
CAM(せん妄評価法)とは
CAM(Confusion Assessment Method)はせん妄を短時間で判定する国際的スクリーニング。4徴候アルゴリズム、CAM-ICUやDSTとの違い、介護現場での『いつもと違う』観察と看護師連携への活かし方を解説。
CAM(せん妄評価法)の要点
CAM(Confusion Assessment Method、せん妄評価法)は、せん妄を短時間で判定するために1990年に米国のInouyeらが開発した国際的スクリーニングツールです。「急性発症と変動する経過」「注意障害」「思考の解体」「意識レベルの変化」の4徴候を、決められたアルゴリズムに当てはめて評価します。医師でなくても訓練を受けた看護師や多職種が使える簡便さから、世界で最も広く用いられているせん妄評価法のひとつです。
目次
CAM(せん妄評価法)の概要とアルゴリズム
CAM(せん妄評価法)とは何か
CAMは、精神科医でなくてもベッドサイドでせん妄を見分けられるように設計された評価ツールです。せん妄は「意識・注意・認知が急性かつ変動性に障害される状態」で、高齢者では手術後や感染症、環境変化などをきっかけに突然現れます。認知症と症状が重なるため見逃されやすく、CAMはその判別を助けます。
CAMは診断基準であるDSM(精神疾患の診断・統計マニュアル)のせん妄の考え方をもとに、4つの徴候へ整理したものです。もともとは10項目の評価から、診断に直結する4項目を抜き出したアルゴリズムとして知られています。日本語版CAMも作成され、妥当性研究では感度83.3%・特異度97.6%と報告されており、せん妄を「ある」と判定したときの確からしさ(特異度)が高いのが特徴です。
評価は、まず注意力や見当識を確かめる短い問診や観察を行い、その所見を4徴候に当てはめる流れで進みます。数分で完了するため、日々のケアの中で繰り返しチェックしやすいのが利点です。
CAMの4徴候と判定アルゴリズム
CAMの4徴候と判定ルール
CAMは次の4つの徴候を評価し、決まった組み合わせでせん妄と判定します。
- 徴候1:急性発症と変動する経過
普段と比べて精神状態が急に変化したか、その状態が1日の中で強くなったり弱くなったりするか。 - 徴候2:注意障害
話に集中できない、気が散りやすい、質問を繰り返す必要があるなど、注意を保てない状態か。 - 徴候3:思考の解体(まとまりのなさ)
話の筋が通らない、脈絡のない会話、話題が次々に飛ぶなど、思考がまとまらない状態か。 - 徴候4:意識レベルの変化
過度に覚醒している、ぼんやりしている、傾眠、昏迷など、清明でない意識状態か。
判定ルール:「徴候1」と「徴候2」の両方があり、さらに「徴候3」または「徴候4」のいずれかがあるときに、せん妄の可能性が高いと判定します。1と2が必須、3か4が1つでも加われば陽性、という組み合わせがCAMの核心です。
CAMとCAM-ICU・DSTの違い
CAM・CAM-ICU・DSTの違い
せん妄の評価法はいくつかあり、使う場面によって使い分けられます。CAMを軸に、代表的なツールとの位置づけを整理します。
| ツール | 主な対象・場面 | 特徴 |
|---|---|---|
| CAM | 一般病棟・外来・在宅など会話ができる人 | 4徴候アルゴリズム。問診と観察を組み合わせて判定 |
| CAM-ICU | 人工呼吸器装着など発語できない集中治療室の患者 | CAMを非言語で評価できるよう改変。指示動作や視覚課題で判定 |
| DST | 一般病棟・介護現場(日本で開発) | Delirium Screening Tool。観察中心で、看護記録から評価しやすい |
大きな違いは「発語できるかどうか」と「観察中心か問診中心か」です。CAMは会話が成り立つ人に適し、話せない重症患者にはCAM-ICUを用います。日本の介護・看護現場では、日常の観察をそのまま点数化しやすいDSTも広く使われており、CAMと補い合う関係にあります。介護現場では診断そのものは行いませんが、これらの視点を知っておくと「せん妄かもしれない」という気づきの精度が上がります。
CAMの視点を介護現場で活かす
介護現場での「いつもと違う」観察と看護師連携
介護職がCAMで診断を下すことはありませんが、4徴候の視点は日々の観察に直接役立ちます。とくに徴候1(急に始まり、時間帯で強さが変わる)と徴候2(注意が続かない)は、介護職がいちばん早く気づける変化です。
- ベースラインを知っておく:その人の普段の受け答え・会話の様子を把握しておくと、「急な変化」に気づきやすくなります。
- 時間帯の記録:夕方から夜間に悪化する(夜間せん妄)ことが多いため、いつ・どんな様子だったかを具体的に記録します。
- 注意力の観察:話が通じにくい、同じことを繰り返す、視線が合わないなどは注意障害のサインです。
- 看護師・医師への報告:「いつもと違う」を主観で終わらせず、いつから・どの徴候が・どう変動しているかを4徴候に沿って伝えると、看護師が評価や受診判断につなげやすくなります。
せん妄は身体の異常(感染・脱水・薬剤など)のサインであることが多く、早期の気づきと連携が回復を左右します。
CAM(せん妄評価法)のよくある質問
よくある質問
CAMは介護職でも使えますか?
CAMは訓練を受けた医療者向けの評価ツールで、判定や診断は看護師・医師が行います。介護職は4徴候の視点を観察と報告に活かすのが基本です。
CAMとCAM-ICUはどう違いますか?
CAMは会話ができる人向け、CAM-ICUは人工呼吸器装着など発語できない集中治療室の患者向けに改変されたものです。評価する4徴候の考え方は共通します。
せん妄と認知症はCAMで見分けられますか?
CAMの徴候1「急性発症と変動する経過」が最大の手がかりです。認知症は数か月から年単位でゆっくり進むのに対し、せん妄は数時間から数日で急に現れ、日内変動があります。ただし両者は併存することも多く、最終判断は医師が行います。
DSTとどちらを使えばよいですか?
場面によります。会話で確認しながら評価するならCAM、日々の観察記録から評価するならDSTが向きます。施設や病棟の運用に合わせて選ばれます。
CAM(せん妄評価法)の参考資料
- [1]Clarifying confusion: the confusion assessment method (Inouye SK, et al. 1990)- Annals of Internal Medicine / PubMed
CAMを最初に提唱したInouyeらの原著論文。4徴候アルゴリズムの原典。
- [2]Confusion assessment method: a systematic review and meta-analysis of diagnostic accuracy- PMC (National Library of Medicine)
CAMの4徴候アルゴリズムと診断精度に関するシステマティックレビュー・メタ分析。
- [3]
- [4]Confusion Assessment Method for the Intensive Care Unit (CAM-ICU) for the diagnosis of delirium in adults in critical care settings- Cochrane / PubMed
CAM-ICUの集中治療領域でのせん妄診断精度に関するレビュー。
CAM(せん妄評価法)のまとめ
まとめ
CAM(せん妄評価法)は、4徴候(急性発症と変動する経過・注意障害・思考の解体・意識レベルの変化)をアルゴリズムに当てはめてせん妄を短時間で判定する国際的なツールです。徴候1と2が必須で、3か4が加われば陽性と考えます。介護職が判定を行うことはありませんが、この4つの視点は「いつもと違う」を具体的に言語化し、看護師や医師への的確な報告につなげる強力な手がかりになります。せん妄は身体の異常のサインであることが多く、早い気づきが回復を左右します。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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