む)は防げません。
- Q. 2026年度からワクチンの種類が変わったと聞きました。何が変わったのですか。
- A. 2026年4月から、定期接種で使用するワクチンが23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23、ニューモバックスNP)から、沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20、プレベナー20)に変更されました。対象者(65歳の方、60〜64歳で一定の基礎疾患がある方)そのものは変わっていません。
- Q. 誤嚥性肺炎の予防にも効果がありますか。
- A. 限定的です。誤嚥性肺炎は肺炎球菌以外の口腔・咽頭内細菌が原因になることも多く、肺炎球菌ワクチンだけでは防ぎきれません。口腔ケアや嚥下機能の評価とあわせた総合的な対策が必要です。
- Q. 効果はどのくらいの期間続きますか。
- A. 複数の研究で、接種から時間がたつほど予防効果が弱まる傾向が報告されています。これまでのPPSV23では5年後の再接種が推奨されてきましたが、新しく定期接種となったPCV20は、免疫記憶を作る仕組みの違いから、より長期間の効果が期待されるとされています(長期の実地データはこれから蓄積される段階です)。
- Q. 介護施設の入所者はどのくらいワクチンを接種していますか。
- A. 全国一律の統計は限られますが、日本呼吸器学会などの資料によれば、65歳時点での定期接種率はおおむね40%前後にとどまるとされています。接種率が高いとは言えない状況であり、接種歴の確認や案内は介護現場でも意味のある取り組みです。
参考文献・出典
- [1]Polysaccharide conjugate vaccine against pneumococcal pneumonia in adults (CAPiTA trial)- New England Journal of Medicine, 2015
- [2]Effectiveness of pneumococcal vaccination in reducing hospitalization and mortality among the elderly: A systematic review and meta-analysis- Human Vaccines & Immunotherapeutics, 2025
- [3]高齢者の肺炎球菌ワクチン(ワクチンの効果・定期接種の対象者)- 厚生労働省 予防接種情報 2026年2月版
- [4]成人用肺炎球菌ワクチンファクトシート- 厚生労働省 ファクトシート 2025年
- [5]65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方 第8版- 学会合同ガイドライン 2025年9月
- [6]
まとめ:エビデンスの強さと限界を正しく読む
高齢者への肺炎球菌ワクチンは、侵襲性肺炎球菌感染症という重症型の予防効果について、複数のランダム化比較試験・メタ解析で比較的一貫した根拠が積み上がっています。日本の介護施設入所者を対象にしたRCTでも、肺炎球菌性肺炎による死亡を大きく減らす結果が報告されています。
一方で、「肺炎全体」への効果は研究によって結果が割れており、まだ確定的な結論には至っていません。誤嚥性肺炎については、原因菌の多様性から効果は限定的である可能性が高く、口腔ケアなど別の対策と組み合わせて考える必要があります。2026年度からの定期接種ワクチンの変更(PPSV23→PCV20)も踏まえ、介護現場では「ワクチンは肺炎予防の一つの手段」という位置づけを保ちながら、接種歴の確認とアセスメントへの反映、そして正確な情報を利用者・家族に伝えることが、これからの介護職に求められる役割だと言えます。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。
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