
アルツハイマー型認知症の利用者のケア|進行段階(FAST)別の関わりと施設での実践
アルツハイマー型認知症の利用者を施設で支える介護職向けの段階別ケアガイド。近時記憶・見当識・実行機能の障害を踏まえ、初期(自尊心を守る関わり)・中期(BPSDと見当識支援・部分介助と環境調整)・後期(嚥下・全介助・苦痛評価と看取りへの移行)をFASTに沿って実務目線で解説。レビー・前頭側頭・脳血管性との違いも整理。
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この記事のポイント
アルツハイマー型認知症の利用者ケアは、進行段階に合わせて関わり方を切り替えるのが基本です。初期(FAST4・軽度)は近時記憶障害と取り繕いが中心で、失敗を責めず自尊心を守る関わりが要になります。中期(FAST5〜6・中等度)は見当識障害とBPSDが目立ち、部分介助となじみの環境調整で混乱を減らします。後期(FAST7・重度)は発語低下と嚥下・移動の全介助が進み、苦痛の観察と看取りへの移行を多職種で支えます。段階ごとに「残っている力」を見極めることが、施設ケアの質を左右します。
目次
アルツハイマー型認知症は、認知症の原因疾患のなかで最も多く、政府広報オンラインが引用する厚生労働省の調査では認知症全体の約67.6%を占めます。特別養護老人ホームやグループホーム、介護付き有料老人ホームなど、多くの施設で介護職が日常的に関わる利用者像そのものです。
この認知症は、数年から十数年かけてゆっくり進行するのが特徴です。同じ利用者でも、入居時と1年後、3年後では「できること」「困りごと」「必要な介助」が大きく変わります。初期に有効だった声かけが後期には届かなくなり、逆に後期で必要な全介助を初期から行うと、残っている力を奪って進行を早めてしまうこともあります。
そこで役立つのが、アルツハイマー型認知症に特化した進行段階の物差しであるFAST(機能評価ステージ)です。この記事では、介護職が現場で使える視点として、FASTの段階を初期・中期・後期に整理し、それぞれで「どんな関わり」「どんな生活支援」「どんな観察」が必要かを実務目線で解説します。断定的に決めつけず、一人ひとりの残存機能に合わせて調整するための地図として活用してください。
アルツハイマー型認知症で障害される中核症状
段階別のケアを理解する前提として、アルツハイマー型認知症で最初に、そして強く障害される機能を押さえておきます。ここを踏まえるだけで、利用者の言動が「困った行動」ではなく「症状の現れ」として見えてきます。
近時記憶障害(新しい記憶が残りにくい)
最大の特徴は、直前の出来事を覚えていられない近時記憶の障害です。食事をしたこと自体を忘れる、数分前の会話を忘れて同じ質問を繰り返す、といった形で現れます。一方で若い頃の記憶(遠隔記憶)は比較的保たれるため、昔の仕事や子育ての話は生き生きと語れることが多いのが、生活歴を活かすケアの手がかりになります。
見当識障害(時間・場所・人がわからなくなる)
今がいつか(時間)、ここがどこか(場所)、目の前の人が誰か(人物)が徐々にわからなくなります。時間の見当識から先に崩れやすく、進行すると場所、さらに人物の順で障害されます。夕方に「家に帰る」と訴える帰宅願望や、施設内で自室に戻れない状態は、この見当識障害が背景にあります。
実行機能障害(段取りが立てられない)
計画を立てて順序よく物事を進める力が低下します。料理や着替え、金銭管理など、複数の手順が必要な行為でつまずきます。「洋服を選んで着る」「入浴の一連の流れをこなす」といった生活動作が、指示や部分介助を必要とするようになります。
失語・失行・失認(進行に伴い加わる)
進行すると、言葉が出にくくなる失語、道具の使い方がわからなくなる失行、見えているのに何かを認識できない失認が加わります。これらは中期から後期にかけて食事・排泄・着脱の困難として表面化します。重要なのは、こうした認知機能が低下しても、感情や自尊心は最後まで残るという点です。「わからないだろう」という前提の関わりは利用者を傷つけ、BPSD(行動・心理症状)を誘発します。
加齢のもの忘れとは違う
