
DASC-21とは
DASC-21(地域包括ケアシステムにおける認知症アセスメントシート)は、認知機能と生活機能を21項目4段階で評価し、認知症を地域で早期発見・支援につなげる観察式の評価ツール。21項目の構成、31点のカットオフ、HDS-R・MMSEとの違いを解説。
DASC-21の定義
DASC-21(地域包括ケアシステムにおける認知症アセスメントシート)とは、認知機能と生活機能(記憶・見当識・問題解決・IADL・ADL)を21項目4段階で評価し、認知症の人を地域で早期に発見して支援につなげるための簡便な観察式アセスメントシートです。本人へ直接テストするのではなく、日ごろの生活の様子から評価する点が特徴で、合計84点満点のうち31点以上で認知症の可能性が高いと判断します。
目次
DASC-21の概要と位置づけ
DASC-21の概要
DASC-21は「Dementia Assessment Sheet in Community-based Integrated Care System - 21 items」の略で、東京都健康長寿医療センター研究所の粟田主一氏らが開発した認知症のアセスメントシートです。地域包括ケアシステムの中で、認知症やその疑いのある高齢者を早期に発見し、必要な医療・介護サービスへ橋渡しすることを目的に設計されています。
最大の特徴は、本人に計算や記憶の課題を解いてもらう「検査式」ではなく、家族や介護者から日常生活の様子を聞き取り、または対象者の生活を観察して評価する「観察式(他者評価式)」である点です。このため、検査を嫌がる人や、検査の場では取り繕えてしまう人でも、生活の中に現れる困りごとから認知機能と生活機能の低下を捉えられます。
評価は記憶に関する導入質問2問(採点しない)に続き、採点対象の21項目を1点から4点の4段階で評価します。合計点は84点満点で、点数が高いほど障害が重いことを示します。項目は「記憶」「見当識」「問題解決・判断力」「家庭外のIADL」「家庭内のIADL」「身体的ADL」の6つの領域に整理されており、認知機能だけでなく、買い物・金銭管理・服薬・入浴・移動といった生活機能まで一枚のシートで把握できます。介護報酬の特定の加算要件に直結する尺度ではありませんが、地域包括支援センターや初期集中支援チーム、ケアマネジメントの現場でアセスメントの土台として広く使われています。
DASC-21の21項目と6領域の構成
21項目はどんな構成になっているか
採点する21項目は、認知機能(記憶・見当識・問題解決)と生活機能(IADL・ADL)にまたがる6領域で構成されます。冒頭の「もの忘れが多いと感じますか」「1年前と比べてもの忘れが増えたと感じますか」の2問は導入質問で、採点には含めません。
- 記憶(項目1〜3):物を置いた場所、5分前に聞いた話、自分の生年月日など、近時記憶と遠隔記憶を評価します。
- 見当識(項目4〜6):今日の日付(時間)、自分のいる場所(場所)、道に迷わず帰れるか(道順)を評価します。
- 問題解決・判断力(項目7〜9):ライフラインが止まったときの対処、一日の計画、状況に合った服選びなど、社会的判断力を評価します。
- 家庭外のIADL(項目10〜13):買い物、交通機関を使った外出、金銭管理、電話など、家庭の外に出て行う生活機能を評価します。
- 家庭内のIADL(項目14〜15):食事の準備、決まった時間・分量での服薬管理を評価します。
- 身体的ADL(項目16〜21):入浴、着替え、トイレ(排泄)、身だしなみ(整容)、食事、家のなかの移動という基本的な日常生活動作を評価します。
各項目は「まったくない/できる」を1点、「とてもある/まったくできない」を4点とする4段階で採点し、21項目を合計します(最高84点)。IADLの項目が手厚いため、軽度の段階で現れやすい生活機能の低下を捉えやすいのが利点です。
DASC-21の採点とカットオフ
採点方法とカットオフの考え方
21項目の合計点(84点満点)を用い、合計31点以上で「認知症の可能性が高い」と判断するのが基本的なカットオフです。あわせて、特定の領域(記憶・見当識・問題解決・判断力など)の点数を見ることで、生活機能の障害の背景にどの認知機能の低下があるかを推し量れます。
DASC-21はスクリーニングおよび重症度評価のツールとして、内的信頼性・併存的妥当性・弁別的妥当性が確認されています。ただし、これはあくまで「認知症の可能性」を示す指標であり、点数だけで確定診断はできません。31点以上であれば、医療機関での詳しい評価や、HDS-R・MMSEといった検査式のスクリーニング、画像検査などにつなげる必要があります。逆に点数が低くても、生活上の困りごとが明らかなときは経過観察やフォローアップが大切です。
