高額介護サービス費とは

高額介護サービス費とは

高額介護サービス費は、1か月の介護保険サービスの自己負担額が所得区分別の上限額を超えた場合に超過分が払い戻される制度。第1段階1.5万円から第6段階14.01万円までの6区分の上限額、対象外費用、申請方法と2年の時効を厚労省資料ベースで解説。

ポイント

この記事のポイント

高額介護サービス費は、同じ月に支払った介護保険サービスの自己負担額(1〜3割)の合計が所得区分ごとの負担上限額を超えたときに、超過分が市区町村から払い戻される制度です。上限額は月額1.5万円〜14万0,100円の6区分で、初回のみ申請書の提出が必要、申請の時効は対象月の翌月から2年間です。

目次

制度の位置づけと目的

高額介護サービス費は、介護保険法第51条(要介護者向け)および第61条(要支援者向けの高額介護予防サービス費)に基づいて運用される、介護費用の負担軽減制度です。介護保険サービスを利用すると利用者は所得に応じて1〜3割の自己負担を支払いますが、要介護度が重く頻繁にサービスを使う家庭では月の自己負担が10万円を超えるケースもあります。本制度はこうした世帯の家計を守るために設けられており、月単位で集計した自己負担額が所得区分別に定められた上限額を超えた場合、その超過分が後から市区町村より給付される仕組みです。

同じ介護保険には、施設サービスの居住費・食費を軽減する特定入所者介護サービス費(補足給付)や、医療費との合算で負担を抑える高額医療・高額介護合算療養費など、複数の負担軽減制度が併存します。高額介護サービス費はそのなかでも「月単位の在宅・施設サービス自己負担」に的を絞った制度であり、申請窓口は介護保険を運営する市区町村(保険者)の介護保険担当課となります。要介護認定を受け、対象の介護保険サービスを利用していることが前提条件です。

所得区分別の自己負担上限額(月額)

負担上限額は世帯の課税状況と課税所得によって6段階に区分されています。2021年8月の見直しで課税所得690万円以上の高所得層に14万0,100円の区分が新設され、現在の枠組みになっています。

段階所得区分上限額(月額)
第1段階生活保護受給者など15,000円(個人)
第2段階世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金等収入+合計所得が年80万円以下24,600円(世帯)/15,000円(個人)
第3段階世帯全員が市町村民税非課税(第2段階以外)24,600円(世帯)
第4段階市町村民税課税世帯で課税所得380万円未満(年収約770万円未満)44,400円(世帯)
第5段階課税所得380万円以上690万円未満(年収約770万〜約1,160万円)93,000円(世帯)
第6段階課税所得690万円以上(年収約1,160万円以上)140,100円(世帯)

「世帯」とは、同じ世帯のなかで介護保険サービスを使っている全員の自己負担を合算した額に対して上限が適用されることを意味します。たとえば夫婦2人がそれぞれデイサービスを利用し、合計で月5万円の自己負担を支払った第4段階世帯の場合、5万円−4万4,400円=5,600円が払い戻されます。

支給対象にならない費用

高額介護サービス費は「介護保険サービスの自己負担」を集計対象としますが、介護保険の対象外となる費用は合算に含めません。誤って計算しないよう注意が必要です。

  • 福祉用具購入費・住宅改修費:介護保険から別枠で支給されるため対象外
  • 施設サービスの居住費・食費:補足給付の対象だが本制度では合算しない
  • 差額ベッド代・理美容代・娯楽費などの日常生活費:介護保険給付対象外
  • 区分支給限度基準額を超えた利用分(全額自己負担分):保険適用外のため対象外
  • 生活援助型配食サービス費:介護保険外のサービスのため対象外

つまり、ケアプラン内で介護保険の枠内で提供された訪問介護・通所介護・ショートステイ・特養や老健の介護サービス費(食費・居住費を除く)などの自己負担額が集計対象になります。

高額医療・高額介護合算療養費との違い

名称が似ている制度に高額医療・高額介護合算療養費があり、混同されがちです。両者の違いを押さえると活用範囲が広がります。

項目高額介護サービス費高額医療・高額介護合算療養費
対象期間1か月1年(毎年8月〜翌年7月)
合算対象介護保険の自己負担のみ医療保険+介護保険の自己負担
上限額の例(一般所得課税世帯)月44,400円年56万円(後期高齢者医療+介護)
申請窓口市区町村の介護保険担当課医療保険者と市区町村の双方に書類提出

