白癬(水虫)とは

白癬(水虫)とは

白癬(水虫)は白癬菌というカビが皮膚や爪に感染する病気。足白癬・爪白癬の症状、高齢者に多い理由、介護施設での感染予防とフットケア、受診の目安を解説します。

ポイント

白癬(水虫)の定義キャプセル

白癬(はくせん・水虫)とは、白癬菌(皮膚糸状菌というカビの一種)が皮膚や爪の角質に感染して起こる病気です。新たに皮膚科を受診する患者の約10%を占めるありふれた感染症で、感染した部位によって足白癬(あしはくせん)、爪白癬(つめはくせん)、体部白癬(ぜにたむし)などに分かれます。高齢者では特に爪白癬が多く、介護現場では転倒予防や施設内感染の観点から注意が必要です。

目次

白癬(水虫)の概要と原因菌

白癬(水虫)とは何か

白癬は、皮膚糸状菌(白癬菌)と呼ばれるカビによって生じる感染症です。白癬菌は、皮膚の外層・毛・爪の主成分であるケラチンというたんぱく質を栄養源として増殖します。高温多湿の環境を好むため、蒸れやすい足は感染リスクが高い部位です。日本では「みずむし」「たむし」「いんきんたむし」などの呼び名で古くから知られていますが、いずれも同じ白癬菌が起こす病気で、虫とは関係ありません。

人にうつる白癬菌は、おもにトリコフィトン属(Trichophyton)、ミクロスポルム属(Microsporum)、エピデルモフィトン属(Epidermophyton)の3つのグループに分類されます。これらの菌は角質層にとどまり、内臓や血流に広がることは通常ありません。一方で、糖尿病やがん、免疫を抑える治療などで免疫機能が低下していると感染が成立・拡大しやすくなります。

感染部位による分類

白癬は感染した体の部位によって名前が変わります。介護・看護の現場で特に重要なのは足白癬と爪白癬です。

  • 足白癬(あしはくせん・水虫):足の裏や指の間に生じる白癬。日本では夏季に約4人に1人にみられると推定されるほど多い。趾間型・小水疱型・角質増殖型の3タイプがある。
  • 爪白癬(つめはくせん・爪水虫):足白癬の菌が爪に移行して起こる。爪が白〜黄色に濁る、厚くなる、もろく変形するなどの症状が出る。高齢者に非常に多い。
  • 体部白癬(たいぶはくせん・ぜにたむし):顔・体幹・腕・脚にできる輪状の赤い発疹。
  • 股部白癬(こぶはくせん・いんきんたむし):太ももの付け根(鼠径部)に生じる。
  • 頭部白癬(とうぶはくせん・しらくも):頭皮に生じる。

感染経路

白癬菌は接触によって広がります。白癬菌が付着した床に素足で触れたあと、菌が皮膚に24時間以上とどまって角質に入り込むと感染が成立します。公衆浴場・プール・ジムのシャワー室の床、家庭内のバスマット・スリッパ・床などが主な感染ルートです。介護施設では入浴設備・共用スリッパ・足ふきマットなどを介して利用者間・職員間で広がりうる点に注意が必要です。

高齢者・介護現場で白癬が問題になる理由

白癬のうち足白癬は、定年などで靴を履く時間が減ると高齢者ではむしろ減少する傾向があります。一方で爪白癬は高齢になるほど増えるのが特徴で、爪真菌症(爪白癬)はおよそ10人に1人にみられ、足の爪に多く、高齢者(特に男性)・足の血行が悪い人・糖尿病の人・免疫機能が低下している人に多く発生します。皮膚科専門医の解説では、90歳を超える男性では半数以上が爪白癬という調査結果も報告されています。

