CAPD(持続携行式腹膜透析)とは

CAPD(持続携行式腹膜透析)とは

CAPD(持続携行式腹膜透析)は1日4回程度のバッグ交換で行う在宅型透析。血液透析やAPDとの違い、介護現場で家族・職員が押さえる感染兆候と観察項目を解説します。

ポイント

この記事のポイント

CAPD(Continuous Ambulatory Peritoneal Dialysis/持続携行式腹膜透析)は、おなかにカテーテルを留置し、透析液を腹腔内に入れ替えることで在宅で行う透析療法です。1日4回程度のバッグ交換を本人や家族が手作業で行い、通院は月1〜2回程度に抑えられるため、施設入居者や在宅高齢者の生活制約が血液透析(HD)より少ないのが特徴です。

目次

CAPDの基本のしくみ

CAPDは、腹部に埋め込んだ専用カテーテル(テンコフカテーテル)を通じて、透析液1.5〜2.0Lを腹腔内に注入し、4〜6時間ほど貯留して老廃物と余分な水分を取り除く治療法です。血液透析(HD)が機械を使って血液を体外で浄化するのに対し、CAPDは自身の腹膜を半透膜として利用するため、24時間ゆるやかに透析が継続される点が大きく異なります。

日本透析医学会の「2023年末わが国の慢性透析療法の現況」によれば、国内の透析患者約34.8万人のうち腹膜透析を選択している人は約1万人(約3%)で欧米と比べると少ないものの、厚生労働省や日本腹膜透析医学会は「自宅で続けやすい治療」として在宅医療の柱の一つに位置付けています。介護施設や在宅で看取りまで見据える高齢者にとって、通院負担が少なく食事制限も比較的緩いCAPDは選択肢として注目されています。

導入時にはカテーテル留置の手術と入院が必要で、その後はバッグ交換の手技指導を受けたうえで自宅生活へ移行します。原則として日々のバッグ交換は本人または同居家族が担いますが、認知機能の低下や身体機能の制限がある場合は、訪問看護師や特定行為研修を修了した看護師、医師の指示下の介護職員が部分的に補助する運用も広がっています。

CAPDの1日のバッグ交換スケジュール例

CAPDの標準的なスケジュールは「1日4回・1回30〜40分」のバッグ交換で構成されます。日中は4〜6時間、夜間は7〜10時間ほど透析液を貯留することで、24時間連続的にゆるやかな透析が継続されます。

時間帯操作透析液量貯留時間
朝(起床時)1回目バッグ交換1.5〜2.0L4〜6時間
昼(昼食前後)2回目バッグ交換1.5〜2.0L4〜6時間
夕(夕食前後)3回目バッグ交換1.5〜2.0L4〜6時間
就寝前4回目バッグ交換1.5〜2.0L7〜10時間(夜間貯留)

バッグ交換1回あたりの作業時間は約30分、清潔操作の準備を含めても1時間以内におさまるのが一般的です。利用者の腹膜機能や残腎機能、体格に応じて、医師が透析液量・回数・貯留時間を調整します。腹膜機能の評価には腹膜平衡試験(PET)が用いられます。

HD・APDとの違い

血液透析(HD)・APDとの違い

透析療法は大きく血液透析(HD)と腹膜透析(PD)に分かれ、PDはさらに手動のCAPDと機械を使うAPD(自動腹膜透析)に分けられます。在宅・施設での生活設計に影響する違いを整理します。

項目CAPDAPD血液透析(HD)
実施場所自宅・施設主に自宅(夜間)透析施設に通院
頻度1日4回バッグ交換夜間8〜10時間機械稼働週3回・1回4時間
通院回数月1〜2回月1〜2回週3回
主な担い手本人・家族・看護師本人・家族(機械が自動)医療スタッフ
食事・水分制限比較的ゆるやか比較的ゆるやか厳しい(カリウム・水分)
主な合併症腹膜炎・出口部感染腹膜炎・出口部感染シャントトラブル・血圧変動

CAPDは「日中の生活時間を細切れに使う代わりに、通院や食事制限の負担が小さい」治療です。APDは夜間に機械が自動で透析液を入れ替えるため日中の自由度は高くなりますが、停電や機械トラブルに備えた環境整備が必要です。HDは医療スタッフ管理下で確実な透析が受けられますが、週3回・片道含めて半日近くを透析に充てる必要があり、要介護高齢者の通院送迎が大きな負担となるケースが珍しくありません。

介護現場での観察と補助の流れ

介護現場での観察項目とバッグ交換補助の流れ

在宅や介護施設でCAPDを実施する利用者を支援する場合、看護師は毎日の状態観察と早期感染兆候の発見に重点を置きます。介護職員も「気付いて看護師に申し送る」役割を担うため、最低限の観察視点を共有しておくと安全です。

