
CO2ナルコーシス(二酸化炭素ナルコーシス)とは
CO2ナルコーシスとは体内に二酸化炭素が溜まり意識障害や呼吸抑制を起こす状態。COPDなどへの高濃度酸素投与で起こる仕組み、症状、在宅酸素で介護職が流量を変えてはいけない理由を解説。
CO2ナルコーシスとはの定義
CO2ナルコーシス(二酸化炭素ナルコーシス)とは、体内に二酸化炭素(CO2)がたまり、意識障害や呼吸抑制などを起こす状態をいいます。とくにCOPD(慢性閉塞性肺疾患)など、もともと血液中に二酸化炭素がたまりやすい人に高濃度の酸素を不用意に投与すると起こりやすく、傾眠や頭痛、発汗といった症状から、進行すると昏睡や自発呼吸の停止に至ることがあります。在宅酸素療法では、介護職が酸素の流量を自己判断で上げてはいけない理由のひとつです。
目次
CO2ナルコーシスの概要と起こる仕組み
CO2ナルコーシスとは何か
CO2ナルコーシスは、体内に二酸化炭素(CO2)がたまった状態(高炭酸ガス血症)によって意識障害などが起こる病態の総称です。「ナルコーシス」は昏睡・麻酔状態を意味し、たまった二酸化炭素が脳のはたらきを抑えることで眠気や意識レベルの低下を招きます。日本急性期ケア協会は、CO2ナルコーシスを「体内にCO2が蓄積することにより意識障害などを引き起こす高炭酸ガス血症」と説明しています。
なぜ高濃度酸素で起こるのか(仕組み)
私たちの呼吸は、二酸化炭素と酸素の量を感知する2つのセンサーで調節されています。ふだんは脳の延髄にある中枢化学受容体が二酸化炭素の上昇を感知して呼吸を促します。ところがCOPDなどで慢性的に二酸化炭素がたまった状態が続くと、このセンサーが二酸化炭素の上昇に鈍くなり、代わりに血液中の酸素の低下を感知する末梢化学受容体(低酸素換気ドライブ)が呼吸を支える主役になります。
この状態の人に高濃度の酸素を一気に投与すると、血液中の酸素が十分に足りたと体が判断し、呼吸を促すきっかけ(低酸素換気ドライブ)が弱まります。その結果、呼吸が浅くゆっくりになり(低換気)、二酸化炭素を十分に吐き出せなくなって体内にさらにたまり、意識障害や呼吸性アシドーシスへと進みます。これがCO2ナルコーシスが起こるおもな仕組みです。
CO2ナルコーシスの症状と3つの主症状
CO2ナルコーシスの主な症状
CO2ナルコーシスでは、次の3つが主症状とされます。
- 意識障害(眠そうにする、呼びかけへの反応が鈍くなる、進行すると昏睡)
- 高度の呼吸性アシドーシス(血液が酸性に傾く)
- 自発呼吸の減弱(呼吸が浅く弱くなる)
段階別に見られるサイン
初期には呼吸促迫(息苦しそうな速い呼吸)、頻脈、発汗、頭痛などがあらわれます。進行すると傾眠(うとうとして起きにくい)から昏睡へと意識レベルが下がり、最終的には自発呼吸が止まる危険があります。なお、二酸化炭素がたまった状態では手が小刻みに震える羽ばたき振戦が見られることがあります。
とくに在宅酸素療法を受けている人で、「なんだか急にうとうとしている」「呼びかけへの反応が鈍い」「いつもより呼吸が浅い」といった変化に気づいたら、CO2ナルコーシスのサインである可能性があります。自己判断で対応せず、すぐに医療職(主治医・訪問看護師など)へ連絡することが大切です。
在宅酸素で介護職が酸素流量を変えてはいけない理由
在宅酸素療法で介護職が酸素流量を勝手に上げてはいけない理由
在宅酸素療法(HOT)を受けている人の多くは、医師が一人ひとりの状態に合わせて酸素の流量(1分間あたりのリットル数)を細かく決めています。COPDなど二酸化炭素がたまりやすい人では、酸素を増やしすぎると低酸素換気ドライブが弱まり、かえってCO2ナルコーシスを招くおそれがあるためです。「苦しそうだから」と良かれと思って流量を上げる行為が、命に関わる事態を引き起こすことがあります。
そのため介護職は、利用者が息苦しさを訴えたり呼吸が乱れたりしても、酸素流量を自己判断で変更してはいけません。医師の指示量を守り、変化に気づいたら主治医や訪問看護師へ連絡するのが原則です。日本呼吸器学会などの酸素療法の考え方でも、COPDのように二酸化炭素がたまりやすい人では、酸素を出しすぎないよう目標とする酸素飽和度(SpO2)を低めに設定すること(おおむね88〜92%)が示されています。介護職の役割は流量の調整ではなく、状態の変化にいち早く気づいて医療職につなぐことです。
CO2ナルコーシスのよくある質問
Q. CO2ナルコーシスは誰にでも起こりますか。
A. 健康な人ではまず起こりません。おもにCOPD(慢性閉塞性肺疾患)など、慢性的に血液中の二酸化炭素がたまっている人に、高濃度の酸素を不用意に投与したときに起こりやすい病態です。
Q. 在宅酸素を使っている家族が苦しそうです。酸素を増やしてもよいですか。
A. 自己判断で流量を増やすのは避けてください。二酸化炭素がたまりやすい人では、酸素の増やしすぎがCO2ナルコーシスの引き金になることがあります。医師が決めた流量を守り、苦しそうなときは主治医や訪問看護師に相談しましょう。
Q. どんなサインに気をつければよいですか。
A. 急にうとうとして反応が鈍くなる、呼びかけても起きにくい、呼吸が浅い、頭痛や発汗があるといった変化が目安です。意識の低下に気づいたら、すぐに医療職へ連絡してください。
Q. 二酸化炭素ナルコーシスとCO2ナルコーシスは違うものですか。
A. 同じものです。CO2は二酸化炭素の化学式で、二酸化炭素ナルコーシスを略してCO2ナルコーシスと呼びます。
CO2ナルコーシスの参考資料
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CO2ナルコーシスのまとめ
まとめ
CO2ナルコーシスは、体内に二酸化炭素がたまって意識障害や呼吸抑制を起こす状態です。COPDなど二酸化炭素がたまりやすい人に高濃度酸素を不用意に投与すると、低酸素換気ドライブが弱まって低換気が進み、発症します。在宅酸素療法では、介護職が酸素流量を自己判断で変えてはいけません。傾眠や反応の鈍さなどの変化に早く気づき、医師の指示量を守りながら医療職へつなぐことが、利用者の安全を守る基本です。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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