
訪問看護のリハビリ職訪問、さらなる適正化を議論|厚労省、機能強化型の介護報酬評価も俎上に【2027年度改定・第259回分科会】
厚労省は2026年6月29日の第259回介護給付費分科会で、2027年度介護報酬改定に向け(1)理学療法士等リハビリ職による訪問看護のさらなる適正化、(2)機能強化型訪問看護の介護報酬評価を論点に。いずれも審議中でリハ特化型ステーションや看護職のキャリアへの影響を解説。
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結論
厚生労働省は2026年6月29日の第259回社会保障審議会・介護給付費分科会で、2027年度(令和9年度)介護報酬改定に向けた論点として「理学療法士等(PT・OT・ST)による訪問看護のさらなる適正化」と「機能強化型訪問看護の介護報酬での評価」を提示した。いずれもまだ決定事項ではなく、審議の入口に立った段階の論点である。前者はリハビリ職の訪問割合が高いステーションへの制度的対応で、過去の改定で段階的に導入されてきた減算の延長線上にある。後者は、機能強化型が医療保険側にしか評価がない非対称の是正を問うものだ。訪問看護は収支差率が令和6年度決算で10.3%と相対的に高く、拡大が続く一方で「量から中身へ」の重点化が問われている。訪問看護で働く看護職・リハビリ職にとっては、勤務先ステーションの事業モデルと自分のキャリアの方向性を見直す材料になる論点であり、具体像が見えてくる2026年秋以降に向けて備えておきたい。
目次
解説動画
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在宅ケアの担い手として、訪問看護は右肩上がりで伸び続けている。ステーション数も利用者数も費用額も増加し、2040年に向けてさらなる需要増が見込まれる分野だ。その拡大の裏側で長く議論されてきたのが、「訪問看護のはずなのに、実際に訪ねてくるのは看護師ではなくリハビリ職」というステーションの存在である。
2026年6月29日に開かれた第259回の介護給付費分科会は、2027年度介護報酬改定に向けた第1ラウンド(サービス別の総論的な議論)の一環として、訪問介護・訪問看護・訪問リハビリなど在宅系サービスをまとめて取り上げた。その中で訪問看護について示された論点が、「理学療法士等による訪問看護のさらなる適正化」と「機能強化型訪問看護の介護報酬での評価」の2つだ。
どちらも一夜にして出てきた話ではない。前者は改定のたびに繰り返し俎上に上ってきた積年のテーマであり、後者は業界団体が長く求めてきた要望である。この記事では、分科会で何が示されたのかを事実として整理したうえで、リハ特化型ステーションの経営や、そこで働く看護職・リハビリ職のキャリアにどう跳ね返ってくるのかを、現場目線で読み解く。なお本稿で扱うのはあくまで「審議中の論点」であり、報酬や要件が決まったわけではない点は最初に押さえておきたい。改定率も含めた具体像が見えてくるのは、この秋以降の第2ラウンドからである。
速報の見出しだけを追うと「減算がまた増えるのか」と身構えてしまいがちだが、論点の全体像を押さえると、むしろ看護機能を厚く担うステーションにとってはチャンスになりうる側面も見えてくる。事実と見通しを分けて読み解いていきたい。
分科会が示した訪問看護の2つの論点
分科会が示した2つの論点
第259回分科会で厚労省が訪問看護に関して整理したのは、大きく2点である。1つは「理学療法士等(PT・OT・ST)による訪問看護のさらなる適正化」。もう1つは「機能強化型訪問看護の介護報酬での評価」だ。会議では訪問看護の現状として、ステーション数・利用者数・費用額がいずれも増加基調にあり、2040年に向けても需要増が見込まれることが示された。一方で、緊急時対応体制、24時間対応、医療機関との連携、看取り支援といった機能の強化が引き続き必要とされている。
訪問看護の収支差率は令和6年度決算で10.3%(税引前・補助金を含まない)とされ、他の訪問系サービスと比べても相対的に高い水準にある。この数字は、財源の重点化・適正化を求める保険者側の委員にとって、議論の出発点になりやすい。第259回は2027年度改定に向けた第1ラウンドの一環であり、訪問介護・訪問入浴・訪問看護・訪問リハビリ・居宅療養管理指導・居宅介護支援・福祉用具といった在宅系サービスを横断的に取り上げる場だった。この段階では単位数や要件の案が示されるわけではなく、現状分析と論点整理を行うのが主眼である。
「看護<リハビリ」のステーションという長年の論点