毎日の観察項目

  1. 排液の性状:透明〜淡黄色が正常。白濁・フィブリン塊・血性混入があれば腹膜炎を疑う
  2. 注液量と排液量:除水不足(排液が注液より少ない)が続けば医師へ報告
  3. カテーテル出口部:発赤・腫脹・滲出液・かさぶた・痛みの有無
  4. バイタルサイン:体温(37.5℃以上の発熱)、血圧、脈拍、呼吸数
  5. 体重・浮腫:除水不足や過剰除水の指標。毎日同じ時間に測定
  6. 食欲・腹痛・吐き気:腹膜炎の初期症状として軽視しない
  7. 水分摂取量と尿量:残腎機能の状態把握

バッグ交換時の手順と補助の範囲

  1. 手指衛生(流水と石鹸+速乾性手指消毒薬)と作業環境の清掃
  2. 透析液バッグの温度・破損・有効期限を確認
  3. マスク着用のうえ清潔操作で接続部を消毒
  4. 排液→注液の順で操作し、排液性状を必ず観察
  5. 排液量・注液量・体重・血圧を交換日誌に記録

バッグ交換そのものは医行為に該当するため、原則は本人・家族・看護師が実施します。介護職員は記録の補助や物品準備、清潔操作の見守り、異常時の連絡などの周辺業務を担い、医師の指示と特定行為研修や事業所内の標準手順に従って役割を分担するのが安全です。

感染兆候の見方

感染兆候を見逃さないためのチェックポイント

CAPD利用者で最も警戒すべき合併症が腹膜炎とカテーテル出口部・トンネル感染です。日本腹膜透析医学会のガイドラインでは、腹膜炎は発症から72時間以内の治療開始が予後を大きく左右するとされており、現場の早期発見が要となります。

  • 排液の濁り:新聞や印刷物の文字が排液バッグ越しに読めなくなったら要注意
  • 腹痛:腹膜全体の痛み、押すと痛む反跳痛は腹膜炎の代表的サイン
  • 発熱:37.5℃以上の発熱が続けば看護師・主治医へ即連絡
  • 出口部の発赤・滲出液:黄色や緑色の浸出液は細菌感染を疑う
  • 食欲不振・嘔気:高齢者では「いつもより元気がない」程度の変化が初期症状のことも

感染兆候が疑われた場合は、可能であれば排液バッグを保管したまま受診します。培養検査で原因菌を特定できると抗菌薬の選択が早まるためです。介護施設では「夜間に異常を感じても朝まで様子を見る」運用は避け、訪問看護ステーションのオンコールや主治医の連絡先を共有しておくと初動が早くなります。

よくある質問

Q. CAPDを行っている入居者は特養や有料老人ホームに入居できますか?

多くの施設で受け入れ実績があります。ただしバッグ交換を職員が補助するか、訪問看護を併用するかで運用が分かれるため、入居前に医療連携体制(特定行為研修修了者の在籍、訪問看護ステーションとの連携、緊急時対応)を確認しておくと安心です。

Q. CAPDのバッグ交換は介護職員が代行できますか?

バッグ交換は医行為に該当するため、介護職員が単独で実施することはできません。本人・家族が原則の担い手で、難しい場合は訪問看護師や医師の指示下にある看護師が実施します。介護職員は物品準備や清潔保持の見守り、観察記録の補助といった周辺業務を担当します。

Q. CAPDとHD(血液透析)どちらが高齢者向きですか?

一概には言えませんが、通院負担が小さく食事制限がゆるやかという点で、要介護高齢者にはCAPDが向くケースが多いとされています。一方で清潔操作の習得や同居家族のサポートが難しい場合、APDやHDの方が安全な場合もあります。最終的には主治医と相談のうえ、生活環境と本人の希望で決めます。

Q. CAPDの自己負担はどのくらいですか?

透析療法は医療費が高額となるため、特定疾病療養受療証(自己負担上限月1万円、所得により2万円)の対象です。さらに自立支援医療(更生医療)や障害者手帳の交付対象にもなり、所得に応じてさらに負担が下がる場合があります。市区町村の障害福祉窓口で確認できます。

Q. CAPDからHDへ切り替えることはありますか?

あります。腹膜機能の低下、繰り返す腹膜炎、被嚢性腹膜硬化症(EPS)のリスクが高まった場合などに、医師判断でHDへ移行する選択肢が検討されます。一般的にCAPDの導入から5〜8年程度がひとつの目安とされますが、個人差が大きく定期的な腹膜平衡試験(PET)の結果で判断されます。

参考資料

まとめ

CAPDは1日4回程度のバッグ交換で在宅・施設生活を続けながら腎代替療法を受けられる治療法で、通院や食事制限の負担が小さい一方、腹膜炎やカテーテル感染への警戒が欠かせません。介護現場では、看護師による日々の観察と、介護職員による「いつもと違う」のキャッチアップが利用者の予後を左右します。在宅医療のチーム連携を理解し、特定行為や訪問看護といった制度を上手に活用することが、CAPD利用者を安全に支えるカギです。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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