在宅酸素療法・COPDの利用者を施設で支える|介護職の観察・呼吸介助・火気管理と看護連携
介護職向け

在宅酸素療法・COPDの利用者を施設で支える|介護職の観察・呼吸介助・火気管理と看護連携

在宅酸素療法(HOT)やCOPDのある利用者を介護施設で支える介護職向け実務ガイド。SpO2の見方と医行為の境界、増悪サインの観察と記録、呼吸を楽にする体位・介助、火気と感染の管理、息切れに合わせた活動調整、看護師への報告と多職種連携を一次ソースで解説。

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在宅酸素療法(HOT)やCOPDのある利用者を施設で支える介護職の役割は、「治療」ではなく毎日の観察・呼吸を楽にする介助・安全管理・看護師への早期報告です。パルスオキシメータでのSpO2確認は医行為ではなく介護職も実施できますが、その値をもとに酸素流量を調整するのは医師の領域です。SpO2が普段より3〜4%低い・90%未満・痰が黄緑色に増える・息切れの急な悪化などのサインを早くつかみ、看護師へつなぐことが利用者の安全を守る最大のポイントです。

目次

特別養護老人ホームやグループホーム、サービス付き高齢者向け住宅などで働いていると、鼻に細いチューブ(経鼻カニューレ)を着け、酸素濃縮装置から音を立てて酸素を吸っている利用者に出会います。在宅酸素療法(HOT)を使う人は全国で約17万人と推計され、その多くがCOPD(慢性閉塞性肺疾患)など慢性の呼吸の病気を抱えた高齢者です。施設でケアを担う介護職にとって、もはや「特別な利用者」ではありません。

一方で、「酸素の量を勝手に触っていいのか」「SpO2はいくつになったら危ないのか」「火気はどこまで気をつければいいのか」「呼吸が苦しそうなとき、自分に何ができるのか」といった迷いを抱えたまま日々のケアにあたっている人も少なくありません。本記事は、施設で働く介護職の実務に焦点をあて、介護職にできること・できないことの境界線を厚生労働省の通知に沿って整理したうえで、観察・記録・呼吸介助・体位・火気と感染の管理・活動と息切れの調整・看護師連携までを、一次ソースに基づいて具体的に解説します。酸素流量や処方は医師の領域です。だからこそ、介護職は「気づいて、つないで、楽にする」プロフェッショナルとしての役割を磨きましょう。

在宅酸素療法(HOT)とCOPDの基礎を施設の介護職の視点で押さえる

在宅酸素療法(HOT:Home Oxygen Therapy)とは、肺や心臓の慢性的な病気で血液中の酸素が不足している人が、自宅や施設で酸素濃縮装置や酸素ボンベを使って酸素を吸入する治療法です。健康保険が適用され、対象となるのは高度慢性呼吸不全・肺高血圧症・慢性心不全・チアノーゼ型先天性心疾患などです。慢性呼吸不全の代表的な原因がCOPDで、HOT利用者の基礎疾患として大きな割合を占めます。

COPDとはどんな病気か

COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、長年の喫煙などで気管支や肺胞が慢性的に傷つき、息を十分に吐き出せなくなる病気です。主な症状は労作時の息切れ・慢性的な咳・痰で、ゆっくり進行します。重症になると安静時でも息苦しく、わずかな動作で息が切れるようになり、酸素を取り込む力が落ちてHOTが導入されます。

なぜ施設で介護職の関わりが重要なのか

HOT利用者の平均年齢はおよそ73歳とされ、加齢に伴って施設に入居するケースが増えています。呼吸の病気は「呼吸器だけの問題」ではなく、低栄養・筋力低下・心不全の合併・気分の落ち込みなど全身に影響します。医師や看護師が利用者のそばに24時間いるわけではない施設では、入浴・移乗・食事・排泄といった日々のケアのなかで利用者の状態をいちばん近くで見ている介護職の「気づき」が、増悪(急に悪くなること)の早期発見に直結します。