介護現場で白癬・爪白癬への配慮が欠かせない理由を整理します。

  • 爪が伸びにくく、自然には治らない:高齢者は爪の伸びが遅く、爪白癬は適切な治療を受けない限り自然に改善する傾向がありません。放置すると進行します。
  • 転倒・骨折のリスクにつながる:爪白癬で爪が厚く変形すると歩行時のバランスが崩れやすくなり、もともと筋力や平衡感覚が低下している高齢者では転倒・骨折につながるおそれがあります。
  • 自分でケアしにくい:体を屈めにくい、視力が低下しているなどの理由で、足や爪の手入れ・観察を自力で行いにくく、発見と治療が遅れがちです。
  • 糖尿病があると重症化しやすい:糖尿病や末梢血管疾患がある人が爪白癬を合併すると、足や脚に蜂窩織炎(ほうかしきえん)という重い感染症が起こるリスクが高まります。
  • 施設内で広がりうる:共用の入浴設備・スリッパ・足ふきマット・爪切りなどを介して、利用者間や職員へ感染が広がる可能性があります。

白癬(足白癬と爪白癬)の症状とタイプの違い

足白癬と爪白癬の違い・タイプ別の症状

同じ白癬菌が原因でも、感染部位やタイプによって見た目や対処が異なります。介護現場での観察ポイントとあわせて整理します。

種類・タイプ主な症状観察・注意のポイント
足白癬・趾間型(しかんがた)足の指の間(特に薬指と小指の間)がジュクジュクし、皮がむける。強いかゆみ。蒸れると悪化。じゅくじゅくして皮膚が割れると細菌の二次感染の入口になる。
足白癬・小水疱型(しょうすいほうがた)足裏や指の付け根に小さな水ぶくれが集まる。かゆみが強い。かいて潰すと周囲に広がる。
足白癬・角質増殖型(かくしつぞうしょくがた)足裏やかかとの皮膚が厚く硬くカサカサし、ひび割れることも。かゆみは少ない。かゆみが乏しく見逃されやすい。高齢者・糖尿病の人に多く、爪白癬へ移行しやすい。
爪白癬(爪水虫)爪が白〜黄色に濁る、厚くなる、もろく変形する、爪先の下に削りかすがたまる。痛みやかゆみは乏しい。厚く変形した爪は歩行バランスを崩し転倒リスクに。爪切りが困難になる。

爪が白く濁ったり厚くなったりしていても、必ずしも爪白癬とは限りません。加齢による爪の変化や別の爪の病気との区別が必要なため、自己判断せず皮膚科で顕微鏡検査を受けて確定することが大切です。

介護施設での白癬の感染予防とフットケア

介護施設での感染予防とフットケアのポイント

白癬菌は接触でうつるため、施設内では「広げない」「見つける」「乾かす」の3点が基本になります。診断・治療は医療職の領域ですが、日々のケアでできる予防は多くあります。

施設内感染を広げない工夫

  • 足ふきマット・バスマットは個人ごと、または利用ごとに交換・洗濯し、共用を避ける。
  • スリッパや靴下の共用を避ける。入浴後は足の指の間までしっかり乾かす。
  • 爪切りは個人専用が望ましく、共用する場合は使用ごとに消毒する。
  • 足白癬・爪白癬のある利用者の皮膚や爪に触れたあとは手指衛生を徹底する。

日々のフットケアと早期発見

  • 入浴・清拭の際に足の裏・指の間・かかと・爪を観察し、皮むけ・水ぶくれ・じゅくじゅく・爪の濁りや肥厚がないか確認する。
  • 足は石けんでやさしく洗い、指の間まで水分を残さず乾かす。吸湿性のよい靴下を選ぶ。
  • 爪は深爪を避けてまっすぐ短く整える。厚く変形して切りにくい爪は無理に切らず、看護師や医療職に相談する。
  • 糖尿病のある利用者は小さな傷や感染が重症化しやすいため、足の状態の変化を早めに医療職へ報告する。

看護師が常駐・連携する施設では、足白癬・爪白癬の早期発見、嘱託医・皮膚科への受診調整、フットケアの指導が大切な役割になります。観察記録を多職種で共有することで、見逃しや施設内での拡大を防ぎやすくなります。

