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📑目次

  1. 01残業実態の全国データ|平均値と分布のギャップ
  2. 02協会の提言:「導入支援」から「活用支援」へフェーズを転換
  3. 03データが映す壁:最多の障壁は「職員のスキル不足」68.6%
  4. 04【独自見解】「活用支援」をケアマネ実務に落とすと何が変わるか
  5. 05【独自見解】2027年改正・LIFEとつながる「活用」の本丸
  6. 06動き出した「活用支援」:自治体モデル事業と伴走型の支援
  7. 07参考資料
  8. 08まとめ
介護の働き方診断
ケアマネ協会、ICT活用は「導入支援から活用支援へ」|居宅介護支援の実態調査で浮かぶ「入れたが使いこなせていない」課題
介護職向け

ケアマネ協会、ICT活用は「導入支援から活用支援へ」|居宅介護支援の実態調査で浮かぶ「入れたが使いこなせていない」課題

日本介護支援専門員協会が2026年5月27日、居宅介護支援事業所のICT活用に関する実態調査を公表。導入支援から「活用支援」へ推進策を転換すべきと提言した。職員のスキル不足68.6%が最大の障壁。調査の中身とケアマネ実務への影響を解説。

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日本介護支援専門員協会は2026年5月27日、「居宅介護支援事業所におけるICT活用に関する実態調査」の結果を公表し、デバイスやツールをそろえる「導入支援」から、現場でどう生かすかという「活用支援」へ推進策のフェーズを転換すべきだと提言した。調査では協会会員1,266人が回答し、ICT導入の最大の障壁は「職員のスキル不足(68.6%)」だった。モバイル端末や介護ソフト、クラウド、生成AIを入れても十分な効果に直結していない実態が浮き彫りになり、協会の七種秀樹副会長は「今後はどう活用するかを伝えていくことが大事」と指摘。居宅で働くケアマネにとっては、「入れて終わり」ではなく業務にどう溶け込ませるかが問われる局面に入ったといえる。

📑目次▾
  1. 01協会の提言:「導入支援」から「活用支援」へフェーズを転換
  2. 02データが映す壁:最多の障壁は「職員のスキル不足」68.6%
  3. 03【独自見解】「活用支援」をケアマネ実務に落とすと何が変わるか
  4. 04【独自見解】2027年改正・LIFEとつながる「活用」の本丸
  5. 05動き出した「活用支援」:自治体モデル事業と伴走型の支援
  6. 06参考資料
  7. 07残業実態の全国データ|平均値と分布のギャップ
  8. 08まとめ

解説動画

「補助金を使ってタブレットも介護ソフトも入れた。でも、思ったほど業務が楽になっていない」。居宅介護支援の現場で、こんな声を聞いたことのあるケアマネは少なくないはずだ。国はケアプランデータ連携システムをはじめとするICTの普及を後押しし、2026年6月の処遇改善加算の要件にもデータ連携システムの導入が組み込まれた。導入のハードルは確実に下がっている。

ところが、機器やソフトを「入れる」ことと、それを「使いこなす」ことの間には、想像以上に大きな溝がある。設備は整ったのに業務時間が思うように減らない、せっかくのシステムを一部の職員しか使えていない。こうした「導入と活用のギャップ」は、規模の大小を問わず多くの事業所が直面している現実だ。日本介護支援専門員協会(柴口里則会長)が2026年5月27日に公表した実態調査は、まさにこの溝の存在をデータで突きつけた。協会は調査結果を踏まえ、推進策の重心を「導入支援」から「活用支援」へ移すべきだと提言している。

本記事では、この調査が何を明らかにしたのか、協会が掲げる「活用支援」とは具体的に何を指すのかを一次情報に基づいて整理する。そのうえで、居宅介護支援事業所で働くケアマネが、自分の事業所のICTを「宝の持ち腐れ」にしないために何ができるのかを、業務負担やLIFE・データ連携、そして自身のキャリアの文脈から掘り下げる。

