CGA(高齢者総合機能評価)とは

CGA(高齢者総合機能評価)とは

CGA(Comprehensive Geriatric Assessment/高齢者総合機能評価)は身体・精神・社会・経済の4領域を多面的に評価する手法。CGA7やBarthel指数・MMSE等の代表尺度、介護現場での活用方法を解説します。

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この記事のポイント

CGA(高齢者総合機能評価/Comprehensive Geriatric Assessment)とは、高齢者の身体機能・精神機能・社会的支援・経済的状況の4領域を多職種チームで多面的に評価し、生活機能障害を包括的に把握する手法です。日本老年医学会が普及を推進し、2024年に21年ぶりの新ガイドラインが発行されました。ケアプラン作成・退院支援・介護予防の基盤として活用されます。

目次

CGAの定義と歴史的背景

CGA(Comprehensive Geriatric Assessment)は、医学的・身体的・精神心理的・社会的な評価指標に基づいて、高齢者の生活機能障害を多面的かつ包括的に評価する手法です。日本では「高齢者総合機能評価」と訳され、日本老年医学会が普及を推進しています。

起源は1935年、英国のウォーレン(Marjory Warren)医師が高齢者施設でADL(日常生活動作)や情緒傾向の評価を実践したことに遡ります。その後1980年代に米国で標準化された手法として確立し、Rubensteinらの研究(1984年、NEJM)で「CGAを行った群は死亡率・施設入所率が有意に低い」というエビデンスが示されました。日本では2003年に最初のガイドラインが策定され、2024年6月に 『高齢者総合機能評価に基づく診療・ケアガイドライン2024』 が21年ぶりに改訂発行されました。

CGAの目的は単なる検査ではなく、「評価→介入計画→ケア提供→再評価」というプロセス全体を指す点が特徴です。多職種(医師・看護師・薬剤師・理学療法士・作業療法士・ケアマネジャー・MSW等)が共通言語で患者像を理解し、本人・家族の意思決定を支援するためのフレームワークと位置付けられます。診療報酬上も、急性期病棟での「総合機能評価加算(50点)」として算定対象になっており、介護保険対象患者の入退院支援場面で広く使われています。

CGAの評価4領域と代表的尺度

CGAは大きく4つの評価領域に整理され、各領域に標準化された測定尺度が対応しています。介護現場で目にする尺度名の多くがCGAのコンポーネントです。

評価領域主な評価項目代表的尺度
身体機能基本的ADL(食事・移動・排泄等)/手段的ADL(買い物・服薬管理等)Barthel指数、FIM、Lawton IADL尺度
精神機能認知機能、抑うつ、意欲MMSE、HDS-R、MoCA-J、GDS-15、Vitality Index
社会的支援家族構成、介護者、地域資源、住環境家族介護力評価、Zarit介護負担尺度
経済的状況収入、年金、医療・介護費負担能力個別問診(標準尺度なし)

このほか、フレイル評価にはJ-CHS基準・基本チェックリスト、栄養評価にはMNA-SF・MUST、QOL評価にはEQ-5D・SF-36が補助的に併用されます。2024年新ガイドラインでは、これら個別ツールを画一的に全例に使うのではなく、CGA7等のスクリーニングで陽性となった領域のみ詳細評価する段階的アプローチが推奨されています。

CGA7(簡易版)の7項目スクリーニング

CGA7は日本老年医学会が外来診療や訪問現場向けに開発した簡易スクリーニングツールです。所要時間2〜3分で実施でき、いずれかの項目で「問題あり」と判定された場合に詳細評価へ進みます。

  1. 意欲:「ご自分で身の回りのことをする気力はありますか?」と質問し、答えや表情で判定(Vitality Indexの簡易版)
  2. 認知機能(時の見当識):「今日は何月何日ですか?」を確認し、日付の誤りで認知機能低下の疑いを把握
  3. 手段的ADL(IADL):「バスや電車を使って一人で外出できますか?」など、社会生活上の自立度を確認
  4. 認知機能(記憶):3単語(桜・猫・電車 等)の遅延再生で短期記憶を確認
  5. 基本的ADL(BADL):「お風呂は自分で入れますか?」など、入浴・更衣・トイレの自立度を確認
  6. 情緒・気分:「毎日の生活に満足していますか?」でGDS-15に準じた抑うつスクリーニング
  7. 総合的判断・QOL:診察医・看護師の総合的な印象、生活背景・家族介護力を含む俯瞰評価

1つでも問題ありと判定された領域については、Barthel指数・MMSE・GDS-15等の詳細尺度で深掘りし、介護保険主治医意見書や退院支援計画に反映させます。介護現場でも、サービス担当者会議で「CGA7陽性領域=重点ケア領域」として共有することで、多職種が同じ問題意識を持てます。