アルツハイマー型のもの忘れは、加齢による自然なもの忘れとは質が異なります。加齢では体験の一部を忘れ(朝食のメニューを思い出せない)、本人にもの忘れの自覚がありますが、アルツハイマー型では体験そのものを忘れ(朝食を食べたこと自体を忘れる)、初期を過ぎると自覚も乏しくなり、症状は進行していきます。この違いを理解しておくと、利用者が「食べていない」と訴える場面でも、うそやわがままではなく症状として受け止め、頭ごなしに否定しない関わりにつなげられます。
FASTでみる進行の7段階
FAST(Functional Assessment Staging)は、アルツハイマー型認知症の重症度を生活機能の面から7段階で評価するツールです。ニューヨーク大学のライスバーグ博士が考案し、記憶検査の点数ではなく「日常生活で何ができて何ができないか」で段階を分けるため、介護現場との相性がよいのが特徴です。国立長寿医療研究センターの資料でも、家族や介護者の情報から評価できる観察式の指標として位置づけられています。
| 段階 | 区分 | 生活機能の目安 |
|---|---|---|
| FAST1 | 正常 | 機能低下なし |
| FAST2 | 年相応 | 物の置き忘れなど、加齢相応のもの忘れ |
| FAST3 | 境界状態 | 熟練を要する仕事で低下が目立つ。新しい場所への旅行が困難 |
| FAST4 | 軽度(初期) | 買物・家計の管理・来客の段取りなどに支障。身の回りは自立 |
| FAST5 | 中等度(中期) | 介助なしでは適切な洋服を選んで着られない。入浴を促す関わりが必要 |
| FAST6 | やや高度(中期〜後期) | 不適切な着衣、入浴・排泄に介助を要する。失禁が現れる |
| FAST7 | 高度(後期) | 言葉が最大数語から単語のみに。歩行・着座能力の喪失、嚥下困難 |
実務では、FAST4を初期、FAST5〜6を中期、FAST7を後期とおおまかに捉え、段階のまたぎ目でケアプランを見直すと現場感覚に合います。ただし進行速度や現れ方には個人差が大きく、段階は「決めつけの型」ではなく「変化を予測して先回りするための地図」として使うことが大切です。以下、初期・中期・後期の順に具体的な関わりを見ていきます。
初期(FAST4・軽度)のケア|自尊心を守る関わり
初期(FAST4・軽度)の利用者は、身の回りのことはおおむね自分でできますが、近時記憶障害が中心となり、もの忘れや失敗が増えます。この時期に最も守るべきは自尊心です。本人は「自分はまだできる」という思いと「うまくいかない」という不安のあいだで揺れています。関わり方ひとつで、その後のBPSDの出方が大きく変わります。
取り繕いと不安を理解する
初期には、答えに詰まったときに話をそらしたり、それらしく取り繕う反応がよくみられます。これは自分の失敗を隠して自尊心を保とうとする自然な防衛です。介護職が「さっき言いましたよ」「違いますよ」と事実を突きつけると、本人は自信を失い、混乱や怒りにつながります。間違いを正すことより、安心して過ごせることを優先します。
初期の声かけと生活支援のポイント
- 失敗を責めない・訂正しすぎない。同じ質問を繰り返されても、初めて聞いたように穏やかに答えます。もの盗られ妄想が出たときは「一緒に探しましょう」と味方の姿勢で寄り添います。
- できることは奪わず、さりげなく支える。配膳の手伝い、洗濯物たたみ、園芸など、本人の生活歴に沿った役割を用意し、「ありがとう、助かりました」と伝えます。役割と感謝は自己肯定感を保つ最良の関わりです。
- 記憶の外部化で自立を延ばす。カレンダー、予定表、大きな時計、居室の名札などで、忘れても確認できる環境を整えます。服薬は声かけと見守りで自分で飲めるよう支えます。
- 予定と環境を急に変えない。環境の変化はせん妄や混乱を招きやすいため、なじみの持ち物を活かし、変更は少しずつ行います。
初期は、施設と家族が生活歴や本人の望みを共有し、ケアの土台をつくる大切な時期でもあります。「この人はどんな人生を歩んできたのか」を記録に残しておくと、中期・後期でコミュニケーションが難しくなったときの大きな手がかりになります。
家族との連携と早期の見通し共有
