介護リフトとは

介護リフトとは

介護リフトは要介護者を持ち上げて移乗を補助する福祉用具。床走行式・天井走行式・据置式・ベッド固定式の4種類と吊り具(スリングシート)、介護保険レンタルの条件、現場での腰痛予防効果を解説。

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この記事のポイント

介護リフトとは、自力で立ち上がりや移乗が困難な要介護者の身体を吊り具(スリングシート)で持ち上げ、ベッド・車いす・トイレ・浴槽などの間を移動させるための福祉用具です。介護保険法に基づく「移動用リフト(つり具を除く)」として、原則要介護2以上の方が貸与(レンタル)対象となり、つり具部分は特定福祉用具販売の対象として購入できます。介護職員の腰痛予防・転倒事故防止の中核機器であり、ノーリフティングケアの基盤です。

目次

介護リフトの定義と法令上の位置づけ

介護リフトは、介護保険法に基づく福祉用具種目のうち「移動用リフト(つり具の部分を除く)」として、車いす・特殊寝台・床ずれ防止用具などと並ぶ貸与対象品目に位置づけられています。厚生労働省告示「介護保険法に基づく指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」および同関連告示で品目が定められ、製品ごとに介護保険対象機種としての届出が必要です。

機械的な定義としては、利用者の身体(多くは座位または臥位)をスリングシートと呼ばれる吊り具で支えて電動または手動で持ち上げ、別の場所まで運搬・移乗させる装置を指します。リフトを使うことで、介助者は利用者を抱え上げる必要がなくなり、ベッドから車いす、車いすからトイレ、車いすから浴槽などの移乗動作を、介助者1名でも安全に行えるようになります。

厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」(2013年改訂)では、介護職員の腰痛予防策として、抱え上げを原則行わずリフト・スライディングボードなどの福祉機器を導入する「ノーリフティングケア」を推奨しています。介護労働安定センター「介護労働実態調査」でも、リフト導入施設は職員の腰痛発生率が有意に低いことが報告されており、人材定着・離職率低下にも寄与する設備投資と位置づけられます。

介護リフトの主な4タイプ

介護リフトは支持構造によって大きく4タイプに分かれます。利用者の身体状況・住環境・予算に応じて最適なものを選びます。

1. 床走行式リフト

本体下部にキャスター(車輪)が付いており、床上を介助者が押して移動できるタイプ。設置工事が不要で、購入後すぐに使えるのが最大の利点です。一方、移動には床面の段差解消とある程度の床面積が必要で、敷居・カーペット・畳上では押しにくくなります。施設では最も普及しているタイプで、複数の居室で1台を共有できます。

2. 天井走行式リフト

天井または壁面にレールを取り付け、本体がレール上を走行するタイプ。一度設置すれば固定動線上をスムーズに移動でき、狭い居室でも使いやすい一方、住宅では構造補強を伴う設置工事が必要となり、初期費用は他タイプより高額です。在宅利用では介護保険の住宅改修費(上限20万円)の対象とならず、レンタルか自費購入で対応します。

3. 据置式(固定式)リフト

ベッドの脇など床に支柱を立てて固定し、その支柱を中心にアームが旋回または直線移動するタイプ。床走行式のような移動性はなく、ベッド~車いす、ベッド~トイレなど特定2点間の移乗に特化します。住宅改修工事は不要で、組み立て式のため在宅で多く採用されます。

4. ベッド固定式リフト

特殊寝台のフレームに取り付け、ベッドサイドのみで稼働するタイプ。ベッドからの起き上がり・端座位への移行を補助する用途が中心で、トイレや浴室への運搬はできません。比較的安価で、単一動作のみ介助したいケースに適します。

補助:入浴用リフト

浴槽縁または天井に取り付け、浴槽への出入りに特化したリフト。要支援以上で入浴困難な方に対し、特定福祉用具販売の対象(年間10万円上限・1割〜3割負担)として購入できます。

吊り具(スリングシート)の種類と選び方

リフト本体と並んで重要なのが、利用者を実際に支える吊り具(スリングシート)です。介護保険上、リフト本体は「貸与(レンタル)」の対象ですが、吊り具部分は皮膚に直接触れる衛生用品として「特定福祉用具販売」(購入)の対象に分かれている点に注意が必要です。年間10万円までの限度額の中で1〜3割負担で購入できます。

主なスリングシートの種類

種類特徴適応
シート型(ハイバック)頭部から大腿部までを大きく覆う座位保持困難・全身脱力
セパレート型(脚分離型)背部と両脚を別々のベルトで支持座位がある程度保てる方
トイレ用シート臀部に開口部があり下衣を下ろせる排泄介助が必要な方
入浴用メッシュシート水切れがよく濡れても使用可入浴介助時
立ち上がり用ベルト胸〜脇下を支持して立位補助立位がわずかに保てる方

