
Tinetti(POMA)とは
Tinetti(POMA)は1986年にMary Tinetti博士が開発した、バランス9項目と歩行7項目の計28点で高齢者の転倒リスクを評価するスケール。19点以下で転倒リスク高と判定する。
この記事のポイント
Tinetti(ティネッティ)は、1986年にMary E. Tinetti博士が開発した高齢者向けのバランス・歩行評価ツールで、正式名称をPerformance-Oriented Mobility Assessment(POMA)といいます。バランス9項目(16点満点)と歩行7項目(12点満点)の合計28点で構成され、19点以下を転倒リスク高、20〜23点を中等度と判定します。特別な機器が不要で約10〜15分で実施でき、リハビリ・介護現場で広く使われています。
目次
Tinetti(POMA)の概要と歴史
Tinetti評価は、米イェール大学の老年医学者Mary E. Tinetti博士が1986年に発表した「Performance-Oriented Assessment of Mobility Problems in Elderly Patients」(Journal of the American Geriatrics Society)で提唱されたパフォーマンス評価法です。論文タイトルから「POMA(Performance-Oriented Mobility Assessment)」とも呼ばれ、研究分野では POMA、臨床現場では「Tinetti(ティネッティ)」と通称されます。
開発の背景には、地域在住高齢者の転倒が年間転倒率30%超に達するにもかかわらず、椅子と歩行スペースだけで簡便に転倒リスクを定量化できるツールが乏しかったという課題があります。Tinetti博士は、診察室で日常的に観察するバランス保持・立ち上がり・歩容を点数化し、転倒予測に活かす設計としました。
評価はバランスサブスケール(座位・立ち上がり・立位・押し試験・閉眼・回転・着座など9項目)と歩行サブスケール(歩行開始・歩幅・対称性・連続性・経路・体幹・踵-つま先間隔の7項目)の二部構成です。所要時間は10〜15分、必要な道具は硬い椅子と直線5m程度の歩行路だけで、訪問リハや特養のフロアでも実施できます。
日本では理学療法士・作業療法士による転倒予防アセスメントとして普及し、回復期リハ病棟・通所リハ・地域支援事業の機能訓練でも採用例が多いツールです。
Tinettiの配点と転倒リスク判定基準
サブスケール構成(合計28点)
| サブスケール | 項目数 | 満点 |
|---|---|---|
| バランス(Balance) | 9項目 | 16点 |
| 歩行(Gait) | 7項目 | 12点 |
| 合計 | 16項目 | 28点 |
転倒リスクのカットオフ値
| 合計点 | 判定 | 臨床的な意味 |
|---|---|---|
| 24〜28点 | 低リスク | 転倒リスクは低い水準。現状の生活動作を維持 |
| 20〜23点 | 中等度リスク | 環境調整やバランス練習の介入を検討 |
| 19点以下 | 高リスク | 転倒予防プログラムの導入と環境整備を優先 |
主なバランス項目(16点満点)
- 座位バランス/椅子からの立ち上がり/立ち上がり試行
- 立位直後5秒間/持続的立位/軽い押し試験/閉眼立位
- 360度方向転換/着座動作
主な歩行項目(12点満点)
- 歩行開始のためらい/歩幅と足の挙上(左右)
- 歩行の対称性/歩行の連続性/経路逸脱
- 体幹の動揺/踵-つま先の距離(歩隔)
各項目は0〜1点または0〜2点で採点し、点数が高いほど機能が保たれていることを意味します。
Berg Balance Scale・TUGとの違い
転倒リスク評価は複数のスケールが併用されますが、Tinettiは「バランス+歩行」を1つの指標に統合できる点が特徴です。
| 項目 | Tinetti(POMA) | Berg Balance Scale | TUG |
|---|---|---|---|
| 評価対象 | バランス+歩行 | バランスのみ | 移動能力(時間) |
| 項目数 | 16項目 | 14項目 | 1課題 |
| 満点 | 28点 | 56点 | 秒数で測定 |
| 所要時間 | 10〜15分 | 15〜20分 | 1〜2分 |
| 高リスク基準 | 19点以下 | 45点以下 | 13.5秒以上 |