初期は、本人の意向を確認しやすい貴重な時期でもあります。どんな暮らしを望むか、これからどんな支援が必要になりそうかを、家族やケアマネジャーと共有しておきます。進行に伴って着替えや入浴、やがて食事に介助が必要になることを見通しとして伝えつつ、いたずらに不安をあおらないよう、いまできていることを一緒に確認する姿勢が大切です。定期的な受診と服薬を支え、体調の小さな変化も記録して医療職につなぎます。
中期(FAST5〜6・中等度)のケア|BPSD対応・見当識支援・部分介助
中期(FAST5〜6・中等度)は、施設介護でもっとも手厚い関わりが必要になる時期です。見当識障害がはっきりし、着替え・入浴・排泄に部分介助が必要になります。同時に、徘徊、帰宅願望、興奮、介護拒否、夕暮れ症候群などのBPSDが増えやすく、チームでの対応が要になります。ここでの原則は、BPSDを「消す」のではなく「なぜ起きているか」を探ることです。
BPSDは要因を探ってから対応する
BPSDの背景には、身体的要因(痛み、便秘、空腹、発熱、不眠)、心理的要因(不安、孤独、自尊心の傷つき)、環境的要因(刺激が多すぎる・少なすぎる、居場所のなさ)、社会的要因(人間関係)が隠れています。まずは体調を確認し、次に環境と関わりを見直します。薬に頼る前に、非薬物的なアプローチを優先するのが認知症ケアの基本です。帰宅願望には「もう遅いのでダメです」と否定せず、「お茶を一杯どうぞ」「一緒に少し歩きましょう」と気持ちを受け止めて場面を切り替えます。
見当識支援となじみの環境調整
- 環境で見当識を補う。居室に本人の写真や表札、トイレへの分かりやすい案内表示、大きなカレンダーと時計を配置します。生活リズムを一定に保ち、日中の活動と夜間の安静で昼夜逆転を防ぎます。
- 徘徊は止めるより安全に。歩き回るのは不安や探し物、トイレを探している場合が多く、頭ごなしに制止すると興奮を強めます。安全な動線を確保し、さりげなく付き添いながら理由をくみ取ります。
- 夕暮れ症候群への備え。夕方に不安や落ち着かなさが強まる利用者には、その時間帯に慣れた作業や散歩を組み込み、照明を明るめに保って不安を和らげます。
部分介助は「できる部分」を残す
着替えや入浴は、すべてを介助するのではなく、本人ができる工程を残します。洋服を選べなくても袖に手を通すことはできる、といった残存機能を活かし、「まず右手から通しましょう」と一動作ずつ声をかけます。介護拒否が出たときは無理押しせず、いったん距離を置いてタイミングを変える、担当者を替える、といった工夫が有効です。中期は摂食にも変化が出始め、注意が逸れて食事が中断したり、食具の使い方に失行が現れます。声かけや配膳の工夫で自力摂取を支えます。
後期(FAST7・重度)のケア|嚥下・全介助・苦痛評価と看取りへの移行
後期(FAST7・重度)になると、言葉は数語からやがて単語のみになり、歩行や座位を保つ力も失われていきます。食事・排泄・移動のすべてに全介助が必要となり、コミュニケーションは非言語が中心になります。この時期のケアは、尊厳の保持と苦痛の緩和、そして看取りへの移行を見据えた関わりが軸になります。
非言語のコミュニケーションと苦痛の観察
言葉で意思を伝えられなくなっても、感情は残っています。正面からゆっくり名前を呼び、目線を合わせ、触れながら短く優しく声をかけることで、安心感は伝わります。表情のこわばり、うめき、体の緊張、食事や介助への抵抗は、痛みや不快のサインかもしれません。本人が訴えられないぶん、介護職の観察が苦痛評価の生命線になります。便秘、発熱、褥瘡、口腔内のトラブルなど、身体的な原因を丁寧に確認し、看護職へ具体的に報告します。
嚥下・誤嚥への対応
後期の大きな課題が嚥下障害です。うまく飲み込めないと、低栄養や誤嚥性肺炎につながり、生命に直結します。食事はとろみや形態を本人の状態に合わせて調整し、覚醒がよく姿勢が安定したタイミングで、あわてずに介助します。摂食開始が難しい、途中で眠ってしまうといった変化も記録し、栄養士や看護職、医師と共有して形態や量を見直します。
看取りへの移行と多職種連携
- 本人と家族の意思を尊重する。どこまでの医療的ケアを望むか、どこで最期を迎えたいかを、家族や医師と早い段階から話し合っておきます。方針は状態の変化に応じて何度でも見直します。