DASC-21とHDS-R・MMSEの違い
HDS-R・MMSEとの違い
認知症のスクリーニングでよく使われるHDS-R(改訂長谷川式)やMMSEは、本人に計算・記憶・図形模写などの課題を出して回答してもらう「検査式」です。一方DASC-21は、本人にテストを課すのではなく、家族や介護者から生活の様子を聞き取って評価する「観察式」である点が根本的に異なります。
- 評価のしかた:HDS-R・MMSEは本人への質問・課題で測る。DASC-21は日常生活の観察・聞き取りで測る。
- 測る対象:HDS-R・MMSEは主に認知機能。DASC-21は認知機能に加え、買い物・金銭管理・服薬・入浴などの生活機能(IADL・ADL)まで含む。
- 向いている場面:検査を嫌がる人、取り繕いが強い人、検査の場に来られない在宅の人でも、DASC-21なら生活の困りごとから評価しやすい。
- 点数の意味:HDS-R・MMSEは点数が低いほど障害が重い(30点満点)。DASC-21は点数が高いほど障害が重く、31点以上で認知症の可能性が高い(84点満点)。
実務では、まずDASC-21で生活全体の困りごとを把握し、認知症が疑われればHDS-RやMMSE、医療機関での精査につなげる、という流れで補い合うことが多いです。
DASC-21の介護現場・地域での活用ポイント
介護現場・地域での活用ポイント
DASC-21は地域包括支援センターや認知症初期集中支援チーム、ケアマネジャーのアセスメント、訪問系サービスの初回評価などで活用されています。生活機能まで一枚で見えるため、ケアプランや支援方針を立てる際の共通言語として役立ちます。
- 家族や介護者が回答するため、本人の負担が少なく、関係づくりの妨げになりにくい。
- IADL・ADLの項目から、買い物・服薬・入浴など「いま支援が必要な生活場面」を具体的に特定できる。
- 定期的に実施すれば、点数の推移から状態の変化や支援の効果を追いやすい。
- あくまでスクリーニングであり、診断ではない点を本人・家族に丁寧に説明し、不安をあおらない伝え方を心がける。
DASC-21のよくある質問
よくある質問
- DASC-21は誰が記入しますか。
- 本人ではなく、本人の日常生活をよく知る家族や介護者、または訓練を受けた専門職が、生活の様子を確認しながら記入する観察式の評価です。本人に課題を解いてもらう必要はありません。
- 何点以上で認知症が疑われますか。
- 21項目の合計84点満点のうち、31点以上で認知症の可能性が高いと判断します。ただしこれはスクリーニングの目安であり、確定診断は医療機関で行います。
- 導入質問の2問も点数に入りますか。
- 入りません。冒頭の「もの忘れが多いと感じますか」「1年前と比べてもの忘れが増えたと感じますか」は本人の自覚を聞く導入質問で、採点対象は続く21項目です。
- HDS-RやMMSEと比べてどんなときに使いますか。
- 検査を嫌がる人や在宅で検査の場に来られない人、生活機能の低下まで含めて把握したい場面でDASC-21が向いています。認知症が疑われればHDS-R・MMSEや医療機関での精査につなげます。
- 実施にどのくらい時間がかかりますか。
- 項目数が21と限られ、生活の様子を聞き取る形式のため、検査式に比べて短時間で行えるのが特徴です。対象者や情報提供者の状況により前後します。
DASC-21の参考資料
- [1]DASC-21について|DASCホームページ(粟田主一・東京都健康長寿医療センター研究所)- DASC普及推進事業
DASC-21の開発者である粟田主一氏らによる公式サイト。21項目の構成・採点・カットオフの解説。
- [2]
- [3]
DASC-21のまとめ
まとめ
DASC-21は、認知機能と生活機能を21項目4段階で評価し、認知症の人を地域で早期に発見して支援につなげる観察式のアセスメントシートです。本人に検査を課さず生活の様子から評価できること、IADL・ADLまで一枚で把握できることが強みで、31点以上が認知症の可能性を示す目安になります。検査式のHDS-R・MMSEと補い合いながら、地域包括ケアの現場で「気づき」を支援につなぐ入口として活用されます。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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