白癬の診断・治療と受診の目安

白癬は見た目が似た別の皮膚病(湿疹・乾燥肌・爪の変形など)と区別しにくいため、自己判断は禁物です。診断・治療の流れと、受診を考える目安を整理します。

診断

皮膚科では、患部の皮膚や爪の一部を採取して顕微鏡で白癬菌を確認します(必要に応じて培養やPCR検査で菌の種類を特定)。市販薬を塗った状態だと菌が検出されにくくなるため、受診前は自己判断で薬を塗らないほうが正確に診断できます。

治療

  • 足白癬:抗真菌薬の塗り薬(外用)が基本。症状が消えても再発を防ぐため、医師の指示どおり一定期間続けることが大切です。
  • 爪白癬:塗り薬だけでは治りにくく、テルビナフィンやイトラコナゾールなどの飲み薬(内服)が必要になることが多い病気です。爪に直接塗る外用薬もあります。飲み薬は数か月以上続け、健康な爪に生え変わるまでさらに時間がかかります。

治療薬の選択や内服の可否は、他の持病や服用中の薬との関係で医師が判断します。自己判断での市販薬の長期使用は避けてください。

受診の目安(こんなときは皮膚科へ)

  • 足の指の間や足裏のかゆみ・皮むけ・水ぶくれが2週間以上続く、市販薬で改善しない。
  • 爪が白〜黄色に濁る、厚くなる、変形してきた。
  • じゅくじゅくして赤く腫れる、痛みや熱感がある(細菌の二次感染の可能性)。
  • 糖尿病・末梢血管疾患がある人の足のトラブル(重症化しやすいため早めに)。
  • 介護施設で複数の利用者・職員に同様の症状が出ている。

本記事は一般的な情報提供であり、診断・治療に代わるものではありません。気になる症状があるときは医療機関を受診してください。

白癬(水虫)のよくある質問

白癬と水虫は違うものですか?

同じものです。「水虫」は足にできた白癬(足白癬)の一般的な呼び名で、原因は同じ白癬菌です。爪にできたものは「爪水虫(爪白癬)」と呼ばれます。

白癬は人にうつりますか?

うつります。白癬菌が付いた床・バスマット・スリッパ・爪切りなどを介して接触感染します。ただし、菌が付いてもすぐに洗い流して乾かせば感染は成立しにくいため、共用物を避け、足を清潔に乾かすことが予防になります。

市販の水虫薬で治せますか?

軽い足白癬なら市販の塗り薬で改善することもあります。ただし爪白癬や角質増殖型は市販薬では治りにくく、見た目が似た別の皮膚病のこともあるため、改善しない・悪化する場合は皮膚科を受診してください。

爪白癬はどのくらいで治りますか?

爪白癬は治療に時間がかかる病気です。飲み薬を数か月以上続けたうえ、健康な爪に生え変わるまでさらに時間を要します。自然には治らないため、早めの受診と継続治療が大切です。

介護職や看護師が白癬の利用者をケアするとき何に注意すべきですか?

素手での直接接触後の手指衛生、足ふきマット・スリッパ・爪切りの共用回避、入浴後にしっかり乾かすことが基本です。爪が厚く切りにくい、糖尿病があるなどの場合は無理せず看護師・医療職に相談し、受診につなげます。

白癬(水虫)の参考資料

白癬(水虫)のまとめ

まとめ

白癬(水虫)は白癬菌というカビが皮膚や爪に感染するありふれた病気で、足白癬と爪白癬が介護・看護の現場では特に重要です。高齢者では爪白癬が多く、放置すると爪の変形から転倒・骨折につながったり、糖尿病があると重症化したりするおそれがあります。施設では共用物を避け、入浴後に足を乾かし、毎日の観察で早期に見つけることが予防の基本です。確定診断と治療は皮膚科で行うため、気になる症状があるときは自己判断せず受診につなげましょう。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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