新オレンジプランとは

新オレンジプランとは

新オレンジプランは2015年に厚生労働省と関係12府省庁が策定した「認知症施策推進総合戦略」。7つの柱で団塊世代が75歳になる2025年に向けた認知症国家戦略。2019年大綱・2024年基本法へと発展した。

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この記事のポイント

新オレンジプランは、2015年(平成27年)1月に厚生労働省を中心とする関係12府省庁が共同策定した「認知症施策推進総合戦略」の通称です。団塊の世代が75歳以上となる2025年を見据え、認知症の人とその家族の視点を重視しながら7つの柱で施策を進める日本初の認知症国家戦略でした。その後2019年の「認知症施策推進大綱」、2024年施行の「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」へと発展し、現在の認知症施策の出発点となっています。

目次

正式名称と策定の経緯

新オレンジプランの正式名称は「認知症施策推進総合戦略 ~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~」。2015年1月27日に厚生労働省、内閣官房、内閣府、警察庁、金融庁、消費者庁、総務省、法務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省の12府省庁が共同で策定しました。

その前身である「オレンジプラン(認知症施策推進5か年計画)」は2012年9月に厚生労働省単独で策定されたものでしたが、認知症は医療・介護だけでなく住まい・地域づくり・若年性認知症の就労・本人と家族の権利擁護まで横断する課題であり、省庁横断の国家戦略への格上げが求められました。

直接の引き金になったのが2013年12月にロンドンで開かれたG8認知症サミット(現在のG7認知症サミット)です。各国首脳が「2025年までに認知症の治療法を見出す」「ケアと予防を強化する」と宣言したことを受け、日本も2014年11月に東京で後継イベントを開催し、安倍首相が「認知症施策を加速するための新たな戦略」の策定を表明しました。これが新オレンジプランとして翌2015年1月に結実した、というのが策定までの流れです。

対象期間は団塊の世代が75歳以上となる2025年。当時の推計で認知症高齢者は2025年に約700万人(高齢者の約5人に1人)に達するとされ、これに対応できる地域づくりを国家として進めることが目的でした。

新オレンジプラン7つの柱

新オレンジプランは以下の7つの柱で構成されています。それぞれが具体的な数値目標と所管省庁を伴い、後の認知症大綱・認知症基本法に引き継がれる施策の原型となりました。

  1. 認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進 — 認知症サポーター養成、世界アルツハイマーデー(9月21日)の啓発活動、学校教育での認知症教育など。
  2. 認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供 — 認知症初期集中支援チーム、認知症疾患医療センター、かかりつけ医認知症対応力向上研修、認知症ケアパスの作成など。
  3. 若年性認知症施策の強化 — 若年性認知症支援コーディネーターの全都道府県配置、就労継続・障害福祉サービスとの接続。
  4. 認知症の人の介護者への支援 — 認知症カフェ、家族介護者教室、レスパイトケア(介護者の休息のための短期入所)の充実。
  5. 認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進 — 見守り・SOSネットワーク、成年後見制度、虐待防止、運転免許制度の見直し、移動・買い物・金融機関でのバリアフリー。
  6. 認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発およびその成果の普及の推進 — 縦断研究(コホート研究)、認知症診断ガイドライン、新薬開発、ケアモデル研究。
  7. 認知症の人やその家族の視点の重視 — 当事者参画。本人ミーティング、本人発信の推進。プラン全体に貫く理念とされた柱。

7番目の柱「本人と家族の視点」が単独の柱として明記されたことは画期的で、その後の認知症政策が「本人と家族の声を起点に組み立てる」という方向に転換した出発点になりました。

代表的な施策:認知症サポーター・初期集中支援チーム・若年性認知症

新オレンジプランで掲げられた具体施策のうち、現在の介護現場や地域に定着しているものを3つ取り上げます。

認知症サポーター

認知症サポーターは、約90分の養成講座(キャラバン・メイトが講師)を受講した一般市民で、講座修了時にオレンジリング(後に認知症サポーターカード)が配布されます。新オレンジプランでは2017年度末までに800万人、その後の改定で2020年度末までに1,200万人を目標とし、現在は1,500万人を超える規模に拡大しています。職場・学校・銀行・コンビニなど地域全体で認知症の人を支える基盤となりました。

認知症初期集中支援チーム

認知症初期集中支援チームは、認知症が疑われる人や認知症の人とその家族を訪問し、おおむね6か月の集中的な支援で医療・介護サービスにつなぐ多職種チームです。市町村ごとに設置され、地域包括支援センターなどに配置されます。新オレンジプランでは2018年度までに全市町村に設置という目標が掲げられ、現在はほぼ全ての市町村に整備済みです。

若年性認知症施策

65歳未満で発症する若年性認知症は、就労・経済的問題・子育てとの両立など高齢発症とは異なる課題を抱えるため、新オレンジプランで初めて独立した柱が立てられました。具体策として、各都道府県に若年性認知症支援コーディネーターを配置し、雇用継続・障害年金・障害福祉サービス・自立支援医療への接続を一元的に支援する体制が整えられています。

オレンジプラン・新オレンジプラン・大綱・基本法の違い

日本の認知症施策は4段階で発展してきました。それぞれの位置づけを比較すると、新オレンジプランがどの段階にあたるかが理解しやすくなります。

名称 策定年 策定主体 位置づけ・特徴
オレンジプラン(認知症施策推進5か年計画) 2012年9月 厚生労働省単独 初代の認知症施策計画。医療・介護中心の5か年計画。
新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略) 2015年1月 厚労省+関係12府省庁 初の省庁横断「国家戦略」。7つの柱、対象期間〜2025年。本人・家族視点を明文化。
認知症施策推進大綱 2019年6月 認知症施策推進閣僚会議 新オレンジプランの後継。5つの柱に再編し「共生」と「予防」を車の両輪に。対象期間〜2025年。
共生社会の実現を推進するための認知症基本法 2023年6月成立/2024年1月施行 国会(議員立法) 初の認知症に関する法律。基本理念・国/自治体の責務・基本計画策定義務を規定。