| 必要な道具 | 椅子・歩行路 | 椅子・踏み台・物差し | 椅子・ストップウォッチ |
使い分けの目安:歩行能力まで含めて多面的に評価したいときは Tinetti、バランス機能を細かく刻みたいときは Berg Balance Scale、短時間スクリーニングや経時的変化の追跡には TUG が向きます。介護現場では「TUG でスクリーニング → 高リスク例に Tinetti を追加実施」という併用も一般的です。
介護現場でTinettiを活かすポイント
- 初回評価とフォロー評価の比較:入所・通所開始時と3〜6か月ごとに再評価し、点数推移で介入効果を可視化する。
- 低得点項目をピンポイントに介入:「立ち上がり」「方向転換」「歩幅」など失点項目を抽出し、機能訓練や生活リハの目標に直結させる。
- 多職種カンファレンスでの共通言語:理学療法士・作業療法士・介護職・ケアマネが28点という共通指標で利用者像を共有し、ケアプランへ反映する。
- 環境調整との連動:19点以下と判定された利用者には手すり増設・敷物撤去・夜間照明改善などのハード対策を優先する。
- 家族向け説明にも有効:「28点中◯点で転倒リスクが高い」と数字で示すことで、在宅介護家族の理解と協力を得やすい。
Tinettiに関するよくある質問
Q. Tinettiは誰でも実施できますか?
採点基準を理解していれば理学療法士・作業療法士・看護師に加えて介護福祉士でも実施可能です。多くの施設では入職時研修や勉強会で採点ルールを共有し、評価者間の差を最小化しています。
Q. 何点以下なら転倒リスクが高いと考えるべきですか?
一般的なカットオフは19点以下が高リスク、20〜23点が中等度リスクです。地域在住高齢者を対象とした研究では、19点以下で1年以内の転倒リスクが顕著に上昇すると報告されています。
Q. Tinettiと TUG はどちらを優先すべきですか?
短時間で多人数をスクリーニングするなら TUG、バランスと歩行を統合的に評価したいなら Tinetti が向きます。両者は補完関係にあり、TUG が13.5秒を超えた利用者に Tinetti を追加実施する運用も一般的です。
Q. 評価結果はどう介護計画に反映しますか?
失点した項目(例:方向転換で減点)を機能訓練の目標に設定し、3〜6か月後に再評価して点数推移をケアプランに記録します。低得点者には居室・廊下の環境調整も並行して実施します。
Q. 認知症があっても実施できますか?
口頭指示が理解でき、座位・立位が一定時間保持できれば実施可能です。指示理解が難しい場合はジェスチャーで補い、必要に応じて評価者がそばで安全確保を行います。
参考文献・出典
- Tinetti ME. Performance-Oriented Assessment of Mobility Problems in Elderly Patients. Journal of the American Geriatrics Society. 1986;34(2):119-126.(オリジナル論文)
- 公益社団法人 日本理学療法士協会「理学療法ガイドライン」(バランス・歩行評価の項)
- 厚生労働省「介護予防マニュアル(改訂版)」転倒予防プログラムの章 — https://www.mhlw.go.jp/
- 独立行政法人 福祉医療機構 WAM NET「介護予防・日常生活支援総合事業」関連資料 — https://www.wam.go.jp/
- American Geriatrics Society / British Geriatrics Society. Clinical Practice Guideline: Prevention of Falls in Older Persons.(高齢者転倒予防ガイドライン)
まとめ
Tinetti(POMA)は、バランス9項目と歩行7項目の28点満点で高齢者の転倒リスクを定量化できる、簡便かつ信頼性の高いパフォーマンス評価法です。19点以下は高リスク、20〜23点は中等度というカットオフを起点に、機能訓練・環境調整・多職種カンファレンスの共通言語として活用できます。Berg Balance Scale や TUG と組み合わせて、利用者一人ひとりの転倒予防プランを構築していきましょう。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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