
介護労働実態調査とは
介護労働実態調査は介護労働安定センターが毎年実施する全国調査。事業所調査と労働者調査の2本立てで、離職率・賃金・有効求人倍率など人材政策の根拠データを提供します。
この記事のポイント
介護労働実態調査とは、公益財団法人介護労働安定センターが厚生労働省の委託を受けて毎年度実施する全国規模の統計調査です。「事業所調査」と「労働者調査」の2本立てで、介護職員の離職率・賃金・採用状況・職場満足度などを集計し、介護報酬改定や処遇改善加算など人材政策の根拠データとして使われています。
目次
介護労働実態調査の概要と位置づけ
介護労働実態調査は、介護事業所における雇用管理や介護労働の実態、介護労働者の就業意識を明らかにすることを目的として、厚生労働省が公益財団法人介護労働安定センターに毎年度行わせている統計調査です。1999年(平成11年)から継続実施されており、介護分野で最長クラスの時系列データを持つ全国調査として位置づけられています。
調査は次の2本柱で構成されます。
- 事業所における介護労働実態調査(事業所調査):全国の介護事業所を対象に、労働者の確保・定着、雇用管理、人材育成、処遇改善、福利厚生、事業運営上の課題などをアンケート形式で調査します。令和6年度では9,044件の有効回答(回収率52.9%)が得られました。
- 介護労働者の就業実態と就業意識調査(労働者調査):現場で働く介護職員・訪問介護員・サービス提供責任者・看護職員などを対象に、就労条件、賃金、能力開発、仕事への満足度、職場の悩み、転職意向などを調査します。令和6年度では21,325件の有効回答(回収率41.6%)です。
調査結果は毎年7〜8月頃にプレスリリースされ、概要版・詳細報告書・公表データの3形態で介護労働安定センターのサイトから無料で公開されます。厚生労働省の社会保障審議会・介護給付費分科会が介護報酬改定や処遇改善加算の制度設計を議論する際の主要な一次データとして参照されており、現場の実態を制度に反映させる橋渡し役を担っています。
主要指標と最新データ(令和6年度調査)
令和6年度(2024年10月実施・2025年7月公表)の介護労働実態調査から、代表的な指標を抜粋します。いずれも介護労働安定センターのプレス資料に基づく数値です。
離職率・採用率
- 2職種計(訪問介護員・介護職員)の離職率:12.4%(2年連続の低下)
- 2職種計の採用率:14.3%(3年ぶりの低下)
- 離職率は全産業平均(15%前後)を下回る水準まで改善傾向
賃金・労働条件
- 所定内賃金(月給・常勤):職種・地域・経験年数別に集計
- 処遇改善加算・特定処遇改善加算の取得状況や、加算分の配分方法を事業所単位で把握
- 賞与・夜勤手当・資格手当などの諸手当の支給実態
人材確保の状況
- 「採用が困難」と回答した事業所の割合や、その理由(賃金・労働条件・社会的評価など)
- 外国人介護人材(特定技能・EPA・技能実習・在留資格「介護」)の受け入れ状況
- 有効求人倍率は厚生労働省「職業安定業務統計」と組み合わせ、全産業平均との乖離が継続的に報告
職員の構成と意識
- 年齢構成:50代以上の比率が上昇傾向、若年層の流入が課題
- 仕事への満足度、不満点、転職を考えた理由(自由回答含む)
- 研修受講状況、キャリアパスへの認識
これらの指標は、報酬改定の財源根拠や処遇改善加算の見直し議論で繰り返し引用されます。
調査結果が政策・現場で活用されるまでの流れ
- 10〜11月:調査実施。介護労働安定センターが全国の介護事業所と労働者に郵送・Web併用でアンケートを配布。
- 翌年6〜7月:集計・分析。回答を業種別・地域別・職種別に集計し、時系列比較を加えて報告書としてまとめる。
- 翌年7〜8月:公表。プレスリリース・概要版・詳細報告書をセンターのWebサイトで公開。報道機関各社が「離職率○%」「賃金○万円」と一斉に報じる。
- 秋以降:政策議論への反映。社会保障審議会・介護給付費分科会で、報酬改定・処遇改善加算・人材確保策の検討資料として使用される。
- 事業所での活用。自社の離職率・賃金水準を全国平均や業態別データと比較し、雇用管理改善や処遇制度見直しの判断材料に使う。
求人選び・転職判断に活かすポイント
介護労働実態調査は政策資料だけでなく、転職活動中の介護職員にとっても有力な比較指標になります。具体的には次のような使い方ができます。
- 応募先の離職率を全国平均と比べる:求人票や面接で離職率を確認し、全国平均(直近で12%台)と乖離が大きい事業所は、雇用管理体制を重点的に確認する。
- 賃金水準を職種・地域別に照合:報告書の職種別・地域別賃金データを、応募先の提示額と比較。地域区分や経験年数別の中央値より明らかに低い場合は理由を質問する。
- 処遇改善加算の配分方法を確認:加算を取得していても、配分方針によって個人の支給額は大きく異なる。実態調査の「加算分の配分実態」を踏まえて面接で確認する。
- 採用が困難な事業所サイドの事情を理解:採用難の業態(訪問介護・夜勤帯など)では、入職後の交渉余地が比較的大きい。市場感を踏まえて条件交渉に臨む。
- キャリアパス制度の有無:実態調査ではキャリアパス整備状況も毎年集計される。長期就業を考えるなら、応募先の研修・昇給制度の整備状況を聞く。
よくある質問
Q1. 介護労働実態調査の最新データはどこで見られますか?
公益財団法人介護労働安定センターの公式サイト「事業情報>調査研究>介護労働実態調査」ページから、毎年7〜8月頃に概要版と詳細報告書がPDFで無料公開されます。報道発表資料も同サイトに掲載されます。
Q2. 厚生労働省の「介護給与等実態調査」とは何が違いますか?
厚生労働省の調査は介護報酬改定の議論のため処遇改善加算取得事業所を対象に賃金実態を調べるもので、加算の効果検証が主目的です。介護労働安定センターの実態調査は雇用管理全般・労働者の意識まで含めて毎年継続調査する点が異なります。両者は補完関係にあり、報酬改定議論ではセットで参照されます。
Q3. 離職率が「全産業平均より低い」のは本当ですか?
はい。直近の実態調査では2職種計の離職率が12.4%まで低下しており、厚生労働省「雇用動向調査」が示す全産業平均(15%前後)を下回る水準で推移しています。ただし業態別では訪問介護員の離職率がやや高めなど、ばらつきがある点に留意が必要です。
Q4. 調査結果はどのように介護報酬改定に反映されますか?
社会保障審議会・介護給付費分科会が報酬改定の議論で参照する際、実態調査のデータをもとに「処遇改善加算の取得率」「加算が十分に職員に行き渡っているか」「人材確保上の課題」などを評価し、加算率・算定要件・新加算の創設根拠として活用します。
まとめ
介護労働実態調査は、介護労働安定センターが1999年から毎年継続している全国規模の統計で、事業所調査と労働者調査の2本立てで離職率・賃金・人材確保の実態を明らかにします。介護報酬改定や処遇改善加算の根拠データとして使われるだけでなく、転職活動中の介護職員にとっても応募先の雇用管理体制を判断する有力な比較指標になります。最新報告書は介護労働安定センターのサイトで毎年7〜8月頃に無料公開されているので、求人選びの前に一度目を通しておくと判断軸が増えます。
この用語に関連する記事