介護現場でのCGA活用ポイント

CGAは医療機関だけでなく、特養・老健・グループホーム・訪問介護・居宅介護支援といった介護分野でも活用が広がっています。介護職・ケアマネジャーが押さえておきたい運用ポイントを整理します。

  • 退院支援カンファレンスで共通言語にする:病院側のCGA結果(Barthel指数・MMSE等)を受け取り、ケアプラン1表・2表に直接反映する。スコアの「変化幅」を経時的に追うことで、機能低下や回復の兆候を早期に検知できる。
  • 基本チェックリスト×CGAで介護予防:地域包括支援センターが行う基本チェックリスト25項目は、CGAの簡易スクリーニングと位置付けられる。事業対象者・要支援該当者をCGAで深掘りし、運動・栄養・口腔・認知機能の重点プログラムへ振り分ける。
  • 多職種で「同じ尺度」を使う:施設内でADLはBarthel指数、認知機能はMMSEと統一すると、医師・看護師・介護職・PT/OTの記録が比較可能になる。法人横断の標準ツールセットを作るとサービス担当者会議の時間が短縮できる。
  • 家族との合意形成ツールとして使う:「お母様はCGA7のIADLで問題ありと判定されました」と具体的な根拠を示せると、家族も納得感を持って介護サービス導入に踏み出しやすい。
  • 3〜6か月ごとに再評価:CGAは一度きりではなく定期再評価が原則。状態変化・サービス変更・入退院のタイミングで実施し、ケアのPDCAを回す。

CGAに関するよくある質問

Q1. CGAは介護職でも実施できますか?
A. CGAは多職種で分担して実施するのが基本です。介護職はBADL(食事・移動・排泄等)の観察や基本チェックリストの聞き取りを担当することが多く、認知機能評価(MMSE・HDS-R)は看護師・心理職等の有資格者が、診断的判断は医師が担います。記録様式は施設で統一しておくと連携がスムーズです。
Q2. CGA7とCGAの違いは何ですか?
A. CGA7は短時間スクリーニング版で、外来診療や訪問場面で2〜3分で全領域を見渡せるよう設計されています。CGA本体はBarthel指数・MMSE・GDS-15等の詳細尺度を組み合わせて30〜60分かけて実施します。CGA7で陽性となった領域のみ詳細CGAに進む段階的運用が2024年新ガイドラインで推奨されています。
Q3. ケアプランにCGA結果をどう活かしますか?
A. CGAの各領域スコアを課題分析(アセスメントシート)に転記し、ケアプラン2表のニーズ・長期目標・短期目標に紐付けます。たとえばBarthel指数の入浴項目で介助必要と判定されれば「安全に入浴できる」を短期目標に設定し、訪問入浴介護や福祉用具貸与をサービス内容に位置づける、という流れです。
Q4. CGAに診療報酬・介護報酬の加算はありますか?
A. 医療保険側では、急性期病棟の入院時に「総合機能評価加算(50点)」が令和2年度改定で新設され、介護保険対象患者の入退院支援で算定可能です。介護保険側に「CGA加算」という名称の加算はありませんが、ケアマネジャーのアセスメントや退院・退所加算等で実質的に活用されています。
Q5. CGAを導入する効果のエビデンスはありますか?
A. 1984年のRubensteinらの研究(NEJM)以降、CGAを実施した群は1年後の死亡率・施設入所率が有意に低いとのメタアナリシスが複数報告されています(Stuck et al. 1993など)。日本でも厚生労働科学研究班によるCGA介入研究でADL維持効果が示されており、2024年新ガイドラインはこれらエビデンスを集約してまとめています。

出典・参考資料

  • 日本老年医学会『高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024』(2024年6月発行)
  • 日本老年医学会「高齢者診療におけるお役立ちツール」CGA7・基本チェックリスト等の評価ツール集(https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tool/
  • 健康長寿ネット「高齢者総合機能評価(CGA)とは─新ガイドライン作成の経緯や趣旨、全体像、ツールの有用性─」(公益財団法人長寿科学振興財団)
  • 厚生労働省「基本チェックリスト」介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン
  • 梅垣宏行「高齢者総合的機能評価」名古屋大学附属病院老年内科 講義資料(日本老年医学会研修ページ掲載)
  • Rubenstein LZ, et al. "Effectiveness of a geriatric evaluation unit. A randomized clinical trial." N Engl J Med. 1984;311(26):1664-1670.

まとめ

CGAは高齢者の生活機能を身体・精神・社会・経済の4領域から多面的に評価し、多職種でケアを設計するための基盤フレームワークです。Barthel指数・MMSE・GDS-15等の代表尺度はそれぞれCGAの構成要素であり、CGA7で陽性となった領域を詳細評価する段階的アプローチが2024年新ガイドラインで標準化されました。介護現場では、退院支援・介護予防・ケアプラン作成の場面で「共通言語」として活用することで、本人・家族・多職種の納得感ある意思決定につながります。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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