協会の提言:「導入支援」から「活用支援」へフェーズを転換

5月27日公表の実態調査が出発点

日本介護支援専門員協会は2026年5月27日、「居宅介護支援事業所におけるICT活用に関する実態調査」の結果を新たに公表した。この調査は2025年12月から2026年1月にかけて実施されたもので、居宅介護支援事業所で働く協会会員を対象とし、1,266人から回答を得ている。約53万人とされるケアマネジャー全体の母集団からすればサンプル数は限られるが、全体傾向を推し量るうえでは妥当な規模だ。

協会はこの調査結果に基づき、各種のデバイスやツールをそろえる「導入支援」の段階から、それを実際の業務にどう生かすかという「活用支援」の段階へ、推進策のフェーズを転換することを提言している。これまで国や自治体、業界団体が力を注いできたのは、補助金による機器導入の後押しや、ケアプランデータ連携システムの普及啓発といった「入り口」の支援だった。その入り口の整備が一定程度進んだいま、次に必要なのは「入れたあと」をどう支えるかだ、という問題意識である。

副会長「どう活用するかを伝えていくことが大事」

協会の七種秀樹副会長は、推進策の転換についてこう指摘している。「補助金を含め導入支援は整ってきている。今後はどう活用するかを伝えていくことが大事ではないか。ケアマネジメント全体を通じてICTをどれだけ利活用できるのか、有効な事例の共有やモデルの整理が必要」。

つまり、ハードやソフトを配り終えたあとに残るのは、それを業務フローに織り込み、ケアマネジメントの質や効率の向上につなげるという、より難易度の高い課題だという認識だ。協会は今後、有効なモデルの提示やセミナーの開催など、さまざまな取り組みを通じて、居宅介護支援事業所を後押しする「活用支援」に力を入れていく方針を示している。職能団体として現場に最も近い立場から、活用の具体策を発信していく構えだ。

「導入したが活用しきれていない」という構図

今回の提言の背景には、モバイル端末や介護ソフト、クラウド、生成AIといったツールの導入が、必ずしも十分な効果に直結していないという現状認識がある。設備投資はしたものの、現場の業務時間の短縮や情報共有の円滑化といった成果に結びつききっていない。この「導入はしたが活用しきれていない」というギャップこそ、協会が活用支援へ舵を切る理由だ。次の章では、その障壁の正体を調査データから読み解く。

データが映す壁:最多の障壁は「職員のスキル不足」68.6%

導入の最大の壁は機器でも費用でもなく「人」

調査でICTを導入する際の障壁として最も多く挙げられたのは、「職員のスキル不足」で68.6%にのぼった。費用負担やセキュリティ不安、機器選定の難しさといった「モノ・カネ」の問題ではなく、それを扱う「ヒト」の側に最大の壁があると、現場の回答者自身が認識しているわけだ。

この数字は、居宅介護支援の現場の構造とも無関係ではない。ケアマネジャーは介護関連職種のなかでも平均年齢が高く、長年にわたり紙と手作業で業務を組み立ててきたベテランが多い。慣れ親しんだ仕事の進め方を、デジタルを前提とした手順へ作り替えるには相応の労力と心理的な抵抗が伴う。スキル不足という回答の背後には、こうした世代・経験の蓄積に根ざした移行コストの重さがある。

スキル不足の裏にある「経営方針」と「優先順位」

もっとも、協会の分析は「職員個人のスキル」だけに原因を求めていない。事業所の経営方針やマネジメント層の理解、DXの優先順位の置き方などが、ICTの有効活用の成否を分ける重要な要因だと位置づけている。