月単位で介護費が高くついた月は高額介護サービス費が、医療と介護の年間合計が膨らんだ年は合算療養費が、それぞれ独立して適用されます。両方の対象になる場合はまず高額介護サービス費が先に適用され、その残りの自己負担を年間で合算する流れです。

申請から払戻しまでの流れ

初回のみ申請書の提出が必要で、2回目以降は同じ口座へ自動的に振り込まれます。申請の時効は対象月の翌月1日から2年間で、過ぎると払戻しを受けられなくなります。

  1. 市区町村が支給対象を判定:保険者は介護給付費明細書(レセプト)から世帯ごとの自己負担を集計し、上限を超えた世帯を特定します。
  2. 申請書の郵送:対象になった月の概ね2〜3か月後に「高額介護サービス費支給申請書」が世帯主または被保険者宛てに届きます。
  3. 必要事項を記入して提出:振込口座(本人または同一世帯員の名義)、被保険者番号、印鑑などを記入し郵送または窓口提出します。
  4. 支給決定通知書の到着:審査後、決定額と振込予定日を記した通知書が届きます。
  5. 口座へ振込:申請受理から概ね1〜2か月で指定口座に振り込まれます。サービス利用月から数えると合計3〜4か月程度が目安です。
  6. 2回目以降は自動振込:一度申請すれば、その後上限を超えた月は手続きなしで同じ口座に振り込まれます。世帯員や口座を変えるときは再申請が必要です。

介護現場で家族から相談されたときのポイント

ケアマネジャー・生活相談員・施設の相談窓口では、利用料の請求書を見た家族から「こんなに払って大丈夫か」と相談を受けることがあります。次の3点を案内できると安心です。

  • 世帯合算が可能:夫婦・親子で同じ世帯にいて両方とも介護保険を使っているなら、自己負担を合算して上限を判定すると伝えると、想定より払戻し額が増えることがあります。
  • 申請時効は2年:過去にさかのぼって2年以内であれば申請可能です。郵送された申請書を放置している家族には早めの提出を促しましょう。
  • 食費・居住費は別制度:施設利用者には補足給付(特定入所者介護サービス費)の対象になる可能性があるため、所得区分の認定を受けているか確認すると総額の負担が大きく変わります。

よくある質問

Q1. 自分が対象かどうかはどう確認すれば良いですか?

市区町村が判定し、対象になった世帯には自動的に申請書が郵送されます。届いていない場合でも、月の自己負担が所得区分の上限を超えていれば申請可能なので、介護保険担当課に問い合わせてください。

Q2. 福祉用具の購入費は合算できますか?

合算できません。福祉用具購入費・住宅改修費は介護保険の別枠で支給される費用なので、高額介護サービス費の対象外です。

Q3. 過去に支払った介護費用もさかのぼって申請できますか?

サービスを受けた月の翌月1日から2年以内であれば申請可能です。たとえば2024年5月利用分は2026年5月末までが申請期限になります。

Q4. 同じ世帯で複数人が介護サービスを使っている場合はどうなりますか?

同一世帯内のすべての要介護・要支援認定者の自己負担額を合算した金額に対して上限が適用されます。たとえば夫婦2人の合計が第4段階の上限44,400円を超えれば、超過分が払い戻されます。

Q5. 施設に入所している場合の食費・居住費は対象になりますか?

対象外です。食費・居住費は特定入所者介護サービス費(補足給付)という別の制度で軽減されます。所得や預貯金額に応じて4段階の負担限度額が設定されているため、市区町村に「負担限度額認定」を申請してください。

まとめ

高額介護サービス費は、月単位の介護保険サービス自己負担を所得区分別の上限額で頭打ちにし、超過分を後から払い戻す制度です。上限額は第1段階1万5,000円から第6段階14万0,100円まで6区分で設定され、世帯内の介護保険利用者全員の自己負担を合算して判定します。施設の食費・居住費や福祉用具購入費は対象外で、これらは別制度で軽減される点も覚えておきたいポイントです。利用者・家族から相談を受けた介護現場では、申請の時効が2年であることと、初回申請後は自動振込される点を説明できると、家計面の不安を和らげる支援につながります。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

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