ストレスコーピングとは
介護職向け

ストレスコーピングとは

ストレスコーピングとは、ストレスにうまく対処するための行動や思考のこと。心理学者ラザルスらの理論をもとに、問題焦点型・情動焦点型などの分類と、介護職のストレスマネジメントへの活かし方を解説します。

ポイント

ストレスコーピングの定義(回答カプセル)

ストレスコーピング(stress coping)とは、ストレスの原因やそれによって生じる不快な感情に対処するための、意図的な行動や考え方のことです。心理学者リチャード・ラザルスとスーザン・フォルクマンが提唱した理論にもとづき、大きく問題焦点型コーピング(ストレスの原因そのものに働きかける)と情動焦点型コーピング(ストレスで生じた感情を和らげる)に分けられます。感情労働の負荷が高い介護職では、セルフケアとして自分に合ったコーピングを増やすことがバーンアウト予防につながります。

目次

ストレスコーピングの概要と認知的評価

ストレスコーピングとは何か

コーピング(coping)は英語で「対処する」を意味し、ストレスコーピングはストレスに対処する行動全般を指します。ラザルスとフォルクマンは、同じ出来事でもストレスの感じ方には個人差があり、その差を生むのが認知的評価だと考えました。人は出来事に直面すると、まず「これは自分にとって脅威か(一次的評価)」を判断し、続いて「自分はこれに対処できるか(二次的評価)」を見積もります。この評価の結果として、どのコーピングを使うかが選ばれます。

重要なのは、ストレスの大きさは出来事そのものだけでなく、それをどう受け止め、どう対処できると感じるかによって変わるという点です。つまりコーピングは、あらかじめ決まった反応ではなく、状況に応じて選び取れる「対処のレパートリー」です。使えるコーピングの引き出しが多いほど、ストレスの高い場面でも柔軟に立て直しやすくなります。

介護の現場は、利用者やご家族との関係、看取り、人手不足、感情労働など、ストレス要因が複合的に重なりやすい職場です。だからこそ、自分がふだんどんなコーピングを使っているかを知り、偏りを補うことがセルフケアの土台になります。

ストレスコーピングの問題焦点型と情動焦点型の違い

問題焦点型と情動焦点型

ラザルスとフォルクマンは、コーピングを大きく2つのタイプに分けました。どちらが優れているというものではなく、状況に応じた使い分けが大切です。

  • 問題焦点型コーピング:ストレスの原因そのものに働きかけて解決を図る対処です。自分の努力や周囲の協力で問題を減らします。介護現場でいえば、業務手順を見直す、上司に人員配置を相談する、必要な情報を集めて段取りを整える、といった行動が該当します。状況を変えられる場面で効果的です。
  • 情動焦点型コーピング:ストレスによって生じた不快な感情そのものを和らげる対処です。気分転換、リラクゼーション、深呼吸、信頼できる人に気持ちを話す、といった方法があります。すぐには状況を変えられない場面(看取りや理不尽な出来事など)で、心の消耗を防ぐのに役立ちます。

状況をコントロールできるときは問題焦点型が、変えられない現実を受け止める必要があるときは情動焦点型が向いています。どちらか一方に偏らず、両方を使い分けられることが、ストレスへの回復力(レジリエンス)を支えます。

ストレスコーピングの具体的な種類

コーピングの具体例

2つの大分類は、実践面ではさらに細かく整理されます。介護職が使いやすいものを中心に挙げます。

  • 問題解決型:課題を洗い出し、手順や優先順位を決めて対処する(問題焦点型)。
  • 社会的支援探索型:同僚や上司、家族に相談し、助言や協力を得る(問題焦点型・情動焦点型の両面)。
  • 認知的再評価型:出来事の受け止め方を意図的に変える。リフレーミングもこの一種で、「失敗」を「学びの機会」と捉え直すなど(情動焦点型)。
  • 気晴らし型(ストレス解消型):運動・趣味・睡眠・入浴などで気分を切り替え、心身をリセットする(情動焦点型)。
  • 情動表出型:溜め込まず、信頼できる相手に気持ちを話したり書き出したりして感情を外に出す(情動焦点型)。

飲酒や過食などで一時的に紛らわす方法も情動焦点型に含まれますが、健康を損なう対処に偏ると逆効果です。健全なコーピングの引き出しを意識的に増やすことがポイントです。

ストレスコーピングを介護職のセルフケアに活かす

介護職のストレスマネジメントへの活かし方

コーピングは知識として知るだけでなく、日々のセルフケアに落とし込むことで力を発揮します。

  • コーピングリストをつくる:自分が心地よく感じる気晴らしや対処法を、あらかじめ紙やスマホに書き出しておきます。ストレスが高いときほど良い対処が思いつきにくいため、事前のリスト化が有効です。
  • 「変えられること」と「変えられないこと」を仕分ける:変えられることには問題焦点型で働きかけ、変えられないことには情動焦点型で心を守る、と切り替えると空回りが減ります。
  • 一つに頼りすぎない:気晴らしだけ、我慢だけ、と偏ると別の不調を招きます。複数のコーピングを組み合わせるのが理想です。
  • 職場の仕組みも使う:ストレスチェック制度や相談窓口、デスカンファレンスは、個人のコーピングを補う組織的な支援です。抱え込まずに活用しましょう。

ストレスコーピングのよくある質問

Q問題焦点型と情動焦点型のどちらが効果的ですか?

状況によります。自分の努力で状況を変えられる場面では問題焦点型が、看取りや理不尽な出来事などすぐには変えられない場面では情動焦点型が向いています。どちらか一方に偏らず、状況に応じて使い分けられることが大切です。

Qストレスコーピングとストレスマネジメントは同じ意味ですか?

厳密には異なります。ストレスコーピングは個々の「対処行動」を指し、ストレスマネジメントはコーピングも含めて、ストレスの気づき・予防・対処・回復までを組織的・継続的に管理する広い取り組みを指します。コーピングはストレスマネジメントの中核的な手段です。

Qコーピングの引き出しを増やすにはどうすればよいですか?

自分が心地よいと感じる気晴らしや対処法をリスト化しておくのが有効です。運動・趣味・会話・書き出しなど種類の異なるものを複数用意し、実際に試して効果を確かめながら、自分に合うものを少しずつ増やしていきます。

Q我慢や気晴らしはコーピングとして良くないのですか?

気晴らしは有効な情動焦点型コーピングですが、飲酒や過食のように健康を損なう方法に偏ると逆効果です。我慢だけで問題を放置するのも消耗を招きます。健全な方法を複数組み合わせることが望ましいとされます。

ストレスコーピングの参考資料

ストレスコーピングのまとめ

まとめ

ストレスコーピングとは、ストレスの原因や不快な感情に対処するための行動や考え方で、ラザルスらの理論では問題焦点型と情動焦点型に大別されます。状況を変えられるときは問題焦点型、変えられないときは情動焦点型、と使い分け、健全なコーピングの引き出しを複数もつことが、感情労働の負荷が高い介護職のセルフケアとバーンアウト予防につながります。個人の対処に加えて、職場のストレスチェックや相談体制を組み合わせることが、長く働き続けるための支えになります。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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