
退職金共済とは
退職金共済は事業所が掛金を払い退職時に職員へ支給する公的共済。介護分野では中退共とWAM退職共済が主流で、加入事業所間の転職なら通算可能。
この記事のポイント
退職金共済は、事業所が外部の共済機関に毎月掛金を支払い、職員退職時に共済機関から職員へ退職金を支給する公的制度です。介護分野では「中小企業退職金共済(中退共)」と「社会福祉施設職員等退職手当共済(WAM退職共済)」の2制度が主流で、加入事業所間の転職なら掛金期間を通算できる「ポータビリティ」が大きなメリット。事業所閉鎖時にも職員への支給が確実に行われる安全装置として機能します。
目次
2つの退職金共済の違い
介護分野で利用される退職金共済は主に2種類です。
1. 中小企業退職金共済(中退共)
独立行政法人 勤労者退職金共済機構が運営する公的共済。中小企業退職金共済法に基づき、中小規模の事業所(介護分野では訪問介護・通所介護・有料老人ホーム等)が加入。掛金月額5,000〜30,000円で事業所選択、職員1人あたり毎月積立。
2. 社会福祉施設職員等退職手当共済(WAM退職共済)
独立行政法人 福祉医療機構が運営する社会福祉法人向け共済。社会福祉法人の特養・障害者施設・保育所等が加入。社会福祉法人の8割超が加入しており、平均支給額は中退共より高めの傾向。
共通の仕組み
- 事業所が掛金を全額負担(労働者負担なし)
- 事業所が共済機関に届出した職員が被共済者
- 退職時に共済機関から職員へ直接支給
- 事業所閉鎖時も支給が保証される
中退共とWAM退職共済の比較
| 項目 | 中退共 | WAM退職共済 |
|---|---|---|
| 加入対象 | 中小事業所全般 | 社会福祉法人・社会福祉施設 |
| 運営 | 勤労者退職金共済機構 | 福祉医療機構(WAM) |
| 掛金月額 | 事業所が5,000〜30,000円から選択 | 制度で定額(11,300円/月・職員1人あたり、2024年度) |
| 掛金負担 | 事業所100% | 事業所 + 国・自治体補助 |
| 20年勤続支給目安 | 200〜400万円 | 300〜500万円 |
| 通算(ポータビリティ) | 中退共加入事業所間で可 | WAM加入事業所間で可 |
社会福祉法人系で長く勤める方はWAM退職共済の優位性が高く、有料老人ホーム・訪問介護で勤める場合は中退共が中心となります。
共済加入有無の確認方法
1. 求人票・施設見学時に質問
「退職金制度ありますか?」だけでなく「中退共加入ですか/WAM退職共済加入ですか/自己積立型ですか」と具体的に質問。確認しないまま入職するとあとから不明になります。
2. 就業規則の退職金規程をチェック
労働基準法第106条で就業規則は労働者の閲覧権が保証されています。退職金規程に「中退共加入」「WAM退職共済加入」の記載があれば該当。
3. 共済機関の事業所検索
中退共の公式サイトで事業所名を検索すると加入有無を確認可能。WAM退職共済も同様。
4. 転職時の「通算手続き」
中退共加入事業所間/WAM退職共済加入事業所間の転職なら、共済の通算手続きを行うことで前職分が継続される。共済機関への届出は事業所側が行うため、入職時に「前職で◯◯共済に加入していました」と伝えると円滑に進みます。
退職金共済のよくある質問
Q. 共済の支給額は基本給連動ですか?
A. いいえ、共済は基本給連動ではなく「掛金月額×加入月数×支給率」で算定。基本給が低い若手職員でも一定の掛金を払い続ければ着実に増えます。
Q. 共済に加入していない事業所はどうなりますか?
A. 自己積立型の退職金規程か、退職金制度なしのどちらか。介護分野では訪問介護事業所や小規模有料老人ホームで「退職金なし」が珍しくありません。長期勤務を見据える方は共済加入事業所を選ぶのが安全策。
Q. 共済加入だけで退職金規程は無くて良いですか?
A. 共済加入の場合、就業規則に「退職金は中退共/WAM退職共済から支給する」旨を明記するのが法律上の義務(労基法第89条)。共済からの支給額が退職金そのものとなり、事業所独自の上乗せがある場合のみ別途規程が必要です。
参考文献・出典
- [1]中小企業退職金共済法- e-Gov法令検索
- [2]中退共 公式サイト- 勤労者退職金共済機構
- [3]WAM退職共済- 福祉医療機構(WAM)
- [4]社会福祉施設職員等退職手当共済法- e-Gov法令検索
- [5]労働基準法第89条 就業規則- e-Gov法令検索
まとめ
退職金共済は介護分野での長期キャリアを支える最重要の経済的セーフティネットです。中退共/WAM退職共済どちらを使うかは事業所種別で決まりますが、加入事業所間の通算で長期勤続のメリットを失わずに済む点が共済の大きな利点。求人選びの段階で「共済加入の有無・種別」を必ず確認する習慣をつけ、転職時にも前職分の通算手続きを忘れずに行いましょう。事業所閉鎖や経営悪化時にも支給が保証されるため、自己積立型より安全性が高い制度設計です。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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