
介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業とは
令和7年度補正予算に基づく介護職員の賃上げ・職場環境改善を後押しする国の緊急支援事業。処遇改善加算との違い、対象事業者、補助内容、申請の流れをやさしく解説。
賃上げ・職場環境改善支援事業の定義
介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業とは、令和7年度補正予算(1,920億円)に基づき国が実施する緊急支援策で、介護事業者に対して介護職員等の賃上げと職場環境改善の取り組みを財政的に後押しするものです。処遇改善加算(介護報酬に組み込まれた恒常的な制度)とは別枠の補助金で、令和7年12月から令和8年5月までの賃上げ相当額を対象に、都道府県を通じて事業者へ交付されます。
目次
賃上げ・職場環境改善支援事業の概要と背景
制度の背景と目的
介護分野では、これまでも処遇改善加算による賃金改善が積み重ねられてきましたが、他産業と比較すると賃金水準にはまだ差がある状況です。厚生労働省は、令和7年11月21日に閣議決定された「強い経済」を実現する総合経済対策の中で「医療・介護等支援パッケージ」を緊急措置することとし、これに基づく令和7年度補正予算案(令和7年12月16日成立)に、介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業の予算(1,920億円)が盛り込まれました。
介護分野は物価・賃金上昇に直面する厳しい状況にあり、国民が安心して介護サービスを受けられる体制を維持するため、令和8年度の介護報酬改定を待たずに、人材流出を防ぐ緊急的な対応として実施されているのが本事業の位置づけです。
処遇改善加算との違い
処遇改善加算は介護報酬に組み込まれた恒常的な制度で、サービスごとに定められた加算率に応じて介護報酬から支払われます。一方、本事業は令和7年度補正予算という単年度的な財源に基づく緊急支援策で、令和7年12月から令和8年5月までの期間限定の賃上げ相当額を、都道府県を通じて事業者に交付するものです。対象は原則として処遇改善加算を算定している事業者(加算の対象外サービスは加算に準ずる要件を満たす事業者)で、処遇改善加算の取得を前提としつつも、加算とは別枠の補助金という位置づけになります。
賃上げ・職場環境改善支援事業の補助内容
補助内容(3つの柱)
- 幅広い賃上げ支援:1.0万円
処遇改善加算を算定している事業者の介護従事者に対し、幅広く賃上げを支援します。対象は介護職員に限らず、看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・生活相談員・介護支援専門員などの専門職、調理員や事務職も含まれます。 - 協働化等に取り組む事業者への上乗せ:0.5万円
訪問・通所サービス等で「ケアプランデータ連携システムへの加入」、施設・居住系サービス等で「生産性向上推進体制加算I・IIの取得」などの要件を満たす事業者の介護職員には、上記に上乗せして支援します。 - 職場環境改善の支援
介護職員の職場環境改善に取り組む事業者を支援するもので、介護職員等の人件費に充てることも可能です。人件費に充てた場合、介護職員に対する0.4万円の賃上げに相当する規模とされています。
対象期間と交付の仕組み
対象期間は令和7年12月から令和8年5月までの賃上げ相当額です。補助率は国10/10(全額国費)で、介護事業所が都道府県に申請し、都道府県が交付決定・補助金交付を行い、事業実施後に事業所が実績報告書を提出する流れになります。基準月は原則として令和7年12月とされ、補助額はこの基準月の介護報酬総額に交付率を乗じて算出される仕組みです。
処遇改善加算との違いの比較表
処遇改善加算との違い
| 項目 | 処遇改善加算 | 賃上げ・職場環境改善支援事業 |
|---|---|---|
| 財源 | 介護報酬(利用者負担・保険料等を含む恒常財源) | 令和7年度補正予算(単年度の緊急財源) |
| 性格 | 恒常的な加算制度 | 期間限定の緊急支援事業 |
| 支給ルート | 介護報酬の請求を通じて事業者に支払われる | 都道府県への申請・交付決定を経て事業者に交付される補助金 |
| 対象期間 | 算定要件を満たす限り継続 | 令和7年12月〜令和8年5月の賃上げ相当額 |
| 両者の関係 | 本事業の対象は原則として処遇改善加算を算定している事業者(対象外サービスは加算に準ずる要件を満たす事業者)。処遇改善加算を土台に、報酬改定を待たずに追加の賃上げ・職場環境改善を後押しする位置づけ。 | |
賃上げ・職場環境改善支援事業の申請の流れ
申請の流れ
- 計画書の提出
