
導尿とは
導尿は尿道からカテーテルを入れて膀胱の尿を出す方法。一時的導尿と膀胱留置カテーテルの違い、自己導尿(CIC)、高齢者・在宅での感染予防、医行為としての線引きと介護職・家族ができる範囲を解説。
導尿の定義(answer)
導尿とは、尿道口からカテーテル(細い管)を膀胱内に挿入し、自力では出しきれない尿を体外へ排出する方法です。尿閉や多量の残尿がある人に行い、その都度カテーテルを抜く「一時的(間欠)導尿」と、管を入れたままにする「膀胱留置カテーテル」に大別されます。カテーテルの挿入・抜去は医行為で、介護職は実施できません。
目次
導尿の概要と適応
導尿とは何か(仕組みと目的)
導尿(どうにょう)は、尿道口から膀胱までカテーテルを通し、膀胱にたまった尿を排出する処置です。腎臓では毎分およそ1mLの尿がつくられ、膀胱にためられて排尿されますが、何らかの原因で膀胱を空にできなくなると尿がたまり続け、痛みや尿もれ、尿路感染、腎機能の低下を招きます。導尿はこの「膀胱を空にできない状態」を物理的に解消する方法です。
導尿が必要になる主な状態
導尿の代表的な適応は尿閉(膀胱を空にできない、まったく排尿できない状態)と多量の残尿です。MSDマニュアルでは、排尿後の残尿量が50mL(65歳以上では100mL)を超えると尿閉と診断するとされ、急性尿閉の解除には尿道カテーテル法が必要とされています。原因には、前立腺肥大症などによる下部尿路の通過障害、脳卒中・脊髄損傷・パーキンソン病・多発性硬化症・糖尿病性神経障害・骨盤内手術後などによる神経因性膀胱、抗コリン作用のある薬剤、宿便などがあります。
「導尿」と「膀胱留置カテーテル」の関係
広い意味の導尿には、一回ごとに管を抜く一時的(間欠)導尿と、管を入れたままにする膀胱留置カテーテルの両方が含まれます。本記事では「導尿」を主に前者(必要なときだけ管を入れて尿を出し、終わったら抜く方法)を中心に扱い、両者の違いは次の比較セクションで整理します。膀胱留置カテーテルそのものの管理は別の用語ページで詳しく解説しています。
一時的導尿と膀胱留置カテーテルの違い
同じ「カテーテルで尿を出す」処置でも、一時的導尿(間欠導尿)と膀胱留置カテーテルは目的もリスクも異なります。MSDマニュアルは「膀胱にカテーテルを定期的に挿入する方が、カテーテルを継続的に留置するより安全」と述べており、可能なら間欠導尿が優先されます。
| 比較項目 | 一時的導尿(間欠導尿) | 膀胱留置カテーテル |
|---|---|---|
| カテーテルの扱い | 排尿のたびに入れて、終わったら抜く | 管を膀胱内に入れたままにする |
| 固定方法 | 固定しない | 先端のバルーンに滅菌水を入れて膀胱内に固定 |
| 蓄尿バッグ | 不要 | 必要(尿をためる袋を接続) |
| 感染リスク | 相対的に低い | 高い。開放式は4日以上で実質ほぼ全例が尿路感染を起こすとされ、閉鎖式でも10〜14日で半数に細菌定着 |
| 主な対象 | 神経因性膀胱、尿閉、多量の残尿で本人・家族が管理できる場合 | 頻回の導尿が難しい、手術後、全身状態が不安定など |
| 生活への影響 | バッグがなく行動の自由度が高い | 常時バッグを携帯、行動が制限されやすい |
このため泌尿器科領域では、留置カテーテルは「他の方法が使えない場合の選択肢」と位置づけられ、可能であればできるだけ早く抜いて間欠導尿へ移行することが望ましいとされています。在宅で長期に排尿管理が必要なケースでは、感染リスクの低い在宅自己導尿が選ばれることが多くなっています。
自己導尿(CIC)の解説
自己導尿(CIC)とは
自己導尿は、患者本人が一定時間ごとに尿道からカテーテルを入れ、たまった尿を自分で出す方法です。正式には清潔間欠(自己)導尿、英語では CIC(clean intermittent catheterization)または CISC(clean intermittent self-catheterization)と呼びます。病院で行う滅菌操作は不要で、手洗いと清浄綿による清拭程度の「清潔操作」で行えるのが特徴です。神経因性膀胱(脊髄損傷・脳血管疾患・多発性硬化症・パーキンソン病・糖尿病性神経障害など)による尿閉・残尿・尿失禁に広く用いられます。
