
J-CHS基準(改訂J-CHS基準)とは
J-CHS基準は日本版のフレイル表現型評価。体重減少・筋力低下・疲労感・歩行速度低下・身体活動低下の5項目で、3点以上フレイル・1〜2点プレフレイルと判定。2020年改訂の基準値、基本チェックリスト・ロコモとの違い、介護予防での活用を解説。
J-CHS基準の要点
J-CHS基準(Japanese version of the Cardiovascular Health Study criteria)は、フレイルを身体面から評価する日本版の表現型評価法です。「体重減少」「筋力(握力)低下」「疲労感」「歩行速度低下」「身体活動低下」の5項目を確認し、3項目以上該当でフレイル、1〜2項目でプレフレイル(前段階)、該当なしで健常と判定します。国立長寿医療研究センターが2020年に基準値を改訂し、現在は「改訂J-CHS基準」が広く使われています。
目次
J-CHS基準の概要と位置づけ
J-CHS基準とは何か
フレイルとは、健康な状態と要介護状態の中間にあたる「加齢によって心身の予備能力が低下し、ストレスに弱くなった状態」を指します。適切に対応すれば健康な状態に戻せる可逆性があるため、早期に見つけることが重要です。J-CHS基準は、このフレイルを「見た目や機能に現れる特徴(表現型)」から客観的に判定する物差しです。
もとになったのは、米国の大規模研究Cardiovascular Health Study(CHS)でFriedらが提唱したフレイルの表現型評価(5項目)です。これを日本人の体格や生活に合わせて調整したものがJ-CHS基準で、2015年に発表されました。その後、握力や歩行速度の測定方法が国際的に標準化されたことを受け、国立長寿医療研究センターが2020年に基準値を見直し、現在の「改訂J-CHS基準」となっています。
5項目のうち3つ以上に当てはまるとフレイル、1〜2つでプレフレイルと判定します。医療機関だけでなく、自治体の介護予防事業や高齢者施設でも活用され、フレイルの人を早く見つけて運動・栄養・社会参加につなげる入口として位置づけられています。
改訂J-CHS基準の5項目と基準値
改訂J-CHS基準(2020)の5項目と評価基準
改訂J-CHS基準では、次の5項目を確認します。各項目に1つでも当てはまれば1点として数えます。
| 項目 | 評価基準(2020改訂) |
|---|---|
| 1. 体重減少 | 6か月で2kg以上の(意図しない)体重減少がある |
| 2. 筋力低下(握力) | 握力が男性28kg未満・女性18kg未満 |
| 3. 疲労感 | 「(ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする」に当てはまる |
| 4. 歩行速度低下 | 通常歩行速度が毎秒1.0m未満(5mを歩くのに5秒以上かかる目安) |
| 5. 身体活動低下 | 「軽い運動・体操」「定期的な運動・スポーツ」のいずれも週1回もしていない |
点数による判定
- 3項目以上:フレイル
- 1〜2項目:プレフレイル(前段階)
- 0項目:健常(ロバスト)
2020年の改訂では、握力の基準が男性26kg未満から28kg未満へ、歩行速度が毎秒0.8m未満から1.0m未満へ引き上げられ、疲労感や身体活動の質問文も標準化されました。これにより、より早い段階でフレイルの兆しを拾えるようになっています。
J-CHS基準と基本チェックリスト・ロコモの違い
基本チェックリスト・ロコモとの違い
フレイルや虚弱を測る物差しはほかにもあり、J-CHS基準と混同されがちです。目的と評価範囲の違いを整理します。
| J-CHS基準 | 基本チェックリスト | ロコモティブシンドローム | |
|---|---|---|---|
| 評価するもの | 身体的フレイル(表現型) | 生活機能全般 | 運動器(骨・関節・筋肉)の衰え |
| 項目 | 5項目 | 25項目 | ロコモ度テスト・25の質問 |
| 主な視点 | 体重・筋力・歩行など身体面に特化 | 運動・栄養・口腔・認知・うつなど多面的 | 立つ・歩く能力に特化 |
| 主な用途 | フレイルの有無を客観判定 | 介護予防事業の対象者選定 | 要介護につながる運動器障害の早期発見 |
J-CHS基準は身体的フレイルを数値で客観的に判定する物差しで、握力や歩行速度といった実測値を含みます。基本チェックリストは、身体面に加えて口腔・認知・うつ・社会性まで幅広く見る質問票で、自治体が介護予防の対象者を選ぶために使います。ロコモは運動器に焦点を絞った概念で、フレイルより手前の身体面の衰えを捉えます。3つは重なりつつも守備範囲が異なり、組み合わせて使われることもあります。
J-CHS基準を介護予防に活かす
介護予防での活用と現場での気づき
J-CHS基準は「フレイルを早く見つけて手を打つ」ための入口です。プレフレイルやフレイルは可逆性があり、運動・栄養・社会参加の3本柱で改善が期待できます。
- 握力・歩行速度は変化に気づく手がかり:握力低下や歩くのが遅くなったサインは、フレイルの中でも早く現れやすい項目です。日常の動作から変化を拾えます。
- 体重減少と疲労感は見逃さない:食欲低下による体重減少や「わけもなく疲れる」訴えは、低栄養やフレイル進行のサインになり得ます。
- 3本柱につなげる:該当者にはレジスタンス運動、たんぱく質を意識した食事、通いの場や地域活動への参加を促すことが介護予防の基本です。
- 多職種で共有する:介護職が気づいた変化を、ケアマネジャーや看護師、リハビリ職と共有すると、評価と支援計画につながりやすくなります。
フレイルは「年のせい」で片づけず、早期に気づいて働きかけることで要介護への進行を遅らせられる状態です。
J-CHS基準のよくある質問
よくある質問
J-CHS基準は何点でフレイルと判定されますか?
5項目のうち3項目以上に該当するとフレイル、1〜2項目でプレフレイル、0項目で健常と判定します。
2020年の改訂で何が変わりましたか?
握力の基準が男性26kg未満から28kg未満、女性は18kg未満、歩行速度が毎秒0.8m未満から1.0m未満に見直され、疲労感・身体活動の質問文も標準化されました。より早い段階でフレイルを捉えられるようになっています。
基本チェックリストとの違いは?
J-CHS基準は握力や歩行速度など身体的フレイルに特化した5項目の物差しです。基本チェックリストは運動・栄養・口腔・認知・うつなど生活機能を幅広く見る25項目の質問票で、介護予防事業の対象者選定に使われます。
握力計がなくても評価できますか?
握力と歩行速度は本来は実測が前提です。器具がない場合は「ペットボトルのふたが開けにくい」「青信号で渡り切れない」など生活場面の変化が参考になりますが、正式な判定には測定が必要です。
J-CHS基準の参考資料
- [1]
- [2]The revised Japanese version of the Cardiovascular Health Study criteria (revised J-CHS criteria)(Satake S, Arai H. 2020)- J-GLOBAL(科学技術振興機構)/Geriatr Gerontol Int 2020;20(10):992-993
改訂J-CHS基準を提唱したSatake・Araiの原著の書誌情報。
- [3]
- [4]
J-CHS基準のまとめ
まとめ
J-CHS基準は、体重減少・筋力(握力)低下・疲労感・歩行速度低下・身体活動低下の5項目でフレイルを判定する日本版の表現型評価法です。3項目以上でフレイル、1〜2項目でプレフレイルと分類します。2020年の改訂で握力(男性28kg・女性18kg未満)や歩行速度(毎秒1.0m未満)の基準値が見直され、より早い段階でフレイルを捉えられるようになりました。生活機能全般を見る基本チェックリストや運動器に絞ったロコモとは守備範囲が異なります。フレイルは可逆性のある状態です。早く気づき、運動・栄養・社会参加につなげることが要介護予防の鍵になります。
この用語に関連する記事

