
DESIGN-Rとは
DESIGN-R®2020は日本褥瘡学会の褥瘡経過評価ツール。7項目(深さ・滲出液・大きさ・炎症/感染・肉芽・壊死組織・ポケット)を0〜66点で採点し、DTI疑い・臨界的定着疑いの新規項目、急性期/慢性期での運用、褥瘡マネジメント加算との関係まで看護・介護現場の実務目線で整理しました。
この記事のポイント
DESIGN-R®2020は、日本褥瘡学会が策定した褥瘡(じょくそう・床ずれ)の重症度と治癒過程を数値化する経過評価ツールです。Depth(深さ)/Exudate(滲出液)/Size(大きさ)/Inflammation・Infection(炎症・感染)/Granulation(肉芽組織)/Necrotic tissue(壊死組織)/Pocket(ポケット)の7項目を採点し、深さを除く6項目の合計0〜66点で重症度を比較します。
目次
DESIGN-Rの位置づけと開発の経緯
DESIGN(デザイン)は、2002年に日本褥瘡学会・学術教育委員会が策定した褥瘡の経過評価スケールです。褥瘡の「重症度を分類する」役割と、「治癒過程を数量化する」役割の両方を1つのツールで担う点が最大の特徴で、褥瘡ケアに関わる多職種(医師・看護師・介護職・栄養士・薬剤師・PT/OTなど)が共通言語で病態を共有できるよう設計されました。
2008年には項目ごとに重み付けを行った重症度評価版(Rating=R)が発表され、これが現在広く使われているDESIGN-R®です。Rが付くことで、点数の重みが項目ごとに異なる「絶対評価」が可能になり、「先月の合計点と比べて治癒が進んだのか」「他の患者・利用者と比べてどの程度重いのか」を数字で比較できるようになりました。
その後の研究蓄積を反映し、2020年に改訂版であるDESIGN-R®2020が公開されました。改訂の柱は、急性期褥瘡で問題となる「深部損傷褥瘡(DTI)疑い」と、慢性期褥瘡で治癒停滞の原因となる「臨界的定着疑い(クリティカルコロナイゼーション)」を評価項目として正式に取り込んだことです。これにより、皮膚表面だけでは見抜けない深部のダメージや、明らかな感染徴候はないのに治らない状態を、共通スケール上に記述できるようになりました。
現在は日本褥瘡学会の褥瘡予防・管理ガイドラインや、診療報酬・介護報酬の褥瘡対策(褥瘡マネジメント加算)とも整合した運用が前提となっており、医療機関・介護老人保健施設・特別養護老人ホーム・訪問看護ステーション・在宅医療の現場まで、日本国内の褥瘡ケアにおける事実上の標準ツールとなっています。
DESIGN-Rの7項目と配点の全体像
DESIGN-R®2020は7項目で構成され、軽症は小文字(d/e/s/i/g/n/p)、重症は大文字(D/E/S/I/G/N/P)で表記します。記載例は D3-e1s6i0g3n0P6:16 のように「Depth-ESIGNP合計」と表現し、深さ(D)は合計点に含めません。合計点は0〜66点で、点数が低いほど治癒に近い状態です。
- D(Depth=深さ):
d0/d1/d2(軽症)とD3/D4/D5/DU/DDTI(重症)。皮膚損傷なし〜真皮までは小文字、皮下組織より深い損傷・深さ判定不能(DU)・DTI疑い(DDTI)は大文字。合計点には加算しない独立評価。 - E(Exudate=滲出液):
e0/e1/e3 → E6。1日2回以上ドレッシング交換が必要な多量の滲出は E6。 - S(Size=大きさ): 長径×短径(cm²)で
s0/s3/s6/s8/s9/s12 → S15。100cm²以上が S15。 - I(Inflammation/Infection=炎症・感染):
i0/i1 → I3C/I3/I9。I3C は新規追加の「臨界的定着疑い」、I9 は全身的影響あり(敗血症など)。 - G(Granulation=肉芽組織):
g0/g1/g3 → G4/G5/G6。良性肉芽が創面の90%以上を占めるのが g0、まったく形成されていないのが G6。 - N(Necrotic tissue=壊死組織):
n0 → N3/N6。軟らかい壊死組織は N3、硬く厚い密着した壊死組織は N6。 - P(Pocket=ポケット):
p0 → P6/P9/P12/P24。ポケット部分も長径×短径で計測し、創自体の大きさを引いた残面積で配点。
採点上の重要ルールは 「最も悪い部分(worst case)で評価する」 ことです。たとえば創内に深さの異なる部位があるときは、一番深い点で Depth を判定します。改善に伴って創底が浅くなった場合も、再上皮化するまでは元の深さで継続評価し、点数の急変動を防ぎます。
2020年改訂で加わった2つの新規項目(DDTI / I3C)
DESIGN-R®2020の最大の変更点は、現場で「分類しづらい」と長年指摘されてきた2つの状態を、明確な記号で記述できるようにしたことです。
DDTI(深部損傷褥瘡疑い)— 急性期で見逃したくない深部損傷
従来のDESIGN-R®では、皮膚表面に発赤や水疱しか見えないのに、その下で筋層・脂肪層がすでに広範に壊死している急性期褥瘡を、点数化する場所がありませんでした。2020年版では深さ項目に DDTI(suspected Deep Tissue Injury) を新設し、視診・触診(硬結、泥状の浮遊感、温度差、疼痛)と、超音波エコーや血液検査・画像診断などの補助データを組み合わせて評価します。DDTI は点数こそ加算しませんが、「ここに重大な深部損傷が疑われる」と即座に多職種で共有できるシグナルになります。
