宿直勤務とは

宿直勤務とは

宿直勤務とは、定時的巡視や緊急の電話対応など、常態としてほとんど労働する必要のない夜間の勤務を指します。労働基準法41条3号と施行規則23条による許可の基準、宿直手当の最低額、そして実質的な介護業務がある「夜勤」と扱いが分かれる境界を整理します。

ポイント

宿直勤務とは

宿直勤務とは、通常の勤務時間以外に、定時的巡視や緊急の文書または電話の収受、非常事態に備えての待機などを目的として行う、常態としてほとんど労働する必要のない勤務のことです。労働基準法施行規則23条により、所轄労働基準監督署長の許可(様式第10号)を受けた場合に限り、労働基準法32条の労働時間規制を適用せずに労働者を使用できます。介護施設で実際に排泄介助や体位変換などの介護業務を行う「夜勤」は、この宿直勤務には該当しません。

目次

宿直勤務の法的な位置づけ

根拠は労働基準法41条3号と施行規則23条

労働基準法41条は、労働時間・休憩・休日に関する規定を適用しない労働者として、3号に「監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの」を挙げています。宿直・日直はこの断続的労働の一類型として扱われ、労働基準法施行規則23条が「使用者は、宿直又は日直の勤務で断続的な業務について、様式第十号によつて、所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合は、これに従事する労働者を、法第三十二条の規定にかかわらず、使用することができる」と定めています。

許可を受けて初めて適用除外になる

重要なのは、許可は事後に自動的に付与されるものではなく、事前の申請と労働基準監督署の審査を経て与えられるという点です。許可を受けていない状態で「宿直だから労働時間に含めない」という運用をすれば、その時間はそのまま労働時間として扱われ、法定労働時間を超えていれば労働基準法32条違反、割増賃金が未払いであれば37条違反になります。いずれも労働基準法119条により6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です。

許可の判断は厳格に行われる

許可基準は「規則第二十三条に基づく断続的な宿直又は日直勤務のもとに、労働基準法上の労働時間、休憩及び休日に関する規定を適用しないこととしたものであるから、その許可は、労働者保護の観点から、厳格な判断のもとに行われるべきものである」と冒頭に明記しています。労働時間規制という保護を外す仕組みである以上、対象は限定的に解釈されます。

宿直勤務の許可基準4項目

許可基準(昭和22年9月13日発基17号、昭和63年3月14日基発150号)は、次の4つの観点を挙げています。

1. 勤務の態様

常態として、ほとんど労働をする必要のない勤務のみを認めるものであり、定時的巡視、緊急の文書または電話の収受、非常事態に備えての待機などを目的とするものに限って許可するとされています。また、原則として通常の労働の継続は許可されません。

2. 宿日直手当

宿直勤務1回についての宿直手当(深夜割増賃金を含む)の最低額は、当該事業場において宿直の勤務に就くことの予定されている同種の労働者に対して支払われている賃金(労働基準法37条の割増賃金の基礎となる賃金に限る)の1人1日平均額の3分の1を下らないものであることとされています。この「割増賃金の基礎となる賃金」には、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅に要する費用に応じて算定される住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金は含まれません。

3. 宿日直の回数

宿直勤務については週1回、日直勤務については月1回が限度とされています。ただし、その事業場に勤務する18歳以上で法律上宿直・日直を行いうるすべての者に担当させてもなお不足し、かつ勤務の労働密度が薄い場合には、実態に応じて週1回を超える宿直も許可して差し支えないとされています。

4. 睡眠設備

宿直勤務については、相当の睡眠設備の設置が条件とされています。申請の際には、専用の宿直室の有無、広さ、寝具の有無や数量、冷暖房設備などについての資料を求められます。

宿直勤務と介護の夜勤はどこで分かれるか

介護施設の労務管理で最も誤解が生じやすいのが、宿直と夜勤の区別です。両者は名前が似ていても、法的な扱いが正反対に近いほど違います。

夜勤は「労働」

夜勤は、日勤と同じ介護業務を夜間に行う勤務です。排泄介助、体位変換、食事や服薬の対応、記録の作成といった業務がスケジュールとして組み込まれており、その時間はすべて労働時間としてカウントされます。1日8時間・1週40時間の枠を超えれば時間外労働として割増賃金が必要になり、午後10時から午前5時までの深夜帯には深夜割増が加算されます。

宿直は「待機」

宿直は、通常の介護業務は行わず、巡視や緊急対応に備えた待機が中心の勤務です。許可を受けていれば労働時間・休憩・休日の規定が適用されず、宿直手当という形で処遇されます。