適正化の背景にあるのは、訪問看護ステーションでありながら、看護師よりも理学療法士等のリハビリ職の方が人数・訪問回数で上回る、いわゆる「リハビリ特化型」の事業所が一定数存在するという実態だ。制度の枠組みは訪問看護でも、実際に提供されているものは訪問リハビリテーションに近い、という指摘である。
こうしたステーションが生まれた背景には、構造的な事情がある。看護師の採用が難しい中で、参入しやすいリハビリ職を中心に事業を組み立てたケースや、母体となる医療機関を持たず独立して収益を確保する必要から、算定しやすいリハビリ訪問中心の運営になったケースだ。ケアマネジャーからの紹介経路も「軽度の要介護者へのリハビリ訪問」が中心になりやすい。
訪問看護は「看護師による医療的な観察・判断・処置が中核であるべき」という制度趣旨がある。この趣旨からすると、リハビリのみを提供する形態は本来の姿から外れるのではないか、という問題意識が改定のたびに繰り返し示されてきた。今回の論点は、その延長線上で「訪問看護らしい運営」をより明確に制度に落とし込む方向を検討するものだ。
機能強化型が介護報酬側にない、という非対称
もう1つの論点である機能強化型訪問看護は、より手厚い提供体制と実績を持つステーションを評価する仕組みだ。ただし現状、この評価は医療保険側の「機能強化型訪問看護管理療養費」にしか存在しない。介護保険の訪問看護費には、機能強化型に相当する評価がほぼないという非対称がある。
業界団体からは「同じ機能強化型ステーションが、同じ利用者に同じ質のケアを提供しているのに、医療保険で算定するか介護保険で算定するかで評価が変わるのは合理性を欠く」という主張が継続的に出されてきた。今回、介護報酬側での機能強化型評価が論点として明示されたことは、この積年の課題が2027年改定に向けて動き出す可能性を示している。ただし財源の確保、要件の設定、既存加算との整合など、実現までのハードルは低くない。全面的に導入されるのか、部分的な評価にとどまるのか、あるいは2030年改定に持ち越されるのかは、現時点では見通せない。
データで見る適正化と機能強化型の非対称
減算はすでに段階的に導入されてきた
リハビリ職による訪問看護への「適正化」は、今回が初めてではない。過去の改定で算定制限や減算が段階的に組み込まれてきており、令和6年度(2024年度)改定でも新たな減算が設けられている。具体的には、前年度の実績で理学療法士等の訪問回数が看護師の訪問回数を上回っているステーションでは、リハビリ職による訪問(1回20分)につき所定の単位を減算するという仕組みだ。40分の訪問なら2回分として減算される。
この減算には除外要件がある。緊急時訪問看護加算、特別管理加算、看護体制強化加算のいずれかを算定した実績がある事業所は、減算の対象外となる。判定は事業所単位で行われ、いずれかの加算を算定した実績が事業所にあれば、全利用者について減算しなくてよいという整理だ。つまり「医療的な機能を備え、実績で示しているステーションは減算しないが、リハビリ中心で医療的加算の実績がないステーションには減算がかかる」という設計になっている。今回の論点は、この既存の枠組みをさらに踏み込ませるかどうか、という位置づけになる。
機能強化型は医療保険側で手厚い評価がある
比較の材料として、医療保険側の機能強化型がどれだけ手厚いかを見ておきたい。医療保険の機能強化型訪問看護管理療養費は、月初の訪問で通常型が約7,700円であるのに対し、機能強化型では区分に応じて9,000円台から1万3,000円台まで評価される。2026年6月の診療報酬改定では各区分の月初評価が引き上げられ、精神科訪問看護に特化した新区分(機能強化型4)も新設された。
機能強化型の要件は、常勤看護職員数(区分により4〜7人以上)、看護職員割合6割以上、24時間対応体制、ターミナルケアや重症児等の受け入れ実績、地域への研修・連携実績など多岐にわたる。地域で重症者や困難ケースを受け止める高機能ステーションを評価する仕組みであり、こうした評価軸が介護保険側にほぼないという点が、今回の非対称論の核心である。介護保険で訪問看護を提供している同じステーションが、医療保険の利用者には機能強化型として評価される一方、介護保険の利用者にはその評価が乗らない、という状況が生じている。
「適正化」が具体的に何を意味しうるか
現時点では要件も単位数も示されていないため、適正化の具体像は確定していない。ただし、これまでの改定の流れから想定される方向はいくつかある。1つは、既存のリハビリ職訪問への減算の対象範囲や減算幅を拡大すること。もう1つは、看護職員とリハビリ職の訪問回数比率に関する要件を強めることだ。看護中心の運営を促す方向で、除外要件となっている医療的加算の算定実績をより厳しく問う可能性も考えられる。
