藤島グレード(摂食嚥下能力グレード)とは

藤島グレード(摂食嚥下能力グレード)とは

藤島一郎が提唱した摂食嚥下能力グレード(Gr.1〜10)の意味を解説。経口摂取なしから正常までの10段階、「できる」能力を評価する位置づけ、「している」を評価する摂食状況レベル(Lv)との違い、介護現場での活用を整理します。

ポイント

藤島グレードの定義(answer capsule)

藤島グレード(摂食嚥下能力グレード)とは、リハビリテーション医の藤島一郎が提唱した、摂食嚥下(食べて飲み込む)能力を10段階で表す順序尺度です。グレード1が最重症(食事としての経口摂取ができない状態)、グレード10が正常で、数字が大きいほど食べる力が保たれていることを示します。患者が「できる」能力の到達点を表す指標です。

目次

藤島グレードの概要と10段階

藤島グレードの位置づけと10段階の意味

藤島グレードは、摂食嚥下障害のある人が「どこまで口から食べられる状態か」を、経口摂取と補助栄養(点滴や経管栄養)の組み合わせに着目して10段階に区分した順序尺度です。1993年に藤島一郎が発表して以来、リハビリテーション医療や介護の現場で、嚥下障害の重症度と回復の目安を共有する共通言語として広く使われています。

10段階は大きく4つのまとまりで理解すると整理しやすくなります。

  • Gr.1〜3(重症・経口摂取なし):食事としての経口摂取は困難で、栄養は経管栄養や点滴で補います。Gr.1は嚥下訓練の対象にならない段階、Gr.2は基礎的な嚥下訓練の対象、Gr.3は条件が整えば少量の直接訓練(実際に食べる訓練)が可能な段階とされます。
  • Gr.4〜6(中等症・経口と補助栄養の併用):Gr.4は栄養にはならない「お楽しみレベル」の経口摂取、Gr.5は1〜2食の経口摂取と補助栄養の併用、Gr.6は3食とも経口摂取だが補助栄養を要する段階です。口から食べる量が段階的に増えていきます。
  • Gr.7〜9(軽症・経口摂取のみ):補助栄養が不要になり、3食すべてを口から食べられる段階です。Gr.7は嚥下食で3食経口、Gr.8は特別に配慮した食品を除けば普通に食べられる、Gr.9は食事の内容にほぼ制限がない段階を表します。
  • Gr.10(正常):摂食嚥下に問題がなく、常食を安全に食べられる状態です。

このようにグレードは、経口摂取の可否(Gr.1〜3で不可、Gr.4以上で一部可能)、補助栄養の要否(Gr.6以下で必要、Gr.7以上で不要)という2つの節目で区切られており、数字を見るだけで「口からどのくらい食べられ、栄養補助がどの程度必要か」がおおまかに伝わる設計になっています。

藤島グレードと摂食状況レベルの違い

摂食嚥下能力グレード(Gr)と摂食状況レベル(Lv)の違い

藤島グレードとよく混同されるのが、同じく藤島らによる「摂食状況のレベル(Lv.1〜10)」です。名前も10段階という点も似ていますが、評価している対象が異なります。

  • 摂食嚥下能力グレード(Gr)=「できる」能力:嚥下造影検査(VF)や嚥下内視鏡検査(VE)などの評価をふまえ、その人が本来どこまで安全に食べられるかという到達可能な能力を表します。
  • 摂食状況のレベル(Lv)=「している」状況:検査結果ではなく、実際に今どのくらい口から食べているかという現実の摂取状況をそのまま評価します。

両者は一致するとは限りません。たとえば、能力的には3食経口摂取が可能(高いGr)でも、覚醒状態が悪い、介助者が確保できない、本人が食べたがらないといった患者以外の要因で実際の摂取量が伸びず、Lvが低くとどまることがあります。逆に、リスクを承知で本人や家族の希望により能力以上に食べているケースもあります。GrとLvのギャップは、「食べる力はあるのに食べられていない」背景に環境や介助体制の課題が隠れていることを示すサインになり、多職種で介入点を探す手がかりになります。