HOTで使う機器の基本

施設で多く見るのは、室内の空気から高濃度の酸素を作り出す「酸素濃縮装置」と、外出・入浴・避難時に使う「携帯用酸素ボンベ」の組み合わせです。利用者は医師に決められた流量(例:安静時1L/分、労作時2L/分など)で、鼻に当てる経鼻カニューレから酸素を吸います。介護職はこれらの機器の仕組みと、後述する「触っていい範囲」を理解しておく必要があります。

介護職にできること・できないこと(HOT・SpO2と医行為の境界)

HOT・COPDの利用者ケアでまず押さえたいのが、介護職に何が許され、何が医師・看護師の領域なのかという境界です。厚生労働省は「原則として医行為ではない行為」を平成17年(2005年)に通知し、令和4年(2022年)12月にも追加しました。これに沿って整理します。

介護職が行ってよいこと(原則として医行為でない)

  • パルスオキシメータの装着とSpO2の確認(新生児・入院治療が必要な人を除く)。バイタル測定そのものは医行為ではありません。
  • 体温・自動血圧計による血圧の測定などのバイタルチェック。
  • 在宅酸素療法で、マスクや経鼻カニューレを装着していない場合などの装着の準備・離脱後の片付け
  • 酸素供給装置の蒸留水(加湿びんの水)の交換、機器の拭き取りなどの日常的な管理。
  • カニューレが一時的にずれて、自力で戻せない利用者(肢体不自由・睡眠中・意識がないなど)について、カニューレを元の位置に戻すこと(厚労省通知の注記で規制対象外とされています)。

介護職が行ってはいけないこと(医師・看護師の領域)

  • 酸素流量の調整(増減)。息が苦しそうだからと流量を上げる・下げるのは医師の指示が必要な行為で、介護職の判断では行えません。CO2ナルコーシス(後述)の危険もあります。
  • 測定したSpO2などの数値をもとに、投薬の要否など医学的な判断を行うこと。これは医行為です。あらかじめ示された範囲を外れた異常値が出たら、自分で判断せず医師・看護師へ報告します。
  • 吸入薬の手技指導や効果判定、薬の中止・変更の判断。

当サイトの見解:この境界を一言でまとめると、介護職の役割は「数値を測り、いつもと違う変化に気づき、決められた範囲を外れたら速やかに看護師・医師につなぐ」ことに尽きます。逆に「数値を解釈して対応を決める」のは医療職の仕事です。境界が曖昧なときは、サービス担当者会議などの場で医師・看護職に「この利用者は専門的な管理が必要な状態か」を確認しておくと、現場での迷いが減ります。

SpO2の正しい測り方と数値の目安――介護職が押さえるパルスオキシメータの基本

パルスオキシメータで測るSpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)は、介護職が日々のケアのなかで利用者の呼吸状態を数値でつかめる、心強い指標です。ただし「測れること」と「正しく測り、正しく報告につなげること」は別物です。

SpO2の数値の目安

日本呼吸器学会のパルスオキシメータハンドブックでは、通常のSpO2は96〜99%の間にあるとされ、90%未満、または普段の数値より3〜4%低い場合は呼吸不全などが疑われるとされています。ただしCOPDなど慢性の呼吸器疾患がある利用者では、もともとの平常値が健康な人より低いことがあります。だからこそ「その人にとっての普段の値」を把握しておくことが何より大切です。一律の数字より、前回・いつもとの「差」に注目しましょう。

正しく測るためのチェックポイント

  • 安静にしてから測る:運動直後・入浴直後・食事直後は値が乱れます。1〜2分呼吸を整えてから測定します。
  • 指先を温める:指先が冷たいと正しく測れません。冷えている場合は温めてから。
  • ネイル・汚れを除く:マニキュアや汚れがあると正しい値が出ません。
  • 装着後すぐ読まない:脈の拍動を検出してから20〜30秒後の安定した値を読みます。
  • センサーは同じ高さで:心臓と同じくらいの高さに保つと安定します。
  • 消毒を忘れない:複数の利用者で使い回す場合は、使用前後に指が触れる部分を消毒します(感染予防)。

