概日リズム(サーカディアンリズム)とは

概日リズム(サーカディアンリズム)とは

概日リズムとは、体内時計が生み出す約24時間周期のリズムです。光や食事で調整されるしくみ、加齢・認知症での乱れ、昼夜逆転やせん妄との関係、介護現場での生活リズム支援を、体内時計そのものの定義に絞って整理します。

ポイント

概日リズムの定義(答え)

概日リズム(サーカディアンリズム)とは、体内時計が生み出す約24時間周期のリズムのことです。睡眠と覚醒だけでなく、体温、血圧や心拍、ホルモン分泌、代謝、免疫など、体の大部分の働きがこの約1日の周期で変化しています。時計は脳の視交叉上核にあり、朝の光や食事・活動を手がかりに毎日調整されます。加齢や認知症でこのリズムが乱れると、昼夜逆転や睡眠障害、せん妄が起こりやすくなります。

目次

概日リズムの概要と体内時計のしくみ

概日リズムとは何か(体内時計そのものの定義)

「概日」は「おおよそ1日」という意味で、概日リズムとは約24時間の周期をもつ体のリズムを指します。時刻を知る手がかりのまったくない環境(例えば洞窟のような隔離された場所)で暮らしても、私たちの睡眠は約24時間周期で規則正しくあらわれます。これは、外の明暗に受け身で従っているのではなく、体の中にある時計が能動的にリズムを刻んでいるからです。

この体内時計(生物時計)の中枢は、脳の視床下部にある視交叉上核という神経細胞の集団です。細胞の中で時計遺伝子が働くことで約24時間周期の神経活動が生まれ、その指令が全身に伝わって、睡眠・覚醒、深部体温、ホルモン分泌などのリズムをつくり出しています。睡眠を促すホルモンであるメラトニンは、この時計の支配下で夜間に多く分泌され、その分泌に伴って深部体温が下がり、眠りに入りやすくなります。

重要なのは、多くの人の体内時計の周期は24時間ちょうどではなく、平均すると24時間より少し長い(研究では24時間10分前後)という点です。そのため放っておくと寝起きの時刻が毎日少しずつ後ろにずれてしまいます。私たちは毎日、時計の時刻合わせ(同調)をして、地球の24時間の昼夜周期に合わせているのです。

概日リズムを整える同調因子

体内時計を合わせる手がかり(同調因子)

体内時計を24時間の昼夜周期に合わせる手がかりを同調因子(ツァイトゲーバー)と呼びます。介護現場での生活リズム支援は、この同調因子を意識的に整えることが土台になります。

  • 光(もっとも強力):目に入った光は網膜から視交叉上核へ伝わり、時刻合わせを行います。とくに朝の光を浴びると遅れがちな時計が前に調整され、朝型に近づきます。反対に夜に強い光を浴びると夜型にずれます。
  • 食事:規則正しい時刻の食事、とくに朝食はリズムを整える手がかりになります。
  • 活動・運動:日中の離床や適度な身体活動、日光浴が覚醒と睡眠のメリハリをつくります。
  • 社会的接触:声かけや会話、決まった時間の日課などの働きかけもリズムの同調を助けます。

加齢と認知症で概日リズムが乱れるしくみ

加齢・認知症でのリズムの乱れ

加齢による変化:高齢になると、感覚機能の低下で網膜から取り込む光の量が減り、体温リズムの振幅(昼夜の差)が小さくなります。その結果、睡眠・覚醒リズムが前に進みやすくなり、夕方から眠くなって早朝に目が覚める「早寝早起き型」(睡眠・覚醒相前進障害)が高齢者に多くみられます。これは加齢に伴う体内時計の機能変化が関係すると考えられています。

認知症でのリズムの乱れ:認知症では、脳の器質的な変化が加わり、深部体温リズムの振幅低下や破綻、メラトニン分泌の低下が起こります。研究では、認知症高齢者は健常な高齢者よりメラトニン分泌が少なく、睡眠と覚醒のメリハリが失われやすいことが示されています。その結果、1日の中で睡眠と覚醒が不規則にあらわれる不規則睡眠・覚醒リズム障害(典型的には4時間以上続けて眠れず、日中に頻繁に昼寝)が起こりやすく、昼夜逆転や夜間の不穏・徘徊、日中の傾眠につながります。昼夜のメリハリの欠如は、夜間せん妄のリスクも高めます。

概日リズムと睡眠・昼夜逆転・せん妄との違い

関連する言葉との整理

概日リズムと睡眠:睡眠は概日リズムに支配される代表的な現象ですが、概日リズムそのものは睡眠だけでなく体温やホルモンなど体全体の約24時間周期を指す、より広い概念です。睡眠障害の背景に概日リズムの乱れがあることは多いですが、両者は同じではありません。

概日リズムと昼夜逆転:昼夜逆転は、概日リズムが乱れた結果として夜に起きて昼に眠るようになった「状態」を指します。原因の一つが体内時計の同調不全です。

概日リズムとせん妄:せん妄は、身体疾患や薬剤などで急に生じる意識・注意の障害で、夜間に悪化しやすい特徴があります。昼夜のメリハリが失われた概日リズムの乱れは、せん妄を起こしやすくする要因の一つであり、生活リズムを整えることはせん妄予防にもつながります。

介護現場での概日リズム支援(生活リズムの整え方)

