
主治医意見書とは
主治医意見書とは、要介護認定の際に主治医が作成する医学的所見の書類。介護保険法施行規則第38条に基づき市町村が依頼し、認定審査会の判定資料となる。記入項目・作成費用・依頼の流れを解説。
この記事のポイント
主治医意見書とは、要介護認定の申請があった被保険者について、市町村が主治医に対し医学的所見を求めるために作成を依頼する書類です。介護保険法第27条第3項および施行規則第38条が根拠で、認定調査結果と並ぶ二大資料として一次判定(コンピュータ判定)と二次判定(介護認定審査会)に用いられます。様式は厚生労働省が定め、診断名・特別な医療・心身の状態に関する意見・生活機能とサービスに関する意見の4部構成です。作成費用は市町村が医療機関に支払い、申請者の自己負担はありません。
目次
主治医意見書の定義と法的根拠
主治医意見書は、要介護認定の判定にあたって主治医が記入する医学的所見書です。介護保険法第27条第3項に「市町村は、認定の申請があったときは、当該被保険者の主治の医師に対し、当該被保険者の身体上又は精神上の障害の原因である疾病又は負傷の状況等につき意見を求める」と定められており、市町村が認定申請者の主治医に直接依頼を行います(介護保険法施行規則第38条)。
「主治医」とは申請者を継続的に診療している医師であり、認定申請書に氏名・医療機関名を記入してもらいます。主治医がいない場合は市町村が指定する医師の診察を受け、その医師が意見書を作成します。
意見書の様式は厚生労働省が全国統一フォーマットを定めており、認定審査会用に標準化された設問構成(診断名・特別な医療・心身の状態に関する意見・生活機能とサービスに関する意見)になっています。市町村→主治医に直接依頼が届き、記入後は市町村に返送される流れで、申請者本人に書面が渡されることはありません。
主治医意見書の主な記入項目
主治医意見書は大きく以下の項目で構成されています(厚生労働省「主治医意見書記入の手引き」より)。
- 1. 基本情報:氏名・生年月日・住所、最終診察日、意見書作成回数、ほかの主治医意見書の有無
- 2. 傷病に関する意見:診断名(要介護状態の原因疾病)と発症年月日、症状としての安定性、生活機能低下の直接の原因となる傷病の経過
- 3. 特別な医療:過去14日間に受けた処置内容(点滴、中心静脈栄養、透析、ストーマ、酸素療法、レスピレーター、気管切開、疼痛看護、経管栄養、モニター測定、褥瘡処置、カテーテル など)
- 4. 心身の状態に関する意見:日常生活の自立度(寝たきり度、認知症高齢者の日常生活自立度)、認知症の中核症状・BPSD、その他の精神・神経症状、身体の状態(麻痺・拘縮など)
- 5. 生活機能とサービスに関する意見:移動・栄養・食事・排尿排便・口腔衛生・他、サービス利用による生活機能の維持・改善の見通し、医学的管理の必要性、サービス提供時の留意事項、感染症の有無
- 6. 特記すべき事項:自由記述で介護認定審査会への伝達事項を記入
これらは認定審査会の二次判定で「介護の手間」を医学的に裏付ける情報源になり、特に認知症の自立度判定や特別な医療の有無は要介護度を1段階以上左右する重要項目です。
作成費用と支払いの仕組み
主治医意見書の作成料は申請者の自己負担はゼロで、市町村が医療機関に直接支払います(介護保険法施行規則第40条)。費用単価は厚生労働省が告示で定めており、おおむね以下の水準です(市町村により若干差があります)。
| 区分 | 新規・区分変更申請 | 更新申請 |
|---|---|---|
| 在宅患者 | 5,000円程度 | 4,000円程度 |
| 施設入所者 | 4,000円程度 | 3,000円程度 |
金額は2024年度時点の参考値で、料金は市町村が条例で定めます。費用財源は介護保険の事務費に含まれ、医療保険・診療報酬とは別建てで処理されます。なお、医療機関で「主治医意見書の作成のための診察」を受けた場合、その診察自体は通常の保険診療として扱われるため、診察料の自己負担は発生します。
認定調査票との違い
要介護認定の二大資料は「主治医意見書」と「認定調査票」ですが、作成者・観点・役割が異なります。
| 項目 | 主治医意見書 | 認定調査票 |
|---|---|---|
| 作成者 | 申請者の主治医 | 市町村職員または委託認定調査員 |
| 観点 | 医学的所見・疾病・治療の見通し | 身体機能・生活機能・認知機能の現在の状態 |
| 調査方法 | 診察記録・本人問診 | 74項目の基本調査+特記事項を訪問で聴取 |