数値が良くても油断しない

厚労省ガイドラインは、SpO2の数値が問題なくても、顔色が悪い・呼吸が苦しいと訴えがある場合は速やかに医療職へ報告するよう求めています。SpO2は便利ですが万能ではありません。表情・呼吸の様子・会話の途切れ方など、五感での観察と組み合わせて判断材料にすることが重要です。

急性増悪のサインを見抜く観察と記録――看護師につなぐための着眼点

COPDの利用者にとって最も怖いのが「急性増悪」――いつもの状態から急に呼吸の症状が悪くなることです。感染症・気温の変化・大気の汚れなどが引き金になり、入院や命に関わることもあります。介護職が増悪の初期サインを早くつかんで看護師に報告できるかどうかが、利用者の予後を左右します。

増悪を疑うサイン(看護師へすぐ報告)

観察項目「いつもと違う」サインの例
息切れ安静にしていても苦しそう/いつもより明らかに呼吸が速く浅い/会話が途切れる
量が急に増えた/黄色・緑色になった/血が混じる/粘って出しにくそう
SpO2普段より3〜4%低い/90%を下回る
発熱・全身発熱/脈が速い/顔色が悪い/むくみ
意識・様子ぼんやりする/返答が鈍い/頭痛/「なんとなく元気がない」「動こうとしない」
チアノーゼ口唇・爪が青紫色になっている

「いつものこと」が落とし穴

COPDの利用者は日常的に息苦しさを抱えているため、本人も周囲も「いつものこと」と受け止めてしまいがちです。これが増悪の初期サインを見逃す最大の原因です。とくに高齢者では、発熱がはっきりしないまま感染が進むことや、「食事量が落ちた」「トイレまでの移動で息切れが強くなった」「夜眠れていない」といった生活の変化が先に現れることがあります。呼吸の数値だけに目を奪われず、食事・睡眠・活動量・排泄まで広く見るのがコツです。

報告につながる記録の書き方

増悪の早期発見には「いつもとの差」を記録に残すことが欠かせません。毎回同じ項目を同じ順序で記録すると、その人の平常時が把握でき、わずかな変化に気づきやすくなります。記録のコツは次の通りです。

  • SpO2は「測った時間」「安静時か労作後か」「酸素流量」とセットで記録する(条件が違うと値も変わるため)。
  • 息切れは主観だけでなく「30mの廊下を休まず歩けたか」「会話が何文字で途切れるか」など具体的な行動で記す。
  • 痰は「量・色・出しやすさ」を言葉で。「いつもと同じ」も立派な記録です。
  • 「なんとなくおかしい」と感じたら、その違和感もメモに残し、申し送りで口頭でも伝える。

当サイトの見解:介護職に求められるのは病名の診断ではなく「平常時との差分」を言語化することです。数値とエピソードをセットで残す記録は、看護師が受診や酸素流量の見直しを判断する材料になり、結果として利用者を守ります。記録は事務作業ではなく、医療連携の入り口だと捉えましょう。

呼吸を楽にする介助と体位――前傾姿勢・口すぼめ呼吸・ペース配分

息切れが強い利用者に対して、介護職は薬を使わなくても「呼吸を楽にする」手助けができます。これは介護職ならではの大切な専門性です。

呼吸が楽になる体位を整える

COPDの利用者は、前かがみになって肘をひざや台に乗せる前傾姿勢(前傾端座位・起座位)を取ると、呼吸補助筋が使いやすくなり呼吸が楽になることがあります。息切れが強いときは、ベッドを起こして上半身を高くする、オーバーテーブルにクッションを置いて寄りかかれるようにする、足元を安定させる、といった環境整備を行います。逆に、平らに寝かせると横隔膜が動きにくくなり苦しくなることがあるため、その人にとって楽な角度を一緒に探します。

