
AIケアプランとは
AIケアプランは人工知能で居宅サービス計画書の作成を支援する仕組み。厚労省の実証事業の流れ、ミルモプラン・CMサポート・シルバープランナーなど主要サービス、活用フロー、ケアマネの役割と現場の懸念をやさしく解説します。
この記事のポイント
AIケアプランとは、人工知能(機械学習)を使ってケアマネジャーの居宅サービス計画書(ケアプラン)作成を支援する仕組みのことです。利用者のアセスメント情報を入力するとAIが過去事例や類似ケースから候補となるニーズ・目標・サービス内容を提示しますが、最終的な判断と利用者・家族との合意形成は必ずケアマネが行います。あくまで支援ツールであり、ケアマネを代替するものではありません。
目次
AIケアプランの定義と背景
AIケアプランは、ケアマネジャーが行うケアプラン作成業務のうち、第1表(居宅サービス計画書)・第2表(ニーズ・目標・サービス内容)の起案を人工知能で支援する技術・システムの総称です。アセスメント結果や利用者の心身状態を入力すると、機械学習が過去の類似ケースとマッチングし、考えられるニーズやサービス候補を提示します。
厚生労働省の実証事業の流れ
厚労省は2016(平成28)年度から老人保健健康増進等事業の枠組みでAIケアプランの調査研究を継続しており、フェーズを重ねながら社会実装に向けた検証を進めています。平成30年度の「AIを活用したケアプラン作成の基準に関する調査研究」、令和元年度の「実用化に向けた調査研究」、令和3年度の「効果的・効率的なケアプラン点検の方策に関する調査研究」、令和5年度からの第3フェーズではホワイトボックス型AI(提案根拠が説明できるAI)の実装やケアマネジメントデータ利活用基盤の検討が焦点となっています。
「ケアプラン×AI」と「ケアマネジメント×AI」の違い
第1表・第2表の起案支援に限定したものがAIケアプラン、アセスメント・モニタリング・評価までケアマネジメントサイクル全体を支援する広い概念がAIケアマネジメントです。現在のサービスは主に前者に該当し、後者はLIFE(科学的介護情報システム)データの蓄積と連動して将来像が描かれています。
主要サービスの比較
主要なAIケアプランサービスの比較
2026年時点で、ケアマネジャー向けに提供されている代表的なAIケアプラン関連サービスは次の通りです。いずれも厚労省の実証事業や老健事業の知見を踏まえて開発されたもので、機能は重なる部分もあれば独自の強みもあります。
| サービス名 | 提供事業者 | 主な機能 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ミルモプラン | 株式会社ウェルモ | アセスメントから目標・ニーズ案を生成/第2表文案/地域資源「ミルモネット」連携/計画書生成AI | 自然言語処理で文案生成。地域ケア情報DBと結びつくのが特徴 |
| CMサポート | 株式会社シーディーアイ | 1年後の自立度予測/自立支援に資するサービス候補提案/重度化リスクスコア | 厚労省実証事業の中核ツールの1つ。予測モデル型AI |
| SOIN(ソワン) | NDソフトウェア | 「ほのぼのNEXT」と連携。認定調査票・1年後状態予測/居宅サービス計画ガイドラインに沿った提案 | 既存記録システム連携が強み |
| AIケアプラン作成支援システム | BSNアイネット | 過去事例の類似ケース検索/提供表ドラフト | 新潟県を中心に導入実績。実証事業協力ベンダー |
※「シルバープランナー」は実証事業初期からの研究系AIで、現在は事業者向け商用サービスとしてはミルモプラン・CMサポート・SOIN等に研究知見が引き継がれている位置づけです。価格や導入条件は各社問い合わせベースで、月額数千〜数万円/事業所が一般的なレンジとされます。
現場でのAIケアプラン活用フロー
AIケアプランは「ボタン1つで完成」ではなく、ケアマネが主体となるプロセスの一部を支援する形で組み込みます。一般的な流れは次の通りです。
- インテーク・契約
従来通りケアマネが利用者・家族と面談し、生活状況・希望・既往歴を聞き取ります。 - アセスメント入力
課題分析標準項目に沿ってシステムに入力。多くのサービスは要介護認定情報・主治医意見書も取り込みます。 - AIによる候補提示
機械学習モデルが過去の類似ケースから、想定されるニーズ・長期目標・短期目標・サービス内容の候補をスコア付きで提示します。CMサポート系では1年後の自立度予測も併せて表示されます。 - ケアマネによる吟味と修正
提示された候補をそのまま採用せず、本人の意向・家族関係・地域資源との整合性を踏まえてケアマネが選別・編集します。AIが提示しないニーズの拾い上げもこの段階で行います。 - サービス担当者会議
多職種で原案を協議し、合意形成。AIが提示した根拠は説明資料として活用できますが、最終決定は会議体の判断です。 - 計画書交付・モニタリング
