
中重度者ケア体制加算とは
中重度者ケア体制加算は、要介護3以上の利用者を30%以上受け入れ、看護職員を専従配置する通所系事業所を評価する加算。算定要件・単位数・実務ポイントを解説。
この記事のポイント
中重度者ケア体制加算とは、要介護3以上の利用者を全体の30%以上受け入れ、サービス提供時間を通じて専従の看護職員を1名以上配置している通所系事業所を評価する介護報酬上の加算です。通所介護・地域密着型通所介護で1日45単位、通所リハビリテーションで1日20単位が算定でき、在宅で生活する中重度高齢者の受け皿を確保するために2015年度改定で創設されました。
目次
制度の位置づけと創設の背景
中重度者ケア体制加算は、平成27年度(2015年度)介護報酬改定で創設された加算です。要介護3以上の中重度者であっても、住み慣れた在宅・地域で生活を継続できるよう、通所系サービスにおける受け入れ体制を強化する狙いで導入されました。
厚生労働省は団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて「地域包括ケアシステム」の構築を進めており、その中核となる方針が「在宅医療・介護連携の推進」です。中重度の要介護高齢者は医療的ケアや見守りの必要性が高く、家族介護者の負担も大きいため、通所介護・通所リハビリテーション・地域密着型通所介護の現場で受け入れ体制を整備した事業所を介護報酬で評価することで、特別養護老人ホームや介護医療院への入所を遅らせ、在宅生活の継続を支援する制度設計になっています。
対象サービスは通所介護(デイサービス)、地域密着型通所介護、通所リハビリテーション(デイケア)の3つです。訪問介護や訪問看護、施設サービスには別の中重度者対応加算(特定事業所加算など)があり、混同しないよう注意が必要です。算定の届出は事業所が所在する都道府県知事または市町村長に提出し、要件を満たした月から1日ごとに加算単位を上乗せできます。
サービス別の単位数(2024年度改定対応)
2024年度(令和6年度)介護報酬改定後の単位数は以下のとおりです。利用者1人につき1日あたりの加算で、サービス提供日ごとに算定します。
| サービス種別 | 単位数 | 備考 |
|---|---|---|
| 通所介護(デイサービス) | 45単位/日 | 地域単価を乗じて報酬額を算出 |
| 地域密着型通所介護 | 45単位/日 | 定員18名以下の小規模事業所 |
| 通所リハビリテーション(デイケア) | 20単位/日 | 医療系サービスのため評価が異なる |
1単位の単価は地域区分により10円〜11.40円で変動します。例えば1級地(東京23区など)の通所介護で30名の利用者が月20日通所した場合、月間の加算収入は45単位×11.40円×30人×20日=307,800円となります。看護職員の人件費を賄える水準として設計されており、収益性と利用者ケアの質を両立させる加算と位置づけられています。
算定要件(4つのポイント)
中重度者ケア体制加算を算定するためには、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。
1. 要介護3以上の利用者割合が30%以上
前年度(3月を除く11か月)または届出月の前3か月の利用者総数のうち、要介護3・4・5の利用者が30%以上を占めていることが必要です。例えば月間延べ利用者数が100名であれば、要介護3以上が30名以上必要となります。
2. 看護職員または介護職員の常勤換算1名以上の追加配置
人員基準を満たす看護職員または介護職員の配置に加えて、さらに看護職員または介護職員を常勤換算方法で1名以上配置することが求められます。これは通常人員に上乗せして配置する点がポイントです。
3. 専従の看護職員を1名以上配置
サービス提供時間を通じて、他の職務を兼務していない専従の看護職員(正看護師または准看護師)を1名以上配置することが必須です。看護職員は中重度者の医療的ケア(喀痰吸引、経管栄養、褥瘡管理、服薬管理、バイタル測定など)を担当します。
4. 中重度者向けケアプログラムの作成
中重度の要介護者であっても社会性の維持を図り、在宅生活が継続できるよう計画的にケアを実施するためのプログラムを事業所として作成していることが必要です。個別機能訓練や認知機能維持の取り組みを含む内容が想定されています。