介護現場でのリズム支援のポイント

薬に頼る前に、まず生活の中で同調因子を整えることが基本です。実際に、昼夜逆転や不規則な睡眠を示した認知症高齢者が、日光浴や体操・散歩、時間を決めた働きかけによって夜間にまとまって眠れるようになり、異常行動が減ったと報告されています。

  • 朝の光を取り込む:起床後にカーテンを開け、窓際や屋外で朝の光を浴びてもらう。日中は明るい環境で過ごす。
  • 日中の離床と活動:長時間の臥床を避け、離床・散歩・体操・レクリエーションで日中の覚醒を保つ。短い昼寝は時間帯と長さを一定にする。
  • 夜は暗く静かに:就寝前の強い光やテレビ・スマートフォンを控え、寝室を暗く静かに保つ。夜間の照明やケアの光にも配慮する。
  • 生活の時刻を一定に:食事・起床・就寝の時刻をそろえ、規則正しい日課をつくる。

これらでも改善しない強い睡眠・覚醒リズムの乱れには、高照度光療法やメラトニンを用いた治療が検討されることもあります。判断は医療職と連携して行います。

概日リズムのよくある質問

よくある質問

概日リズムとサーカディアンリズムは違うものですか。
同じものです。サーカディアンは「およそ1日」を意味する英語(circadian)で、日本語では概日リズムと訳します。
体内時計はどこにありますか。
中枢は脳の視床下部にある視交叉上核です。ここにある時計遺伝子が約24時間のリズムを刻み、その指令が全身の細胞のリズムをまとめています。
なぜ高齢者は朝早く目が覚めるのですか。
加齢に伴い体内時計の機能が変化し、睡眠・覚醒リズムが前に進みやすくなるためです。夕方から眠くなり早朝に目覚める傾向(睡眠・覚醒相前進)が強まります。
認知症で昼夜逆転が起こるのはなぜですか。
脳の変化でリズムの振幅が下がり、メラトニン分泌も減って昼夜のメリハリが失われるためです。朝の光・日中の活動・夜の暗さを整える支援が有効です。

概日リズムの参考資料

  • [1]
    概日リズム睡眠・覚醒障害- 厚生労働省 e-ヘルスネット

    概日リズム=約24時間周期の生体リズムの定義、視交叉上核と時計遺伝子、光による時刻調節、周期24時間10分前後を解説。

  • [2]
    概日リズム睡眠・覚醒障害(CRSWD)- 国立精神・神経医療研究センター

    体内時計の同調障害の各タイプ(相前進・不規則睡眠覚醒等)と、認知症・神経変性疾患での不規則リズム、光・メラトニン治療を解説。

  • [3]
    概日リズム睡眠障害- MSDマニュアル家庭版

    体内時計と明暗サイクルのずれで生じる睡眠障害、メラトニンと光の役割、日中の光曝露による再調整の対策を平易に解説。

概日リズムのまとめ

まとめ

概日リズム(サーカディアンリズム)は、脳の視交叉上核にある体内時計が生み出す約24時間周期のリズムで、睡眠だけでなく体温やホルモンなど体全体を支配しています。時計の周期は24時間より少し長いため、朝の光や食事・活動で毎日調整されています。加齢や認知症ではこの同調がうまくいかず、早朝覚醒や不規則睡眠、昼夜逆転、せん妄が起こりやすくなります。介護現場では、朝の光・日中の離床と活動・夜の暗さという同調因子を整えることが、薬に頼らないリズム支援の基本になります。

この用語に関連する記事

認知症の大声・叫声・頻回コールへの対応|介護職が行う背景アセスメントと責めない関わり方

認知症の大声・叫声・頻回コールへの対応|介護職が行う背景アセスメントと責めない関わり方

施設で認知症の利用者が大声を出す・叫ぶ・繰り返しナースコールを押す背景を、痛み・不快・不安・せん妄の観点から介護職がアセスメントする方法と、否定しないその場の対応・夜間対応・記録・多職種連携までを実務目線で解説します。

認知症の収集癖・ためこみへの対応|介護職が施設で行う背景のひもときと環境調整

認知症の収集癖・ためこみへの対応|介護職が施設で行う背景のひもときと環境調整

施設で認知症の利用者がティッシュや食べ物、他者の物をためこむ・集める行為に、介護職はどう対応するか。不安や見当識低下、前頭側頭型の特徴など背景のアセスメント、取り上げない声かけ、居室の安全確保、他者トラブル対応、多職種連携と記録までを実務目線で解説します。

認知症の昼夜逆転への対応|介護職が行う生活リズムの立て直しと夜間ケア

認知症の昼夜逆転への対応|介護職が行う生活リズムの立て直しと夜間ケア

認知症の利用者の昼夜逆転に介護職はどう対応するか。原因のアセスメントから、日中の光と活動で体内時計を整える立て直し、夜間の見守りと無理に寝かせない関わり、睡眠薬に頼らない多職種連携までを実践的に解説します。

認知症の性的逸脱行動・脱抑制への対応|介護職の専門的な理解と職員を守る仕組み

認知症の性的逸脱行動・脱抑制への対応|介護職の専門的な理解と職員を守る仕組み

認知症(特に前頭側頭型)に伴う性的逸脱行動・脱抑制への対応を介護職向けに解説。背景アセスメント、その場の距離の取り方と言い換え、担当交代・複数対応、記録と多職種連携、そして被害を受けた職員を組織で守る仕組みまで。本人の尊厳と職員保護を両立する実務フレーム。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。