つまり、現場の職員に研修を施せば解決するという単純な話ではなく、経営層が「何のためにICTを入れ、どの業務をどう変えるのか」を描けているかどうかが、活用の質を左右するという見立てだ。導入の意思決定が「補助金があるから」「要件になっているから」という外的な理由にとどまり、活用イメージを欠いたまま機器だけが入ると、現場は使い方を持て余すことになる。とりわけ小規模な居宅介護支援事業所では、ICT推進を主導する担当者を置く余裕がなく、日々の利用者対応に追われるなかでツールの習熟が後回しになりがちだ。「導入はしたが活用しきれていない」という構図は、こうした人員的な余白の乏しさとも結びついている。

1,266人の声は何を代表しているのか

今回の調査は、居宅介護支援事業所で働く協会会員を対象に、2025年12月から2026年1月にかけて実施された。回答数は1,266人。全国で約53万人が従事するとされるケアマネジャー全体から見ればサンプルは限られるが、母集団の全体傾向を推し量るうえでは妥当な規模とされる。協会会員という、もともと制度や研修に関心の高い層が回答主体である点には留意が必要だが、その層ですら「職員のスキル不足」を最大の壁に挙げている事実は重い。協会への加入や研修受講に積極的な事業所でこの結果なら、関心の薄い層を含めた現場全体では、活用の遅れはさらに大きい可能性がある。

ケアプランデータ連携システムの普及は進む一方で

導入そのものは着実に進んでいる。居宅介護支援事業所と介護サービス事業所の間でケアプランや提供票などをデータでやり取りするケアプランデータ連携システムは、運営する国民健康保険中央会の公表データで、利用事業所数が2026年4月1日時点で5万件を超えた。2026年6月から始まる居宅介護支援の処遇改善加算で、データ連携システムの導入が要件の一つに位置づけられたことも、普及を後押ししている。

しかし、システムは相手のある仕組みだ。自事業所だけが導入しても、連携先の事業所が紙やFAXのままなら効果は限定的になる。導入率という「入り口」の指標は伸びても、地域全体での実際の利活用が伴わなければ、業務負担の軽減という本来の目的には届かない。協会が「導入率の先」を見据えて活用支援を提言したのは、こうした実情を踏まえてのことだといえる。

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【独自見解】「活用支援」をケアマネ実務に落とすと何が変わるか

記録・給付管理の自動化で生まれる時間を「面談」に回す

活用支援という言葉は抽象的だが、居宅介護支援の実務に引き寄せると論点ははっきりする。ケアマネの業務時間の多くは、サービス利用票や提供票の作成・突合、給付管理、サービス担当者会議の記録といった事務に費やされている。介護ソフトやデータ連携システムは、本来こうした定型作業を自動化・省力化するための道具だ。

ここで重要なのは、ICTで浮いた時間を何に充てるかをあらかじめ決めておくことだ。利用者宅への訪問やモニタリング、利用者・家族との面談、多職種との調整。これらは専門職にしかできない中核業務であり、ICTに任せられない。事務をシステムに寄せ、生まれた時間を専門性の発揮に振り向ける。この「切り分け」を業務設計として明文化できているかどうかが、活用支援を絵に描いた餅にしないための分かれ目になる。

「使えていない」事業所がまず踏むべき一歩

導入したものの活用しきれていないと感じる事業所は、いきなり全業務をデジタル化しようとして頓挫しがちだ。現実的なのは、効果が見えやすい業務から小さく始めることである。たとえばまず自事業所内でケアプランやサービス担当者会議録を電子保存し、外部への提出時だけ印刷・FAXに切り替える。連携先が対応していればデータ連携システムでの送受信に移し、対応していない相手とは従来どおりのやり取りを残す。こうした「電子のやり取り+FAXの併存」を許容する段階的な移行が、現場の抵抗を抑えながら定着につながりやすい。

導入直後は操作に不慣れなため一時的に業務効率が下がる時期がある。この「U字」の谷を乗り越えるには、誰がいつまでに何を試すのかという小さな目標と、つまずいたときに相談できる体制が欠かせない。活用支援とは、突き詰めればこの「定着までの伴走」を誰がどう担うかという問題に行き着く。