類似する加算との違い
中重度者ケア体制加算と混同しやすい加算が複数あるため、整理しておきましょう。
個別機能訓練加算との違い
個別機能訓練加算は理学療法士・作業療法士などが利用者ごとの機能訓練計画を作成・実施することを評価する加算で、中重度者に限定されません。中重度者ケア体制加算は事業所全体の体制を評価する点が異なります。両加算は併算定可能です。
看護職員配置加算(特定施設・地域密着型特定施設)との違い
看護職員配置加算は特定施設入居者生活介護や認知症対応型共同生活介護など居住系サービスで看護職員を厚く配置した場合に算定する加算で、対象サービスが異なります。通所系には適用されません。
認知症加算との違い
通所介護の認知症加算は、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の利用者を20%以上受け入れ、認知症介護指導者研修等を修了した職員を配置することが要件です。中重度者ケア体制加算と認知症加算は併算定が可能であり、両方の要件を満たす事業所では同時算定で収益性を高められます。
算定にあたっての実務ポイント
現場で算定漏れや返還リスクを防ぐためのポイントを整理します。
利用者割合の継続的なモニタリング
要介護3以上の利用者割合は毎月計算し、30%を下回る月が続くと算定要件を満たさなくなります。新規利用者の介護度や卒業(要介護度改善・施設入所)の動きを管理者が常に把握し、ケアマネジャーへの新規紹介依頼や受け入れ調整を行うことが重要です。
専従看護職員の勤務記録の整備
専従の看護職員はサービス提供時間中に他業務を兼務していないことが要件であるため、シフト表や業務日誌で「サービス提供時間中の業務」を明確に記録しておく必要があります。実地指導や監査で勤務実態を確認されるため、書類上の整合性を保ちましょう。
働く側のメリット
看護職員にとっては、医療機関と比較して残業が少なく日勤中心で働ける選択肢として通所系サービスは魅力的です。中重度者ケア体制加算を算定する事業所は看護職員の専従配置が必須なため、医療的処置のスキルを活かしながら介護領域でキャリアを築きたい看護師の求人ニーズが高まっています。介護職員にとっても、要介護3以上の利用者ケアを通じてアセスメント力や生活支援技術を磨ける環境となります。
よくある質問
Q1. 看護職員は正看護師でなければなりませんか?
正看護師・准看護師のどちらでも算定要件を満たします。ただし喀痰吸引等の医療的ケアの範囲は資格により異なるため、利用者の状態に応じた人員配置が望まれます。
Q2. 看護職員が体調不良で1日休んだ場合は加算を算定できますか?
専従看護職員が不在の日は要件を満たさないため、その日の加算は算定できません。代替の看護職員を確保するか、要件を満たした日のみ加算対象とする運用が必要です。
Q3. 要介護3以上の利用者割合が一時的に30%を下回った場合は?
「前年度または直近3か月平均」での判定であるため、単月で30%を下回っても直ちに加算停止にはなりません。ただし継続的に30%未満となる場合は届出を取り下げ、算定停止する必要があります。
Q4. 中重度者ケア体制加算と入浴介助加算は併算定できますか?
併算定可能です。入浴介助加算(Ⅰ)40単位/日や入浴介助加算(Ⅱ)55単位/日との同時算定が認められており、加算項目を組み合わせて事業所収益を高めることができます。
まとめ
中重度者ケア体制加算は、要介護3以上の利用者を30%以上受け入れ、専従の看護職員を配置する通所系事業所に対して1日45単位(通所リハは20単位)を上乗せする加算です。地域包括ケアシステムの中で在宅生活継続を支える重要な仕組みであり、事業所にとっては看護職員配置の人件費を賄える収益源となります。働き手にとっては、医療的ケアと介護を両立できるキャリア環境を選ぶ手がかりにもなる加算です。算定要件を正確に理解し、自分が働く事業所・転職を検討する事業所が中重度者ケアにどのように取り組んでいるかを知ることで、職場選びの判断軸を増やしていきましょう。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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