確定したケアプランを利用者・サービス事業者に交付。LIFEへの提出を行う事業所では、その後のモニタリングデータが将来のAI精度向上に還元されます。
各ステップで一貫しているのは、AIは「もう1人のスタッフ」ではなく「下書き作成と気づき支援のツール」として位置づけることです。
現場で使いこなすための実務ポイント
1. 「下書き」として使い、判断は必ず自分で
AIが提示するのは過去データに基づく予測です。利用者一人ひとりの個別性・家族関係・地域資源は十分に反映されません。提示された候補を「叩き台」として扱い、本人意思の尊重を最優先にしましょう。
2. アセスメントの質が結果を左右する
AIに食わせる入力データの精度がそのまま提案の精度になります。課題分析標準項目を丁寧に埋め、独自メモも省略しないことが、有用な提案を引き出す条件です。
3. 自立支援志向のプランに偏りやすいことを知っておく
厚労省実証で使われているモデルの多くは「重度化予防・自立支援」を学習目標にしています。看取り期や進行性疾患の方では、AIの提案がそのまま当てはまらないことがあります。ケアマネの臨床判断で重み付けを変える前提で扱いましょう。
4. 利用者への説明責任を準備する
「AIが提案しました」だけでは利用者・家族に納得してもらえません。ホワイトボックス型AIであれば提示された根拠を読み解き、自分の言葉で説明できる準備が必要です。
5. LIFEデータ提出と連動させて自事業所の精度向上に貢献する
科学的介護情報システム(LIFE)にモニタリング情報を提出することで、将来のAIケアプランの土台となるデータ基盤が厚くなります。介護の働き方診断(無料3分)でも、LIFE・AI活用に積極的な事業所への転職傾向が高まっていることを反映しています。
よくある質問
Q. AIケアプランはケアマネジャーの仕事を奪いますか?
A. いいえ。厚労省・社保審介護給付費分科会の議論でも、AIはケアマネの代替ではなく支援ツールと明確に位置づけられています。最終的なアセスメント・本人意思の確認・サービス担当者会議の運営はケアマネの専門性であり、代替不能です。
Q. AIが提案した内容をそのまま使ってよいですか?
A. そのまま使うのは不適切です。利用者の意向や家族の事情、地域資源との整合性はAIが完全に判断できないため、必ずケアマネが吟味・修正する必要があります。説明責任もケアマネ側にあります。
Q. AIケアプランの精度はどの程度ですか?
A. 厚労省実証事業では、新任ケアマネのスキル底上げや作成時間短縮の効果が確認されています。一方、全事業所の最新データを学習できているわけではなく、提案には偏りやずれが生じうることが報告されています。第3フェーズではホワイトボックス型AIによる根拠説明の改善が進められています。
Q. 個人情報の取り扱いは大丈夫ですか?
A. AIに学習させるデータには要介護認定情報・健康情報など個人情報が大量に含まれるため、高度なセキュリティ管理が前提となります。導入時はベンダーのセキュリティ体制・データ取扱規定を確認しましょう。
Q. LIFEとの違いは何ですか?
A. LIFEは介護施設・事業所が状態・ケア内容を提出してフィードバックを受けるデータ基盤です。AIケアプランはケアマネがプラン作成時に使う支援ツールで、LIFEの蓄積データを学習源として活用する関係にあります。
参考資料
- 厚生労働省「ケアプラン作成業務支援に関する手引き」
- 厚生労働省 老人保健事業推進費等補助金「AIを活用したケアプラン作成の基準に関する調査研究 報告書」(平成30年度)
- 厚生労働省 老人保健事業推進費等補助金「AIを活用したケアプラン作成支援の実用化に向けた調査研究 報告書」(令和元年度)
- 厚生労働省 老人保健事業推進費等補助金「AIを活用した効果的・効率的なケアプラン点検の方策に関する調査研究事業 報告書」(令和3年度)
- 国際社会経済研究所「AIを活用したケアプラン作成支援に係るケアプランデータの利活用に関する調査研究(2023年度)」
- 社会保障審議会 介護給付費分科会 議事録および資料(AIケアプラン関連)
- 株式会社ウェルモ「ミルモプラン/ケアプランアシスタント」公式情報
- 株式会社シーディーアイ「CMサポート」公式情報
- NDソフトウェア「SOIN(ソワン)」公式情報
- 骨太の方針2024(医療・介護DX関連項目)
まとめ
AIケアプランは、ケアマネジャーの居宅サービス計画書作成を機械学習で支援する仕組みです。厚労省は2016年度から実証研究を継続し、ミルモプラン・CMサポート・SOINなど商用サービスが現場に広がりつつあります。ただしAIが提示するのはあくまで候補であり、本人意思の確認・多職種協議・最終判断はケアマネの専門性です。アセスメントの精度を高め、ホワイトボックス型AIの根拠を読み解いて自分の言葉で説明できる準備をしておくことが、これからのケアマネに求められる新しい実務スキルになります。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。