
口腔乾燥症(ドライマウス)とは
口腔乾燥症(ドライマウス)とは唾液の分泌が減り口の中が乾く状態。薬剤・加齢・脱水など原因と症状、高齢者の誤嚥性肺炎リスク、唾液を増やすケアを医療情報をもとに解説します。
口腔乾燥症(ドライマウス)の定義
口腔乾燥症(ドライマウス)とは、さまざまな原因によって唾液の分泌が減少し、口の中が乾燥した状態が続くことをいいます。薬の副作用・加齢・脱水・ストレス・口呼吸などが主な原因で、口のネバつきやヒリヒリ感、食べにくさ・飲み込みにくさを招きます。高齢者では誤嚥性肺炎や虫歯・歯周病のリスクを高めるため、口腔ケアと唾液を増やす工夫が重要です。
目次
口腔乾燥症(ドライマウス)の概要と分類
口腔乾燥症(ドライマウス)とは何か
口腔乾燥症(ドライマウス)は、何らかの原因で唾液の分泌量が低下し、口の中が乾いた状態が持続する病態を指します。健康な成人の唾液は1日あたりおよそ1~1.5リットル分泌され、口の中を潤すだけでなく、食べかすを洗い流す自浄作用、細菌の増殖を抑える抗菌作用、消化を助ける作用など、口腔と全身の健康に欠かせない役割を担っています。この唾液が減ると、口腔内の環境が一気に悪化します。
ドライマウスは50歳以上で多くなり、日本では口の乾きを感じている人が数百万人から数千万人いると推測されています(大阪歯科大学附属病院)。「単なる口の渇き」と見過ごされがちですが、放置すると唾液腺の機能がさらに低下し、悪循環に陥ることがあります。
3つのタイプに分けられる
健康長寿ネット(公益財団法人 長寿科学振興財団)では、ドライマウスを次の3タイプに整理しています。
- 唾液分泌量が減少したタイプ:唾液腺の機能低下や体液量の減少によるもの。最も典型的なドライマウス。
- 唾液分泌量は正常だが口腔内の唾液量が減少したタイプ:口呼吸などで唾液が蒸発してしまうもの。
- 唾液分泌量・口腔内量とも正常だが乾燥感を訴えるタイプ:自覚症状としての乾きを訴えるもの。
このように「乾いていると感じる症状すべて」を広い意味でのドライマウスに含めるのが一般的な考え方です(日本口腔外科学会)。
口腔乾燥症(ドライマウス)の主な原因と症状
口腔乾燥症(ドライマウス)の主な原因
原因は一つとは限らず、複数が重なっていることが少なくありません。なかでも薬剤の副作用が最も多い原因とされています(大阪歯科大学附属病院)。
- 薬の副作用:降圧利尿薬などの循環器用薬、抗うつ薬・抗不安薬などの精神科用薬、抗アレルギー薬、抗パーキンソン薬など。添付文書に「口渇」と書かれている薬が該当します。多剤併用でリスクが高まります。
- 加齢による唾液腺の萎縮:年齢とともに唾液腺の機能や口・顎の筋力が低下します。ただし加齢のみが原因となることは少なく、他の要因と重なって生じることが多いとされています。
- 脱水・全身疾患:糖尿病(高血糖による脱水)、腎障害、発熱・下痢による体液量の減少など。
- シェーグレン症候群:唾液腺や涙腺を自己免疫が攻撃する疾患。口と目の乾燥が特徴。
- 頭頸部の放射線治療後:唾液腺が照射を受けると不可逆的に障害されることがあります。
- ストレス・緊張:交感神経が優位になり唾液分泌が抑えられます。
- 口呼吸:鼻炎や習慣による口呼吸で唾液が蒸発します。夜間の口の乾きに多い原因です。
こんな症状が現れる
- 口の中がネバネバする・ヒリヒリする
- 乾いた食べ物が食べにくい、飲み込みにくい(摂食・嚥下障害)
- 舌が痛い、ざらざらする、舌の表面がひび割れる
- 話しにくい(会話障害)、味が分かりにくい(味覚障害)
- 口臭が強くなる、夜中に渇きで目が覚める
- 虫歯(う蝕)・歯周病の悪化、口腔カンジダ症
口腔乾燥症(ドライマウス)と口腔機能低下症・口腔ケアの違い
口腔乾燥症と似た言葉との違い
ドライマウスは、口腔に関わる他の用語としばしば混同されます。それぞれの位置づけを整理します。
- 口腔乾燥症(ドライマウス)=「口の中が乾いている状態(症状・病態)」そのもの。唾液の減少という原因側の問題を指します。
- 口腔機能低下症=咀嚼・嚥下・口腔衛生など複数の口腔機能が複合的に衰えた状態を指すより広い概念。7項目の検査で診断され、口腔乾燥はその評価項目の一つに含まれます。ドライマウスは口腔機能低下症を引き起こす一因です。
- 口腔ケア=歯みがき・粘膜清掃・保湿などのケア行為の総称。ドライマウスの人にとっては、悪化しやすい虫歯・歯周病・カンジダ症を防ぐ重要な対策です。
- 唾液腺マッサージ=唾液腺を刺激して分泌を促す具体的なケア手技。ドライマウスの改善策の一つです。
つまり「ドライマウス(乾いている状態)」に対し、「口腔ケア・唾液腺マッサージ(対処の手段)」「口腔機能低下症(より大きな枠組み)」という関係になります。各用語の詳細は本ページ末尾の関連用語リンクから確認できます。
口腔乾燥症(ドライマウス)の検査・診断とケア方法
どうやって診断する?