いずれにせよ、方向感は「リハビリのみで完結する訪問看護から、看護機能を伴う訪問看護へ」という一点に収れんしている。逆に言えば、機能強化型の介護報酬評価が実現すれば、看護機能を厚く備えたステーションには追い風となる。適正化で圧力がかかる事業所と、機能強化型評価で報われる事業所が、より鮮明に分かれていく展開が見込まれる。ここで示したのはあくまで過去の改定パターンからの見立てであり、確定した制度内容ではない点は改めて強調しておきたい。
訪問看護で働く人にとっての意味
リハ特化型ステーションで働く人がまず確認したいこと
この論点が現実の要件・単位数として姿を現すのは、早くて2026年秋以降、確定は2027年の冬から春にかけてだ。したがって今すぐ大きな判断を迫られる話ではない。ただし、方向性が固まってから慌てるのと、選択肢を持って備えるのとでは、働く側にとっても意味が大きく変わる。
訪問看護に従事する看護職・リハビリ職がまず把握しておきたいのは、自分の勤務先が「看護中心か、リハビリ中心か」という事業所の構造だ。訪問回数における看護師とリハビリ職の比率、売上に占める介護保険と医療保険の割合、緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算の算定実績の有無。これらは、適正化の議論が進んだときに勤務先が影響を受けるかどうかを左右する指標であり、求人票や面接では見えにくい「事業所の体力」を映す数字でもある。
過去数回の改定で段階的に評価を引き下げられてきたリハビリ特化型の独立系ステーションは、経営マージンが徐々に圧迫されてきた事業所も少なくない。さらなる適正化が行われれば、看護師採用による構造転換、機能強化型取得を視野に入れた要件整備、他ステーションや医療機関との統合といった経営判断を迫られる可能性がある。そうした判断は雇用や配置に直結するため、働く側も勤務先がどの選択肢に向かいそうかを意識しておく価値がある。
キャリアの観点では「看護機能の厚み」が価値になる
制度が向かおうとしている方向は明確だ。「訪問看護は看護らしく」であり、医療的な観察・判断・処置、24時間対応、看取り、医療連携といった機能に報酬が重点配分されていく流れである。この流れを個人のキャリアに引き寄せると、緊急時対応や重症者対応、ターミナルケアの経験を積める環境に身を置くことが、そのまま「制度に評価される人材」になることを意味する。
とくに機能強化型ステーションの要件は、そのまま「優れた管理者・所長が整備すべき体制」と重なる。24時間対応体制の設計、重症者・看取りの実績づくり、地域の医療機関やケアマネジャーとの連携、スタッフ教育。管理職を目指す看護師にとって、機能強化型を算定するステーションで働く経験は、制度上求められる体制を日常業務として実践する場になる。介護報酬側にも機能強化型評価が入れば、こうした経験の価値はさらに高まる可能性がある。逆にリハビリ中心のステーションでキャリアを積んできたリハビリ職は、看護機能の厚い事業所との連携や、自身の専門性を活かせる訪問リハビリテーションへの軸足の置き方を、早めに考えておく余地がある。制度の枠がどう引き直されても、自分の専門性が最も評価される場を選び取る視点が問われる。
「働き方診断」的に自分の立ち位置を棚卸しする
制度の議論はマクロな話に見えて、突き詰めると「自分はどんな訪問看護に関わりたいのか」という個人の問いに戻ってくる。看護師としてターミナルや重症管理の専門性を深めたいのか、リハビリ職として生活機能の向上に軸足を置きたいのか。その希望によって、適正化と機能強化型評価の議論が追い風になるか向かい風になるかは変わる。
看護機能を厚くする方向に制度が動くなら、緊急時対応や看取りの経験を積める機能強化型ステーション、あるいは医療機関併設型のステーションは、キャリアの受け皿として存在感を増していく。一方、リハビリ職としての専門性を最大限に活かしたいなら、訪問リハビリテーション事業所や、リハビリと看護がバランスよく機能しているステーションを選ぶという道もある。大切なのは、制度の変化を「降ってくるもの」として受け止めるのではなく、自分の専門性と希望条件に照らして能動的に職場を選び直す視点だ。改定の議論が本格化するこの時期は、自分のキャリアの棚卸しをするのに適したタイミングでもある。
在宅系再編と2027年改定の行方
訪問介護・訪問リハビリと地続きの「在宅系再編」
今回の訪問看護の論点は、単独で動いているわけではない。同じ第259回分科会では、訪問介護の基本報酬や同一建物への対応、訪問リハビリテーションの生活機能向上・アウトカム評価なども併せて議論された。在宅系サービス全体を通じて、「どの職種が、どの制度の枠で、どんな機能を担うのか」という役割分担の再整理が進もうとしている。
