
褥瘡ポケットとは
褥瘡ポケットとは、褥瘡の創縁の下に生じる皮下の空洞。主にずれ力で発生します。DESIGN-RのP項目の点数、洗浄や外科的デブリードマンなど医療との連携、介護職ができる体位・ずれ対策と観察のポイントを解説します。
褥瘡ポケットの定義
褥瘡ポケットとは、褥瘡の創縁の下に生じる皮下の空洞(潜り込み)のことです。皮膚表面の傷は小さく見えても、その下で組織の損傷が横方向に広がっている状態で、主に「ずれ力」によって生じます。日本褥瘡学会のDESIGN-Rでは「P」項目として評価され、ポケットがあると治癒が遅れるため、洗浄・観察と医療職との連携、ずれ対策が重要になります。
目次
褥瘡ポケットの概要
褥瘡ポケットは、褥瘡(床ずれ)の創縁(傷の周囲の皮膚)の下に形成される皮下の空洞を指します。皮膚表面に見えている傷口は小さくても、その内側では組織の欠損が周囲へ潜り込むように広がっており、表から見えるより実際の損傷ははるかに大きいことがあります。この「見た目より深く広い」という性質が、褥瘡ポケットの観察を難しくしています。
ポケットは褥瘡が発生した最初からあるわけではなく、経過のなかで生じてくる合併的な変化です。空洞のなかは滲出液や壊死組織がたまりやすく、細菌の温床となって感染や治癒遅延の原因になります。そのため、ポケットの有無と大きさは褥瘡ケアの重要な指標とされています。
介護職が創部を処置することはできませんが、ポケットが疑われるサイン(皮膚の下がぶよぶよする、傷口から膿や滲出液が多く出る、悪臭がする)に気づき、看護職へ報告することが現場での役割です。また、ポケットの主な原因である「ずれ」を減らす体位変換やポジショニングは、介護職が日常的に関われる予防ケアです。
褥瘡ポケットのDESIGN-R P項目
DESIGN-RのP(ポケット)項目
褥瘡の重症度は、日本褥瘡学会が開発した評価スケール「DESIGN-R(Revised DESIGN-R 2020)」で採点します。DESIGN-Rは、深さ(Depth)・滲出液(Exudate)・大きさ(Size)・炎症/感染(Inflammation/Infection)・肉芽組織(Granulation)・壊死組織(Necrotic tissue)・ポケット(Pocket)の7項目からなり、末尾の「P(ポケット)」がポケットの評価にあたります。
P項目の点数は、ポケットの面積に応じて次のように区分されます。ポケットがなければ小文字の「p0」、あれば大文字の「P」で表します。
| 点数 | ポケットの面積 |
|---|---|
| p0 | ポケットなし |
| P6 | 4cm²未満 |
| P9 | 4cm²以上16cm²未満 |
| P12 | 16cm²以上36cm²未満 |
| P24 | 36cm²以上 |
ポケットの面積は「創を含めたポケット全周の長径×短径」から「創面そのものの大きさ(S項目の値)」を差し引いて算出します。毎回同じ体位で計測することが正確な評価の条件です。
褥瘡ポケットの発生機序
発生機序 ポケットは「ずれ」のサイン
褥瘡ポケットの主な原因は、圧迫に加わる「ずれ力(せん断力)」です。ベッドを起こしたときに体が下方へずり落ちる、体位変換で体を引きずる、といった動作で皮膚と骨との間の組織が横方向に引き伸ばされ、皮下の組織が壊れて空洞になります。
重要なのは、ポケットの向きがずれの向きを示す点です。臨床では「一方向に深いポケットがある場合は、必ずその方向にずれが発生している」とされます。つまりポケットは、その部位に持続的なずれが加わっているサインであり、創部の局所処置だけでは解決しません。ポジショニングやリハビリテーションを含めた、体全体のずれ対策が不可欠です。
褥瘡ポケットの洗浄と医療連携
洗浄・観察と医療との連携
ポケットのある褥瘡は、医療職と介護職が役割分担して管理します。
- 洗浄:ポケット内に滲出液や壊死組織がたまりやすいため、看護職が生理食塩水や微温湯で十分に洗浄します。空洞の奥まで洗い流すことが感染予防の要です。
- 外科的デブリードマン:壊死組織が多い場合は、医師がメスやハサミで壊死組織を取り除きます。ポケットが大きく治癒が進まないときは、外科的に切開してポケットを開放することもあります。
- ドレッシング・薬剤:滲出液の量に応じたドレッシング材や外用薬を選択します。
- 観察の記録:ポケットの大きさ、滲出液の量・性状、におい、周囲の皮膚の状態をDESIGN-Rで継続評価します。
介護職は処置は行いませんが、体位変換やおむつ交換のときに創部やその周囲の変化に気づいたら、写真や具体的な言葉で看護職に共有すると、早期の対応につながります。
褥瘡ポケットの観察と予防
介護職ができる観察と予防
ポケットは「ずれ」で生じ「ずれ」で悪化するため、介護職の体位・ずれ対策が予防と治癒促進の両面で効きます。
- ずれを作らない体位変換:体を引きずらず、スライディングシートやグローブを使って持ち上げるように動かす。
- ギャッチアップの角度管理:ベッドの背上げは30度以下を目安にし、上げた後は背抜き・尻抜きでずれを解放する。ずり落ちた体は必ず上方へ戻す。
- ポジショニング:クッションで体圧を分散し、同一部位への持続圧とずれを避ける。良肢位を保つ。
- 観察のサイン:傷の周囲を軽く触れて皮下がぶよぶよしていないか、滲出液や膿・悪臭が増えていないかを確認し、変化を看護職へ報告する。
- 栄養・スキンケア:低栄養は治癒を妨げるため食事を支え、周囲の皮膚は清潔と保湿を保つ。
褥瘡ポケットのよくある質問
褥瘡ポケットはなぜできるのですか。
主な原因は圧迫に加わる「ずれ力」です。体がずり落ちたり引きずられたりすることで、皮膚の下の組織が横方向に壊れ、創縁の下に空洞ができます。
ポケットがあると治りにくいのですか。
ポケット内に滲出液や壊死組織がたまり感染しやすいため、治癒が遅れます。DESIGN-Rでもポケットは最大24点と重みが大きく、解消が治療の優先課題になります。
介護職はポケットに対して何ができますか。
洗浄や処置は看護職・医師が行います。介護職はずれを減らす体位変換とポジショニング、そしてポケットを疑うサイン(皮下のぶよぶよ・滲出液の増加・悪臭)に気づいて報告することが役割です。
ポケットの向きに意味はありますか。
あります。深いポケットの方向には、その向きにずれが加わっていることを示します。ポケットは「ずれのサイン」として、体位やケアを見直す手がかりになります。
褥瘡ポケットのまとめ
まとめ
褥瘡ポケットは、創縁の下に生じる皮下の空洞で、主にずれ力によって発生します。DESIGN-RのP項目で面積に応じてp0からP24まで評価され、ポケットがあると滲出液や壊死組織がたまり治癒が遅れます。洗浄や外科的デブリードマンは医療職が担いますが、ポケットの原因である「ずれ」を減らす体位変換・ポジショニングは介護職が日常的に関われる予防ケアです。皮下のぶよぶよや滲出液の変化に気づいて看護職へ報告し、チームで治癒を支えましょう。
褥瘡ポケットの参考資料
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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