排尿日誌とは

排尿日誌とは

排尿日誌は排尿時刻・尿量・失禁・水分摂取を記録し排尿パターンを把握する記録ツール。記録項目と付け方、過活動膀胱の評価や排せつ支援加算・排尿自立支援加算での使われ方を解説します。

ポイント

排尿日誌とはの直接回答

排尿日誌(はいにょうにっし)とは、排尿した時刻・1回の尿量・尿失禁の有無や量・水分摂取量などをトイレや失禁のたびに記録し、その人の排尿パターンを「見える化」する記録ツールです。通常2〜3日分を記録し、頻尿や夜間頻尿、過活動膀胱、尿失禁の評価や、介護現場での排尿ケア・排せつ自立支援の計画づくりに活用されます。

目次

排尿日誌の概要と役割

排尿日誌とは何か

排尿日誌は、英語では Frequency Volume Chart(FVC) や Voiding Diary と呼ばれ、排尿に関する状態を客観的な数値として把握するための記録です。本人または介護者が、トイレでの排尿や失禁があるたびに、その時刻・尿量・失禁の有無や量などを書き留めていきます。

排尿の悩み(頻尿・尿もれ・夜間に何度もトイレに起きるなど)は、本人の主観だけでは「どのくらい困っているのか」「いつ、どんなときに起こるのか」が伝わりにくいものです。排尿日誌をつけることで、1日の排尿回数・1回の排尿量・頻尿が昼と夜のどちらに強いのか・夜間の尿量がどれくらいかといったことが正確にわかり、医師の診断や排尿ケアの方針づくりの大きな助けになります。

介護現場での位置づけ

介護の現場では、排尿日誌は単なる検査の記録にとどまらず、排尿ケアの土台となるアセスメント(評価)ツールとして使われます。頻尿や失禁がある利用者の膀胱機能を排尿日誌で把握し、トイレ誘導のタイミングを調整したり、おむつやパッドの選び方を見直したりと、一人ひとりに合った排泄ケアにつなげていきます。とくに介護施設では、医師や看護師による排尿・排便状態の評価とあわせて記録され、自立支援に向けたケア計画の根拠資料となります。記録は1日だけでも参考になりますが、排尿パターンを正確につかむには連続した2〜3日分を記録するのが標準です。仕事や通所のある日を最低1日含めると、より生活実態に合った評価ができます。

排尿日誌の記録項目一覧

排尿日誌の主な記録項目

排尿日誌に書き込む基本的な項目は次のとおりです。すべてを完璧に書く必要はなく、できる範囲で記録することがまず大切です。

  • 排尿の時刻:トイレで排尿した時刻を24時間表記で記入します。失禁があった時刻も記録します。
  • 1回の排尿量(mL):目盛り付きの紙コップやトイレ設置型の採尿器などで量って記入します。
  • 尿意切迫感の有無:「急に我慢できないほど強い尿意が起きた」場合に○印などで記録します。
  • 失禁の有無と量:尿もれの有無を記録し、量はパッドの重さで測定します(ぬれたパッドの重さ−乾いたパッドの重さ=失禁量)。
  • 水分摂取量(mL):飲んだ水・お茶などの量を記入します。原因分析に欠かせない項目です。
  • 就寝・起床時刻:昼間と夜間の排尿を区別するために記録します。
  • メモ欄:外出・会議・運動・本人の様子(機嫌、気づき)など特記事項を残します。

記録から計算できること

  • 1日の排尿回数(昼間/夜間それぞれ)と頻尿の程度
  • 1回平均排尿量・最大1回排尿量(膀胱にためられる量の目安)
  • 1日排尿量(排尿量と失禁量の合計)
  • 夜間尿量の比率(一般に夜間の尿量が1日の3分の1以上だと「夜間多尿」の可能性が考えられます)

排尿日誌の付け方の手順

排尿日誌の付け方(基本ステップ)

  1. 記録する日を決める:いつもどおりの生活をしている日を選び、連続2〜3日記録します。難しい場合は1日のみでも構いません。
  2. 排尿・失禁のたびに記入する:トイレで排尿したらその時刻と尿量を、失禁があればその時刻と量をその都度書き込みます。後でまとめて書くと忘れやすいので、できるだけその場で記録します。
  3. 尿量を測る:トイレでの1回排尿量は目盛り付き紙コップやトイレ設置型採尿器で測定します。失禁量はパッドの重さの差分(ぬれたパッド−乾いたパッド)で測ります。
  4. 夜間も記録する:夜間に起きてトイレに行った回数と、そのつどの尿量も記録します。回数だけ書いて量を書き忘れるのがよくある失敗です。
  5. 水分摂取を記録する:飲んだ量も書いておくと、就寝前の多飲やカフェイン・アルコールの偏りなど原因の手がかりになります。
  6. 合計・平均を計算する:日中/夜間の回数、1回平均量、最大1回量、1日排尿量などを集計し、医師や多職種で評価します。