口すぼめ呼吸をそっと促す

口すぼめ呼吸は、鼻から息を吸い、口をすぼめてゆっくり長く吐く呼吸法で、気道が広がって息が吐きやすくなります。多くのCOPD利用者は呼吸リハビリで習得しています。息切れで慌てているときほど浅く速い呼吸になりがちなので、介護職は「ゆっくり吐きましょう」「鼻から吸って」と落ち着いた声かけでペースを取り戻す手助けをします。新たな指導は理学療法士・看護師の領域ですが、すでに身につけた方法を思い出してもらう声かけは介護職にもできます。

動作と動作の間に「休む時間」をつくる

移乗・更衣・入浴・移動などの動作は、それ自体が利用者にとって大きな運動負荷です。一連の動作を一気に行わず、動作を区切って休憩を挟み、利用者のペースに合わせるのが基本です。「立ち上がる前に一度呼吸を整える」「ズボンを上げたら一息つく」といった小さな間が、息切れと低酸素を防ぎます。急かさないこと、待つことが最良の呼吸ケアになります。

排痰を妨げない・むせに備える

痰がうまく出せないと息苦しさや感染につながります。水分摂取を促す(医師の制限がない範囲で)、起き上がりやすい姿勢を整える、咳をしやすいよう前傾を支える、といった支援ができます。喀痰の吸引そのものは、研修(喀痰吸引等研修)を修了し一定の要件を満たした介護職のみが医療職の指示・連携のもとで行える行為です。要件を満たさない場合は無理に行わず、看護師へつなぎます。

火気・感染・機器の安全管理――HOT利用者を守る施設の備え

HOTを使う利用者のケアでは、本人と周囲の安全を守る管理が欠かせません。とくに火気は人命に直結します。

火気管理――酸素は「燃焼を助ける」

酸素そのものは燃えませんが、物が燃えるのを強く助ける性質があります。高濃度の酸素を吸入中に火気を近づけると、チューブや衣服に引火し重度のやけどや火災につながります。厚生労働省の集計では、在宅酸素療法中の火災事故は平成15年から令和7年11月までに累計113件報告され、うち死亡97件・重症12件に上ります(令和8年1月時点)。原因は喫煙が最多で、近年は蚊取り線香による事故も報告されています。施設では次を徹底します。

  • 酸素濃縮装置・ボンベ・吹き出し口の周囲2m以内に火気を置かない(喫煙・ライター・線香・コンロ・仏壇のろうそく等)。
  • 酸素吸入中の喫煙は絶対に禁止。利用者・家族・全職員で共有する。
  • 暖房器具・ドライヤー・電気毛布など熱を発するもの、静電気が起きやすいものを近づけない。
  • 調理・火を使うレクリエーションの際は、利用者の動線と酸素機器の位置を事前に確認する。

感染予防――増悪の最大の引き金を断つ

肺炎やインフルエンザなどの感染症は、COPD急性増悪の最大の誘因です。施設では集団生活ゆえに感染が広がりやすいため、手洗い・口腔ケアの徹底、職員の体調管理、ワクチン接種の機会確保が重要です。発熱・痰の変化・息切れの悪化は感染合併のサインとして、速やかに看護師へ報告します。パルスオキシメータを共用する際の消毒も感染対策の一部です。

機器とライフラインの管理

  • チューブの折れ・抜け・閉塞の確認:移乗や移動でカニューレが外れたり、車いす・ベッド柵に挟まってチューブが折れていないか日々確認します。延長チューブが長すぎると酸素濃度が下がることがあります。
  • 流量計の表示確認:医師の指示流量どおりに表示されているかを「確認」します(数値を変えるのは不可)。違っていれば看護師に報告します。
  • 停電・災害への備え:酸素濃縮装置は電気で動くため、停電時に備えた携帯用酸素ボンベの残量と切替手順を施設のBCP(事業継続計画)として共有しておきます。災害時、在宅酸素利用者は治療中断で容易に重症化するため、避難計画への組み込みが求められています。