なぜ自己導尿が膀胱と腎臓を守るのか
膀胱に尿がたまり続けて過伸展すると、膀胱の壁が厚くなり、膀胱尿管逆流や水腎症を経て最終的に腎機能が低下します。自己導尿で膀胱を定期的に空にすると、膀胱内圧の上昇と過伸展を防げます。残尿がなく膀胱内圧が高くならなければ、膀胱本来の抵抗力で尿路感染を防ぎやすくなるとされ、これが「清潔(無菌でなく)」操作で足りる根拠です。膀胱容量がおよそ400〜500mLを超えないよう、回数を設定して導尿します。
カテーテルの種類と回数の目安
カテーテルには、繰り返し使う再利用型(使用後に水洗いし消毒液に浸けて保存、約1か月使用)、1回で捨てる単回使用型、潤滑剤が塗布済みの親水性コーティング付き単回使用型があります。回数は排尿日誌(排尿量・残尿量)をもとに医師が設定します。水分は1日あたりおよそ1,000〜1,500mLを目安にしますが、水分制限のある人は主治医に確認します。経過とともに残尿が減って回数を減らせる場合もありますが、自己判断で中止しないことが原則です。
導尿は誰が行えるか(医行為と介護職・家族の範囲)
導尿は誰が行えるか(医行為としての線引き)
導尿で最も重要なのが「誰が何をできるか」です。厚生労働省医政局の通知(平成17年7月26日 医政発第0726005号「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」)と、その後の追加通知が判断の基準になります。
カテーテルの挿入・抜去は医行為
尿道からカテーテルを膀胱へ挿入する行為、入れた管を抜く行為は医行為であり、医師・看護師など免許を持つ人だけが行えます。介護職員は、利用者本人の自己導尿であってもカテーテルの挿入そのものは実施できません。膀胱留置カテーテルについても、介護職員が挿入したり抜いたりすることはできず、抜けてしまっても入れ直すことはできません。
介護職員ができる「自己導尿の補助」
平成17年通知では、原則として医行為でない行為のひとつに「自己導尿を補助するため、カテーテルの準備、体位の保持などを行うこと」が挙げられています。つまり介護職員にできるのは、本人が自分で導尿するための環境づくりです。
- 利用者が普段使うカテーテルとケース、消毒綿、採尿容器、防水シーツ、廃棄物入れなどの物品の準備
- 本人が導尿しやすいよう体位を保持する手伝い
- 使い終わった物品の片づけ
あくまで「本人が行う自己導尿の手伝い」であり、介護職員がカテーテルを尿道へ入れることはできません。
膀胱留置カテーテルで介護職員ができること
留置カテーテルでは、(1)蓄尿バッグからの尿の廃棄(DIBキャップの開閉を含む)、(2)バッグ内の尿量・尿の色の確認、(3)チューブを留めるテープが外れた際にあらかじめ指定された位置へ貼り直すこと、(4)医師または看護職員が専門的管理が不要と確認した場合の陰部洗浄、が医行為でない行為として認められています。さらに2025年12月26日の通知(その3)では、医師・看護職員の立会いのもとで安全に行えると事前確認された実施者が、蓄尿バッグの破損や外れの際に未開封・未使用のバッグを接続することも追加されました。いずれも蓄尿バッグは膀胱より低い位置に保ち、床につけないことが共通の注意点です。
家族が行う場合
医行為の規制は医師・看護師等の免許を持たない人が「業として」行うことを対象とするため、患者本人やその家族が自宅で自己導尿・介助を行うことは法的に妨げられません。在宅では本人または家族が導尿を担うケースが多く、医療機関の指導を受けて手技を習得します。一方、学校では教員は導尿を行えず、家族が出向くか看護師の配置が必要になります。
高齢者・在宅での導尿の注意と感染予防
高齢者・在宅での注意点と感染予防
導尿は適切に行えば膀胱と腎臓を守る一方、手技を誤ると尿道損傷や尿路感染を起こします。高齢者や在宅で導尿を行う場合は、次の点に注意します。
感染予防の基本