境界を決めるのは「実態」

どちらに当たるかは、名称や賃金の払い方ではなく実態で決まります。千葉労働局が公開する申請要領は、社会福祉施設の宿日直勤務について、少数の入所児・者に対して行う夜尿起こし、おむつ取替え、検温などの介助作業であって軽度かつ短時間の作業が含まれるとしています。裏を返せば、入所者を抱えて移乗させるような身体負担の大きい介助や、複数人への定時のおむつ交換ラウンドが組み込まれている勤務は、宿直の枠に収まりません。

宿直中に通常業務が発生した場合

許可を受けた宿直勤務中であっても、宿日直業務に該当しない通常の労働に従事した場合は、その時間分について時間外労働・休日労働の取扱いとなり、宿直手当とは別に割増賃金を支払う必要があります。「許可を取ったから夜間はすべて手当で済む」という理解は誤りです。

宿直勤務の許可申請と運用の実務

申請時に求められる資料

労働局の申請要領では、断続的な宿直または日直勤務許可申請書(様式第10号)に加えて、次のような資料の添付を求めています。

  • 宿日直勤務の勤務割についての資料(予定表など)で、回数の限度を満たすことを示すもの
  • 宿日直手当が1人1日平均賃金額の3分の1以上であることを示す計算書
  • 宿日直勤務中に行われる業務の実施事項・時刻・所要時間を示した資料(業務日誌など)
  • 定時的巡視が含まれる場合はその経路や距離を示した見取図
  • 宿直室の見取図や写真など、睡眠設備を示す資料

原則として実地調査が行われるため、書面上の建付けと現場の実態が一致していることが前提になります。

職員が確認しておきたいこと

自分の勤務が宿直として扱われている場合、まず事業所が労働基準監督署の許可を受けているかを確認します。そのうえで、実際の夜間業務の内容と回数を記録に残しておくと、許可の前提が崩れていないかを検証できます。夜間に通常の介護業務を継続して行っているのに宿直手当だけで処理されているようであれば、割増賃金の未払いが生じている可能性があります。

許可は取り直しが必要になる場合がある

許可を受けた後でも、勤務の内容が変わったり、賃金水準が上がって手当額が3分の1の基準を下回ったりすれば、前提が崩れます。労働基準監督署は、宿日直手当について将来にわたって基準を下回らないようにすることを条件として付す運用をしています。

宿直勤務のよくある質問

Q宿直と夜勤はどう違うのですか。

夜勤は通常の介護業務を夜間に行う労働で、全時間が労働時間としてカウントされます。宿直は巡視や緊急対応への待機が中心で、常態としてほとんど労働する必要のない勤務に限られ、労働基準監督署長の許可を受けた場合にのみ労働時間・休憩・休日の規定が適用除外になります。

Q許可を受けずに宿直として扱うとどうなりますか。

その時間は労働時間として扱われます。法定労働時間を超えていれば労働基準法32条違反、割増賃金が未払いであれば37条違反となり、いずれも同法119条により6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です。過去にさかのぼった未払い賃金の支払いを求められることもあります。

Q宿直手当はいくら以上必要ですか。

許可基準では、宿直勤務1回あたりの宿直手当(深夜割増賃金を含む)の最低額を、その事業場で宿直に就くことが予定されている同種の労働者に支払われている賃金(割増賃金の基礎となる賃金に限る)の1人1日平均額の3分の1以上としています。金額は事業場ごとの賃金水準で変わるため、計算書を作成して確認します。

Q宿直は週に何回まで入れられますか。

原則として宿直は週1回、日直は月1回が限度です。ただし、宿直を行いうるすべての職員に担当させてもなお不足し、かつ労働密度が薄い場合には、実態に応じて週1回を超える許可が出ることもあります。

Q宿直中に急変対応をした時間はどう扱いますか。

宿日直業務に該当しない通常の労働に従事した時間として扱われ、宿直手当とは別に時間外労働・休日労働の割増賃金を支払う必要があります。こうした対応が頻繁に発生し常態化している場合は、そもそも宿直の許可基準を満たさなくなります。

宿直勤務の参考資料

宿直勤務のまとめ

宿直勤務は、労働基準法41条3号と同法施行規則23条に基づき、労働基準監督署長の許可を受けて初めて労働時間規制の枠外に置かれる特別な勤務形態です。許可の前提は、常態としてほとんど労働する必要がないこと、手当が1人1日平均賃金額の3分の1以上であること、回数が限度内であること、相当の睡眠設備があることの4点です。実質的な介護業務がある勤務は宿直ではなく夜勤であり、労働時間として扱わなければなりません。名称ではなく実態で判断されるという原則を、シフト設計の段階から意識しておく必要があります。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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