生成AIは「たたき台」、最終判断はケアマネが担う

調査でも言及された生成AIは、ケアプランの原案づくりや記録の要約といった場面で活用が広がりつつある。ただし、利用者一人ひとりの生活歴やニーズの機微を踏まえ、支援方針を最終決定するのは、あくまで人であるケアマネの役割だ。生成AIが出力するのは「たたき台」であって、それを鵜呑みにすれば個別性を欠いた画一的なプランになりかねない。

活用支援のフェーズでは、こうした「人が担う領域とツールに任せる領域の線引き」を、事業所内の共通理解として持てるかが問われる。ツールの操作研修だけでなく、ケアマネジメントのどの工程をどう効率化するのかという業務設計の議論が、活用の質を決める。

事業所単独では完結しない「地域での足並み」

ケアプランデータ連携システムのように相手のある仕組みは、一事業所の努力だけでは効果が頭打ちになる。地域包括支援センターや主要なサービス事業所と導入スケジュールや運用ルールをすり合わせ、地域全体で足並みをそろえることで初めて、FAXや郵送の往復が減り、本来の業務軽減効果が立ち上がってくる。協会が掲げる「有効な事例の共有やモデルの整理」は、まさにこの地域単位の利活用を念頭に置いたものと読める。

多職種連携の質を底上げするデータ共有

活用支援が目指す先は、事務の効率化だけではない。サービス担当者会議や医療機関との情報共有の場面でも、ICTは連携の質を押し上げる力を持つ。たとえばデータ連携システムやオンライン資格確認等システムを通じて、主治医意見書や認定情報、サービス提供実績がデジタルで共有されれば、ケアマネは紙の書類を待つ時間や転記の手間から解放され、利用者の状態変化の把握により多くの労力を割ける。情報が正確かつタイムリーに共有されることは、多職種チーム全体の判断の精度を高めることにもつながる。

逆に、せっかくの情報基盤が整っても、それを読み解いてケアプランや会議に生かす運用が伴わなければ、宝の持ち腐れになる。活用支援とは、ツールの操作習熟と、連携実務への組み込みという二つの側面を同時に進める取り組みなのである。

【独自見解】2027年改正・LIFEとつながる「活用」の本丸

業務効率化は2027年改正の議論とも地続き

ICTによる業務効率化は、目先の負担軽減にとどまらない。居宅介護支援では、データ連携システムの活用を前提に、一人のケアマネが担当できる利用者数(取扱件数)の考え方が議論されてきた経緯がある。効率化が進めば担当件数の上限緩和につながり、それは事業所経営や人員配置のあり方にも波及する。2027年に予定される介護保険制度の見直しに向けても、生産性向上は中心テーマであり続ける。

ただし、件数の引き上げには現場から慎重な声もある。システムを入れれば担当件数を大幅に増やせるという見方に対しては、利用者一人ひとりと向き合う時間を確保しなければケアの質が損なわれるという指摘だ。ICTはあくまで事務を軽くする道具であり、専門職としての関わりそのものを肩代わりするものではない。活用支援を進めるうえでも、効率化と質の両立をどう設計するかという視点が欠かせない。

だからこそ、活用支援は「現場が楽になる」という福利の話だけでなく、制度設計の前提条件としての側面を持つ。ICTを十分に活用できている事業所と、導入したまま活用しきれていない事業所との間で、業務効率や経営体力の差が開けば、制度全体の議論にもひずみが生じかねない。協会が活用支援を急ぐ背景には、こうした制度論への目配りもあると見るべきだろう。

LIFE・介護情報基盤と結びつく「データを使う」ケアマネ像

活用支援のもう一段先には、データをケアの質向上に生かすという視点がある。科学的介護情報システム(LIFE)のフィードバックや、順次運用が広がる介護情報基盤を通じて、利用者の状態に関する情報が事業所をまたいで共有・蓄積されていく。ケアマネには、こうしたデータを読み解き、サービス担当者会議や支援方針の見直しに反映する力が求められるようになる。