介護中の親を扶養に入れる|所得税の扶養控除・健康保険の被扶養者・別居でも対象になる条件
親を扶養に入れる2種類(税法上・健康保険上)の違いを徹底解説。老人扶養親族58万円、別居の仕送り要件、75歳の壁、要介護認定で受けられる障害者控除まで、介護中の家族向けに最新の令和7年度税制改正も反映してまとめました。

在宅介護中の介護うつ予防|サインの早期発見と4つの対策
在宅介護中の家族介護者は同居介護者の60.8%がストレスを抱えるなど介護うつのリスクが高い。睡眠障害・食欲不振・興味喪失・希死念慮の4症状チェック、Zarit介護負担尺度(J-ZBI_8)、レスパイトケア・ピアサポート・地域包括支援センター・心療内科という4つの予防策を、厚労省データに基づき解説します。

親が認知症と診断されたら|最初の30日でやるべき10ステップ
親が認知症と診断された直後の混乱期に、家族が30日以内に取り組むべき10ステップを1〜7日目/8〜14日目/15〜21日目/22〜30日目で整理。診療情報提供書の入手、要介護認定申請、ケアマネ選定、家族会議、財産管理、運転免許返納、障害者控除・医療費控除・自立支援医療の活用まで公的データに基づき解説。

在宅介護で家族が孤立しないために|社会参加と自分の時間の作り方7チャネル
主介護者の約3割が介護うつを経験する中、家族介護者の社会参加・自分の時間の作り方を7つのチャネル(レスパイト・家族会・ピアサポート・在職継続・趣味・友人・地域)に整理。厚労省「仕事と介護の両立調査」など公的データに基づき、介護うつ予防のサイン、レスパイトを社会参加に変えるスケジュール例、家族会・男性介護者の会の探し方まで2026年最新情報で解説します。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。