排泄予測支援機器とは

排泄予測支援機器とは

排泄予測支援機器は2022年4月から特定福祉用具販売の対象となった介護ロボット。膀胱内尿量を超音波で推定し排尿タイミングを通知する仕組み、対象者、年10万円の給付、DFreeなど機器例、現場での効果を解説。

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この記事のポイント

排泄予測支援機器とは、超音波センサーで膀胱内の尿量を推定し、排尿のタイミングをスマートフォンや専用端末に通知する介護ロボットです。2022年4月から介護保険の特定福祉用具販売の対象に追加され、年10万円を上限に費用の7〜9割が給付されます。DFreeやリリアムなどの製品があり、在宅・施設の双方で失禁回避と介護者負担軽減に貢献します。

目次

排泄予測支援機器の定義と仕組み

排泄予測支援機器は、厚生労働省告示において「膀胱内の状態を感知し、尿量を推定し、排尿の機会を本人または介助者に通知する機器」と位置付けられています。下腹部にセンサーを貼り付け、超音波で膀胱の充満度をリアルタイム計測し、一定量に達すると排尿タイミングをスマートフォンや専用受信機に自動通知する仕組みです。

従来の排泄ケアは、おむつ着用や時間誘導(2〜3時間ごとの一律トイレ誘導)が中心でした。これに対し排泄予測支援機器は「個人の膀胱機能に合わせた個別タイミング」を可視化することで、本人がトイレで排泄する機会を取り戻し、介助者は失敗の後始末ではなく成功体験のサポートに時間を使えるようになります。

使い方は大きく2パターン。1つ目は本人が通知を受けて自らトイレに移動する自立支援型、2つ目は介助者が通知を受けて声かけ・誘導を行う介助型です。要介護度や認知機能に応じて柔軟に運用できます。

2022年4月制度化のポイント

2022年4月制度化のポイント:特定福祉用具販売の追加品目

排泄予測支援機器は2022年(令和4年)4月1日、介護保険法に基づく特定福祉用具販売の新規対象種目として追加されました。厚生労働省告示第75号により、それまでの腰掛便座・自動排泄処理装置の交換可能部品・入浴補助用具・簡易浴槽・移動用リフトの吊り具部分の5品目に、6品目目として加わった形です。

  • 制度化の根拠:「介護保険における福祉用具」厚生労働省告示の改正(2022年3月公布)
  • 給付方式:レンタル(福祉用具貸与)ではなく購入費の支給(償還払いまたは受領委任払い)
  • 支給限度額:年間10万円(4月1日〜翌年3月31日の累計)
  • 自己負担割合:所得に応じて1〜3割
  • 対象範囲:在宅の要支援1〜2・要介護1〜5(施設入所者は施設報酬に包括されるため対象外)

制度化の背景には、2018年度から進められた経済産業省・厚生労働省の介護ロボット開発・標準化事業(AMED)の成果があります。排泄支援機器はロボット技術の介護利用における重点分野の1つに位置付けられ、エビデンスが蓄積されたことで保険給付の対象に踏み込みました。

給付の対象者と対象外

給付の対象者と対象外の判定基準

排泄予測支援機器は誰でも給付対象になるわけではなく、厚労省通知(老振発0331第3号)で「トイレでの自立した排尿が困難となっている居宅要介護者等であって、排尿の機会の予測が可能となることで、失禁を回避し、トイレで排尿することが見込める者」と明確に定義されています。

給付対象となる典型例

  • 歩行は可能だが尿意の自覚が弱く、間に合わずに失禁してしまう要介護高齢者
  • 頻尿・切迫性尿失禁があり、外出や夜間に不安を抱える在宅高齢者
  • 認知症があっても声かけや誘導により便座で排尿できるレベルの利用者
  • 独居・要支援者でも、自立排尿の意思と装着・移動の能力がある人

給付対象外の典型例

  • 常時失禁状態にあり、おむつ交換の時期把握のみを目的とする使用
  • トイレでの自立排泄を目指す意思がない、または機器の通知を理解できない
  • センサーの装着が継続的に難しい(皮膚状態・拒否などの理由)
  • 施設入所中で介護報酬に排泄ケアが包括されているケース

給付に含まれない費用

保険給付の対象になるのは本体機器のみです。継続使用に必要な以下の消耗品は自己負担となるため、購入前に総コストを試算する必要があります。

  • 専用センサーシート・ジェル(メーカー指定の使い捨て消耗品)
  • 通信用のスマートフォン・タブレット端末
  • 充電池や交換部品の一部

主要な排泄予測支援機器

主要な排泄予測支援機器:DFreeとリリアム

2026年5月時点で、特定福祉用具販売の対象として国内で広く流通している排泄予測支援機器は主に以下の2製品です。いずれも本体価格は約9万9,000円前後で、給付上限10万円の範囲に収まる設計になっています。

