
看取り介護加算とは
看取り介護加算とは、介護施設で終末期ケアを提供する際に算定できる介護報酬上の加算。算定要件、加算IとIIの違い、特養・グループホーム・特定施設の単位数(死亡日72〜1,780単位)、2024年度改定の変更点を厚労省告示に基づき解説します。
この記事のポイント
看取り介護加算とは、医師により回復の見込みがないと判断された入所者に対し、特別養護老人ホーム・グループホーム・特定施設入居者生活介護などの居住系・施設系サービスで看取り介護を提供した場合に算定できる介護報酬上の加算です。死亡日45日前から死亡日までの段階に応じて72単位/日〜1,780単位/日が積み上がる仕組みで、施設によって加算I・加算IIの2区分があります。常勤看護師1名以上の配置、24時間連絡体制、看取り指針の整備、職員研修の実施、本人・家族の文書同意などが算定要件で、2024年度(令和6年度)介護報酬改定では特養・特定施設の加算IIが大幅に拡充されました。
目次
看取り介護加算の制度位置づけ|介護報酬で終末期ケアを評価する加算
看取り介護加算は、厚生労働大臣告示「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」等に位置づけられた介護報酬上の加算です。回復の見込みがないと医学的に判断された入所者に対し、施設が看取り介護を実施した場合、通常の基本報酬に上乗せして算定できる仕組みになっています。
加算が設けられた背景
多死社会の進行に伴い、病院ではなく住み慣れた介護施設で最期を迎えたいというニーズが増加しています。一方で看取り介護は、職員配置・研修・カンファレンス・グリーフケアなど通常以上の人的資源を要するため、これらの体制整備と実施を介護報酬で評価する目的で2006年度(平成18年度)改定で導入され、以降の改定で対象事業者・要件・単位数が段階的に拡充されてきました。
対象となる事業者
看取り介護加算は、以下の居住系・施設系サービスで算定できます。
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム):加算I・加算IIの両方を算定可能
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護:加算I・加算IIを算定可能
- 特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホーム・サ高住等):加算I・加算IIを算定可能
- 地域密着型特定施設入居者生活介護:加算I・加算IIを算定可能
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム):加算Iのみ算定可能
介護老人保健施設・訪問看護・看護小規模多機能型居宅介護では、看取り介護加算ではなくターミナルケア加算が用いられます。在宅サービス(訪問介護・通所介護)には看取り介護加算は設定されていませんが、訪問看護のターミナルケア加算と組み合わせることで在宅看取りに対応します。
看取り介護加算IとIIの基本的な違い
加算IIは加算Iの上位区分で、配置医師との情報共有や24時間対応体制を強化した施設で算定できます。具体的には、施設の配置医師と病状の事前情報共有について書面で取り決めをしていること、複数医師の配置または協力医療機関との連携で24時間の対応が可能なことが要件で、これらを満たす施設では死亡日の単位数が特養で1,580単位/日、特定施設で1,780単位/日と、加算Iより高い評価が得られます。
施設タイプ別の単位数|特養・GH・特定施設の最新値(2024年改定後)
看取り介護加算の単位数は、施設タイプと算定区分(I・II)、死亡日からの経過日数によって細かく区分されています。2024年度(令和6年度)介護報酬改定で見直された最新の単位数を施設別に整理します。
特別養護老人ホーム(特養)の単位数
| 算定期間 | 看取り介護加算I | 看取り介護加算II |
|---|---|---|
| 死亡日45日前〜31日前 | 72単位/日 | 72単位/日 |
| 死亡日30日前〜4日前 | 144単位/日 | 144単位/日 |
| 死亡日前々日・前日 | 680単位/日 | 780単位/日 |
| 死亡日 | 1,280単位/日 | 1,580単位/日 |
特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホーム等)の単位数
| 算定期間 | 看取り介護加算I | 看取り介護加算II |
|---|---|---|
| 死亡日45日前〜31日前 | 72単位/日 | 572単位/日 |
| 死亡日30日前〜4日前 | 144単位/日 | 644単位/日 |
| 死亡日前々日・前日 | 680単位/日 | 1,180単位/日 |