藤島グレードの介護現場での活かし方

介護現場での藤島グレードの活かし方

藤島グレードは医師や言語聴覚士(ST)が判定する指標ですが、介護職が数字の意味を理解しておくと、日々のケアや多職種連携で役立ちます。

  • 食事介助の安全確認:カンファレンスや記録でグレードを共有しておくと、「補助栄養が必要な段階か(Gr.6以下)」「嚥下調整食が必要な段階か(Gr.7前後)」といった前提を職員間でそろえやすくなります。
  • 変化の察知:むせが増えた、食事に時間がかかる、食べ残しが増えたといった変化は、グレードの低下(=嚥下機能の悪化)の入口かもしれません。早めにSTや看護師へ共有することが誤嚥性肺炎の予防につながります。
  • 回復目標の共有:リハビリでグレードの改善を目標にする場合、介護職は「今日はスプーン一口でも安全に飲み込めたか」といった小さな達成を記録し、チームの評価材料として提供できます。

グレードはあくまで能力の目安であり、実際の食事場面ではその日の体調・覚醒・姿勢によって安全に食べられる量は変わります。数字を絶対視せず、目の前の様子とあわせて判断することが大切です。

藤島グレードのよくある質問

藤島グレードは誰が判定しますか。

医師や言語聴覚士(ST)が、問診や観察、必要に応じて嚥下造影検査(VF)・嚥下内視鏡検査(VE)の結果をふまえて判定します。介護職が単独で確定するものではありませんが、日々の食事場面の観察は判定材料として重要です。

グレードが低いと必ず経管栄養になりますか。

Gr.1〜3は食事としての経口摂取が難しい段階のため、経管栄養など補助栄養が中心になります。ただし、Gr.3〜4では安全に配慮しながら「お楽しみ」として少量を口から味わうケアが行われることもあり、本人の希望や全身状態をふまえて多職種で判断します。

藤島グレードと嚥下調整食の分類(学会分類2021)は同じものですか。

別のものです。藤島グレードは「人の食べる能力」の段階を、学会分類2021は「食事の形態(ゼリー状・とろみなど)」の段階を表します。実際のケアでは、その人のグレードに合わせて適切な食事形態を選ぶという形で両者を組み合わせて使います。

藤島グレードの参考資料

藤島グレードのまとめ

まとめ

藤島グレード(摂食嚥下能力グレード)は、食べて飲み込む能力を10段階で表す指標で、Gr.1が最重症、Gr.10が正常です。経口摂取の可否と補助栄養の要否という節目で区切られ、「できる」能力を示します。実際に「している」摂取状況を表す摂食状況レベル(Lv)とは別物で、両者のギャップは介助体制や環境の課題を映します。数字の意味を理解して観察し、変化を早めに多職種へ共有することが、安全な食事と誤嚥性肺炎の予防につながります。

この用語に関連する記事

読み書き計算の学習療法は認知症の人に効くか|研究エビデンスを介護現場目線で読み解く

読み書き計算の学習療法は認知症の人に効くか|研究エビデンスを介護現場目線で読み解く

簡単な読み書き・計算を対面で続ける「学習療法」(川島隆太ら提唱)は認知症の人の認知機能や意欲を改善するのか。RCT・介入研究の一次ソースで効果と限界を確認し、認知刺激療法(CST)との違い、現場での活かし方を介護職目線で読み解く。

認知症の行方不明者、昨年も1万7千人超|警察庁統計が示す「3日以内」の壁と見守りの課題

認知症の行方不明者、昨年も1万7千人超|警察庁統計が示す「3日以内」の壁と見守りの課題

警察庁が公表した最新統計で、認知症またはその疑いによる行方不明者は1万7,345人と高止まり。所在確認は約95%が3日以内、死亡確認は573人。GPS機器や自治体の見守りネットワークの効果と、介護現場・家族が取るべき備えを解説する。

ユニットケア・小規模生活単位ケアは入居者のQOL・BPSDを改善するか|研究エビデンスを介護現場目線で読み解く

ユニットケア・小規模生活単位ケアは入居者のQOL・BPSDを改善するか|研究エビデンスを介護現場目線で読み解く

個室ユニット型特養や海外の小規模ケア(small-scale living・Green House)が入居者のQOL・BPSD・ADL・向精神薬・職員満足をどう変えるか。VerbeekらのオランダJAMDA研究やGreen House研究など一次ソースで、効果が出た指標と差が出なかった指標、限界を介護職目線で読み解きます。

口を開けてくれない人への口腔ケア技術|脱感作法・K-point刺激で開口を促す介護職向け手技ガイド

口を開けてくれない人への口腔ケア技術|脱感作法・K-point刺激で開口を促す介護職向け手技ガイド

開口障害や強い拒否がある方への口腔ケアを、声かけでなく身体的な手技で解決する方法。脱感作法の段階的手順、K-point刺激の正しい位置と押し方、無理にこじ開けない安全な範囲を介護職向けに解説。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。