ポイントは、新オレンジプランは「戦略」、大綱は「行政の最上位計画」、基本法は「法律」と段階的に法的位置づけが強くなってきたことです。新オレンジプランから10年弱で、認知症政策は厚労省の戦略から国の法律へと格上げされました。

認知症施策推進大綱(2019)への発展

新オレンジプランは2017年7月に一度改定(数値目標の前倒し)されましたが、2019年6月に「認知症施策推進大綱」として全面的に再編され、事実上の後継となりました。大綱は「共生」と「予防」を車の両輪に据え、施策を5つの柱に再整理しています。

  • ① 普及啓発・本人発信支援
  • ② 予防
  • ③ 医療・ケア・介護サービス・介護者への支援
  • ④ 認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援
  • ⑤ 研究開発・産業促進・国際展開

大綱で新たに加わった最大のキーワードが「予防」です。ただし当初案にあった「70代での認知症発症を10年間で1割減らす」という数値目標は、当事者団体から「認知症になることは予防できないことを差別する表現になりかねない」との強い批判があり、KPI(成果指標)として残しつつ、文面は「発症を遅らせる」「進行を緩やかにする」というトーンに修正されました。この議論が、後の認知症基本法における「共生」重視につながります。

認知症基本法(2024年施行)と新オレンジプランの位置づけ

2023年6月に成立し2024年1月1日に施行された「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」は、認知症に関する日本初の法律です。議員立法で成立し、政府に認知症施策推進基本計画の策定を義務づけました。基本計画は2024年12月に閣議決定され、新オレンジプラン→大綱の流れを受け継いだ国家計画として現在動いています。

基本法のポイント

  • 基本理念に「全ての認知症の人が基本的人権を享有する個人として尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができる共生社会の実現」を明記。
  • 国・地方公共団体・国民・事業者の責務を規定。
  • 9月21日を「認知症の日」、9月を「認知症月間」と法定化。
  • 政府に「認知症施策推進基本計画」、都道府県・市町村に「都道府県/市町村認知症施策推進計画」の策定(努力義務)を求める。

新オレンジプランの現在の位置づけ

政策文書としての新オレンジプランは、2019年の大綱への移行で役目を終えた前段と位置づけられています。ただし、新オレンジプランで打ち出された「7つの柱」「本人と家族の視点重視」「若年性認知症支援」「認知症サポーター」「認知症初期集中支援チーム」といった枠組みは、大綱・基本計画にそのまま継承されており、現場の介護職にとっては「現在の認知症政策の骨格を理解するための出発点」として依然として重要な文書です。

新オレンジプランに関するよくある質問

Q. 新オレンジプランの「新」とは何が新しかったのですか?

A. 2012年のオレンジプランが厚生労働省単独の5か年計画であったのに対し、新オレンジプランは関係12府省庁が共同策定した初の認知症「国家戦略」であり、医療・介護を超えて住まい・地域づくり・若年性認知症・本人と家族の権利擁護まで対象を広げた点が「新しい」位置づけです。

Q. 新オレンジプランは現在も有効ですか?

A. 政策文書としては2019年の「認知症施策推進大綱」、さらに2024年施行の「認知症基本法」とこれに基づく「認知症施策推進基本計画」に引き継がれており、新オレンジプラン単体としては役目を終えています。ただし7つの柱や具体施策の枠組みは現行制度にそのまま反映されています。

Q. 7つの柱はすべて覚えないといけませんか?

A. 介護福祉士・ケアマネジャー試験では「7つの柱」「本人と家族の視点重視」「2025年を見据えた国家戦略」というキーフレーズが頻出します。柱の番号と本文を逐字で覚える必要はありませんが、① 普及啓発、② 適時・適切な医療介護、③ 若年性認知症、④ 介護者支援、⑤ 地域づくり、⑥ 研究、⑦ 本人・家族視点という大まかな順序は押さえておくと安心です。

Q. 認知症サポーターになるには?

A. 自治体・職場・学校で開催される認知症サポーター養成講座(約90分)を受講するだけで誰でもなれます。費用は基本無料。受講するとオレンジリングや認知症サポーターカードが配布され、地域で認知症の人を見守る一員になります。

Q. 新オレンジプランと地域包括ケアシステムは何が違うのですか?

A. 地域包括ケアシステムは医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に提供する仕組み全般を指す概念で、新オレンジプランはその中の「認知症対応」部分を具体化した戦略です。地域包括ケアの傘の下に新オレンジプランがある、という関係になります。

参考文献・公的資料

まとめ

新オレンジプランは、2015年に厚生労働省と関係12府省庁が共同策定した日本初の認知症国家戦略です。7つの柱(普及啓発/医療介護/若年性認知症/介護者支援/地域づくり/研究開発/本人と家族の視点)を軸に、団塊世代が75歳以上となる2025年を見据えた施策を打ち出しました。認知症サポーター、認知症初期集中支援チーム、若年性認知症支援コーディネーターといった現場でおなじみの仕組みは、ここから整備が本格化しています。

政策文書としては2019年の「認知症施策推進大綱」、2024年施行の「認知症基本法」とそれに基づく「認知症施策推進基本計画」へとバトンが渡り、新オレンジプラン単体はすでに役目を終えていますが、その骨格は現行制度に確実に引き継がれています。介護職にとっては、現在の認知症政策がどこから来てどこへ向かっているかを理解するための「最初の地図」と言える文書です。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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