- 身体ケアで安楽を保つ。褥瘡・拘縮・誤嚥の予防、こまめな体位変換や口腔ケアで、痛みや不快を減らします。
- なじみの刺激で情緒を支える。好きだった音楽、家族の写真、慣れた香りなど、生活歴に根ざした心地よい刺激が最後まで安心につながります。
- チームで支える。介護職、看護職、医師、ケアマネジャー、リハビリ職、栄養士が情報を共有し、どの関わりが安楽につながったかを記録して積み上げます。
後期のケアは「何もできなくなった人を世話する」のではなく、「最後まで一人の人として尊厳を守る」関わりです。初期から積み上げてきた生活歴やなじみの関係が、ここで大きな支えになります。
他の認知症との違い(レビー・前頭側頭・脳血管性)
アルツハイマー型のケアを深めるには、他の認知症との違いを知っておくと、症状の見立てと関わりの引き出しが増えます。ここでは代表的な3タイプとの違いを、施設ケアの視点で整理します。当サイトには各タイプの利用者ケアを扱った記事もあるため、担当する利用者に合わせて読み分けてください。
| タイプ | 特徴的な症状 | ケアで特に注意する点 |
|---|---|---|
| アルツハイマー型 | 近時記憶障害・見当識障害が中心。緩やかに進行 | 自尊心を守る関わり、なじみの環境、生活歴の活用 |
| レビー小体型 | ありありとした幻視、認知の変動、パーキンソン症状、起立性低血圧 | 転倒・誤嚥の予防、抗精神病薬への過敏性、変動の観察 |
| 前頭側頭型(ピック病) | 脱抑制、常同行動、我が道を行く行動、無関心 | 常同行動をルーティンに活かす、叱責を避ける環境調整 |
| 脳血管性 | まだら認知症、階段状の進行、意欲低下、感情失禁 | できる時とできない時の差への配慮、再発予防と血圧管理 |
アルツハイマー型は近時記憶と見当識が緩やかに障害されるため、「なじみの環境」と「生活歴の活用」が特に効きます。一方、レビー小体型は認知や体調の変動と幻視・転倒への観察が中心になり、前頭側頭型は常同行動を日課に組み込む工夫が鍵になります。脳血管性は損傷部位によって症状がまだらで、できる能力とできない能力の差が大きい点に配慮します。同じ「認知症の利用者」でも、原因疾患によって最適な関わりは異なります。まず原因疾患を把握し、そのうえでアルツハイマー型なら段階に応じてケアを調整する、という二段構えが実務では有効です。
薬物療法と介護職にできる非薬物ケア
段階別のケアを支える背景として、薬物療法の位置づけと、介護職が担う非薬物ケアの役割分担を知っておくと、医療職との連携がスムーズになります。
重症度に応じて使われる薬
認知症疾患診療ガイドラインに基づき、アルツハイマー型では重症度に応じて薬が選ばれます。軽度から中等度では、ドネペジル(アリセプト)、ガランタミン(レミニール)、リバスチグミン(貼付剤)などのコリンエステラーゼ阻害薬が使われ、中等度以降ではメマンチン(メマリー)が加わり、併用されることもあります。これらは進行をゆるやかにし症状を和らげる薬で、病気そのものを治すものではありません。介護職は、貼付剤のはがれや皮膚のかぶれ、吐き気や食欲不振などの副作用に早く気づき、看護職や医師に伝える役割を担います。
BPSDにはまず非薬物ケアを
徘徊や帰宅願望、興奮などのBPSDに対しては、いきなり薬に頼るのではなく、非薬物的なアプローチを優先するのが原則です。抗精神病薬は転倒や過鎮静のリスクを伴うため、慎重に使われます。ここで力を発揮するのが、まさに介護職の日々の関わりです。声かけ、環境調整、生活リズムづくり、なじみの活動といった非薬物ケアこそ、BPSDを予防し和らげる最前線であり、段階別ケアの土台になります。「薬は医療職、暮らしの支えは介護職」という役割分担を意識し、観察した変化を丁寧に共有することが、チームとしての質の高いケアにつながります。
全段階に共通する関わりのコツ
段階が変わっても土台となる関わりは共通です。忙しい現場ですぐ実践できるコツをまとめます。
- 正面から、名前を呼んでから。後ろから急に触れたり話しかけると驚かせます。目線を合わせ、名前を呼んで存在を伝えてから用件に入ります。
- 短く、一度に一つ。「上着を着て、靴を履いて、玄関へ」ではなく、「まず上着を着ましょう」と一動作ずつ。ゆっくり話し、返事を待ちます。
