認知症の人と家族の会とは

認知症の人と家族の会とは

認知症の人と家族の会(公益社団法人)は1980年京都で設立された家族介護者支援団体。全国47都道府県の支部で電話相談・つどい・会報発行を実施。活動内容・会員制度・入会方法を解説。

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この記事のポイント

認知症の人と家族の会は、1980年に京都で発足した日本初の認知症家族支援団体で、2010年に公益社団法人化されました。全国47都道府県に支部を持ち、フリーダイヤル電話相談(0120-294-456)、会報「ぽ〜れぽ〜れ」発行、当事者・家族の「つどい」を三本柱として活動しています。認知症基本法成立にも貢献した政策提言団体としても知られます。

目次

認知症の人と家族の会の概要

公益社団法人認知症の人と家族の会(本部:京都市上京区、法人番号 2130005012158)は、認知症の本人・家族・介護者・支援者が集う日本で唯一の全国規模のセルフヘルプ団体です。1980年に「呆け老人をかかえる家族の会」として任意団体で発足し、1994年に社団法人化、2006年に現名称へ改称、2010年に内閣府認定の公益社団法人へ移行しました。

設立当初は「認知症」という言葉も「家族会」という発想も社会に存在しない時代であり、家族介護者が孤立して悲劇に至るケースが少なくありませんでした。創設者の三宅貴夫医師(精神科)と京都の家族介護者たちが「介護家族同士で支え合う場が必要だ」と立ち上げたのが起点です。以後40年以上にわたり、日本の認知症政策・地域支援体制の形成に大きな影響を与えてきました。

会の理念は「認知症があっても安心して暮らせる社会」の実現で、本人・家族・社会をつなぐ存在として、国際アルツハイマー病協会(ADI)にも日本で唯一の加盟団体として参画しています。介護現場で働く専門職にとっても、家族のリアルな声に触れられる重要な接点であり、ケアマネジャー・地域包括支援センター・特養・グループホーム職員が連携先として活用するケースも増えています。

活動の三本柱と全国規模

会の活動は「つどい・電話相談・会報」の三本柱で構成され、本部と全国47都道府県の支部が連携して運営しています。2023年度の主な実績は以下のとおりです。

活動規模・実績担い手
つどい(年間開催回数)4,309回各支部・本部
つどい参加者数45,561人本人・家族・専門職
支部数47都道府県すべて地域ボランティア+専門職
会報「ぽ〜れぽ〜れ」毎月発行・通巻500号超本部編集部
電話相談(本部フリーダイヤル)0120-294-456(月〜金 10:00〜15:00)介護経験者・専門職
携帯対応相談050-5358-6578(有料)本部

「つどい」は単なる交流会ではなく、介護家族のつどい(介護経験の共有)、本人・若年のつどい(認知症本人による交流)、男性介護者のつどい(男性特有の介護課題に対応)など、対象別に細分化されているのが特徴です。専門職主導ではなく当事者・経験者が運営する「ピアサポート」モデルで、医療職や行政相談では拾いきれない感情面の支援を担っています。

会員制度・会費・入会方法

認知症の人と家族の会は会員制で運営されており、本人・家族・支援者・専門職が立場に応じて入会できます。会員になると、本部会報「ぽ〜れぽ〜れ」(毎月発行)と所属支部会報(隔月発行)が届き、つどいへの参加や電話相談を会員価格・優先枠で利用できます。

会員種別対象主な特典
本人会員認知症と診断された本人本人交流会、若年のつどい優先参加
家族会員認知症の人を介護する家族家族のつどい、電話相談、会報購読
賛助会員(個人)会の活動に賛同する個人会報購読、シンポジウム参加
賛助会員(団体)法人・施設・事業所研修連携、政策動向の入手

会費は年額制で、種別・支部により異なります(おおむね年5,000円前後)。入会申込みは公式サイト(alzheimer.or.jp)または所属希望都道府県支部の窓口から可能です。介護現場で家族支援が必要なケースに出会った専門職は、家族に対して「家族会という選択肢があること」を情報提供することも、地域包括ケアにおける重要な役割と位置づけられています。