選定の際はサイズ(S/M/L/LL)と耐荷重を必ず確認し、可能なら福祉用具専門相談員の試着評価を受けます。テクノエイド協会「福祉用具情報システム(TAIS)」で公式にスペック確認ができます。

介護保険でリフトをレンタル・購入する流れ

在宅で介護リフトを介護保険を使って導入する標準的な流れは以下のとおりです。

  1. 要介護認定の取得:原則として要介護2以上が貸与対象。要支援1〜2・要介護1の方は「軽度者」となり、原則は貸与対象外ですが、寝たきり・著しい起立困難など主治医意見書で必要性が認められれば例外給付の対象になります(市町村への申請が必要)。
  2. ケアプランへの位置づけ:担当ケアマネジャーがアセスメント結果に基づき、福祉用具貸与をケアプランに記載します。
  3. 福祉用具専門相談員との機種選定:身体状況・住環境・介護者の体力を踏まえ、最適なタイプ・スリングシートを選びます。試用貸出が可能な事業者も多くあります。
  4. 貸与契約と搬入・調整:レンタル料金は機種・地域により月額1,500〜10,000円程度。利用者は所得に応じて1〜3割を負担します。
  5. 吊り具の購入:吊り具は同じ事業者または他の指定特定福祉用具販売事業者から購入。償還払い/受領委任払いを選択します。
  6. 定期モニタリング:福祉用具専門相談員が概ね6か月ごとに使用状況を確認し、状態変化に応じて機種変更を検討します。

現場での使い方と腰痛予防のポイント

リフトを導入しただけでは腰痛事故は減りません。現場で安全に使いこなすには次のポイントが重要です。

  • 抱え上げ介助を原則ゼロに:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」(2013年改訂)は介護施設での「人力での抱え上げ介助は原則禁止」とし、リフト・スライディングボード・スライディングシートの併用を推奨しています。
  • 2名介助での開始から1名介助への移行:導入初期はスリング装着の確認・利用者の不安緩和のため2名で行い、慣れたら1名介助に移行するのが安全です。
  • スリング装着の手順を統一:背部から差し込み、両脚ベルトを通す手順を写真入りでマニュアル化し、職員間で共有します。装着不備は転落事故の主因です。
  • 転倒・転落予防:床走行式は移動経路の障害物を事前に取り除き、ベッド昇降は最高位置まで上げないこと。労働災害事例では床走行式の旋回中の転倒が最多です。
  • 定期点検:年1回以上の電動部・スリングのほつれ・耐荷重表示の点検を行います。事業者の取扱説明書に従ってください。
  • 導入研修:購入・レンタル時に福祉用具専門相談員から導入研修を受け、新人入職時には必ず再研修を実施します。

よくある質問

Q1. 介護リフトは要介護1でもレンタルできますか?

原則として要介護2以上が貸与対象です。要支援1〜2・要介護1の軽度者は対象外ですが、主治医意見書で「寝たきり」「移乗にすべて介助が必要」と判断されれば、市町村への申請を経て例外的に貸与が認められる場合があります(介護保険法施行規則)。

Q2. 月々のレンタル料金はいくらですか?

機種・地域により月額1,500〜10,000円程度。床走行式は月3,000〜5,000円が相場、天井走行式や高機能機は10,000円超になることもあります。利用者の自己負担はその1〜3割です。

Q3. 吊り具(スリングシート)もレンタルできますか?

吊り具は皮膚に直接触れる衛生用品のため貸与対象外で、特定福祉用具販売(年間10万円までの購入助成)の対象です。複数枚を洗い替えで購入する家庭が多くなります。

Q4. 自宅に天井走行式を取り付ける費用はどれくらい?

レール・本体・取り付け工事込みで30〜80万円程度が一般的。介護保険の住宅改修費(上限20万円)はリフト工事には適用できないため、自費負担となります。

Q5. 施設で導入すると介護職員にどんなメリットがありますか?

厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」および介護労働安定センター「介護労働実態調査」では、リフト導入施設で職員の腰痛発症が大幅に減ることが報告されており、休職・離職の抑制と人材定着につながるとされています。

まとめ

介護リフトは、要介護者の移乗を介助者が抱え上げずに行うための福祉用具で、床走行式・天井走行式・据置式・ベッド固定式の4タイプと、それを支える吊り具(スリングシート)で構成されます。介護保険上はリフト本体が貸与、吊り具が購入と分かれている点が特徴で、原則要介護2以上の方が利用対象です。職員の腰痛予防・人材定着の観点からも導入効果は大きく、ノーリフティングケアを実現する中核機器です。導入時は福祉用具専門相談員と連携し、利用者と介助者双方にとって安全な機種・吊り具を選ぶことが重要です。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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