記録や給付管理の自動化は入り口にすぎない。その先にあるのは、データを根拠にケアマネジメントの質を高める「データを使うケアマネ」への移行だ。協会の提言する活用支援は、単なる操作習熟の支援ではなく、専門職としての新しい働き方への橋渡しと捉えることができる。

キャリアの観点:ICTを使いこなせるケアマネの市場価値

ここまでの流れは、個々のケアマネのキャリアにも示唆を与える。データ連携や介護ソフト、LIFEのフィードバック活用に習熟したケアマネは、事業所にとって生産性向上の担い手として重みを増す。主任ケアマネや管理者を目指すうえでも、ICTを業務改善に結びつけられるマネジメント力は、今後ますます評価される素養になっていくはずだ。「入れたが使えない」職場と「使いこなす」職場の差が広がるなかで、後者の経験を積めるかどうかは、転職やキャリア形成の場面でも無視できない分岐点になる。

逆に言えば、ICT活用に後ろ向きな事業所にとどまり続けることは、専門職としての成長機会を逃すリスクにもなりうる。求人を見るときに、給与や担当件数だけでなく、その事業所がデジタル化や業務改善にどう向き合っているかという視点を持つことは、これからのケアマネにとって賢い選択につながる。活用支援の時代は、事業所選び・職場選びの基準そのものを静かに塗り替えていく。

もちろん、ICTはあくまで手段であり、ケアマネの本質的な価値は利用者の人生に寄り添い、最適なケアをコーディネートする専門性そのものにある。だが、その専門性を存分に発揮するためにこそ、事務作業をいかに軽くするかが問われている。活用支援の波を「やらされる負担」と捉えるか、「専門職として動きやすくなる追い風」と捉えるか。その受け止め方の違いが、これからのケアマネとしての成長を左右していくだろう。

動き出した「活用支援」:自治体モデル事業と伴走型の支援

都道府県が始める「活用促進」のモデル事業

活用支援は協会だけの構想ではなく、行政の施策としても具体化し始めている。たとえば埼玉県は2026年5月、居宅介護支援事業所と訪問介護などのサービス提供事業所を対象に、ケアプランデータ連携システムの「活用促進モデル事業」の事業者募集を公表した。モデル事業者はコンサルタントの協力のもと、課題分析から業務改善策の検討・実行、効果検証、施設見学会の開催までを一連のプロセスとして取り組む。単に導入を促すのではなく、導入後の業務改善まで含めて支援する設計になっている点が特徴だ。

栃木県も2026年度、ケアプランデータ連携システムを地域単位で横展開する「エリア展開モデル構築事業」の委託事業者を公募している。いずれも、点としての導入から面としての利活用へと、行政の関心が移っていることを示している。協会の「活用支援への転換」という提言は、こうした自治体の動きと方向性を同じくするものだ。なお、こうしたモデル事業の成果は好事例集として整理され、他地域への横展開が図られる仕組みになっている。

「伴走型支援」というキーワード

厚生労働省が示すケアプランデータ連携の推進策でも、専任の支援員による「伴走型支援」がたびたび登場する。事業所を訪問して相談に応じ、導入から定期的な巡回支援までを継続的に行う仕組みだ。機器を配って終わりではなく、現場が自走できるようになるまで寄り添う。この伴走型の発想こそ、活用支援フェーズの核心といえる。

居宅介護支援の現場で働くケアマネにとって、こうした自治体の支援メニューや見学会・セミナーは、自事業所のICTを使いこなすための手がかりになる。協会や都道府県が整理する「有効な事例」「成功モデル」に触れることで、自分の事業所に欠けているのは機器なのか、運用設計なのか、それとも経営層の方針なのかが見えやすくなる。活用支援の時代には、こうした外部の知見を取りに行く姿勢自体が、現場の武器になる。