DFree(ディーフリー) Personal/HomeCare

  • メーカー:トリプル・ダブリュー・ジャパン
  • 特徴:超音波センサーを下腹部に常時装着し、膀胱の充満度を継続モニタリング。10分単位でスマートフォンアプリに通知
  • 本体価格:99,000円前後(消耗品の専用ジェル・固定テープは別売)
  • 適性:尿意が弱い人・介助者がリアルタイムで把握したい在宅介護

Lilium Spot 2(リリアム スポット ツー)

  • メーカー:トライアンドイー
  • 特徴:必要な時にハンディ型センサーを当てて測定するスポット計測型。常時装着不要で皮膚負担が小さい
  • 本体価格:99,000円前後/30日レンタル13,200円のお試しプランあり
  • 適性:装着拒否がある利用者・施設の定時チェック用

両者は計測方式(常時装着 vs スポット計測)が大きく異なるため、利用者の認知機能・皮膚状態・介助者の生活パターンに合わせて選定します。福祉用具専門相談員と相談しながら試用期間を設けることが推奨されます。

介護現場での効果と意義

介護現場での効果:個別化・夜勤軽減・尊厳保持

1. 排泄ケアの個別化

従来の時間誘導では「2〜3時間ごとに一律トイレ案内」という画一的なケアになりがちでした。排泄予測支援機器を使うと、利用者ごとの膀胱機能・水分摂取量に応じたタイミングで誘導できるため、空振り(行ったが出ない)や失敗(間に合わない)が減ります。施設での実証研究では、失禁率が平均32.5%改善した報告もあります。

2. 夜勤・夜間介護の負担軽減

夜勤帯は人員配置が薄く、ベッド上のおむつ交換が増えがちです。排泄予測支援機器を導入すると、本当に必要なタイミングだけ訪室すればよく、不要な見回りが減ります。在宅介護でも、家族介護者が夜中に何度も起きる必要がなくなり、介護者の睡眠の質が改善します。内閣府調査では在宅介護者の62.5%が「排泄ケア」を最大の負担に挙げており、その軽減効果は大きいといえます。

3. 尊厳保持と自立支援

失禁経験は本人の自尊心を著しく傷つけ、外出や社会参加を控える原因にもなります。排泄予測支援機器によって「またトイレで排泄できる」体験を取り戻せれば、QOL(生活の質)の向上に直結します。これは介護保険の理念である「尊厳の保持」「自立支援」そのものを技術的に体現する仕組みです。

4. 認知症ケア・身体拘束ゼロとの接続

認知症ケアでは、トイレ誘導の失敗が利用者の混乱・興奮(BPSD)の引き金になることがあります。排泄予測支援機器で適切なタイミングを把握できれば、無理な誘導や「念のためのおむつ」を減らせ、身体拘束ゼロの方針とも整合します。介護DXの観点でも、排泄記録の自動化が将来的にLIFE連携やケアプラン最適化に発展する可能性があります。

よくある質問

よくある質問(FAQ)

Q1. 排泄予測支援機器はレンタルできますか?

介護保険上は「特定福祉用具販売」の対象のため、原則として購入のみです。福祉用具貸与(レンタル)の対象ではありません。ただしメーカーや販売事業者が独自に短期レンタル・お試しプランを提供している場合があります(例:Lilium Spot 2の30日試用)。

Q2. 年10万円の支給限度額を超えた場合はどうなりますか?

10万円を超える部分は全額自己負担です。同一年度(4月〜翌3月)内に他の特定福祉用具(腰掛便座など)も購入していれば合算で計算されます。複数年での購入を計画する場合はケアマネジャーと相談しましょう。

Q3. 要支援1・2でも給付対象になりますか?

はい、要支援1・2も対象です。ただし「トイレでの自立排尿が見込める」要件を満たす必要があるため、独居の要支援者でも装着・通知理解・移動能力が確認できれば給付されます。

Q4. 認知症があっても使えますか?

声かけ・誘導で便座に座って排尿できるレベルであれば対象となります。重度認知症で通知理解や指示従命が難しく、常時失禁状態に近い場合は給付対象外です。医師の所見と試用期間での見極めが重要です。

Q5. 介護施設での購入は給付対象ですか?

特養・老健・介護医療院などの施設入所中は対象外です(施設報酬に排泄ケアが包括)。グループホーム・特定施設・ショートステイ利用中も同様です。在宅生活(自宅・サ高住・有料老人ホーム外部サービス利用型など)で居宅サービスを受けている方が対象になります。

参考資料

まとめ

排泄予測支援機器は2022年4月から特定福祉用具販売の対象に加わった介護DXの代表的機器。膀胱内尿量を超音波で推定し、排尿のタイミングを介護者と本人に通知する。介護現場では、排泄ケアの個別化・夜勤の負担軽減・利用者の尊厳保持に直結し、ノーリフティングポリシーや身体拘束ゼロの実現とも連動する。年間10万円上限の購入費給付があるため、ケアマネと福祉用具専門相談員が連携して導入を検討したい。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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