訪問看護のリハビリ職適正化と訪問リハビリテーションの評価は、いわば表裏の関係にある。リハビリを提供するなら、訪問看護の枠ではなく訪問リハビリテーションの枠で、という整理が進めば、リハビリ職の働く場そのものの制度的な位置づけが変わっていく。看護とリハビリの境界がどこで引かれるのかは、両職種のキャリア設計に直接関わるテーマだ。訪問リハビリテーション側でも、利用開始からの長期利用のあり方やリハビリマネジメント、アウトカム評価が検討テーマに挙がっており、在宅リハビリ全体をどう評価するかという大きな枠組みの中で議論が進んでいる。
財源をめぐる綱引きの中での「重点化」
2027年度改定の通奏低音は、2040年を見据えた制度の持続可能性である。医療と介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口が増える一方、支え手である現役世代は減っていく。分科会でも、現役世代の保険料負担が限界に近づいているとの認識から、給付の重点化・適正化を求める声が保険者側から繰り返し出ている。
この文脈では、収支差率が相対的に高い訪問看護は、適正化を求められやすい立場にある。同時に、機能強化型のように「本当に手厚いケアを担う事業所」を評価する仕組みは、重点化の受け皿として理にかなう。適正化(外すところは外す)と機能強化型評価(厚くするところは厚くする)は、限られた財源をメリハリよく配分するという同じ思想の両輪だと読める。介護報酬側の機能強化型評価が実現するかどうかは、財源確保と要件設計の詰め次第であり、2027年改定で部分的な評価にとどまるのか、2030年改定に持ち越されるのかは現時点で予断を許さない。
スケジュールを押さえて備える
今後の流れはおおむね決まっている。2026年の秋から冬にかけて第2ラウンドで具体的な項目(報酬・基準)の議論が進み、12月中旬をめどに基本的な考え方が取りまとめられる。改定案の諮問・答申は2027年1月頃、施行は2027年4月だ。並行して改定率が年末の予算編成で決まる。働く側としては、この秋以降に具体的な単位数や要件の案が見えてくるタイミングを一つの節目として、自分の勤務先や次の職場選びの判断材料を整えておきたい。制度の方向性を早めに読み取っておくことは、慌てて動くリスクを減らし、自分の専門性を活かせる場を選ぶための備えになる。
あわせて押さえておきたいのは、今回の論点が高齢者向け住まいと訪問系サービスの関係にも通じている点だ。分科会全体では、有料老人ホーム等での訪問サービスの過剰利用(いわゆる囲い込み)への規制強化も議論されている。訪問看護の適正化も、その大きな流れの中で「本当に必要な看護が、必要な人に届いているか」を問い直す一環と位置づけられる。単なる事業者への締め付けではなく、在宅ケア全体の質と公平性をどう担保するかという視点から見ておくと、個々の論点のつながりが見えやすい。
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まとめ
2026年6月29日の第259回介護給付費分科会で、厚生労働省は2027年度改定に向けた訪問看護の論点として「理学療法士等による訪問看護のさらなる適正化」と「機能強化型訪問看護の介護報酬での評価」を示した。前者はリハビリ職の訪問割合が高いステーションへの制度的対応で、過去の改定で導入されてきた減算を一段進めるかどうかを問うもの。後者は、医療保険側にしかない機能強化型評価を介護保険側にも設けるかという非対称の是正である。いずれも審議の入口に立った段階であり、報酬や要件が決まったわけではない。
方向性としては「訪問看護を看護らしい機能に重点化する」という一本の線が通っている。適正化で外すところは外し、機能強化型評価で厚くするところは厚くする。この両輪は、収支差率が相対的に高い訪問看護という分野で、限られた財源をメリハリよく配分しようとする2027年改定の思想そのものだ。伸び続ける分野だからこそ、量ではなく中身が問われる局面に入っている。
訪問看護で働く看護職・リハビリ職にとっては、勤務先が看護中心かリハビリ中心か、医療的加算の実績があるかといった事業所の構造を把握し、緊急時対応・看取り・医療連携といった看護機能の厚みを自分の経験として積めるかどうかが、これからのキャリアの分かれ目になっていく。具体的な単位数や要件の案が見えてくるのは2026年秋以降だ。制度の向かう先を早めに読み、自分の働く場と次の一手を考えておきたい。あなたの経験や希望条件は、どんな働き方に向いているだろうか。制度が動き出す前に、いちど立ち止まって整理しておく価値がある。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。
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