介護現場で記録するときのコツ

介護施設や在宅介護では、利用者本人が書けない場合に介護者・看護職が代わりに記録します。トイレ誘導や声かけのタイミング、本人の機嫌や落ち着きのなさといった「気づき」もメモに残すと、排尿ケアの改善につながります。記録した内容は配置医師や看護師へ報告し、残尿測定の結果ともあわせて多職種で排尿機能を評価していきます。

排尿日誌の活用と加算との関係

排尿日誌が活用される場面

過活動膀胱・夜間頻尿などの評価

排尿日誌は、過活動膀胱(OAB)や夜間頻尿、尿失禁の診断・評価に欠かせない基本ツールです。問診票である過活動膀胱症状スコア(OABSS)や、尿検査・残尿測定・超音波検査などとあわせて、頻尿の程度や夜間多尿の有無、膀胱にためられる量の目安を客観的に判断します。膀胱訓練(排尿間隔を少しずつ延ばす練習)でも、まず排尿日誌で自分の排尿パターンを知ることから始めます。

介護報酬「排せつ支援加算」での活用

介護施設の排せつ支援加算は、排せつに介護を要する入所者について、医師または医師と連携した看護師が要介護状態の軽減の見込みを評価し、多職種で原因分析・支援計画を作成して継続支援する取り組みを評価する加算です。2021年度改定で(Ⅰ)10単位/月・(Ⅱ)15単位/月・(Ⅲ)20単位/月の区分が新設され、評価結果はLIFE(科学的介護情報システム)へ提出します。この原因分析の場面で、排尿日誌で記録した1日の排尿量・失禁量・残尿量が、排尿誘導のタイミングを把握しケア計画を立てる根拠データとして使われます。

医療の「排尿自立支援加算」での活用

医療機関では、尿道カテーテル抜去後などに下部尿路機能障害が見込まれる患者へ、排尿ケアチームと病棟看護師が連携して包括的排尿ケアを行う排尿自立支援加算があります。ここでも、病棟看護師が下部尿路機能評価のための情報収集として排尿日誌や残尿測定を行うことが、ケア計画策定の出発点となります。

このように排尿日誌は、検査ツールであると同時に、施設・医療の両方で「排せつの自立支援」を進めるための共通言語として機能します。

排尿日誌のよくある質問

排尿日誌に関するよくある質問

Q. 排尿日誌は何日分つければよいですか?

排尿パターンを正確に把握するには連続2〜3日分が標準です。難しい場合は1日のみでも参考になりますが、できれば仕事や通所のある日を最低1日含めると、生活実態に合った評価ができます。

Q. 尿量はどうやって測りますか?

トイレでの排尿量は、目盛り付きの紙コップやトイレ設置型の採尿器で量ります。失禁量は、ぬれたパッドの重さから乾いたパッドの重さを引いた差分(g)で測定できます。

Q. 自分で書けない高齢者の場合はどうしますか?

介護者や看護職が代わりに記録します。トイレ誘導や声かけのタイミング、本人の様子なども一緒にメモしておくと、排尿ケアの改善につながります。

Q. 排尿日誌と排泄日誌(排せつ日誌)は違うものですか?

排泄日誌は、排尿の記録に排便の記録(便の量・性状・便意の有無など)を加えたものです。排尿日誌はそのうち排尿に関する部分を指します。介護現場では両方をまとめた排泄日誌の様式が使われることもあります。

Q. 排尿日誌をつけると介護報酬の加算がもらえますか?

排尿日誌そのものに対する加算はありません。ただし、排せつ支援加算などの算定では、原因分析やケア計画づくりの根拠資料として排尿日誌が活用されます。加算の算定には、医師・看護師による評価やLIFEへのデータ提出など、別途定められた要件を満たす必要があります。

排尿日誌の参考資料

排尿日誌のまとめ

まとめ

排尿日誌は、排尿時刻・尿量・失禁・水分摂取を記録して排尿パターンを「見える化」する、シンプルながら奥の深い記録ツールです。過活動膀胱や夜間頻尿の評価から、介護施設の排せつ支援加算、医療機関の排尿自立支援加算まで、排せつの自立支援を進めるあらゆる場面の出発点になります。介護職・看護職にとっては、利用者一人ひとりの尊厳を守りながら適切な排尿ケアを設計するための、信頼できる土台と言えるでしょう。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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