時計描画テスト(CDT)とは

時計描画テスト(CDT)とは

時計描画テスト(CDT:Clock Drawing Test)の実施法と採点の考え方を解説。円・数字・指定時刻の針を描く認知症スクリーニングで、視空間認知・実行機能を評価します。MMSEやHDS-Rとの併用や介護現場での活用も整理します。

ポイント

時計描画テストの定義(answer capsule)

時計描画テスト(CDT:Clock Drawing Test)とは、白紙に時計の文字盤を描き、1から12までの数字と指定された時刻を指す針を書いてもらう認知症スクリーニング検査です。視空間認知や実行機能(遂行機能)を短時間で評価でき、受検者の抵抗が少ないため、MMSEやHDS-Rなど他の検査と併用して認知機能の低下を見つける目的で広く使われています。

目次

時計描画テストの実施法と評価するもの

時計描画テスト(CDT)は、20世紀初頭から神経心理学的検査として用いられてきた、時計を描く課題です。実施は簡便で、A4程度の白紙を渡し、「大きめの丸い時計の絵を描き、数字を全部書いて、指定した時刻を指す針を描いてください」と口頭で教示します。指定時刻には10時10分や11時10分など、両方の針が別々の位置を指す時刻がよく用いられます。所要時間は数分で、特別な道具を必要としません。

この単純な課題には、複数の認知機能が同時に関わります。円を適切な大きさで描く(構成能力)、1から12の数字を正しい順序で時計回りに均等配置する(視空間認知)、指定時刻を数字の位置に対応させて2本の針を描き分ける(実行機能・遂行機能)といった処理が必要です。認知機能が低下すると、数字の配置が偏る、数字が抜ける・重複する、針が指定時刻を指せない、針が1本しかないといった特徴的な誤りが現れます。

誤りのパターンは疾患によって傾向が異なることも知られており、アルツハイマー型認知症では針の描画に、レビー小体型認知症では数字の配置に誤りが出やすいといった報告があります。こうした質的な情報が得られる点も、時計描画テストが臨床で重視される理由です。

時計描画テストの採点法

採点の考え方と代表的な採点法

時計描画テストには単一の標準採点法がなく、目的に応じて複数の方式が使い分けられています。大きく分けると、描けたか描けないかを大まかに段階分けする方式と、要素ごとに点数を積み上げる方式があります。

  • Shulman法など段階評価型:時計としての完成度を数段階(例:ほぼ正常から時計と認識できないまで)で評価する簡便な方式です。短時間で大まかな重症度をつかめます。
  • Freedman法(15点満点):輪郭(円)、数字、針、中心の4領域を細かく項目化し、15点満点で採点する詳細な方式です。数字が1〜12のみか、正しい順序か、針が2本あり長針・短針を描き分けているか、中心が定まっているかなどを1点ずつ評価します。研究や精密な評価で用いられます。
  • 河野法(9点満点):円(A)、数字(B)、10時10分の針(C)の3段階で評価する方式で、日本の臨床で用いられます。

採点法によってカットオフ値(認知症を疑う境目の点数)は異なります。共通する考え方は、単に点数の高低だけでなく、どこでつまずいたか(数字の配置か、針の設定か)という誤りの中身に注目することです。時計描画テストは点数化と質的観察の両面から認知機能を捉える検査だといえます。

時計描画テストとMMSE・HDS-Rの併用

MMSE・HDS-Rとの併用と使い分け

時計描画テストは単独でも使えますが、記憶を中心に評価するMMSE(ミニメンタルステート検査)やHDS-R(改訂長谷川式)と併用することで、認知症の検出力が高まることが報告されています。MMSEやHDS-Rは記憶・見当識・計算などを幅広く問う一方、視空間認知や実行機能への感度は必ずしも高くありません。時計描画テストはこの弱点を補い、両者を組み合わせると単独よりも見逃しを減らせます。

実際に、時計描画テストとMMSEを併用した研究では、両者のスコアに有意な相関(相関係数r=0.58程度)が認められ、MMSE単独よりも併用時のほうが認知症を拾い上げる感度が向上したと報告されています。時計描画テストは特異度(健常者を正しく除外する力)が高い一方、単独では感度がやや低い傾向があるため、感度の高いMMSEなどと組み合わせることで互いの弱点を補い合う関係にあります。

なお、時計描画テストと3語の遅延再生を組み合わせた「Mini-Cog(ミニコグ)」という短縮スクリーニングもあり、数分で実施できる簡便な方法として地域や外来で活用されています。目的(詳しく評価したいのか、短時間でふるい分けたいのか)に応じて検査を選び、組み合わせることが大切です。

時計描画テストの介護現場での活用

介護現場での活用のポイント

時計描画テストの実施・判定は医師や心理職が担いますが、介護職が検査の意味を理解しておくと、利用者の変化に気づきやすくなります。

  • 変化のサインとして捉える:以前は問題なく時計を描けた人が数字の配置を間違えるようになった場合、認知機能の変化が疑われます。日常の様子とあわせて看護師や相談員へ共有すると、早期の受診・対応につながります。
  • 結果で人を評価しない:検査はあくまで機能の一断面です。点数が低くても、その人らしさや生活の力が失われるわけではありません。結果を本人の前で否定的に扱わない配慮が求められます。
  • 環境要因に注意する:視力低下や利き手の障害、緊張などでもうまく描けないことがあります。検査結果だけで判断せず、背景を含めて多職種で解釈することが大切です。

スクリーニング検査は診断そのものではなく、詳しい評価や受診につなぐ「入口」です。気になる変化を見つけたら、専門職につなぐ橋渡しの役割を意識するとよいでしょう。

時計描画テストのよくある質問

時計描画テストだけで認知症を診断できますか。

できません。時計描画テストはあくまでスクリーニング(ふるい分け)検査で、認知機能低下の可能性を捉えるものです。診断は、MMSEやHDS-Rなど他の検査、画像検査、問診を含めて医師が総合的に行います。

指定する時刻は10時10分でなければいけませんか。

必ずしも決まっていません。10時10分や11時10分など、長針と短針が別々の位置を指す時刻がよく使われます。針の指し分けが必要になるため、実行機能の評価に適しているからです。用いる採点法や施設の手順に従います。

Mini-Cog(ミニコグ)とは何が違いますか。

Mini-Cogは、時計描画テストに3つの単語の遅延再生を組み合わせた短縮スクリーニングです。時計描画テスト単独より短時間で記憶と視空間認知の両面を大まかに評価でき、地域や外来での一次スクリーニングに向いています。

時計描画テストの参考資料

時計描画テストのまとめ

まとめ

時計描画テスト(CDT)は、円・数字・指定時刻の針を描く簡便な認知症スクリーニング検査で、視空間認知や実行機能を短時間で評価できます。採点法はShulman法や15点満点のFreedman法など複数あり、点数だけでなく誤りの中身にも注目します。特異度が高い一方で単独では感度がやや低いため、MMSEやHDS-Rと併用すると検出力が高まります。介護現場では、以前との描画の変化に気づき専門職へつなぐ入口として役立ちます。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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