| 死亡日 | 1,280単位/日 | 1,780単位/日 |
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の単位数
グループホームは加算Iのみが設定されており、加算IIはありません。単位数は特養の加算Iと同等で、死亡日45日前〜31日前は72単位/日、30日前〜4日前は144単位/日、前々日・前日は680単位/日、死亡日は1,280単位/日です。45日間フル算定した場合の合計は7,608単位となります。
2024年度改定で変わった主なポイント
- 特養・特定施設で看取り介護加算IIの死亡日単位数が大幅に拡充(特養:1,280→1,580単位、特定施設:1,280→1,780単位)
- 短期入所生活介護(ショートステイ)に看取り連携体制加算(64単位/日)が新設され、在宅生活者のショート利用中の看取り対応が評価対象に
- 訪問介護の特定事業所加算で「看取り期の利用者対応実績1人以上」が追加要件化され、在宅看取りの裾野拡大が図られた
- 介護老人保健施設のターミナルケア加算は死亡日が1,650→1,900単位/日に拡充(看取り介護加算ではなくターミナルケア加算系統)
算定要件|加算IとIIで異なる体制要件と共通要件
看取り介護加算の算定要件は、施設としての体制整備と入所者個別の要件の2階建てになっています。加算Iと加算IIで主に施設体制要件が異なります。
看取り介護加算I・II共通の施設体制要件
- 常勤看護師1名以上の配置と、看護師による24時間連絡体制の確保
- 看取りに関する指針を定め、入所時に入所者・家族に内容を説明し同意を得る
- 多職種協働での研修の実施(医療・介護・相談員等)
- 看取りに用いる個室・静養室を確保
- 常勤の生活相談員(特養)または計画作成担当者(GH)を配置
看取り介護加算IIの追加要件(特養・特定施設)
- 施設の配置医師と病状の事前情報共有について書面による取り決めがある
- 配置医師が複数名または協力医療機関との連携で、24時間体制で必要な医療対応が可能
- 看取り介護を実施した際に医師による死亡確認・診療が記録されている
入所者個別の算定要件(共通)
- 医師が「医学的知見に基づき回復の見込みがない」と診断している
- 医師・看護師・介護職員等が共同で作成した看取り介護計画書に基づきケアを実施
- 本人または家族から看取り介護計画書への文書同意を得ている
- 看取り介護に関する記録(経過記録・カンファレンス記録等)を残している
算定上の重要な留意点
- 算定は「死亡日から遡って」行う仕組み。死亡日を起点に45日前まで遡及して各区分の単位数を積み上げる
- 退所後7日以内の死亡や、医療機関への入院後7日以内の死亡など、一定条件下では入院・退所後でも算定が認められる
- 同一月内に他の終末期関連加算(医療連携体制加算等)と重複算定する場合は、加算ごとの併算定可否を厚労省告示で確認する必要がある
- 看取り介護加算は処遇改善加算等の算定対象外単位となるため、計算時は注意
ターミナルケア加算との違い|事業者・名称・単位数で区分
看取り介護加算とターミナルケア加算は、ともに終末期ケアを評価する加算ですが、対象事業者と名称体系が明確に分かれています。算定漏れや誤算定を避けるため、両者の違いを整理しておきます。
| 項目 | 看取り介護加算 | ターミナルケア加算 |
|---|---|---|
| 主な対象事業者 | 特養・GH・特定施設 (居住系・施設系) | 老健・訪問看護・看多機 (医療連携系・在宅) |
| ケアの中心 | 生活援助中心の 看取り介護 | 医療を含む 終末期ケア |
| 死亡日の単位数 (2024年改定後) | 1,280〜1,780単位/日 | 老健1,900単位/日 訪看2,500単位 |
| 算定区分 | 加算I・加算II | 事業者ごとに単一区分 |
| 主な人員要件 | 常勤看護師1名以上 多職種研修 | 看護師の主体的関与 24時間連絡体制 |
名称が異なる理由
ケアの内容と提供主体が異なるため、名称も区別されています。看取り介護加算は介護職員を中心とする生活援助を評価する加算で、ターミナルケア加算は看護師・医師による医療行為を含むケアを評価する加算です。実際のケア現場では両者の境界が連続的なため、施設・事業所のサービス類型で算定する加算が決まると理解するとわかりやすくなります。
同じ法人内で両方を扱う事例
大規模法人では、特養(看取り介護加算)と訪問看護ステーション(ターミナルケア加算)を併設しているケースもあります。この場合、入居者は看取り介護加算、訪問看護を利用する在宅利用者はターミナルケア加算という形でサービス類型ごとに別々に算定される運用になります。
看取り介護加算に関するよくある質問
Q1. 看取り介護加算は何日前から算定できますか?