利用方法と専門職との連携

会のサービスは「会員でなくても」利用できる窓口が多く、初めての家族にも開かれています。専門職が家族を案内するときの典型的な活用パターンは以下のとおりです。

  • 診断直後の家族:本部フリーダイヤル(0120-294-456)に相談。匿名・会員でなくても可。介護経験者が応対するため、医療職には聞きづらい生活面の不安を相談しやすい。
  • 介護に行き詰まりを感じている家族:地域支部の月例「つどい」へ案内。同じ立場の人と会うこと自体に治療的な意味がある。
  • 若年性認知症の本人・家族:本人会員制度や若年のつどいを紹介。就労継続・経済問題など、高齢者とは異なる課題に特化した場が用意されている。
  • 男性介護者(息子・夫):「男性介護者のつどい」を活用。男性介護者は孤立しやすく自殺リスクが高いため、ピアサポートの効果が大きい。
  • 看取り後のグリーフケア:介護を終えた家族も「卒業」せず参加でき、経験を次の世代に伝える役割を担う。

ケアマネジャー・地域包括支援センター・在宅医・グループホーム職員は、家族支援のリソースとして「認知症の人と家族の会」を地域資源リストに組み込んでおくと、サービス担当者会議や退院支援の場面で具体的な案内ができます。介護保険サービスでは制度上カバーされにくい「家族の精神的サポート」を補完する機能を持つ点が、本会の独自性です。

認知症政策への影響と国際連携

認知症の人と家族の会は、家族会というセルフヘルプの枠を超えて、日本の認知症政策の形成に強い影響を与えてきた団体です。社会保障審議会の介護保険部会・介護給付費分科会に委員を派遣し、当事者・家族の声を制度設計に反映させています。

  • 2024年1月施行「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」の成立過程で、当事者・家族の立場から政策提言・国会働きかけを継続的に実施。基本法は「認知症の人が尊厳を保持し希望を持って暮らせる共生社会」を国の責務として明文化した画期的な法律で、本会の長年の主張が結実した形です。
  • 2025年からは「認知症施策推進基本計画」の策定プロセスにも当事者団体として関与し、地域包括ケア・成年後見・若年性認知症支援などの具体施策に影響を与えています。
  • 国際アルツハイマー病協会(ADI)には日本で唯一加盟。2004年(京都)・2017年(京都)にADI国際会議を日本招致し、海外の家族会・本人活動と連携した政策発信を行っています。アジア圏ではADAJ(アジア太平洋認知症同盟)のメンバーとしても活動しています。
  • 「本人ミーティング」「希望宣言」など、認知症本人が自ら発信する文化を日本に定着させた立役者でもあり、これが厚生労働省の「新オレンジプラン」「認知症施策推進大綱」にも反映されています。

介護職にとっては、目の前のケアだけでなく「制度や社会が動く背景に当事者団体の活動がある」という視点を持つことで、自らの実践を社会的文脈で捉え直すことができます。

よくある質問

Q1. 会員でなくても電話相談を利用できますか?

はい、本部フリーダイヤル(0120-294-456/月〜金 10:00〜15:00)は会員・非会員を問わず無料で利用できます。匿名相談も可能で、認知症介護の経験者や専門職が応対します。携帯・スマートフォンからは050-5358-6578(有料)が利用できます。

Q2. 「つどい」はどんな雰囲気ですか?初めてでも参加できますか?

初めての方の参加を歓迎している会が大半です。介護家族のつどいは「自分の話をしてもいいし、聞くだけでもよい」スタイルで、専門職主導ではなく参加者同士で支え合う場です。地域支部により開催頻度・形式が異なるため、最寄り支部に事前連絡することをおすすめします。

Q3. 認知症本人も参加できる場はありますか?

はい。「本人のつどい」「若年のつどい」など、認知症と診断された方ご本人が当事者として参加・発言できる場が用意されています。本人会員制度もあり、本人が会の運営に関わる例も増えています。

Q4. 会費はどれくらいかかりますか?

会員種別・支部により異なりますが、年額制でおおむね5,000円前後です。最新の会費額・特典は公式サイト(alzheimer.or.jp)または所属希望支部にご確認ください。

Q5. ケアマネや施設職員も会員になれますか?

賛助会員(個人・団体)として加入できます。会報「ぽ〜れぽ〜れ」を通じて家族の生の声・最新の政策動向を継続的に得られるため、専門職のケア・相談支援の質向上に役立ちます。

まとめ

認知症の人と家族の会は、1980年京都発足、2010年公益社団法人化された日本で唯一の全国規模認知症家族支援団体です。47都道府県の支部で「つどい・電話相談・会報」の三本柱を展開し、当事者・家族のピアサポートを担うとともに、認知症基本法成立など政策面でも大きな役割を果たしてきました。介護の現場で家族支援が必要な場面に出会ったとき、フリーダイヤル0120-294-456や最寄り支部を案内できることは、専門職としての引き出しを大きく広げます。家族介護者にとっては、孤立を防ぐ最初の一歩となる存在です。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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