- 手洗いを徹底する。導尿の前後に流水と石けんで手指を洗う。外出先で洗えない場合に備え、ウェットティッシュや手指消毒剤を携帯する。
- 尿道口を清潔にする。清浄綿で外尿道口とその周囲を、中心から外側へ「の」の字を描くように拭く。
- 潤滑剤を使い、無理に挿入しない。とくに尿道の長い男性では潤滑剤が必須。入りにくいときは無理に進めず中止し、医療者に相談する(無理な挿入は尿道損傷の原因)。
- 膀胱をためすぎない。膀胱容量がおよそ400〜500mLを超えないよう、決められた回数・間隔を守る。
- 水分を適切にとる。1日およそ1,000〜1,500mLが目安(水分制限がある人は主治医に確認)。
高齢者で特に気をつけたいこと
- 手指の巧緻性・視力の低下で自己導尿が難しくなることがあり、家族や訪問看護の支援が必要になる。
- 尿路感染(UTI)のサインが非典型的になりやすい。高齢者では発熱がはっきりせず、元気のなさ・食欲低下・せん妄(急な混乱)として現れることがある。尿の濁り・血尿・悪臭、排尿時痛、発熱に気づいたら早めに受診する。
- 留置カテーテルは長期化しやすい。漫然と留置せず、間欠導尿へ移行できないか定期的に主治医と相談する。
介護職・家族が観察し、看護師へ報告したいこと
尿は体調を映す手がかりです。普段より尿量が極端に少ない場合は脱水や尿閉の可能性があります。尿の色・濁り・血尿・浮遊物、発熱やいつもと違う様子に気づいたら、自己判断せず速やかに看護師・医師へ報告します。タブレットで尿の色や浮遊物を写真共有し、看護師と連携する施設の例もあります。
導尿のよくある質問
導尿に関するよくある質問
Q. 介護職員は利用者の導尿をしてもよいですか。
カテーテルを尿道へ挿入する行為は医行為のため、介護職員は実施できません。できるのは「自己導尿の補助」、つまりカテーテルなど物品の準備や体位の保持です(厚労省 平成17年通知)。
Q. 自己導尿(CIC)は無菌でなければいけませんか。
病院の滅菌操作までは不要です。残尿をなくして膀胱内圧を上げないことで尿路感染を防げるとされ、手洗いと清拭による「清潔操作」で行うのが一般的です。だからこそ清潔「間欠」導尿(CIC)と呼ばれます。
Q. 導尿は1日何回行いますか。
排尿日誌(排尿量・残尿量)をもとに医師が設定します。膀胱容量がおよそ400〜500mLを超えないことが目安で、自排尿の有無や生活スタイルに合わせて回数を決めます。自己判断で回数を減らしたり中止したりしないことが大切です。
Q. 膀胱留置カテーテルとどちらが安全ですか。
一般に間欠導尿のほうが感染リスクが低く、MSDマニュアルも「定期的に挿入する方が継続的に留置するより安全」としています。留置が必要な場合も、可能なら早期に間欠導尿へ移行することが望ましいとされます。
Q. 家族が自宅で導尿してもよいですか。
医行為の規制は免許のない人が業として行うことを対象とするため、本人や家族が自宅で導尿・介助を行うことは妨げられません。医療機関で手技指導を受けてから行います。
導尿の参考資料
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- [4]
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導尿のまとめ
まとめ
導尿は、尿道からカテーテルを入れて膀胱の尿を出す方法で、必要時だけ管を抜く一時的(間欠)導尿と、入れたままにする膀胱留置カテーテルがあります。感染リスクが低いのは間欠導尿で、在宅では清潔間欠自己導尿(CIC)が広く使われます。カテーテルの挿入・抜去は医行為であり、介護職員ができるのは物品準備や体位保持といった自己導尿の補助まで。高齢者では尿路感染のサインが非典型的になりやすいため、尿の色や量、いつもと違う様子に気づいたら早めに看護師・医師へ報告することが、本人の膀胱と腎臓を守る第一歩です。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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