
夕暮れ症候群とは
夕暮れ症候群とは、認知症の方が夕方から夜にかけて落ち着かなくなり、不安や帰宅願望が強まる状態です。体内時計や疲労との関係、現場での声かけ、受診の目安を公的資料をもとに解説します。
夕暮れ症候群とは(直接回答)
夕暮れ症候群(ゆうぐれしょうこうぐん)とは、認知症のある方が夕方から夜にかけて落ち着かなくなり、不安・混乱・興奮が強まったり、「家に帰る」という帰宅願望が出やすくなったりする状態の総称です。「サンダウン症候群(sundowning)」とも呼ばれ、認知症の行動・心理症状(BPSD)の一つに位置づけられています。
目次
夕暮れ症候群の概要
夕暮れ症候群の概要と位置づけ
夕暮れ症候群は、認知症のある方に夕方の時間帯を中心にあらわれる不穏(落ち着かなさ)の総称です。具体的には、そわそわして歩き回る、急に不安そうな表情になる、「もう帰らないと」と荷物をまとめて出ていこうとする、声を荒げる、介護を拒むといった様子があらわれます。とくにアルツハイマー型認知症の方に見られやすいとされています。
医学的には、認知症の症状は「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」に大きく分けられます。記憶障害や見当識障害(時間・場所・人がわかりにくくなること)が中核症状で、夕暮れ症候群はこの中核症状を土台に、本人の体調や不安、まわりの環境が重なって生じる行動・心理症状(BPSD)の一つとして整理されています。認知症介護研究・研修東京センターの総説でも、BPSDの行動症状の例として「夕暮れ症候群」が挙げられています。
ここで押さえておきたいのは、夕暮れ症候群は「困った行動」そのものではなく、本人が感じている不安や混乱が夕方という時間帯に表面化したサインだという見方です。なぜその時間に落ち着かなくなるのかという背景を理解することが、責めない対応の出発点になります。
夕暮れ症候群の背景・原因
夕暮れ症候群が起こる背景
夕暮れ症候群の原因は一つに特定されているわけではなく、いくつかの要因が重なって起こると考えられています。背景を知ると、対応の糸口が見えてきます。
- 体内時計(概日リズム)の乱れ:人の体は朝の光で体内時計がリセットされ、約15〜16時間後に眠気が出るリズムを持っています。認知症では睡眠・覚醒のリズムが乱れやすく、夕方から夜にかけて覚醒と休息の切り替えがうまくいかず、落ち着かなさにつながると考えられています。
- 一日の疲労の蓄積:日中の活動や緊張がたまり、夕方に疲れて余裕がなくなることで、不安やいらだちが出やすくなります。
- 暗くなることへの不安:日が暮れて視界が悪くなると、見当識障害のある方は今いる場所や状況がさらにわかりにくくなり、不安が強まります。
- 生活習慣の記憶:「夕方になったら家に帰る」「夕食や入浴の支度をする」という長年の生活リズムが残っており、施設や自宅でも「帰らなければ」という気持ちにつながります。
- 環境からの刺激:夕方は職員や家族が忙しく動く時間帯で、その慌ただしさや騒がしさ、まぶしすぎる・暗すぎる照明などが本人の気持ちを波立たせることがあります。
体調不良(便秘・脱水・痛み・発熱)や薬の影響が引き金になることもあります。急に症状が強まったときは、こうした身体的な要因が隠れていないかを確認することが大切です。
夕暮れ症候群と帰宅願望の違い
夕暮れ症候群と似た言葉に「帰宅願望」があります。混同しやすいので整理しておきます。
| 項目 | 夕暮れ症候群 | 帰宅願望 |
|---|---|---|
| 意味 | 夕方から夜にかけて落ち着かなくなる不穏全般。不安・興奮・混乱・帰宅願望などを含む | 「家に帰りたい」と訴える気持ちそのもの |
| 時間帯 | 主に夕方〜夜に集中しやすい | 夕方に多いが、朝や日中など時間に関係なく出る人もいる |
| 関係 | 帰宅願望を含む、より広い概念 | 夕暮れ症候群の代表的な症状の一つ |
つまり、帰宅願望は夕暮れ症候群のなかでよく見られる訴えの一つであり、夕暮れ症候群はそれを含む夕方の不穏全体を指す言葉だと考えると整理しやすくなります。帰宅願望そのものへの声かけや対応のコツは、別の用語解説でくわしく扱っています。
夕暮れ症候群への対応のコツ