I3C(臨界的定着疑い)— 治らない褥瘡のサイン
もう1つの追加が炎症/感染項目の I3C(suspected Critical Colonization) です。明らかな感染徴候(発赤・腫脹・疼痛・発熱・膿)はないのに治癒が停滞している状態は、創面にバイオフィルムが形成された「臨界的定着」が原因のことが多いと分かってきました。スラフ(黄色いぬめり)の増加、肉芽組織の色調が悪い、滲出液量が増えているのに「i1」では実態を反映できない…という現場の声を受け、3点が付く独立カテゴリーとして整備されました。I3C と判定されたら、創面洗浄の強化・銀含有ドレッシング・抗菌薬投与といった創床準備(wound bed preparation)の戦略転換を検討します。
DTIと「壊死組織で覆われ深さ判定不能(DU)」の違い
2020年版では DU は「壊死組織で覆われて深さが判定できない場合」に限定されました。エコーや臨床所見でDTIが強く疑われる場合は DDTI、表面の壊死で深さが見えないだけなら DU、と整理することで、その後の管理方法(DTIは圧迫解除と保存的観察優先、DUはまずデブリードマンで深さを確定)の判断が分かれます。
介護・看護現場でのDESIGN-R運用フロー
特養・老健・有料老人ホーム・訪問看護・在宅医療では、DESIGN-Rを褥瘡対策チームの共通カルテとして運用するのが標準です。介護報酬の褥瘡マネジメント加算(施設サービス)でも、入所時のリスク評価と少なくとも3か月ごとの再評価が要件化されており、DESIGN-Rがその記録様式として広く用いられています。
- 初回評価(発見・入所時): 褥瘡を発見した日、または入所・利用開始の当日に DESIGN-R®2020 で全項目を採点し、合計点と記号(例
D3-e1s6i0g3n0p0:10)を記録します。同時に発生部位(仙骨部・尾骨部・踵部・大転子部など)と発生日を明記。 - 計測条件の固定: 体位(基本は同一体位)、計測者、メジャー、写真撮影角度・距離をできるだけ一定にします。条件が変わると点数が動く項目(特に S と P)の信頼性が落ちるため、初回でルールを決め、看護記録に「計測条件メモ」を残します。
- 定期再評価(週1回が目安): 経過観察中は原則週1回同じ条件で再評価し、合計点の推移をグラフ化。点数が下がっていれば治癒方向、横ばい・上昇なら計画の見直しを判断します。施設の褥瘡対策委員会・カンファレンスで点数推移を共有するのが定着パターンです。
- 急変時の臨時評価: 滲出液の急増、悪臭、新しい壊死、発熱などの感染徴候や状態悪化があれば、定期外で再採点し医師・皮膚・排泄ケア認定看護師(WOC)・訪問医に即時連絡します。I3C や I3 へ移行した場合は治療方針を切り替えるトリガーになります。
- 多職種カンファレンスでの活用: 看護師は採点、介護職は体位変換・スキンケア・栄養摂取量・離床時間の実施記録、栄養士は低栄養スクリーニング、リハ職はシーティング・座位耐久時間を持ち寄り、DESIGN-Rの点数推移を中心に介護計画・ケアプランを見直します。
- 治癒・終結判定: 全項目が0点(
d0-e0s0i0g0n0p0:0)になり、再上皮化が確認できた時点で褥瘡治癒と記録。終結後も再発リスクが高いため、リスクアセスメント(OHスケール・ブレーデンスケール)と体圧分散ケアを継続します。
採点のばらつきを抑える実務のコツ
DESIGN-Rは標準化されたスケールですが、運用が雑だと評価者間で2〜3点ずれることもあり、治癒の判断を誤らせます。現場で精度を維持するためのポイントを整理します。
- 「最悪部分」で採点する原則を徹底: 複数の深さが混在する創では、迷ったら深い方で Depth を判定。後で点数が改善方向に動いたときの解釈が安定します。
- 写真と計測を毎回ペアで: 物差し(または定規入りの褥瘡シート)を当て、同一の距離・照明で撮影。週次の写真を並べると、点数だけでは見えにくいスラフ・滲出液の質の変化を共有しやすくなります。
- I3C はためらわずに使う: 「感染とまでは言えないが治らない」状態を i1 で放置すると、原因介入が遅れます。スラフ増加・色調不良・滲出液増を見たら I3C 判定を検討。多職種で議論する材料になります。
- P(ポケット)は残面積で採点: ポケット全体の面積から創自体の大きさ(S)を引いた残面積で点数が決まります。混同しやすいので、初回採点時に「ここがポケット、ここが創そのもの」を図示しておくと再評価が楽になります。
- 採点者を固定しすぎない: 一人の評価者だけだとバイアスが固定化されます。施設では2人で同時採点するペア評価を月1回入れ、ズレを学習・是正する運用を勧めるWOCナースが多いです。
- 介護記録との連動: 介護職側の体位変換実施記録・体圧分散マットレス使用状況・摂食量・離床時間と並べて分析すると、点数が動かない原因(ケア実施が抜けている/低栄養/座位時間が長すぎる 等)を絞り込めます。
よくある質問
DESIGNとDESIGN-R、DESIGN-R®2020は何が違うのですか?