- 否定せず、まず受け止める。事実の訂正より、本人の世界と気持ちに寄り添うことを優先します。安心が行動を落ち着かせます。
- 生活歴を関わりの資源にする。仕事、趣味、育児、出身地など、遠隔記憶に残る話題は会話の糸口になり、役割づくりのヒントにもなります。
- できたことを言葉にする。「ありがとう」「助かりました」の一言が自己肯定感を支え、BPSDの予防につながります。
- 記録で変化とチームをつなぐ。どの声かけ・環境調整が効いたかを具体的に残し、多職種で共有します。属人的な勘を、チームのケアに変えていきます。
よくある質問(FAQ)
Q. 同じことを何度も聞かれます。どう答えるのが正解ですか。
近時記憶障害のため、本人にとっては毎回が初めての質問です。「さっきも言いました」と返すと自尊心を傷つけ、不安を強めます。初めて聞かれたように穏やかに答え、メモやカレンダーなど目で確認できる手がかりを用意しておくと、質問の頻度も落ち着きやすくなります。
Q. 「家に帰りたい」と繰り返す利用者への対応は。
帰宅願望は見当識障害や不安、居場所のなさが背景にあります。「帰れません」と否定せず、「お茶を飲んでから考えましょう」「一緒に少し歩きましょう」と気持ちを受け止めて場面を切り替えます。夕方に強まる場合は、その時間帯に慣れた活動を組み込むと和らぐことがあります。
Q. 入浴を嫌がります。無理にでも入れるべきですか。
無理押しは拒否と興奮を強めます。嫌がる理由(寒い、怖い、恥ずかしい、手順がわからない)を探り、声かけを工夫し、担当者や時間を変えてみます。一動作ずつ誘導し、できた工程をねぎらうと受け入れやすくなります。それでも難しい日は、清拭など代替手段で無理なく清潔を保ちます。
Q. 進行を遅らせるために介護職ができることはありますか。
薬は医師の管理下ですが、介護職にできることは多くあります。残っている力を奪わず活かす、生活リズムを整える、役割と会話で意欲を保つ、不安を減らす環境をつくる。こうした日々の関わりが、BPSDを抑え、その人らしい生活の維持につながります。
Q. 段階はどう判断すればよいですか。
FASTは医療職による評価が基本ですが、介護職は「着替えや入浴に介助が要るか」「言葉がどれくらい出るか」といった生活機能の変化から、おおよその段階の移り変わりを察知できます。気づいた変化はケアマネジャーや看護職に共有し、ケアプランの見直しにつなげます。
Q. 食事をしたのに「食べていない」と訴えます。どうすればよいですか。
近時記憶障害により、食べた記憶そのものが失われている状態です。うそやわがままではありません。「さっき食べましたよ」と正すと不信や興奮につながることがあります。まずは気持ちを受け止め、お茶や軽いものを勧めたり、下膳を少し遅らせて食器を残しておく、別の活動に誘うなど、場面を切り替える工夫で落ち着くことが多くあります。
参考文献・出典
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まとめ
アルツハイマー型認知症の利用者ケアは、進行段階に応じて関わりを切り替えることが軸になります。初期(FAST4)は近時記憶障害と取り繕いを理解し、失敗を責めず自尊心と役割を守る。中期(FAST5〜6)は見当識支援となじみの環境調整でBPSDの要因を減らし、残る力を活かした部分介助を行う。後期(FAST7)は非言語の関わりと苦痛の観察、嚥下への配慮、看取りへの移行を多職種で支える。
すべての段階に共通するのは、認知機能が低下しても感情と自尊心は残るという前提です。原因疾患を把握し、アルツハイマー型なら段階に合わせて調整するという視点を持てば、目の前の言動が「困った行動」ではなく「その人からのメッセージ」として見えてきます。段階を先読みし、生活歴を資源にし、記録でチームをつなぐこと。それが、その人らしい暮らしを最後まで支える施設ケアの実践です。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。
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