高齢者のめまいとは

高齢者のめまいとは

高齢者のめまいを回転性・浮動性・立ちくらみの3タイプで整理。BPPV・起立性低血圧・薬剤性など原因と、転倒リスクとの関係、介護現場の観察・対応を一次情報で解説。

ポイント

高齢者のめまいの定義

高齢者のめまいとは、加齢や複数の疾患・薬剤の影響で起こる「ぐるぐる回る(回転性)」「ふらふらする(浮動性)」「立ちくらみ(前失神)」の総称です。原因は良性発作性頭位めまい症(BPPV)や起立性低血圧、薬剤の副作用など多岐にわたり、いずれも転倒・骨折のリスクを高めるため、介護現場では「めまいの訴え=転倒予防の見直しサイン」として観察と環境調整が欠かせません。

目次

高齢者のめまいの概要と3タイプ

高齢者のめまいの全体像

「めまい」は一つの病名ではなく、平衡感覚の乱れによって生じる症状の総称です。日本神経学会の「標準的神経治療:めまい」では、めまいを大きく3つのタイプに分けて整理しています。高齢者では、加齢による平衡機能(前庭・体性感覚・視覚と、それらを統合する小脳機能)の低下に加え、複数の疾患や薬剤が重なるため、原因が一つに特定しづらいのが特徴です。

めまいの3タイプ

  • 回転性めまい(vertigo):自分や周囲がぐるぐる回る感覚。多くは内耳(前庭)の異常で、良性発作性頭位めまい症(BPPV)やメニエール病が代表。脳梗塞・脳出血など中枢性の場合は麻痺・ろれつ障害など神経症状を伴う。
  • 浮動性めまい(ふらつき・不安定感):雲の上を歩くような感覚やふらつき。脳血管障害の後遺症、薬剤性、慢性的な脳循環不全、加齢に伴う平衡障害などで起こりやすく、高齢者に多い。
  • 立ちくらみ(前失神):立ち上がった時に目の前が暗くなる、気が遠くなる感覚。起立性低血圧や貧血、脱水、循環器疾患が背景にある。

このうち高齢者で最も頻度が高いのがBPPVです。内耳の前庭にある耳石(炭酸カルシウムの粒)が加齢などで剥がれ、三半規管に入り込むことで、寝返りや起き上がりなど頭を動かした時に数秒〜1分ほどの強い回転性めまいが起こります(MSDマニュアル)。「良性」で命に関わらない一方、強いめまいでふらついて転倒・けがに至る点が高齢者では問題になります。

介護現場でのとらえ方

めまいは本人にとって不快なだけでなく、動作のたびに「また回るかもしれない」という不安から活動量が減り、廃用・フレイルが進む悪循環を招きます。介護職には診断はできませんが、「いつ・どんな動きで・どのくらい続くか」を観察して看護師や医師に正確に伝えること、そしてめまいのある利用者の転倒環境を先回りで整えることが現場の役割です。

高齢者のめまいの主な原因

  • 良性発作性頭位めまい症(BPPV):めまいで最も多い原因。耳石が三半規管に入り込んで起こる。頭を動かした時の数秒〜1分の回転性めまいが特徴で、耳鳴り・難聴は通常伴わない。後半規管型ではエプリー法などの耳石置換(理学療法)が有効で、BPPV診療ガイドライン2023でも推奨度Aとされる。
  • 起立性低血圧:立ち上がった時に血圧が下がり、立ちくらみ・ふらつきが生じる。高齢者や降圧薬・利尿薬の服用者で起こりやすい。
  • 薬剤性(薬物有害事象):降圧薬・睡眠薬・抗不安薬・抗うつ薬・抗精神病薬・抗ヒスタミン薬などが「ふらつき・転倒」を起こす代表的な薬。複数の薬を飲むほどリスクが上がる。
  • メニエール病:内耳のむくみが原因で、30分〜数時間続く回転性めまいに耳鳴り・難聴・耳閉感を伴う。
  • 脳血管障害(脳梗塞・脳出血):手足の麻痺・ろれつが回らない・激しい頭痛などを伴うめまいは中枢性が疑われ、緊急受診が必要。
  • 全身的要因:貧血、脱水、低血糖、不整脈(心房細動など)といった内科的背景もめまい・ふらつきの原因になる。

高齢者のめまいで注意したい薬剤(ふらつき・転倒を起こす薬)

ふらつき・転倒を起こしやすい薬剤

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」は、薬の副作用が老年症候群として現れる「薬剤起因性老年症候群」を示しています。その中で「ふらつき・転倒」を起こす代表的な薬剤は次の通りです。介護現場で利用者が新たにめまい・ふらつきを訴えた時は、まず「薬が変わっていないか」を確認する視点が重要です。