食事時間が不規則な高齢者ほど老化マーカーが高い|長寿研、GDF-15と「食事の質」の関連を発表
国立長寿医療研究センターが2026年7月に公表した研究成果を解説。食事時間が不規則な高齢者ほど老化を反映する血清GDF-15が高く、その約15%を食事の質の低さが説明した。観察研究の限界を踏まえ、介護現場の食事支援・生活リズム支援に何ができるかを読み解く。

手術後のせん妄はなぜ起こるか|周術期せん妄の危険因子と予防プロトコルの研究エビデンスを介護職目線で読み解く
高齢者の手術後に起こる術後せん妄(周術期せん妄)を、日本麻酔科学会の公式ガイドラインと国際メタ解析から解説。危険因子のオッズ比、HELPプログラムの予防効果、麻酔法との関連、限界までを介護職目線で整理します。

筋トレ(レジスタンス運動)は高齢者の筋力・身体機能・自立を保つか|研究エビデンスを介護職目線で読み解く

転んだ後の「転倒恐怖」が高齢者を弱らせる|転倒後症候群・活動制限の研究エビデンスを介護職目線で読み解く
一度の転倒が「また転ぶのが怖い」という転倒恐怖(fear of falling)を生み、外出や活動を控えることで筋力低下・閉じこもり・再転倒へと向かう悪循環。転倒後症候群の有病率や活動制限とフレイル・QOL低下の関連、運動・認知行動的アプローチの効果と限界を一次ソースで確認し、介護現場での関わり方を解説します。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。