唾液の分泌量を測る検査で評価します。代表的なのは刺激唾液を調べるガムテストとサクソンテストです。
- ガムテスト:10分間ガムを噛んで出た唾液を計測。正常は10分間で10mL以上。
- サクソンテスト:2分間ガーゼを噛んで染み込んだ唾液の重さを計測。正常は2分間で2g以上。
- 安静時唾液:リラックスした状態で15分間ためた唾液を計測。正常は1.5mL以上。
これらの基準値を下回るとドライマウスが疑われます。原因を調べるため血液検査や唾液腺の機能検査を行い、シェーグレン症候群が疑われる場合は口唇腺の組織検査を行うこともあります。
高齢者の口腔ケアと唾液を増やす工夫
原因が脱水や糖尿病など全身疾患による場合は、その病気の治療で改善します。薬剤性が疑われるときは、自己判断で中断せず主治医に薬の変更・減量が可能か相談しましょう。そのうえで、日常で次のセルフケアが有効です。
- こまめな水分補給:少量を頻回に。カフェイン・アルコールは利尿作用があるため摂りすぎに注意。
- 唾液腺マッサージ:耳下腺・顎下腺・舌下腺を外側からやさしく刺激して分泌を促す。
- よく噛んで食べる:歯ごたえのある食材や、梅干し・レモンなど酸味のある食品が唾液を促します。キシリトールガムも有効。
- 保湿剤の活用:保湿ジェル・スプレー・洗口液で粘膜を潤す。夜間用の保湿マウスピースもあります。
- 鼻呼吸を意識する:口呼吸を減らし、室内は加湿器で湿度40~60%を保つ。
- 毎日の口腔ケア:乾燥で増えやすい虫歯・歯周病・カンジダ症を防ぐため、丁寧な歯みがきと粘膜清掃を続ける。
口の乾きを我慢して放置すると唾液腺の機能がさらに低下するため、気になる症状が続く場合は歯科や口腔外科・ドライマウス外来への受診をおすすめします。
口腔乾燥症(ドライマウス)と介護現場・看護師の視点
介護現場で押さえておきたいポイント
高齢者は、加齢による唾液腺機能の低下に加え、複数の持病と多剤併用が重なりやすく、ドライマウスのリスクが高い集団です。唾液の抗菌・自浄作用が落ちると口腔内の細菌が増え、誤嚥性肺炎の引き金になります。健康長寿ネットでは、唾液分泌量が減少した人はかぜ症候群とインフルエンザの罹患率が約2倍高いと報告されており、口の乾きは全身の感染リスクと直結します。
介護職や看護師は、利用者の「食事に時間がかかる」「義歯が合わない」「口臭が強くなった」といった変化をドライマウスのサインとして捉え、服薬内容(口渇を起こす薬の有無)や水分摂取量の確認、口腔保湿と口腔ケアの徹底につなげることが大切です。原因が薬剤や全身疾患にある場合は、看護師を通じて主治医・歯科と連携し、ケアプランに口腔保湿を位置づけると効果的です。
口腔乾燥症(ドライマウス)のよくある質問
よくある質問
- Q. 口腔乾燥症(ドライマウス)は加齢のせいだから仕方ない?
- A. 加齢は要因の一つですが、加齢のみが原因となることは少ないとされています。実際には薬の副作用・脱水・糖尿病・口呼吸などが重なっていることが多く、原因を調べて対処すれば改善が見込めます。「年だから」と諦めず受診を検討しましょう。
- Q. 何科を受診すればいい?
- A. 歯科、歯科口腔外科、または「ドライマウス外来」を設けている病院が窓口になります。全身疾患が疑われる場合は内科などと連携して原因を調べます。
- Q. 薬の副作用が原因のとき、自分で薬をやめてよい?
- A. 自己判断での中断は危険です。降圧薬や精神科の薬などは急にやめると体調を崩すおそれがあります。必ず主治医に相談し、変更・減量が可能か検討してもらいましょう。
- Q. ドライマウスを放置するとどうなる?
- A. 虫歯・歯周病の悪化、口腔カンジダ症、口臭、摂食・嚥下障害などが起こりやすくなります。高齢者では誤嚥性肺炎のリスクも高まるため、早めのケアが重要です。
- Q. 唾液を増やすために自宅でできることは?
- A. こまめな水分補給、唾液腺マッサージ、よく噛む食事や酸味のある食品、保湿ジェル・スプレーの活用、鼻呼吸と室内加湿などが有効です。
口腔乾燥症(ドライマウス)の参考資料・出典
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口腔乾燥症(ドライマウス)のまとめ
まとめ
口腔乾燥症(ドライマウス)は、唾液の分泌が減って口の中が乾く状態で、薬の副作用・加齢・脱水・ストレス・口呼吸などが重なって起こります。放置すると虫歯・歯周病・口腔カンジダ症が進み、高齢者では誤嚥性肺炎のリスクも高まります。水分補給・唾液腺マッサージ・保湿・口腔ケアといったセルフケアと、原因に応じた医療機関での対処で改善が見込めます。気になる症状が続くときは歯科・口腔外科に相談しましょう。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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