各都道府県が定める様式に基づき、賃上げ・職場環境改善の計画書等を作成し、都道府県の窓口に提出します。申請受付の開始時期や締切は都道府県ごとに異なります。 - 交付決定
都道府県による審査を経て、交付決定が行われます。 - 賃金改善・職場環境改善の実施
令和7年12月から、各都道府県が定める実績報告期限までの間に、実際の賃金改善・職場環境改善の取り組みを実施します。 - 実績報告書の提出
事業実施後、実績報告書を都道府県に提出します。関連書類は一定期間の保存が求められます。
補助金は事業者が申請・受給する仕組みであり、職員個人に対して一時金として直接支給される制度ではない点に注意が必要です。実際に職員の賃金へ反映されるかどうかは、各事業者の賃金改善計画・給与規程の運用によります。
賃上げ・職場環境改善支援事業のQ&Aが複数版出ている理由
Q&Aが複数版出ている理由
本事業は令和7年11月の予算閣議決定から短期間で実施要綱・様式が整備された経緯があり、現場からの実務上の疑問に対応するため、厚生労働省から段階的にQ&Aが発出されています。令和8年1月21日には「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業に関するQ&A(第1版)」が事務連絡として示され、その後も追補版が発出されました。基準月の考え方、対象経費(賃金改善経費と職場環境改善等経費の区分)、実施期限、根拠資料の取扱いなど、制度開始後に判明した論点が版を重ねるごとに追記されています。
自分の勤務先がこの事業の対象になっているか、賃金にどう反映されるかを知りたい場合は、まず自事業所が処遇改善加算を算定しているか、次に自治体の実施状況・申請有無を確認するのが実務上の近道です。厚生労働省の実態調査では、令和6年度補正予算による類似事業について「事業のことを知らなかった」という理由で申請しなかった事業者が2割程度いたとされており、制度の周知が課題の一つになっています。
賃上げ・職場環境改善支援事業のよくある質問
よくある質問
- Q. 処遇改善加算を取っていないと対象外ですか?
- A. 原則として、基準月(令和7年12月)時点で処遇改善加算を算定していることが対象要件です。訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援など処遇改善加算の対象外サービスは、加算に準ずる要件を満たす(または満たす見込みの)事業者が対象になります。
- Q. 補助金は職員に直接支払われるのですか?
- A. いいえ。補助金は事業者が都道府県に申請・受給する仕組みで、職員個人への直接支給ではありません。実際の賃上げは事業者が賃金改善経費として職員の給与に反映させる形になります。
- Q. 職場環境改善支援の補助金は何に使えますか?
- A. 職場環境改善に取り組むための経費に充てるほか、介護職員等の人件費に充てることも可能とされています。人件費に充当した場合、介護職員に対する0.4万円相当の賃上げに相当する規模とされます。
- Q. いつまでの賃上げが対象になりますか?
- A. 令和7年12月から令和8年5月までの賃上げ相当額が対象期間です。申請受付や実績報告の期限は都道府県ごとに設定されています。
- Q. 令和8年度の介護報酬改定後はどうなりますか?
- A. 本事業は令和8年度介護報酬改定の時期を待たずに実施する緊急的な対応と位置づけられています。改定後の処遇改善の取り扱いについては、厚生労働省の公表情報を確認する必要があります。
賃上げ・職場環境改善支援事業の参考資料
- [1]介護分野における医療・介護等支援パッケージ及び重点支援地方交付金の活用について(介護保険最新情報Vol.1448)- 厚生労働省
令和7年度補正予算に基づく賃上げ・職場環境改善支援事業の施策概要・補助内容・スキーム図
- [2]
- [3]
賃上げ・職場環境改善支援事業のまとめ
まとめ
介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業は、令和7年度補正予算に基づき、処遇改善加算とは別枠で実施される期間限定の緊急支援策です。処遇改善加算を土台に、令和8年度介護報酬改定を待たずに追加の賃上げ・職場環境改善を後押しする仕組みであり、対象期間は令和7年12月から令和8年5月までとなっています。実際に自分の給与へ反映されるかどうかは事業所の申請状況・賃金改善計画によって異なるため、勤務先が処遇改善加算を算定しているか、本事業に申請しているかを確認しておくとよいでしょう。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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