対応の基本は、本人の不安な気持ちを否定せず、安心できる環境とリズムを整えることです。公的資料で示されている工夫を中心に、現場や家庭で取り入れやすい順にまとめます。
1. 生活リズムを整える
朝はカーテンを開けて日光を取り入れ、体内時計をリセットします。昼夜のメリハリをつけ、日中は活動的に過ごします。眠気で夕方に崩れやすい場合は、午後の早い時間に30分程度の短い昼寝を習慣づけると、夕方の不穏がやわらぐことがあります。
2. 光と環境を調整する
暗くなる前にカーテンを閉め、室内の明かりを少し明るめにして、暗さへの不安をやわらげます。テレビや雑音など刺激の強いものは減らし、落ち着いて過ごせる静かな場所を用意します。なじみのある物を身近に置くことも安心につながります。
3. 否定しない声かけ
「帰れません」「ここにいてください」と訴えを打ち消すのではなく、まず「お家のことが気になりますよね」と気持ちを受けとめます。そのうえで、お茶に誘う、夕食の支度を一緒に手伝ってもらう、短い散歩に出るなど、自然に気持ちが切り替わる関わりが有効です。「またか」というネガティブな感情は本人に伝わりやすいため、落ち着いて向き合うことが大切です。
4. 役割や手伝いを用意する
「ここにいる意味がわからない」という不安が背景にある場合、洗濯物をたたむ、テーブルを拭くなど、本人ができる役割を持ってもらうと、居場所を感じやすくなり訴えが減ることがあります。
夕暮れ症候群で受診・相談を考える目安
受診や相談を考える目安
夕暮れ症候群は環境やリズムの調整でやわらぐことが多い一方、次のようなときは医療機関や専門職への相談を検討します。
- 急に症状が強くなった、これまでと様子が大きく変わった(便秘・脱水・痛み・感染症など体調の変化や、薬の影響が隠れていることがあります)
- 自分や周囲を傷つけるおそれのある興奮や暴力がある(早めに主治医へ相談します)
- 夜眠れない状態が続き、本人や介護する人の生活に支障が出ている
- 工夫を続けても落ち着かず、介護する人が疲れ切ってしまっている
まずはかかりつけ医や認知症の主治医に相談するのが基本です。地域包括支援センターや認知症の相談窓口でも、生活上の工夫やサービスの利用について助言を受けられます。介護する人が一人で抱え込まず、相談できる相手を持つことも、対応を続けるうえで大切な支えになります。
夕暮れ症候群のよくある質問
Q. 夕暮れ症候群は必ず夕方に出るのですか。
名前の通り夕方から夜にかけて出やすいのが特徴ですが、出方には個人差があります。日中や朝に落ち着かなくなる方もいます。時間帯にこだわりすぎず、本人がどんな状況で不安になるかを観察することが大切です。
Q. サンダウン症候群と同じものですか。
はい。夕暮れ症候群は英語の「sundowning(サンダウン)」を訳した言葉で、ほぼ同じ意味で使われます。
Q. 薬で治りますか。
まずは生活リズムや環境を整える対応(非薬物的な工夫)が基本です。それでも改善せず生活に支障が大きい場合に、医師の判断で薬が検討されることがあります。薬は少量から短期間が原則とされており、自己判断で使わず必ず主治医に相談してください。
Q. 家族はどう接すればよいですか。
訴えを頭ごなしに否定せず、まず気持ちを受けとめてください。安心できる声かけと、暗くなる前の照明やお茶の時間など、落ち着ける環境づくりが助けになります。一人で抱え込まず、専門職や相談窓口を頼ることも大切です。
夕暮れ症候群の参考資料
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- [4]
夕暮れ症候群のまとめ
まとめ
夕暮れ症候群は、認知症のある方が夕方から夜にかけて落ち着かなくなり、不安や帰宅願望が強まる状態です。体内時計の乱れ、一日の疲労、暗さへの不安、生活習慣の記憶、環境の刺激などが重なって起こります。困った行動としてではなく、本人の不安が表面化したサインととらえ、生活リズムを整える・光や環境を調整する・否定せず気持ちを受けとめる、という対応が基本です。急な変化や危険な興奮、生活への支障があるときは、かかりつけ医や相談窓口に早めに相談しましょう。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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