症候原因となりうる主な薬剤
ふらつき・転倒降圧薬(特に中枢性降圧薬・α遮断薬・β遮断薬)、睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬、てんかん治療薬、抗精神病薬(フェノチアジン系)、パーキンソン病治療薬(抗コリン薬)、抗ヒスタミン薬(H2受容体拮抗薬を含む)、メマンチン

同指針では、薬物有害事象は薬剤数にほぼ比例して増加し、特に6種類以上でリスクが高まるデータが示されています(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015より)。複数の医療機関・診療科を受診している高齢者ほど多剤服用になりやすく、めまい・ふらつきの背景にポリファーマシーが隠れていることがあります。

高齢者のめまいと混同しやすい概念の違い

関連する概念との違い

めまいは原因によって対応がまったく異なります。介護現場で混同しやすい概念を整理します。

概念特徴めまいとの関係
めまい(本記事)回転性・浮動性・立ちくらみの症状の総称
起立性低血圧起き上がり・立ち上がりで血圧が下がる状態立ちくらみ型めまいの代表的な原因の一つ
失調症(運動失調)小脳・脊髄・前庭の障害で動作が不安定になる状態前庭性失調はめまい・ふらつきと重なるが、めまいより「動作の協調障害」が中心
転倒リスクアセスメント転倒のしやすさを内的・外的要因で評価する手法めまいは内的要因の一つとして評価項目に含まれる

つまり、めまいは「症状」、起立性低血圧や失調症は「原因・病態」、転倒リスクアセスメントは「評価の枠組み」という位置づけです。めまいの訴えがあれば、その原因を切り分けたうえで転倒予防策につなげる流れになります。

高齢者のめまいと転倒予防の実務ポイント

めまいと転倒予防 ― 介護現場の実務ポイント

高齢者のめまいは、それ自体が転倒・骨折の引き金になります。診断・治療は医療職の役割ですが、介護現場では次の3点で転倒リスクを下げられます。

  • 動作の「ゆっくり化」を促す:起き上がりは「目を開ける→横向き→ゆっくり起き上がる」の順に。立ち上がりも一呼吸おいてから。BPPVや起立性低血圧は急な体位変換で誘発されやすいためです。
  • 環境を先回りで整える:めまいの訴えがある利用者の動線に手すりを確保し、段差・滑りやすい床・コード類を除く。移動時は付き添いや見守りを増やす。
  • 「いつ・どう変わったか」を記録して連携する:めまいの誘発動作・持続時間・随伴症状(耳鳴り・難聴・頭痛・麻痺など)と、最近の薬の変更を看護師・医師に報告する。麻痺やろれつ障害を伴う場合は緊急対応のサイン。

めまいによる活動低下は廃用・フレイルを進めるため、「危ないから動かさない」ではなく「安全に動ける条件を整える」発想が、結果的に転倒予防にもつながります。

高齢者のめまいのよくある質問

よくある質問

高齢者のめまいで最も多い原因は何ですか?

良性発作性頭位めまい症(BPPV)です。内耳の耳石が三半規管に入り込み、寝返りや起き上がりなど頭を動かした時に数秒〜1分の回転性めまいが起こります。耳鳴りや難聴は通常伴いません。

めまいと転倒は関係がありますか?

大いに関係します。めまいは平衡感覚を乱し、ふらついて転倒・骨折につながります。厚生労働省の指針でも「ふらつき・転倒」は薬剤の副作用として現れる代表的な老年症候群とされており、めまいの訴えは転倒予防を見直すサインです。

薬が原因でめまいが起こることはありますか?

あります。降圧薬・睡眠薬・抗不安薬・抗うつ薬・抗精神病薬・抗ヒスタミン薬などはふらつき・転倒を起こしうる薬です。特に6種類以上の多剤服用(ポリファーマシー)でリスクが高まるため、新たにめまいが出たら薬の見直しを医師・薬剤師に相談する価値があります。

すぐ受診すべき危険なめまいはどんなものですか?

手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らない、激しい頭痛、意識がもうろうとする、突然の難聴などを伴うめまいは、脳梗塞・脳出血など中枢性の可能性があり緊急受診が必要です。

介護職はめまいの利用者に何ができますか?

診断や治療はできませんが、誘発動作・持続時間・随伴症状・最近の薬の変化を観察して看護師・医師に伝えること、急な体位変換を避けてゆっくり動いてもらうこと、手すりや見守りで転倒環境を整えることができます。

高齢者のめまいの参考資料

高齢者のめまいのまとめ

まとめ

高齢者のめまいは、回転性・浮動性・立ちくらみの3タイプに整理でき、BPPVや起立性低血圧、薬剤の副作用など原因はさまざまです。共通するのは、いずれも転倒・骨折のリスクを高めるという点。介護現場では「めまいの訴え=転倒予防の見直しサイン」ととらえ、誘発動作・持続時間・随伴症状・薬の変化を観察して医療職へ正確に伝え、ゆっくりした動作と環境整備で安全に動ける条件を整えることが大切です。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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