活動・栄養・CO2ナルコーシス――息切れと付き合いながら支える工夫

呼吸の病気があっても、動かないでいると筋力・体力が落ち、かえって息切れが進む悪循環に陥ります。介護職は「安全に活動を続ける」ための工夫で、利用者のQOLと身体機能を支えられます。

息切れに合わせて活動量を調整する

大切なのは「動かさないこと」ではなく「息切れに合わせてペースを調整しながら動いてもらうこと」です。労作時はSpO2が下がりやすいため、医師が労作時の酸素流量を別に指示している利用者もいます。指示された運用(例:入浴・歩行時は流量を上げる設定に切り替える)は看護師と確認し、決められた範囲で支援します。動作中に息切れが強くなったら休憩を挟み、口すぼめ呼吸で整えてから再開します。

食事の工夫――低栄養を防ぐ

重症のCOPDでは、呼吸するだけで多くのエネルギーを消費するため低栄養・体重減少が進みやすく、食事中の息切れで食べる量が減ることもあります。一度に多く食べず少量頻回にする・腹部を圧迫しないゆったりした姿勢で食べる・食前に呼吸を整える・むせに注意するといった工夫が有効です。体重の変化を定期的に確認し、減少傾向があれば管理栄養士・看護師に相談します。

CO2ナルコーシスを知っておく

COPDが重症化したⅡ型呼吸不全の利用者では、体内に二酸化炭素(CO2)が慢性的にたまっているため、「酸素が足りない」ことを呼吸の刺激にしている場合があります。ここに高濃度の酸素が入りすぎると、かえって呼吸が抑制され、CO2がさらにたまって意識障害や呼吸停止(CO2ナルコーシス)を起こす危険があります。だからこそ介護職が流量を勝手に上げてはいけないのです。頭痛・ぼんやりする・傾眠・呼吸が浅く遅くなる・手が震えるといった様子は、CO2ナルコーシスの可能性があるため、すぐに看護師へ報告します。

気持ちに寄り添う

息ができない不安は強い恐怖を伴い、抑うつや活動意欲の低下につながります。介護職が落ち着いて寄り添い、「ゆっくりで大丈夫」と安心できる関わりをすること自体が、過呼吸や息切れの悪化を防ぐケアになります。

看護師・多職種との連携と報告フロー――介護職は「気づきの起点」

HOT・COPDの利用者ケアは、介護職一人で抱える仕事ではありません。看護師・医師・理学療法士・管理栄養士・ケアマネジャーとのチームで支えるのが前提です。介護職は「最も近くで観察する目」として、この連携の起点になります。

日常の連携――平常時の共有

  1. その人の「平常値」をチームで共有する:普段のSpO2、息切れの程度、酸素流量(安静時・労作時・睡眠時)、楽な体位を、申し送りや記録で全職員が把握しておきます。
  2. 報告の基準をあらかじめ決めておく:「SpO2が◯%を下回ったら」「痰の色が変わったら」など、看護師に報告すべき具体的なラインを事前に医療職と取り決めておくと、夜間や休日でも迷いません。
  3. 毎日の記録を医療職が読める形で残す:数値とエピソードをセットにした記録が、受診や流量見直しの判断材料になります。

変化に気づいたとき――報告フロー

  1. 気づく:増悪サイン(息切れ悪化・痰の変化・SpO2低下・意識の変化など)に気づく。
  2. 整える:楽な体位に整え、口すぼめ呼吸を促し、利用者を落ち着かせる。流量は変えない。
  3. つなぐ:看護師へ「いつから・どんな様子か・SpO2と測定条件・酸素流量・普段との違い」を簡潔に報告する。
  4. 記録する:気づいた時刻・症状・報告内容・指示を残す。