| 一次判定での位置づけ | 特別な医療項目を加点要素として算入 | 要介護認定等基準時間の算定根拠 |
| 二次判定での役割 | 医学的な裏付け、認知症自立度の最終判定 | 介護の手間(介護量)の判断材料 |
両者は補完関係にあり、特に認知症の中核症状・BPSDの有無、生活機能低下の医学的原因については主治医意見書が一次資料となります。認定調査票の特記事項と意見書の記載内容に齟齬があると、認定審査会で議論の対象になります。
意見書作成の流れ(申請者・主治医・市町村)
- 要介護認定の申請:被保険者または家族が市町村窓口で要介護認定申請書を提出。主治医氏名・医療機関名を記入する欄あり。
- 市町村から主治医に依頼:申請受理後、市町村が主治医意見書の様式・記入の手引き・返送用封筒を医療機関に郵送する。
- 主治医による診察と記入:主治医は必要に応じて診察を行い、診療録に基づき意見書を記入。原則として申請受理後おおむね2週間以内の返送が求められる。
- 市町村に返送:完成した意見書を市町村に返送。同時に作成料の請求書を提出する。
- 認定審査会で活用:主治医意見書と認定調査票の特別な医療等を一次判定システム(要介護認定等基準時間)に投入し、二次判定(認定審査会)で総合的に要介護度を決定する。
- 認定結果の通知:原則申請から30日以内に申請者へ認定結果通知が届く(意見書遅延が30日超の主因の一つ)。
主治医意見書の遅延が認定通知の遅延に直結するため、市町村は地域の医師会と連携し、電子化された意見書システムや独自フォーマットでの効率化を進めるところも増えています。
申請者・家族・介護職が知っておくべきポイント
- 主治医がいない場合:定期通院していない高齢者は、市町村が指定する医療機関での診察が必要になり、認定が遅れることがある。事前にかかりつけ医を決めておくとスムーズ。
- 主治医に伝えるべき情報:診察時に「いつから・何が困っているか」を家族や介護職が同行して具体的に伝えると、生活機能や認知症BPSDの記載が充実する。
- 意見書の内容は本人に開示請求できる:自治体への情報公開請求で本人または法定代理人が閲覧可能。認定結果に納得できないとき、不服申立て(介護保険審査会)の根拠資料になる。
- 更新時の同一医師依頼:継続して同じ主治医が記入することで状態変化が把握しやすくなり、認定の安定性が増す。
- 介護職の役割:訪問介護員・デイサービス職員は普段の生活ぶりをケアマネ経由で主治医に伝達し、意見書の精度を高める「情報源」となる。連絡ノートに具体的な変化を残すことが重要。
よくある質問
Q1. 主治医意見書は誰が書けますか?
申請者を継続的に診療している医師(一般内科医、整形外科医、精神科医など)であれば誰でも書けます。歯科医師は対象外です。複数の主治医がいる場合は、最も状態を把握している1名に依頼するのが原則です。
Q2. 作成料は本人が払いますか?
意見書の作成料は市町村が医療機関に直接支払うため、申請者の自己負担はありません。ただし作成のための診察は通常の保険診療として扱われ、診察料の窓口自己負担(1〜3割)は発生します。
Q3. 何日くらいで完成しますか?
厚生労働省は「申請受理後おおむね2週間以内」を目安に求めていますが、医師の繁忙期や複雑な症例では3〜4週間かかることもあります。意見書の遅延が認定全体の30日ルール超過の主因となります。
Q4. 内容に納得できないときは?
認定結果に不服があれば都道府県の介護保険審査会に審査請求できます。意見書の写しを情報公開請求で取得し、認定調査票と整合性を確認した上で申し立てるのが一般的です。
Q5. 主治医意見書だけで要介護度が決まる?
決まりません。主治医意見書と認定調査票の双方を一次判定システムに投入し、コンピュータ判定後に介護認定審査会(保健・医療・福祉の専門家5名程度)が二次判定を行って最終決定します。
参考文献・出典
まとめ
主治医意見書は、要介護認定の二次判定で「介護の手間」の医学的根拠を提供する重要書類です。市町村が主治医に直接依頼し、診断名・特別な医療・心身状態・生活機能とサービスへの意見の4部構成で記入します。作成料は本人負担ゼロですが、診察料は通常通り発生します。介護職は普段の生活変化をケアマネ経由で主治医に伝達し、意見書の精度向上に貢献できます。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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