A. 死亡日から遡って45日前から算定できます。死亡日を起点に、45日前〜31日前は72単位/日、30日前〜4日前は144単位/日、前々日・前日は680単位/日、死亡日は1,280単位(加算I)または1,580単位(加算II・特養)と段階的に積み上がる仕組みです。
Q2. グループホームでも看取り介護加算は算定できますか?
A. 算定できますが加算Iのみです。認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は看取り介護加算の対象事業者で、特養の加算Iと同等の単位数(死亡日1,280単位等)が算定されます。グループホームには加算IIは設定されていません。
Q3. 加算IとIIの違いは何ですか?
A. 加算IIは加算Iの上位区分で、配置医師との情報共有の取り決めと24時間対応体制を備えた特養・特定施設で算定できます。死亡日の単位数が特養で1,280→1,580単位、特定施設で1,280→1,780単位と高くなり、特定施設では算定期間全体を通じて加算Iより大幅に高い単位設定になっています。
Q4. 看取り介護加算と医療連携体制加算は併算定できますか?
A. サービス類型と細かな要件によって異なります。グループホームでは医療連携体制加算と看取り介護加算は同一月内で併算定できる場合がある一方、組み合わせや日付によっては不可とされるケースもあります。算定にあたっては事業者所在地の保険者(市町村)または国保連合会に確認することが推奨されます。
Q5. 退所・入院後に死亡した場合は算定できますか?
A. 条件付きで算定可能です。看取り介護を実施した入所者が施設から医療機関へ入院し、その後7日以内に死亡した場合は、入院前日までの看取り介護に対して加算を算定できます。退所後7日以内の死亡も同様の扱いです。
Q6. 看取り介護計画書には何を記載すればよいですか?
A. 厚労省の様式例では、本人・家族の希望、現在の状態、看取り介護方針、ケア内容、関係職種の役割分担、医療対応の方針、家族支援などを記載します。施設で独自の様式を整備し、本人または家族の文書同意を得たうえでケアを開始するのが標準的な運用です。
Q7. 介護職員の立場で看取り介護加算はどう関わりますか?
A. 介護職員は看取り介護計画書に基づくケア実施・記録・カンファレンス参加が役割です。算定書類の作成自体は生活相談員・ケアマネが担当しますが、日々のケア記録や経過観察が算定の根拠資料となるため、看取り期の記録の質が加算算定の確実性を左右します。看取り対応経験は介護転職市場でも評価が高く、年20件以上の看取り実績がある特養・有料老人ホームではキャリアを積みやすい環境が整っています。
参考文献・出典
- [1]令和6年度介護報酬改定における看取り介護加算・ターミナルケア加算の見直し- 厚生労働省
2024年度介護報酬改定における看取り介護加算(I・II)の単位数・要件、ターミナルケア加算の改定内容を含む公的資料
- [2]
- [3]
- [4]
まとめ|看取り介護加算は施設での終末期ケアを評価する介護報酬の柱
看取り介護加算は、特養・グループホーム・特定施設などの居住系・施設系サービスで終末期ケアを提供した際に算定できる介護報酬上の加算で、死亡日45日前から死亡日まで段階的に72〜1,780単位/日が積み上がる仕組みです。施設区分により加算I・加算IIが用意され、加算IIでは配置医師との情報共有・24時間対応体制を強化した施設で死亡日の単位数が大幅に上乗せされます。
2024年度介護報酬改定では特養・特定施設の加算IIが拡充され、ショートステイの看取り連携体制加算や訪問介護の特定事業所加算要件にも看取り対応が組み込まれるなど、施設・在宅双方の看取り体制を後押しする方向性が強化されました。算定には常勤看護師1名以上の配置・看取り指針の整備・本人/家族の文書同意・看取り介護計画書に基づくケアといった要件を満たす必要があり、介護職員の日々のケア記録と多職種カンファレンスが算定の根拠となります。多死社会の進行に伴い、看取り介護加算を算定する施設・看取り対応経験を持つ介護職員の重要性は今後さらに高まっていきます。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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