「導入して終わり」から「使いこなして成果を出す」へ。活用支援の時代は、現場の一人ひとりにそう問いかけている。

参考資料

  • [1]
    ケアマネ協会、ICT活用は「導入支援から活用支援へ転換を」 居宅介護支援の調査結果公表- Joint介護(2026年5月27日)
  • [2]
    役員・顧問・相談役一覧- 一般社団法人日本介護支援専門員協会
  • [3]
    介護現場の生産性向上とケアプランデータ連携システム- 厚生労働省
  • [4]
    令和8年度ケアプランデータ連携システム活用促進モデル事業について- 埼玉県(2026年5月22日)
  • [5]
    令和8(2026)年度ケアプランデータ連携システムのエリア展開モデル構築事業業務委託について- 栃木県(2026年5月27日公告)
  • [6]
    利用者の自立した生活の実現と重度化防止に向けた効果的なケアマネジメントのあり方(日本介護支援専門員協会調べ)- 厚生労働省

関連する公的データ(本文の補足)

残業実態の全国データ|平均値と分布のギャップ

介護職員の残業は週平均1.7時間で、「残業なし」が56.6%を占めます(介護労働安定センター 令和6年度介護労働実態調査)。平均値だけを見ると負担が小さく見えますが、分布で見ると景色が変わります。

週あたりの残業割合
残業なし56.6%
5時間未満25.4%
(平均)1.7時間/週

残業なしが56.6%、5時間未満が25.4%で、合わせて8割強が週5時間未満に収まります。裏を返せば、残業が集中しているのは一部の職員・一部の事業所です。記録や書類の負担軽減を検討するときは、事業所平均ではなく、負担が集中している層を特定することが先になります。

制度や業界の動きを読むときは、こうした現場側の実数と併せて見ると、発表された方針が現場のどの負荷に効くのかを判断しやすくなります。

出典: 介護労働安定センター 令和6年度介護労働実態調査(労働者調査)。調査ごとに母集団・集計定義が異なるため、数値は水準の目安として参照してください。

まとめ

日本介護支援専門員協会が2026年5月27日に公表した居宅介護支援事業所のICT活用実態調査は、「導入したが活用しきれていない」という現場の現実をデータで示した。最大の障壁は「職員のスキル不足(68.6%)」だが、その背後には経営方針やマネジメント層の理解、DXの優先順位といった事業所側の要因がある。協会が掲げる「導入支援から活用支援へ」の転換は、機器を配り終えたあとの、より本質的な課題に向き合う宣言だといえる。埼玉県や栃木県のモデル事業のように、行政の支援も「導入後の利活用」へと軸足を移し始めている。

居宅で働くケアマネにとって、これは「ツールを入れること」がゴールではなく、記録や給付管理を効率化し、生まれた時間を利用者との向き合いに振り向け、やがてはデータを根拠にケアの質を高めていくという、働き方そのものの問い直しを意味する。2027年の制度見直しやLIFE・介護情報基盤の広がりも見据えれば、ICTを使いこなせるかどうかは、事業所の競争力だけでなく、ケアマネ個人のキャリアにも効いてくる。あなたの事業所のICTは、いま「入れて終わり」になっていないだろうか。

医療・健康情報に関する免責事項

本記事は、介護現場で働く方および介護職への転職を検討される方に向けた一般的な情報提供を目的としており、 個別の症状に対する医学的な診断・治療を行うものではありません。

ご本人・ご家族の症状やケア方法について判断が必要な場合は、必ず医師・看護師・薬剤師・言語聴覚士・理学療法士・作業療法士等の有資格者にご相談ください。 介護保険サービスの利用判断についてはケアマネジャー、行政手続きについては各市区町村の窓口にお問い合わせください。

掲載情報は公開時点の各種公的資料・業界資料に基づき作成していますが、最新の制度・診療ガイドライン等と異なる場合があります。

公開日: 2026年5月30日最終更新: 2026年8月16日

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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