
高齢者のデジタルデバイドとは
高齢者のデジタルデバイドの定義、第1・第2・第3デジタルデバイドの3類型、介護現場での支援方法、自治体・国の対策を解説。
この記事のポイント
高齢者のデジタルデバイド(情報格差)とは、デジタル機器や情報通信技術を利用できる人とできない人の間に生じる、情報・機会・利益の格差です。2023年の総務省調査では、70代のスマートフォン保有率は約56%、80代では約20%と若年層に比べて低く、行政手続き・予約・連絡などのオンライン化が進む中で取り残されるリスクが指摘されています。介護現場ではマイナンバーカード保険証、オンライン診療、デジタル化された緊急通報など、利用者・家族双方への支援が業務に組み込まれつつあります。
目次
デジタルデバイドの基本|情報通信技術がもたらす新しい不平等
デジタルデバイド(Digital Divide)は、1990年代の米国で「情報通信技術(ICT)にアクセスできる人とできない人の間に生じる格差」として概念化された言葉です。日本の総務省は「情報通信技術を利用できる人とできない人との間に生じる格差」と定義しています。
高齢者がデジタルデバイドに陥る要因は複合的で、(1)身体的要因(視力・聴力・指先の動き)、(2)心理的要因(新しいことへの不安・自信のなさ)、(3)経済的要因(端末・通信費)、(4)社会的要因(教えてくれる人の不在)、(5)認知機能の低下、などが絡みます。
近年はマイナンバーカード保険証への移行、各種公共料金のオンライン化、銀行ATM・窓口の縮小、オンライン診療・処方箋の電子化など、デジタルが前提のサービスが急増しており、デジタルデバイドが生活の質や医療アクセスに直接的な影響を及ぼす段階に入っています。
デジタルデバイドの3類型
- 第1デジタルデバイド(アクセス格差): そもそも端末・通信回線を持っていない格差。70代以上、低所得層、地方山間部に多い。
- 第2デジタルデバイド(利用能力格差): 端末は持っているが操作スキルが不足。アプリのインストール・スマホ決済・QRコード読み取りなど。
- 第3デジタルデバイド(成果格差): 利用はしているが「情報を批判的に評価する力」「適切なサービスを選ぶ力」が不足。詐欺被害・フェイクニュース被害の温床。
高齢者支援では、まず第1(端末を持ってもらう)→第2(操作を教える)→第3(情報リテラシーを身につける)の順で支援が必要です。
高齢者のスマホ保有率と国のデジタル支援実績
総務省「情報通信白書(令和7年版)」および「デジタル活用支援推進事業」の集計から、高齢者層のデジタル利用の現状と国の支援規模を見ていきます。
インターネット接続端末としてのスマートフォン利用率(年代別推移)
- 60代: 2011年 2.5% → 2024年 78.8%(13年間で約31倍)
- 70代: 2011年 0.7% → 2024年 53.0%(13年間で約75倍)
- 全体: 2011年 16.2% → 2024年 74.4%
70代では2024年でも約47%がスマートフォンをインターネット接続端末として使っておらず、80代以上ではモバイル端末そのものを保有しない割合が2割を超えています(出典: 総務省「令和5年通信利用動向調査」「令和7年版情報通信白書」)。
LINE利用率(コミュニケーション格差の縮小)
- 60代の LINE 利用率: 2014年 11.3% → 2024年 91.1%
- 全体の LINE 利用率: 2014年 55.1% → 2024年 94.9%
家族・介護職とのコミュニケーション基盤としてLINEは60代まで急速に普及しましたが、70代以上の利用率は依然として低く、ここに「家族との連絡経路の格差」が残っています。
総務省デジタル活用支援推進事業の実績(年度別)
- 令和3年度(事業開始): 約2,000箇所で講習会を実施
- 令和4年度: 全国 4,804箇所、講師延べ23,421人、受講者 約65万人(650,727人)
- 令和5年度補正予算事業(令和6年度実施): 全国 6,522箇所、講師延べ44,992人、受講者 約47万人(467,597人)
- 受講者の年代構成は 60歳以上が約89%、最多は70〜74歳(約27%)
令和3〜7年度の5か年計画として継続中で、携帯ショップのない786市町村(2025年3月時点)にも講師派遣型で支援が及んでいます。
介護現場でのスマホ・タブレット支援のポイント
- 『教える』より『一緒に操作する』: 隣に座って同じ画面を見ながら、本人の指で操作してもらう
- 1回30分以内: 高齢者の集中力に配慮、短時間で1機能ずつ
- 「失敗しても壊れない」を伝える: タップに不安を持つ方が多い、安心感を最初に
- 使いたいアプリを限定: 「LINE家族グループ」「天気予報」「電子マネー」など本人が必要なものに絞る
- 家族・地域包括との連携: 介護職だけが教える役割を背負わず、地域のデジタルサポーター(NPO・自治体ボランティア)と協働
- 視認性・操作性の設定: 文字サイズ「大」、長押し感度を低く、誤タップ防止のシンプル機種選定
関連する主な介護用語
よくある質問
- Q1. 国・自治体の支援はありますか?
- A. 総務省「デジタル活用支援事業」が全国展開しており、地域の携帯ショップや公民館で無料のスマホ教室を提供しています。自治体独自のシニアスマホ教室も多数あります。
- Q2. マイナンバーカード保険証への移行で困っている高齢者には?
- A. ケアマネ・地域包括支援センター・社会福祉協議会が市町村窓口同行をサポートしています。本人による申請が困難な場合は家族や法定後見人が代理申請可能です。
- Q3. 介護施設として何をすべきですか?
- A. (1) 利用者・家族のデジタル利用状況のアセスメント、(2) スマホ操作支援を生活相談員業務に組み込む、(3) 自治体のデジタル支援事業と連携、の3つが第一歩です。
参考資料
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まとめ
高齢者のデジタルデバイドは、行政手続きや医療サービスのオンライン化が進む中で生活の質に直接影響する社会課題です。介護現場では、3類型を意識した段階的な支援と、地域・自治体・家族との連携で取り組むことが求められます。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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