DESIGN(2002年)は順序尺度のみで重症度の絶対比較ができませんでした。DESIGN-R®(2008年)から項目ごとに点数の重み付けが導入され、合計点で絶対評価が可能に。さらにDESIGN-R®2020で DDTI(深部損傷褥瘡疑い) と I3C(臨界的定着疑い) が新規追加されました。現在の標準は2020年版です。
DESIGN-Rの合計点は何点まで?深さ(D)はなぜ合計に入らないのですか?
合計点は0〜66点で、E・S・I・G・N・Pの6項目の和です。深さ(D)は「いったん深くなったら浅くなる方向に動きにくい」性質があり、合計点に入れると治癒過程の点数推移が動かなくなるため、独立した記号として併記する設計になっています(例 D3-e1s6i0g3n0p0:10)。
褥瘡マネジメント加算の評価書類としてDESIGN-Rは必須ですか?
介護報酬上、評価ツールの「指定」はありませんが、厚生労働省や日本褥瘡学会の手引きでDESIGN-Rの使用が前提として説明されており、事実上の標準です。LIFE(科学的介護情報システム)への入力項目にもDESIGN-R®2020が組み込まれているため、ほぼすべての施設がDESIGN-Rで運用しています。
評価頻度はどれくらいが適切ですか?
急性期は週1回以上、状態が安定して慢性期に入ったら2週間〜4週間に1回が一般的です。状態悪化(滲出液急増・悪臭・発熱)や治療内容変更時には定期外の臨時評価を行います。施設サービスの加算要件は3か月ごとの再評価ですが、実務では週次運用が安全側です。
介護職もDESIGN-Rの採点をしてよいですか?
採点の主担当は看護師(特にWOCナース・特定行為研修修了者)ですが、介護職も記号の意味と治癒の方向性を理解しておくことで、体位変換・スキンケア・栄養摂取・離床調整など日々のケアにつなげられます。多職種カンファレンスで点数推移を共有できる職場は、褥瘡治癒率が高い傾向があります。
参考文献・公的資料
- 日本褥瘡学会「褥瘡評価ツール 改定DESIGN-R®2020」 — 2020年改訂版の公式案内、評価項目と新規ポイントの解説
- 日本褥瘡学会「DESIGN-R®2020 褥瘡経過評価用」(PDF) — 7項目の評価表本体
- 日本褥瘡学会「改定DESIGN-R®2020 コンセンサス・ドキュメント」(PDF) — 各項目の判定基準と背景
- 全国老人保健施設協会「施設で取り組む褥瘡管理~褥瘡管理の基本と褥瘡マネジメント加算の手引き~」 — 介護保険施設での運用ガイド(厚生労働省内容確認済み資料)
- 日本褥瘡学会「改定DESIGN-R®2020 練習問題」(PDF) — 採点のばらつきを抑える教育資材
まとめ
DESIGN-R®2020は、日本褥瘡学会が策定した褥瘡経過評価ツールで、7項目を0〜66点で採点し、深さ(D)は独立記号として併記します。2020年の改訂で DDTI(深部損傷褥瘡疑い) と I3C(臨界的定着疑い) が追加され、「見えない深部損傷」と「治らない褥瘡」を共通言語化できるようになりました。介護施設での褥瘡マネジメント加算やLIFEへの入力もDESIGN-Rが事実上の標準。計測条件の固定・週次再評価・多職種共有の3点を徹底することが、点数を治癒方向へ動かす近道です。介護職側も記号の意味を理解し、体位変換・栄養・スキンケア・離床調整を点数推移とリンクさせて記録すると、チームとしての褥瘡治癒率を底上げできます。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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