緊急時の判断は医療職へ

意識がない・呼びかけに反応しない・チアノーゼが強い・呼吸が止まりそうなどの緊急時は、施設のルールに従い看護師・医師へ即座に連絡し、救急要請の判断を仰ぎます。受診の要否や酸素流量・薬の変更は医療職の判断です。介護職は観察した事実を正確に伝えることに徹します。

HOT・COPD利用者のケアでよくある質問(介護職向け)

Q. 利用者が「苦しいから酸素を増やして」と言ったら、流量を上げてもいいですか?

いいえ。酸素流量の調整は医師の指示が必要な行為で、介護職の判断では行えません。とくにCOPDの重症例ではCO2ナルコーシスの危険があります。楽な体位を整え、口すぼめ呼吸を促して落ち着かせ、看護師へ報告してください。流量の見直しは医療職が判断します。

Q. パルスオキシメータでSpO2を測るのは医行為ですか?

いいえ。パルスオキシメータの装着とSpO2の確認は、新生児や入院治療が必要な人を除き、原則として医行為ではないと厚生労働省が示しています。介護職も実施できます。ただし、その値をもとに投薬や処置の要否を判断するのは医行為なので、異常値は自分で判断せず報告します。

Q. カニューレが外れていたら、付け直してもいいですか?

自力でカニューレを戻せない利用者(肢体不自由・睡眠中・意識がないなど)について、ずれたカニューレを元の位置に戻すことは規制の対象外とされています。装着の準備や離脱後の片付けも介護職が行える範囲です。ただし状態が不安定な利用者では専門的な管理が必要な場合もあるため、迷ったら看護師に確認しましょう。

Q. SpO2は何%を下回ったら危険ですか?

一般に通常は96〜99%で、90%未満や普段より3〜4%低いと呼吸不全が疑われます。ただしCOPDの利用者は平常値が低いことがあるため、一律の数字より「その人の普段との差」を重視します。報告すべきラインは事前に医療職と取り決めておくと安全です。

Q. 喀痰の吸引は介護職がやってもいいですか?

喀痰吸引は、喀痰吸引等研修を修了し一定の要件を満たした介護職が、医療職の指示・連携のもとで行える医療的ケアです。要件を満たさない場合は行えません。痰が出せず苦しそうなときは、姿勢を整える・水分を促す(制限がない範囲で)などの支援をしつつ、看護師へつなぎます。

Q. 火気は具体的にどこまで気をつければいいですか?

酸素機器の周囲2m以内に火気を置かないのが基本です。喫煙はもちろん、ライター・線香・蚊取り線香・ろうそく・コンロ、さらに熱を発するドライヤーや電気毛布、静電気が起きやすいものも避けます。実際に死亡事故が繰り返し起きているため、施設全体で徹底すべき安全事項です。

参考文献・出典

まとめ――介護職は「気づいて、つないで、楽にする」プロ

在宅酸素療法(HOT)やCOPDのある利用者を施設で支える介護職の役割は、治療そのものではなく、毎日の観察・呼吸を楽にする介助・安全管理・看護師への早期報告に集約されます。SpO2の確認やカニューレの装着準備は介護職にもできる一方、酸素流量の調整や数値に基づく医学的判断は医師・看護師の領域です。この境界を正しく理解することが、利用者の安全と自分自身を守ることにつながります。

そのうえで、介護職にしかできない強みがあります。利用者のいちばん近くで、いつもとの「差」に気づくこと。前傾姿勢や口すぼめ呼吸、ペース配分で呼吸を楽にすること。火気と感染から守ること。そして、気づいたことを正確に記録し、看護師へつなぐこと。これらはどれも、24時間そばで生活を支える介護職だからこそ担える専門性です。

呼吸の病気をもつ利用者のケアに不安や手応えを感じている方は、医療連携の体制が整った職場や、研修・教育に力を入れる職場を選ぶことで、安心して専門性を伸ばせます。自分に合った働き方を考えるきっかけとして、まずは「働き方診断」で今の希望を整理してみてください。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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