移乗ボードとは

移乗ボードとは

移乗ボードはベッドと車椅子の隙間に渡し、座位姿勢のまま滑らせて移乗する福祉用具。介護者の腰痛予防と利用者の安全な移乗に役立つ。介護保険対象。

ポイント

この記事のポイント

移乗ボード(トランスファーボード)は、ベッドと車椅子・ポータブルトイレなどの間に橋渡しのように渡し、利用者を座位のまま滑らせて移乗するための板状の福祉用具です。立ち上がりや片麻痺で立位移乗が困難な利用者でも1人介助で安全に移乗でき、介護者の腰痛予防にも有効です。介護保険の福祉用具貸与または特定福祉用具販売の対象になります。

目次

移乗ボードの位置づけ

移乗(トランスファー)は、ベッド⇔車椅子、車椅子⇔便座、車椅子⇔入浴用椅子など、介護現場で最も頻度の高い動作の一つです。片麻痺や下肢筋力低下で立位保持が困難な利用者の移乗は、介護者の腰部に大きな負担をかけ、慢性腰痛の主因になっています。

移乗ボードは「立たせず・抱えず・滑らせる」という no-lift policy の代表的な道具で、利用者の臀部の下にボードを差し込み、座位姿勢のまま横方向にスライドさせて移乗します。ヨーロッパ・北欧では1980年代から普及し、日本でも2000年代以降に介護現場で広く使われるようになりました。

素材はポリエチレン・ABS樹脂・木材などで、表面はツルツルとしたコーティングで滑りやすく加工されています。長さは40〜80cm、幅は20〜30cmが標準です。

使い分け4タイプ

  1. ストレート型(最も一般的):直線型で40〜70cm程度。ベッド⇔車椅子の標準的な移乗に使用。
  2. カーブ型:S字型・C字型に曲がっており、ベッドと車椅子の位置関係に柔軟に対応。角度がつけにくい狭い空間で有用。
  3. クッション型:表面にクッション素材を貼り、長時間座っても臀部が痛くならない設計。福祉施設や長距離移動向け。
  4. 回転式(ターンディスク付き):中央に回転盤があり、座ったまま体の向きを変えられる。便座⇔車椅子の方向転換に便利。

使い方の手順

移乗ボードを使った1人介助の標準的な流れを示します。

1. 環境準備

ベッドと車椅子の高さを揃え(やや車椅子側を低く)、車椅子のブレーキ・フットレストを外す。ベッド側と車椅子側の隙間がボードで橋渡しできる距離(15〜25cm)に調整します。

2. ボード設置

利用者の臀部の下にボードを差し込みます。片手で臀部を持ち上げ、もう片方の手でボードを差し入れる動作。ボードの片端がベッド、もう片端が車椅子の座面に乗るように設置します。

3. 滑らせ移動

利用者の上半身を介護者側に傾け、骨盤を回転させながらボードを滑って横方向に移動します。1回で全部移動せず、2〜3回に分けて少しずつ移すと利用者の負担が減ります。

4. ボード抜き取り

移乗完了後、利用者の臀部を反対側に少し傾けてボードを抜き取ります。

移乗ボードのよくある質問

Q. 介護保険でレンタルできますか?

A. はい。要介護2以上で福祉用具貸与の対象です(要介護1・要支援でも医師意見書で例外給付あり)。月額レンタル料の1割(または2・3割)が自己負担で、概ね月100〜500円程度です。

Q. 自宅で購入する場合の価格は?

A. 一般的なストレート型で5,000〜15,000円、カーブ型・クッション型で1〜3万円が相場です。介護保険適用なら自己負担はその1割ですが、多くは「貸与」での提供が中心です。

Q. どんな利用者に向いていますか?

A. ①片麻痺で立位移乗が困難な方、②下肢筋力低下で立ち上がりがつらい方、③介護者が腰痛持ち・小柄で持ち上げが難しい場合、に特に有効です。逆に体重120kg超や全介助で座位保持も困難な方は、リフトやスライディングシートとの併用が必要になります。

参考文献・出典

まとめ

移乗ボードは、介護者の腰痛予防と利用者の安全な移乗を両立する基本的な福祉用具です。導入時には実際に試用し、利用者の体型・残存機能に合った機種を福祉用具専門相談員と一緒に選びましょう。ノーリフトケアの実践には移乗ボード単体ではなくスライディングシート・リフト・天井走行リフトとの組み合わせも検討し、現場全体の安全文化を底上げすることが大切です。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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